破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-30 あれやこれや

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、身も蓋(ふた)もないことを言えば――」

 

 カーシャは足を組みなおしながら、カンナを見る。

 

「女の持つ最大の価値は、下半身でしかないの」

 

「な……」

 

「まあ、お聞きなさい」

 

 何かを言いかけたカンナに、カーシャは手を軽くあげる。

 

「つまり、次世代、子供を産む能力。それこそが最大の価値であり、守られる理由。次世代を残すためには不可欠ですもの」

 

 ……けれどねえ?

 

 青い美貌の乙女は、やや憂いのある……ように見える……横顔で、

 

「サキュバスという存在がいる場合、その価値は激減するのよ。家同士、国同士の関係性が重要となる貴族や王族ならともかく? 一般国民にとっては、子供を産ませて、育てさせるのなら、サキュバスのほうが効率もコストも良いの。残念ながらね」

 

「まあ、金も家も、親類縁者もいねえ。ンーな、底辺の連中からすれば、サキュバスとテキトーにやってるほうが良いんだろうよ。どーせ、人間の女は嫁どころか、相手にもされん。だからさっさと割り切るのさ」

 

 カーシャの後を継ぐように、マコネが肩をすくめる。

 

「割り切れる、んですか?」

 

 カンナは、あえてカーシャに問う。

 

「さてね――おなかの内までは、わからないし。興味もない。でも、手に入るかどうかもわからないし、労力やお金に見合わない、あるいは見合わないかもしれない。そんなものに執着し続けるのは不毛じゃあなくって?」

 

「そういう連中はさ。飯が食えて、酒が飲めて、住むところがあって。そんで時々サキュバスと遊べる。それで満足するんだよ。長くても60近くで死ぬ。死ねば火葬されて、灰は無縁墓地に埋められる。そういうもんだと割り切っちまうんだ。もうちょい余裕があって、子供が欲しい、種が残したいなら――」

 

 サキュバスと契約する。

 下手に人間の女を嫁にするより信用できるし、確実だからな。

 

 マコネの、あまりにも平然とした態度や物言いに、カンナは絶句する。

 

「だけど、そこに……」

 

「愛情? ないわね」

 

 カーシャが淡々と切って捨てた。

 

「サキュバスからじかに聞いた話だけどね。全てはビジネスよ。男は代価を払い、サキュバスはそれに応じた仕事をするだけ」

 

「あなたたちは、それで、平気なんですかッ?」

 

 カンナの語気は荒くなった。

 

「平気もなにも……」

 

 マコネは困った顔で、

 

「関係もなけりゃ、こっちの損得にもならねえ。ンな他人の下半身事情なんざ、いちいち気にしてどうするんだよ。時間の無駄じゃねーか。それで銭になるのか? 飯が食えるのか?」

 

「……」

 

「むしろ、そんなのが猫なで声で寄ってきてもらっちゃ困るだろ? どーせろくなこと考えてねーんだから」

 

「第一……。女への性犯罪は重罪だけど、春を売るのも買うのも重罪なのよ? それも、女を守るためじゃない。病気の蔓延や治安の悪化を防ぐためでしかないわ。そんなリスクを負ってまで、薄汚い物乞いや流民の女を欲しがると思う?」

 

 カーシャは冷たい顔で言った。

 

「そんなの群がるのは、冒険者もできねえ野良犬以下の連中だけだね。ギルドのルールも守れないし、守る気もねえ。野盗ぐらいしかできねえようなヤツらさ。ギルドがどんなモンスターより先に駆除を優先するヤツらだよ」

 

 マコネの後で、

 

「ああ。そういえば、ああいうのはいくつも駆除したわね。むしろ、後始末をするギルドのほうが大変だったでしょうけど」

 

 カーシャは苦笑する。

 

「……サトナのほうじゃさ。魔法をおぼえてひとふんばりしようってオバチャン連中が大勢いただろ? 下手に若さと色気だけの女よりも、あのオバチャンたちのほうが価値があるんだよ。ギルドにとっちゃな。あと、サキュバスがいるんだから、半端な美人にも値打ちはねえよ。地味でも多少ヘチャムクレでも、働きもんのねーちゃんなら、カタギの嫁としてもらい手がいくらもあるぞ」

 

 まあ、そーゆー意味じゃよ?

 

 マコネは立ち上がって伸びをしながら、

 

「嫁さんは、外面よりも中身のほうが重要だってこったから。まっとうなねーちゃんたちには良いことだと思うけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば。ずっと前から、あっちの工場でなんかやってますが、アレなんでしょうな?」

 

 ドローは、あるの方向を見ながら言った。

 骨董品の整理が一段落ついたところだった。

 

「あそこって、確か自動車修理とかしてたような……」

 

「……オグからきた魔導士も、けっこう出入りしてるな。何か新型のゴーレムを造ってるとか言ってたが……。そちら風に言うなら、ロボットだったか」

 

「ろ、ロボットですか?」

 

「若いのから年寄りまで、大勢で一生懸命やってた。女連中は呆れたけどな」

 

 

「うちのおとーちゃん、いい歳してあんなオモチャみたいなもんに夢中になって……」

 

 

 工場の奥さんは、そんな愚痴をこぼしていたらしい。

 

「他の工場でも似たようなことしてるようだが……。手伝いはすぐに集まったらしい。若いのからガキまで大勢な。この街の連中は何で、ああもゴーレムが好きなのかね。むしろこっちが知りたいくらいだ」

 

 と。

 ゴトクは肩をすくめる。

 鑑定した書画をていねいにしまいながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、よくこの短期間でここまで造りましたね?」

 

 魔導士たちは、完成間近の試作品を見て感嘆の声。

 素直な、心からものだった。

 

 大きさは4~5メートルほどか。

 ヒト型に近い鉄の塊。

 足に比べて、腕のほうが長い。

 手は、一応ものをつかめるようにはなっているが、5本の指ではない。

 無骨な、いかにも未完成という造形。

 

「まあ、人手がたくさんあったからなあ」

 

 現場のリーダーである工場長は感慨深そうに言った。

 

「でも、まだまだ夢の段階だ。解決しなきゃいけないことばっかりだよ」

 

「さしあたっては、操縦方法ですか。一応視覚なんかを同調させて遠隔操作するのが無難でしょうね」

 

「行け、鉄人! とか命令したら動くようにならないかね?」

 

「そりゃ無理でしょう。思考能力があるわけじゃないんですから……」

 

 とはいえ。

 

 魔導士たちはうなずき合いながら、

 

「これが実用化されば中型近い……オウルベアクラスのモンスターの対抗手段にもなりますね」

 

「向こうのほうじゃ、中に入って動かすものを造ってるそうだけど」

 

「いや、あんなの動かすには、相当な体力や筋力が必要ですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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