破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-31 集まってはくるらしい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで――いったい、どういう連中が集まってるんだよ?」

 

「ああいうのじゃない?」

 

 カーシャは、広場中央に固まっている集団を指した。

 

「けっこういー年したのばっかじゃんか」

 

 遠目に観察してから、マコネは変な顔をする。

 

「多少若いのもいるようだけどね」

 

「あんなんばっかより集まって、どうやって街をやってくんだ。あいつら、仕事できんのか?」

 

「ここに残ってたら、多分あなたにそれをしろと言ってくるわよ。ほぼ間違いなく――」

 

 カーシャは意地の悪い目で言いながら、マコネの髪に触れた。

 

「おいおいおい。カンベンしてくれよ。おいら、あんなんの子分やる気なんかねーぜ?」

 

「こっちの都合には関係なく、向こうは当然そうなるんだ、と思ってるんじゃないかしらねえ」

 

「なんだよ、それ」

 

「連中の目つきや顔つきを見ればわかるでしょう? 自分たちは指図する側だ。そう信じて疑っていないわ」

 

「…………うわあ」

 

「あなた、ひとりでアレの面倒見るの? 若くてきれいで、殿方はほっておかないでしょうね。そんな小娘を、本音ではどう思ってどう扱おうとするのか、想像できない?」

 

 カーシャは、クスクス笑ってカンナを見る。

 

「……」

 

「時々勘違いするのが多いんだけど。女同士なら、女だけなら平和で優しい国や社会ができるとか、そういうことを考えるのがいるのよね。でも、自分の経験を振り返るに、自分も含めて周囲にいた、見てきた女はそんな素晴らしい存在だったか、といえば否としか言えない。わからないなら、それはつまり自己認識が狂っているということよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、リーダー!」

 

 目の前に立つ青い乙女。

 その姿を見るなり、バッキーは小走りに駆け寄っていく。

 

「ど、どこへ行ってたんですか? なんか急に出かけてって、帰ってこないし……」

 

「ん~。まあ、なんというのかしら。女性だけの、理想郷を造ろうという話を聞きに」

 

「……はい?」

 

 カーシャの曖昧な返事に、バッキーは目を丸くした。

 

「そ、それはどういう???」

 

「まあ、このへんはおいおい話しましょう」

 

 

 ……。

 ………。

 …………。

 

 

 まあ、つまるところ――

 

 と。

 カーシャは半分ほど飲み終えた茶器を置いてから、

 

「女である限り、男から害されて、欲望の対象にされる。そんなのは嫌だし――間違っている。だから、自分たちだけの場所を造る。そういう話らしいわ」

 

「は、はあ。それは、まあわかる気もしますけど……」

 

 大よその、経緯説明。

 バッキーはある程度聞いてから、若干ばつの悪い顔。

 

 ――いや、それはその……。個人的には、あんまりえらそうなことは言えないというか……。

 

 自らの趣味嗜好。

 美しい男同士の情愛・性愛を描いた作品群。

 そういうものに長らく耽溺している身としては、

 

 ――妄想や2次元とはいえ。こっちもさんざん男性を欲望の対象にして、消費? しちゃってるわけで……。

 

 だから。

 男の求める趣味嗜好、欲望をケシカラヌと、一刀両断はできない。

 

 ――そんなもの、横から見れば老若男女問わず気色悪いに決まってるんだから……。

 

 その中で、大学時代同好の士であった先輩の言葉を思い出す。

 

「ああいう、欲求というか嗜好っていうか。汚いたとえだけど、ぶっちゃけアレってウンコみたいなもんでさ?」

 

「適当に排出しないと、病気になるし、最悪死んじゃうわけよ」

 

「だけど、そうやって出しちゃったものって、自分でも汚いし、他人から見ればもっと汚いわけ。嫌だよね」

 

「それだから、人目につかないところで、ひとりで静かにきれいに処理して、トイレに流しちゃうの」

 

「健康のためにも、それが最良ってもんでしょ?」

 

「でも、世の中にはやたら他人のトイレ事情を気にして首を突っ込みたがるのもいるから、困るわけ」

 

「他人が用を足してるトイレを覗き込んで、こんなものを出すなんて、お前はなんて汚いんだ! って叫びたがるの。異常でしょ?」

 

「自分だってそうしてるクセにね」

 

「そこを棚に上げて、自分はきれいなんだと思い込むのは危ないの。非常に」

 

 

 バッキーはそんな言葉を何度か反芻(はんすう)して、

 

「欲望の対象って、なんでしょうね」

 

「うん?」

 

「いえ……。倫理的には良くないし? それをされるのは嫌だってもよくわかる、んですけど。その……」

 

「自分も、同類だと?」

 

 カーシャはお茶を飲み干し、目を細めた。

 

「まあ、恥ずかしながら――」

 

「そういう点では、私だって同じだけれど。いえ、もっとひどいでしょうね。あけすけに言うと……」

 

 相手の身分、爵位はどれくらいか。

 財産はどれくらいか。

 宮廷内でどれくらいの力を持つのか。

 見栄えはどれくらい良いのか。

 そして。

 いかに、他の女に対してマウントをとれるのか。

 

 カーシャはずいぶんなことを平然と並びたてる。

 

「ざっとこんな感じね。そういう点で……王太子殿下はまさに最高の相手だったと言えたわけで」

 

「う、う~~~ん……」

 

「言い訳するのではないけど、貴族社会の女なんて大なり小なり、こんなものだと思うけれど。互いに恋愛感情なんてないのは普通。むしろあるほうが邪魔とさえ言える」

 

「それはちょっと、寂しい気もしますね……」

 

「仕方ないわね。そうやって平民の上に君臨してるわけだから。自由恋愛なんてものは、創作(つくりごと)だけのこと。まあ、だからこそ、お芝居だの文学を好む貴族女性は多いのかもしれない。ある意味女以上に欲望を描ける男同士のものとか」

 

「うぐ。い、い。それよりも……その、新しい街ってどうなるんです?」

 

「それは、国との交渉次第とも言えるけど。ヤオアムトとしては、放置するのも認めるのも得策じゃない。かといって、いきなりあんなものをこしらえる相手だから、あまり軽率なこともできない、かしら?」

 

「じゃあ、仮にリーダーでしたら、どんな風に?」

 

「うーん。そうね……。うん。サトナの厄介な女をまとめて放り込む、かしら。弱体化や自滅を誘うにはもってこいだし」

 

 ――悲惨なことを言うなあ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな会話のだいたい同じ頃、だった――

 

 

 一台の軽トラックが、ある郊外の家を通り過ぎていく。

 

「あそこのオバハン、ぜんぜん姿見ないけど、どうなってんだ?」

 

「さあねえ……。息子が2人とも出ていっちゃってるようだし……」

 

 車中では、仕事途中の男が2人世間話。

 

「出てったって」

 

「いいかげん、あの母親といるのは嫌になったんだと。無理もねえらしいが」

 

「あのオバハン、そうとう変人だったらしいな?」

 

「ちょろっと聞いた話でも、息子のチンチン切り落としかねない、まあ()()()()直前のおかたらしいや」

 

「どういうことだよ、それ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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