破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

182 / 357
その110、オグ事件-32 行方不明者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、運営方針? ってのも色々あるようですが……」

 

 報告書を出した後――

 ユオン・キナは自分の長耳をいじりつつ、

 

「特徴的なひとつに、男社会からの搾取と支配からの脱却だそうです」

 

「おとこしゃかい?」

 

 話を聞いているトーザ侯爵は、不可解そうに言った。

 

「いえ。まあ、この国なんかでも、国の運営とか王位継承者とか、基本男性でしょう。女性はあまりいない。いる場合も女傑と評される傑物ばかりで、ややイレギュラーなかたばかりです」

 

「ふうん」

 

 侯爵は巨体を揺すりながら首をかしげ、

 

「確かに。そこらの凡庸な女ではそういう立場にはなれんか」

 

「権力はありますが、いざとなれば斬首になることもままある立場ですからねえ。あえてなろうというかたは、そりゃ少ないです。過酷な淘汰の果てにある、冒険者ギルドはまた別ですけど」

 

「おう。確かに、アレには怖い女が大勢いるらしいな」

 

「上位層は、下手な男よりも苛烈で残酷なかたも多いですね。血の気が多いとも言えますか」

 

「待て。まさか、そういう連中があそこに集まるなどとは言うまいな」

 

 侯爵はやや表情を引き締めて、睨むような目つきに。

 

「もちろん、違います。そこはご安心を――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女が安心して暮らせる街かあ――」

 

 マコネはテーブルの骨付き肉を取り、首をひねる。

 

「なんで女に限定するのかは知らんけど。あれって、どういう意味だ?」

 

「そうですねえ……」

 

 バッキーは木製コップに入ったスープを飲みながら、

 

「女性が女性であるだけで加害されない、犯罪被害の心配をしなくていい。そういうところ、ですかね。たぶん?」

 

()()()()って、お前。女のスリだの盗人なんてフツーにいるだろ。ケンカに暴力沙汰、殺しだってフツーにあるぞ。女だけになったって、みんながみんな聖人だの善人なわけねーじゃん」

 

「そりゃそうなんですけどね。んー、なんだろ。それだけ、男性を信じられないってことじゃないですか」

 

「男に食い物にされ続けて、そう思うようになった、てのは、わかるけど……。ちょっと女に夢見すぎじゃねーの?」

 

「ううーん……」

 

「考え方が単純すぎるつーか、極端なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「**のオバハンが消えた?」

 

 ギルドナイトの副長は、部下の報告に振り返った。

 

「あー……。確かに、家にほぼ引きこもってるんだっけか? 話だけは聞いたことあるが」

 

「それでも近所の住民が、庭を歩いてるところは見かけてたそうですが……。数日、まったく姿を見せてないそうで……」

 

「で。わざわざ訪問したっての? 手厚いというか、なんというか……」

 

 副長は困った顔で頭を押さえる。

 

 ――隊長が知ったら、『無駄な時間を使うな!』……と怒るんだろうねえ、これは。

 

「息子2人を説得して、一緒に行ったんですけど。これが、家のどこにもいなくって」

 

「……どっかで野たれ死んでるんじゃないの?」

 

 困った顔の部下に、副長は冷たい意見。

 

「いやいやいや。そんな、気軽に死体なんか転がってたら大事件ですよ!?」

 

「……ああ。()()()ではそうなの? そうだなあ、放置してゾンビにでもなられたら、厄介だ。捜索はしたほうがいいかね」

 

「はい……」

 

「しかし? そのオバハンってのは、なんで引きこもってたんだい? 心でも病んでたの?」

 

「まあ、その……」

 

「何かおかしな事情がありそうだな。まあ、なんでもいいけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どっかに消えちゃったババァ?」

 

 ゴトクの質問に、そのサキュバスはちょっと考えて――

 

「プラカードや包丁持って騒いだヤツじゃないわよね」

 

「ああ。それとは別人だよ。ちょっと知り合いから頼まれてな。死体になってても困るってんで」

 

「ふーん。あんたも大変ねえ。そんな世話焼きばっかしてて疲れない?」

 

「好きでやってるんじゃねえがな……」

 

「んー……。で、おかしなオバチャンか……。ま、とはいえ。実年齢で言うなら私よりもずっと子供だろうけど」

 

 うん。

 そうそう。

 

 サキュバスはうなずいて、

 

「前に、街中でこっちに塩まいてきた変なのがいたわ。息子がどうのと怒鳴ってたかも」

 

「ああ。それだな、多分」

 

 ゴトクは腰に手を当て、疲れた表情でうなだれる。

 

「なんなの、アレ?」

 

「病人だよ」

 

「こっちの?」

 

 サキュバスは頭をつつきながら、冷たく言った。

 

「まあ、そうだ」

 

 

 

 

 

 ………。

 

 

 

 

 ――何が哀しくって、こんなことまで……。

 

 ゴトクは腕を組みながら、郊外を歩いていく。

 中央部分とはまるで別物の、山と田畑ばかりの場所。

 

 例の、行方不明になったという中年女。

 

 いや。

 もう【年寄り】という年齢かもしれない。

 

 話を聞くに……。

 息子たちにかなり偏執的な教育と銘打った虐待をしていたらしい。

 

 思春期に入り、エロ関係に興味を持ちだした息子を罵倒。

 自分の性嫌悪を倫理とか道徳という薄い皮にかぶせての押しつけ。

 他の女は汚らわしいから関わるなと厳命。

 

 おまけに。

 

 下半身関係まで異常な熱心さで監視。

 いわゆる夢精をしてしまった場合は、これまた発狂して怒鳴り散らした。

 

 この徹底した()()の成果もあって――

 息子たち、特に次男は従順な下僕となっていたようだ。

 

 が。

 

 ――こっちに来て、情勢が一変したか。

 

 サキュバス。

 彼女の思考からすれば、まさしく悪魔の化身。

 それに、息子2人はあっさり陥落。

 

「あんたとはもうウンザリだ!!」

 

 反抗して、家を出て行ってしまった。

 

 いくらわめいて命令しても、

 

「うるせえ、キ××ババァ!!」

 

 もはや肉体的な力は完全に逆転したのだ。

 精神面が変わってしまえば、どうにもならない。

 

 ――まあ、ごく正常なことでもあるんだがな……。

 

 ゴトクは思いつつ、探索を続けるが、

 

 ――こいつは……。

 

 【痕跡】が、街の外まで続いていることに気づいた。

 

 ――すると、この街から出ていった? だが。年寄りの、ろくな知識も経験もない女が飛び出して行って、どうにかなるもんじゃねえ……。

 

 ヤケを起こして、外でのたれ死ぬか、モンスターの餌か。

 

 あれこれ考えながら、ゴトクはひとまず使い魔を放つ。

 猫型の使い魔は、女の痕跡をたどって風のように走っていく――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。