破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
ある程度書けていたため、今回は投稿できました。いや、良かったです
チョコチョコ、と。
街の視察・観察を終えた獣人の魔導士は、ソファーに座る。
「ま~、えらくおっきな街だけれども?」
ジロっと、前に座る女――
を見て、あからさまなため息。
「見たところさ? どっこも下水道やら魔力……いや、エネルギーの供給か。そのインフラ設備は見事だよ。よく半自動のヤツを、あんだけ大規模にこしらえたもんだ。けどねえ」
「なにか?」
「今はいいけど、今後どうするの。メンテナンスについちゃなーんもないじゃない。壊れても直せんよ? 今の住民に、その技術者や魔導士がいるの?」
「それは――」
「あのね?」
と。
獣人は肩をすくめて、
「街の規模、考えなさいよ。ひとりやふたりいたって、カバーしきれんよ? 他にも……ゴミ処理場っての? アレもすごいのがあるけどさ、あそこまで運んで始末する人員は? いやさ、街の中央からけっこう距離だけど、どうやって運ぶ? リヤカー? 馬車? 馬も牛も、魔導車もないじゃない。細かいこと言えば、キリないね。問題は山積み、天まで届きそうだ」
「それはみんなで協力して……」
「けっこうな重労働だけど、今集まってる連中にできるの? まあ、やればそのうち慣れるでしょうがね」
「ですから……」
「ほんじゃ、そのへんをちゃんと説明しておくんですね。今は仮住居? でウダウダしてるけど、保存食の備蓄だっていつまでも持つわけじゃないし……。掃除ひとつでゴチャゴチャやってるじゃないの」
「……」
「どうやら体動かしてる連中と、それに指図してる連中に分かれつつあるようだけど。アレで満足してるの?」
「……」
「言っておくけど。私はあんなんの面倒なんかみないよ。してほしければ、お金払いなさい」
「……私が、それ行くんですか?」
「はい。これ、命令書です」
ラミア族の魔導士は、ひたすら途方にくれていた。
エルフの上司――ユオン・キナに命令書を渡されて――
「……あの、確かに農業関係……そっちは専門だけど。この面積、ひとりでどうにかなるもんでは……。ゴーレム使うったって、限度がありますよ?」
「完成型のものを購入すればいいのでは?」
「あの、その購入費用は?」
「知りません。街の指導者と相談してください」
「……仮にゴーレムを導入しても、ですね? 操縦者がいないんですが……」
「住民は女性ばっかりですから。魔導士になってもらえばいいんじゃないですか?」
「……まともに魔法が操れるまで、指導・教育するんですか?」
「そうなりますね」
「……」
魔導士は絶句して、目の前が真っ暗になっていく。
…………。
「そんでまあ、まず必要なのはお金ですね」
獣人魔導士は、指で丸を作りながら苦笑する。
「で。街の運営に必要な資材や、道具類。それを扱う技術者、労働者と――」
他にも。
街を防衛するための、武力が要りますよ。
野盗やモンスター、街中へダンジョンが発生した場合に備えて。
その意見に、伯耆カンナは腕組みをしたまま厳しい顔。
いや。
むしろ、それは自省の顔だった。
「あなたは、その武力を担う貴重な人材のようですけど。この広い土地、あなただけじゃあどうにもなりませんね。もっと人手が不可欠です。なんなら、今集まってる連中に軍事訓練をさせるか」
「……」
魔導士の指摘に、【剣聖】の少女はうなだれて、ため息を吐き出した。
まるで。
魂そのものを吐き出すみたいに――
「ため息ついてもしょーがありませんよ? といっても、私にはどうこうするアイデアは無いですが」
獣人魔導士が、淡々と言った後、
「当座の資金だけなら、まあ何とかなると思いますよ」
資料の束を手に、言ったラミアの女。
ユオンから派遣されてきた、魔導士。
「と、言いますと?」
「施設の完成。食料の備蓄。それにプラスして、けっこうな量の金貨が準備されてるそうです」
「それ、初耳だけど?」
「……あの、市長というのか代表と言うのか? 彼女も全てを把握してはいなかったようで……」
「そんなんで水道使ったり、保存庫……あちら風だと冷蔵庫? それの食料食べてたの? のんきというか、何というか」
獣人魔導士は肩をすくめる。
「でもまあ……。これで、必要な機材や人材は何とかなるかもです。永住するかはわかりませんけど、仕事で一時滞在は望めるでしょうね。もっとも、あくまで当座ですけど……」
集まる人数や人材にもよりますが――
1年以内に色々整備しないと、破綻しますよ、ここ。
ラミア魔導士は、どんよりした顔で言った。
「噂に、聞いてた結界内の街だったよ」
ゴトクは、冒険者ギルド・サトナ支部長にそう言った。
肩にネコ型の使い魔を乗せて――
「そうか。やっぱりなあ」
支部長は、元は市長室であった部屋を何度か歩き回る。
「――見当は、ついてたってのかい? 俺は無駄足か?」
「いや。これでハッキリ確認できたわい。どうもな、あっちへの移住を呼びかける声が密かに出回っとるらしいんや」
「女だけの街にか。まあ、行きたきゃ行かせればいいだろ。情のないことを言えば、スキル持ちならともかく、いなくなって惜しい人材はさほどいねえんだろ」
「そやのう」
支部長は頭を掻きながら、
「本部からも、好きにさせえちゅう指示がきとる。わしが逆らう理由もないしな」
しかし?
あんなもんを、どうやってこしらえたんやろな。
そう言いながら――
支部長は机に座り直し、首をひねった。
「さてな。魔神にでも願いをかなえてもらったのかもしれん」
ゴトクは静かに言ってから、
「じゃあ。俺は帰るぜ。ここでの仕事もいち段落ついたし、な」
「猫の、気になることを言うのう」
ドアノブをつかんだゴトク。
その背中に、支部長は目を細めて言った。
「なんぞ、そんな話におぼえがあるんか?」
「昔から、よくある話だろ」
ゴトクは小さく笑い、そのまま部屋を出ていった。
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