破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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昨日は急な体調不良で更新できませんでした。
ある程度書けていたため、今回は投稿できました。いや、良かったです


その110、オグ事件-33 貧乏くじ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チョコチョコ、と。

 街の視察・観察を終えた獣人の魔導士は、ソファーに座る。

 

「ま~、えらくおっきな街だけれども?」

 

 ジロっと、前に座る女――

 を見て、あからさまなため息。

 

「見たところさ? どっこも下水道やら魔力……いや、エネルギーの供給か。そのインフラ設備は見事だよ。よく半自動のヤツを、あんだけ大規模にこしらえたもんだ。けどねえ」

 

「なにか?」

 

「今はいいけど、今後どうするの。メンテナンスについちゃなーんもないじゃない。壊れても直せんよ? 今の住民に、その技術者や魔導士がいるの?」

 

「それは――」

 

「あのね?」

 

 と。

 獣人は肩をすくめて、

 

「街の規模、考えなさいよ。ひとりやふたりいたって、カバーしきれんよ? 他にも……ゴミ処理場っての? アレもすごいのがあるけどさ、あそこまで運んで始末する人員は? いやさ、街の中央からけっこう距離だけど、どうやって運ぶ? リヤカー? 馬車? 馬も牛も、魔導車もないじゃない。細かいこと言えば、キリないね。問題は山積み、天まで届きそうだ」

 

「それはみんなで協力して……」

 

「けっこうな重労働だけど、今集まってる連中にできるの? まあ、やればそのうち慣れるでしょうがね」

 

「ですから……」

 

「ほんじゃ、そのへんをちゃんと説明しておくんですね。今は仮住居? でウダウダしてるけど、保存食の備蓄だっていつまでも持つわけじゃないし……。掃除ひとつでゴチャゴチャやってるじゃないの」

 

「……」

 

「どうやら体動かしてる連中と、それに指図してる連中に分かれつつあるようだけど。アレで満足してるの?」

 

「……」

 

「言っておくけど。私はあんなんの面倒なんかみないよ。してほしければ、お金払いなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私が、それ行くんですか?」

 

「はい。これ、命令書です」

 

 ラミア族の魔導士は、ひたすら途方にくれていた。

 エルフの上司――ユオン・キナに命令書を渡されて――

 

「……あの、確かに農業関係……そっちは専門だけど。この面積、ひとりでどうにかなるもんでは……。ゴーレム使うったって、限度がありますよ?」

 

「完成型のものを購入すればいいのでは?」

 

「あの、その購入費用は?」

 

「知りません。街の指導者と相談してください」

 

「……仮にゴーレムを導入しても、ですね? 操縦者がいないんですが……」

 

「住民は女性ばっかりですから。魔導士になってもらえばいいんじゃないですか?」

 

「……まともに魔法が操れるまで、指導・教育するんですか?」

 

「そうなりますね」

 

「……」

 

 魔導士は絶句して、目の前が真っ暗になっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんでまあ、まず必要なのはお金ですね」

 

 獣人魔導士は、指で丸を作りながら苦笑する。

 

「で。街の運営に必要な資材や、道具類。それを扱う技術者、労働者と――」

 

 他にも。

 街を防衛するための、武力が要りますよ。

 野盗やモンスター、街中へダンジョンが発生した場合に備えて。

 

 その意見に、伯耆カンナは腕組みをしたまま厳しい顔。

 いや。

 むしろ、それは自省の顔だった。

 

「あなたは、その武力を担う貴重な人材のようですけど。この広い土地、あなただけじゃあどうにもなりませんね。もっと人手が不可欠です。なんなら、今集まってる連中に軍事訓練をさせるか」

 

「……」

 

 魔導士の指摘に、【剣聖】の少女はうなだれて、ため息を吐き出した。

 まるで。

 魂そのものを吐き出すみたいに――

 

「ため息ついてもしょーがありませんよ? といっても、私にはどうこうするアイデアは無いですが」

 

 獣人魔導士が、淡々と言った後、

 

「当座の資金だけなら、まあ何とかなると思いますよ」

 

 資料の束を手に、言ったラミアの女。

 ユオンから派遣されてきた、魔導士。

 

「と、言いますと?」

 

「施設の完成。食料の備蓄。それにプラスして、けっこうな量の金貨が準備されてるそうです」

 

「それ、初耳だけど?」

 

「……あの、市長というのか代表と言うのか? 彼女も全てを把握してはいなかったようで……」

 

「そんなんで水道使ったり、保存庫……あちら風だと冷蔵庫? それの食料食べてたの? のんきというか、何というか」

 

 獣人魔導士は肩をすくめる。

 

「でもまあ……。これで、必要な機材や人材は何とかなるかもです。永住するかはわかりませんけど、仕事で一時滞在は望めるでしょうね。もっとも、あくまで当座ですけど……」

 

 集まる人数や人材にもよりますが――

 1年以内に色々整備しないと、破綻しますよ、ここ。

 

 ラミア魔導士は、どんよりした顔で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「噂に、聞いてた結界内の街だったよ」

 

 ゴトクは、冒険者ギルド・サトナ支部長にそう言った。

 肩にネコ型の使い魔を乗せて――

 

「そうか。やっぱりなあ」

 

 支部長は、元は市長室であった部屋を何度か歩き回る。

 

「――見当は、ついてたってのかい? 俺は無駄足か?」

 

「いや。これでハッキリ確認できたわい。どうもな、あっちへの移住を呼びかける声が密かに出回っとるらしいんや」

 

「女だけの街にか。まあ、行きたきゃ行かせればいいだろ。情のないことを言えば、スキル持ちならともかく、いなくなって惜しい人材はさほどいねえんだろ」

 

「そやのう」

 

 支部長は頭を掻きながら、

 

「本部からも、好きにさせえちゅう指示がきとる。わしが逆らう理由もないしな」

 

 しかし?

 あんなもんを、どうやってこしらえたんやろな。

 

 そう言いながら――

 支部長は机に座り直し、首をひねった。

 

「さてな。魔神にでも願いをかなえてもらったのかもしれん」

 

 ゴトクは静かに言ってから、

 

「じゃあ。俺は帰るぜ。ここでの仕事もいち段落ついたし、な」

 

「猫の、気になることを言うのう」

 

 ドアノブをつかんだゴトク。

 その背中に、支部長は目を細めて言った。

 

「なんぞ、そんな話におぼえがあるんか?」

 

「昔から、よくある話だろ」

 

 ゴトクは小さく笑い、そのまま部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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