破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「そこそこの数は集まってるねー?」
獣人魔導士は、言いながらラミア魔導士を振り返る。
「でも?状況はあまりよろしくなさそうで」
「……まあ、そうですね」
ラミア魔導士は言いながら、窓から下の様子を見る。
【市長】こと、は移住希望者にアレやコレや説明している。
が。
怒ったり、不満をたれたり。
そういうものばかりは目立つようだ。
「何でもいいから、あんたが何とかしなさいよ! 責任者でしょ! ……てな感じかな?」
獣人魔導士は肩をすくめ、窓から離れた。
「街を協力して作っていこうって、雰囲気ではありませんね」
ラミア魔導士はため息を吐いて、ソファーに座る。
その様子を、獣人魔導士は振り返りながら、
「そもそも――街全体のサイズから考えれば、あまりにも少なすぎる。仮に全員が身を粉にして働いても縮小せざるを得ないね。ま、それで不備があるわけでもなかろうけど」
「そもそも……基本、今集まってるのってほぼ全員、サトナの人間じゃないですか。こっち側の者はほとんどいませんよ」
両手で頬を押さえ、嫌そうな顔のラミア魔導士。
「いても、私やあんたみたいな送られてきたヤツだけな」
「数としては数千人……。多いようだけど、ここの規模を考えると少なすぎるし……。今後を考えれば、だいぶ区画整理をしないといけませんね」
「サトナか。総人口が30万以上ってのは驚いたけど。こんなとこに来たい物好きが数千人もいるってのはねえ」
「そっちの職人や専門家も呼ばないと、無理ですね。ドワーフか、プーカか……」
「プーカ?」
獣人魔導士は少し考えてから、
「ああ。確か人間のガキみたいな姿をした、ちっこい連中だね。手先が器用ですばしっこいとか」
「他にも、トロルとかですね。彼らは土木工事の技術がすぐれているし」
「それも女だけだろ?」
「どの種族も、技術に関しては個人差やあっても、性別での差は少ないですよ」
「まあ、そりゃそうか」
「だけど。やっぱり無謀だと思いますけどね。どういう事情にしても、こういう不自然というか、無理な構想の街は……」
「ラミアは女だけの種族だろ? 他にもアラクネとか色々いるじゃないの」
「そら、種族的にはそうだけど、だからこそ男性を拒否なんかしませんよ。それこそ、子供がつくれないじゃないですか」
「ふむ。でもまあ、女だけの街というか村というか、そんなのはすでにあるけどね」
「え? そうなんですか?」
「ほうん? ずいぶんとでっかいんだな? これじゃ、ダンジョンわいたらメンドーだろ」
その女は、感心したような、呆れたような声で言った。
小高い場所から街を見おろしながら――
大柄な女。
2メートル近い背丈に、腕も足も太い。
脂肪でおおわれた皮膚の下には、ぶ厚く頑強な筋肉。
その巨体に着ているのは、面積の狭い独特の衣服。
「で。あんたは、ここのギルド所属かい?」
と。
女は後ろの少女――伯耆カンナを振り返って言った。
「いえ。まだ――」
「ン? ああ。正式な支部はまだできてないんだったか」
女はウェーブのかかった髪をかき上げる。
巨体や筋肉にばかり目がいくものの、その顔立ちは美しい。
だが。
それは美術品ではなく、ライオンや虎の美しさだ。
「なんか知らんけど、招待状? みたいなのが来てね。で、ギルドと話してからこっちへ来たところだけど……。あんた、これから覚悟することだな」
「覚悟、ですか」
「そうさ。この先、流民やなんかの女がこっちへ放り込まれる。そいつらを押さえつけて、面倒ごとを片づけにゃならんのだから。ここは女だけを受け入れるんだろ? 逆に言えば女ってだけなら、誰でも良いってこったからな。下手すりゃあ……」
罪人だの、賞金首もやってくるかもしれないぜ?
どこか挑発するように、女は言った。
「……正直、そこまでは」
「考えてなかった、てのかい? 女の扱いが軽いから、何とかしたくなった。とでも? まあ、それは良いけど」
女はカンナの反応を見てから、腰へ片手を当て、
「私も女だけの場所で育ったからわかるがな。同性だけがより集まっても、面倒は起こるぜ。女同士だからわかりあえる、なんて幻想があるなら捨てるこった」
「それは、わかっています」
カンナは中高と経験してきた部活などを思い出す。
揉めごとやヒエラルキー。
問題は嫌でも起こった。
「ふうん。それでも、ってわけかい。まあ覚悟はいいとしてさ。まずは食いぶちの確保だな。土地だけはあるんだ。畑仕事でも牧畜でも、色々やれるわな」
ま? お前さんは、外でモンスター狩りに精を出すだろうけど。
女は言いながら、優しくカンナの肩を叩く。
「はい。あの、そういえば……」
「私か? 名は、ヤーマン。ヤーマン・ナオだ。見てわかるだろうけど、アマゾネスだよ」
「ヤーマン、さんですね。ええと、アマゾネス? ですか???」
アマゾネス――という単語。
そこに、カンナはどう反応すべきか、迷った。
単語自体は知っているが、『強い女性』という意味合いくらいしかわからない。
その認識が正しいのか、どうかも。
「知らんか? 見た目は人間とわかりにくいだろうが、女だけの種族だ。だから、故郷にも基本女しかいない」
「そ、そうなんですか」
「ああ。だから、私に招待かけたのかね? 別に女だけが良いってんでもないんだけど」
「へえ……。私は」
「女だけのほうが、良いのか?」
「ずっと、女性ばかりの生活だったからかもしれませんけど」
カンナは思い出す。
小学校と中学までは、ずっと女子だけの学校生活だった。
共学に通うのは、高校が最初で――
「そうかい。ま、別に他人がどうこう言うこともないがな」
そう言ってから、ヤーマンは下へと歩き出す。
「まずは、やる仕事を考えて決めなきゃならんなあ」