破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-35 困るような、助かるような……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まあ、これ? とりあえずの、形は整った感じですよ」

 

 作業着姿のラミア魔導士は、汗をぬぐいなら言った。

 

 前に広がるのは、大きな耕作地。

 ちょうど種まき作業が終わったところ。

 

 作業をしていた女たちも腰を上げ始める。

 

「自動でできる魔道具というか、ゴーレムだけじゃ手が足りないんですね」

 

 横に座ったカンナも同じように汗をぬぐっていた。

 

「まあ、全部をまとめてできるモノなんてそうそうできませんよ。操縦者自身に経験や知識、魔力もいるので」

 

 そんなのが充実してるのは、天領の大規模農地くらいです。

 

 と。

 ラミアは腰を伸ばしながら言った。

 広い場所にいるため、蛇の下半身は解放している。

 

「流民が来た時には困ったけど、ある程度仕事もできるのでなんとかなりはしましたが……。ギルドナイトはいっつも連勤続きで疲労がたまってるようで……」

 

「はあ……」

 

 カンナは困った顔になる。

 それに対してラミアは、

 

「流民でも、暴れたりするのは男ばかりのイメージですが、女にしても盗みやらいじめやらで、大いに面倒を起こしてくれますからねえ。ギルドナイトは大変ですよ?」

 

「そう、ですか……」

 

 カンナは暗い顔で肩を落とす。

 

「ここ、無駄に広いし郊外のほうにも空き家はあるでしょ? そこへ逃げ込む連中もいるし。まあ、冒険者登録した以上、いざとなればどこに逃げたって無駄ですけど」

 

「……しかし」

 

 ラミアは困った顔を遠くを見ながら、

 

「問題は、サトナからの……ですね」

 

「……」

 

 サトナの名前を出されて、カンナの表情はさらに暗くなった。

 

 

 

 

 

 

「グズグズしてないで、さっさとやれ! 昼までに全部回収せんといけんのだぞ!」

 

 年下の女に怒鳴られながら、しょぼくれた中年女がゴミを運んでいる。

 ゴミ収集の仕事。

 

 また別の場所では――

 道路周辺で邪魔な草木を刈り取っていた。

 なかなかの重労働。

 

 さらに違う場所を行けば……。

 市内の図書館では、職員が広い施設内の掃除中。

 蔵書は充実しているが、ほとんど利用者がないので基本掃除ばかり。

 

 もっとも。

 それらの作業は魔法、あるいは魔力を使って操る魔道具を使用してのものだが。

 

 

 

 

 

「まあ、女は誰でも……とはいえ、魔導士の卵ですからね。完全なゼロから、代金を稼げるようなレベル? そこまでのものを習得するには、そりゃ時間がかかりますわ」

 

 おまけに……。

 

 と。

 獣人魔導士は、【市長】の前で語った。

 

「重労働、軽作業用の魔道具だって安くはないですから。良いモノを欲しいだけ買ってれば、あっという間に金欠状態です。で……。こちらが報告書と、あとこっちが市長のハンコがいるぶんですね」

 

 それから。

 獣人魔導士は、良い笑顔で書類の束を机に置いた。

 

「面倒でしょうがこういうのは、手続きが大事なので」

 

「はあ……」

 

「いや、はあ、じゃなくってですね。まだ休憩には早いですよ?」

 

「……」

 

「いや、しかし。苦労しましたよ? 住民の大部分を占めるサトナ出身者。半数以上がロクな仕事はできないし、仕事をえり好みするし、すぐにさぼったり、無駄話したり。しょーもない派閥作って喧嘩するし……。ここまで()()()()実績は正当に評価してほしいもんです」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしなあ」

 

 ヤーマンは革の作業着を半分脱ぎながら言った。

 

 道路整備の作業――

 その合間だった。

 

「あの、オッカナイねえちゃんはもう来ないのかね?」

 

「どうですかね。来てくれると、困るような、助かるような……」

 

 応えた、もと流民の女は曖昧な言葉。

 

「モンスターの駆除は、すごかったが……。いや、噂以上だった」

 

 ヤーマンは思い返す。

 

 

 街周辺――

 といっても、周りはほぼ森林地帯なのだが。

 

 場所柄、モンスターも動物もいくらでもいる。

 近くにダンジョンが発生すれば、対処しなければいけない。

 

 ほっておけば、モンスターが這い出してくる。

 入り口を封鎖しても、いずれ寿命を迎えて崩壊――

 中の宝箱やモンスターが一気にあふれ出す。

 

 加えて。

 

 発生の有無については、魔導士たちが論議していたが……。

 結局。

 街の中にも、ダンジョンは発生した。

 

「まあ、助かったのは……。発生するのは、みんなレベルの低い、層の浅いヤツばっかってことだな。今のところは、だけど」

 

「その分、発生頻度はかなり高いですけど……」

 

 獣人とラミアの魔導士はこう語っている。

 

「つっても……。出てくるのは、スライムや死肉ころがしレベルが半数だからなあ」

 

「そんなんでも、住民は駆除に大汗をかくんですよ。半数以上は。特に、サトナ出身者は……」

 

 

 ただ。

 

 現在。

 街の外、その周辺にはダンジョンはない。

 全て破壊、処理されたからだ。

 

 中には、グリフォンやヒドラの出現する危険なレベルのダンジョンもあった。

 が。

 それもまったく問題にはならなかった。

 

 

「あんだけの、しかもヤバいレベルのモンスターもいたのを、まるで小虫でも潰すみたいに片づけたんだもんなあ」

 

 青い髪の乙女。

 

「カーシャ……。青い悪鬼(フィーンド)か……。絶対、敵にはしたくないね」

 

「私らも、モンスターの始末とか運ぶのには苦労したけど……。あれでだいぶ儲かったんでしょ?」

 

「青いねえさんが、追加報酬はオマケしてくれたからな。かなりのもんだが、それでも街1つを運営するには頼りないさ」

 

 女の言葉に、ヤーマンは首を振った。

 

 ――しかし、あン時のねえさんはエゲつなかったな……。

 

 ヤーマンは住民がトラブルを起こした時を思い出す。

 ちょうどその時カーシャもいたわけだが――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 内容としては、仕事や扱いに対する不平不満だった。

 

 ・誰そればかり役所仕事でずるい。

 ・あいつは扱いが良い。

 ・なんで子持ち女がいるんだ。

 ・もっと良い住居に住ませろ。

 

 よく聞けば?

 どれも大した内容ではないのだが……。

 

 数が多いだけに、抑えるのは難しかった。

 

 言葉や理屈ではどうにも説得できない。

 対処にあたっていたギルドナイトの隊長はキレかけていた。

 今にも数人ばかり撲殺しそうなほどに。

 

 この時に――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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