破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「大別すると、現在あの街には3種の住人がおりまして」
ユオン・キナは、右手の指3本を立てて言った。
「1は、過去に何らかの理由で男性に対して強いトラウマのあるもの。これは比較的少数です」
そこで。
ユオンは少し間を置き、ちょっと考えてから、
「次に2、ですけれど。こっちはまあ何というのか……。そうですねえ、本人たちは無自覚でしょうけど一種の優越感、これを求めた結果かと」
「どういう意味だ、それは」
トーザ侯爵は、カフェ・シガーを
「つまるところ。自分たちだけに許された特別な区域。それを占有することで、立ち入ることのできない男性諸氏を見下したい。こういったところでしょうか」
ユオンは肩をすくめて、苦笑。
「とはいえ。彼女らは自分たちが被害者だと思って、それゆえの要求……だと認識してるようですけれどね」
「尼寺や女子寮みたいなものでは、嫌というわけか」
トーザ侯爵はせせら笑う。
「みたいです。あんまりちゃんとしたことは考えてなかったようですが」
「確かに、浅はかな欲求ではあるか」
「あと。何と申しましょうか? 女性というモノに強い幻想、そんなものを抱いている感じです。女性という属性にしがみついて、それゆえに絶対視、神聖視してるというんですか」
ユオンは頬を指で掻きながら、つまらなそうに言った。
「グチグチグチと……うざいんだよ、このオバンが!!」
バキ
ゴキ
広場に罵声が響いて、打撃音がそれに伴う。
野次馬が、騒動を興味深そうに見ている。
ギルド支部近くの広場だった。
冒険者2人……。
といっても?
この街の住民は、全員扱いとしては冒険者。
大半が、国民として認められない者ばかり。
しかし。
当然ながら、全員がそうではなく――
ヤオアムトで生まれ育った国民でも、冒険者登録をして活動する者もいる。
その多くが、貧しい生まれの者だ。
騒動の中心にいる少女も、そのひとり。
オグ近くの小さな町で育った。
兄弟姉妹が多く、少しでも家の家計、というよりは負担。
それを減らすため、冒険者となった。
――これもみんな、あのクソ親父のせいだ……。
兄弟姉妹。
そのほとんどは、少女とは母親が違う。
実家はそこそこ金があるものの……。
いや?
むしろそれゆえの問題だ。
父はあちこちに愛人を持ち、子供を産ませている。
そのうち、何人かが実家に引き取られているのだ。
「あのひとぁ、見栄っ張りなのよ……」
母がちょくちょくこぼしていた愚痴。
ヤオアムトでは、貧乏人の男は結婚できない。
結婚、妻を持つことは一種の社会的ステータスだ。
かといって。
それで女が自由に選べる立場に立てるわけでもない。
サキュバスがいるのだから。
なので。
多く稼げる男は、基本複数の愛人を持つ。
愛人を持たない、あるいは少数であれば、
「なんだい、あいつえらそうな顔して家計は逼迫してるのか」
「金ばかり貯め込んで、ケチな野郎だ」
笑いものの対象になる。
このへんは、わりと地域差はあるのだが。
…………。
だから、あのババァ、しつっこくからんできたんだよ。
いや、知らないけど……。
私も愚痴で、よく親父のこと言ってたけどさ。
うん、まあ……。
そしたら、あのババァからんできてさ。
はあ、うん。
そうだよ、たぶん。
よくわかんね。
なんか知らんけど、男の
意味のわかんねえことをブチブチグチグチと言ってきやがったし……。
あ、どうも……。
え?
うーん……。
そうだなあ。
なんか汚いとかきれいとか、そんなことも言ってたかなあ。
はい?
ああ。そういえば……。
息子がどうとかもなんか言ってたかなあ?
そうそう。
サキュバスがどうたらこうたらとも言ってたよ、確か。
あれかな?
息子がサキュバスにでもいれあげたんかね?
そんなもん、いちいち気にしてもなあ……。
……ああ、そうか。
変なババァとは思ってたけど、流民だったな。
忘れてた。
だいぶ遠くから来たんだな、きっと。
ふうん。なるほど……。
そんでサキュバスがいたんで、うろたえてトチ狂ったのか。
え。
いや、それは……。
す、すいません……。
そいで、あの、その。
え!
ちょ、え……。
そ、そんなに払うの!?
カンベンしてください……。
お願いだから……。
それじゃ、私、日干しになるよ……。
その――
複数の女たちは街中央から離れた場所を歩いている。
槍や
その動きから、多少の経験や訓練をつんでいるのがわかった。
ギルドに雇われた歩兵。
主に、他の街から集められた冒険者で構成されている。
街の中、時折発生するダンジョンの対処。
これも重要な仕事のひとつ。
「ちょっと、死肉ころがしなんかにかまわないで!」
班長の女が、他の者に注意をしていた。
「あっちでウロウロしてるスライムもほっとくの?」
その質問に班長は、
「そういうのは、素人連中にやらせるの。少しでも慣れてもらわないと、身がもたない」
「はいよ」
「あーあ……。ぜんぜん暇がないじゃない。どーりで給金が良いと思った」
「て、ゆ~か? あの、サトナだっけ? あっちからの連中、スライムも駆除できないんとちがう?」
「かもねー」
「ニワトリしめるのできな~いって、ほざくバカもいたし」
こういった愚痴、雑談が飛び交っていく中……。
「え。じゃあ何か? 男の性欲全部消せって? そりゃ無理だよ」
「どういう経緯があって、そうなったのか。そりゃ知らないけど。まあ、無理な注文だあね」
「だいたい、そんなもんどこの誰に要請するのさ。中央、宮廷かい? ほぼ流民の、物乞い同然のババァが?」
「殴られて追い返されたらラッキー、悪くすればその場で無礼討ちだわ」
「頭の中、コレだから。考えるだけ無駄無駄無駄」
「いや、あのババァが無礼討ちになろうと知ったことじゃないけど。ひとつ間違えば、街全体にお咎めがあるよ?」
「ちょっと、頭くるくるになってるババァの巻き添え? ジョーダンはポイッだよ」
「……」
「……」
「……」
「あのさあ? そいつ、今のうちに」
「……バカッ」
「滅多なこと言わないでよ、それこそコレよ、コレ」
「ひと思いに首切られるならまだいいけど……。下手すると、逆さ吊りか、最悪、
「あー、やだやだ」