破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「マコネの臨時パーティーに入りたい? やめとけ、やめとけ」
「なんでですか?」
「お前のこったから、ガキどもの手助けしたいってんだろ。だがな、お前じゃレベルが高すぎる。ほぼガキどもの世話に終始することになるぞ」
「それ、悪いことですか?」
「あのなあ」
若干不満そうなボッツ少年。
それにゴトクはあきれた顔で、
「お前さんはそれなりに腕を上げたが、まだ修業中の身だぜ? 他人の世話焼けるほどの余裕なんぞないんだ。生活にかかる銭。うちの授業料だって払ってもらわなきゃならん。いざって時に備えて金は稼げるだけ稼いどかなきゃいけないんだよ」
わかるか――と。
エルフは静かだが、鋭く貫くような視線で言った。
「……は、はい」
思わずうなだれるボッツ。
「よしな。辛気臭い」
頭をたれる少年に、ゴトクはひらひらと手を振る。
と。
ゴトクはふと表情を変え、
「しかし? お前さん、うちに来るまでどうしてたんだ? いや、冒険者ってのはわかるがなあ……」
顎をなでつつ、ボッツを頭から足まで見た。
「
「……はあ」
「お前さんを指導して思ったんだが……お前、もうちょい実戦で経験つんでれば? そうだな、こっちの基準なら
「え。そうなんですか?」
ボッツは顔を上げ、驚きと喜びを見せた。
ヤオアムトにおいて――
冒険者は
ほとんどの者は、そこまで行けない。
死ぬか、適当なところで足を洗う。
「ああ。そこは保証してやる。だから、妙なんだよ」
「……まあ、あんまりちゃんとやってこなかったかも」
「ふーん」
ゴトクはそのあたりで興味を失う。
……ような、顔をした。
「さてと。じゃ、今回は騎乗術だ。普通は馬術だが、乗り物にするのは馬とは限らんからな」
立ち上がり、背伸びをしながらエルフは言った。
「あ、はいっ」
姿勢を正して、うなずくボッツ。
すでに訓練に入るスイッチが入っていた。
「お前にはある程度のことは教えたし、そう何でもかんでも詰め込めばいいってもんじゃないんだが――」
思うに、こいつも必須な技術だからな。
ゴトクはそう言いながら、歩き出す。
人差し指をクイクイと動かしながら。
ついてこい。
そういうジェスチャーだ。
ボッツの先を歩きながら、
――ちゃんとやってこなかった、ね。こいつの性格上、そいつは考えにくいだが……。
まあ、人生いろいろあるからな。
そんなことを考えながら、ゴトクは歩き続けた。
ぜいぜい。
と――
ボッツは膝をついて荒い呼吸を繰り返す。
日暮れ近い時間。
馬に乗りっぱなしで、弓を引き、矢を放つ。
それを延々と繰り返した。
「この国じゃ、生身の馬はやや使われにくくなっちゃあいるが? それでも有用な移動手段だ。特に、個人じゃな」
まして――
他の国じゃ、基本的なものでもある。
そこは、お前もよくわかってるだろ。
ボッツを見ながら、ゴトクはそう語る。
「は、はい……」
「お前さん、馬は普通に乗りこなせるが……。そっから矢を射るのはあんまり経験がなかったらしいな。ま、冒険者で自分の馬を持てるのは少数派だろうが」
「……は、はは。……う」
ボッツは苦笑しかけるが、何しろ激しい訓練の後。
吐きそうになって言葉を止めてしまう。
いや、
「おげぇ……!」
吐いた。
「やれやれ。乗り物での特訓はきつかったか。おい。水は携帯してるだろ? ちゃんとゆすげよ」
これには。
ゴトクのほうが苦笑をした。
「うう……。は、はい」
ボッツはあわてて口をゆすぎ、草の上にその水を吐く。
「念のために、ヒーラーの治癒魔法を受けときな。余計な疲労は残さんこった」
「ひ、ヒーラーですか?」
「明日から当分、騎乗術の訓練は続くんだ。クエストと兼ねて……と行くには、まだ積み重ねがいる」
「わ、わかりました」
「ん?」
ボッツは素直にうなずくが、ゴトクは違う方向を視線を向ける。
「……?」
それと同時に、ボッツは何か妙なモノを感じた、気がした。
まるで、
ゾワリ
と。
自然に鳥肌が立つような……。
「ちょっと待ってろ」
ゴトクはボッツを置いて、ゆっくりと走り出す。
ゆっくり。
動作としてはそうとしか見えない。
だが、その速度は恐ろしく速かった。
――ど、どうやったら、あんな風に動けるんだよ???
「おーい、ちょっと待ったー」
ゴトクは、遠くを歩いていた冒険者パーティーに声をかけていた。
ネビズの街にパーティーは向かっているらしい。
クエストの帰りらしかった。
すぐに。
ゴトクは、そのパーティーと一緒に戻ってきた。
「ちょうどいいところにヒーラーが来た。多少高めだが、腕は良い。金だけのものはあるぜ」
言いながら、ゴトクは親指でヒーラーらしき女性を指す。
――あ、この
おかっぱの黒髪。黒い瞳。
眼鏡で少し小太りの、地味な女性。
――ゴトクさんに魔法を教わってる……。
同じような立場で、何度か顔を合わせている相手だった。
ただ。
ちょっと挨拶をかわすくらいで、交流はゼロに近い。
ひと見知りな性格らしかった。
「あれ? お前なにしてんだ、こんなとこで」
その横に、猫みたいな少年……。
いや。
少年みたいな少女が立っている。
「ああ、マコネか。いや、ちょっと馬術の訓練を……」
「ふうん。そういうのか」
マコネはうなずき、少し離れた場所で待機中の馬たちを見た。
訓練には複数の馬を使用している。
連続しての激しい訓練ゆえだ。
そして――
女性2人の後ろにいる、驚くような美女。
――〝
良くも悪くも名を知られる乙女を見て、ボッツは戦慄した。