破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
ボッツが生まれたのは、ヤオアムトよりずっと離れた遠国。
その小さな町でボッツは育った。
多くの者が冒険者を目指し、一攫千金や名誉、立身出世を求める。
そういう国で――
ボッツも他の少年と同じく、冒険者となる。
猟師の父から教わり、ずっと続けてきた弓術。
これには、いくらか自信もあった。
冒険者の登録の際。
古くからの幼なじみの少女も一緒だった。
名は、ミーシャ・エルダー。
父親の名前、ミハイルの愛称をとって名付けられたらしい。
少女は、幼いながらに前衛……剣士となる。
親がもと・騎士の生まれで、やはり幼少時から鍛えられていたのだ。
が。
冒険者として続けていく中。
2人の差はどんどん開いていった。
幼い頃は、気づいていなかった。
もしかすると。
気づかない
ミーシャの持つ優れた資質、才能に。
一方で、ボッツ自身は凡人でしかないことに。
剣士として才能と教育に恵まれたミーシャは、圧倒的な技でモンスターを倒していった。
まさに天職。
一方で、ボッツは補助の、そのまた補助。
パーティーでの重要度は低かった。
遠距離攻撃ならば、魔法を操る魔導士が上。
補助ならば、回復を兼ねたヒーラーが上。
罠の解除や細々としたものなら、シーフがいる。
防御ならば、仲間をかばう重戦士がいる。
何とも半端な存在。
ミーシャのオマケみたいなもので。
もともと勝気だったミーシャからは、どんどん雑に扱われていった。
冒険者の間でも、物笑いにされることが多く……。
下手すれば、存在すら認識されない。
自主練を続け、クエストで踏ん張ろうとして――
「あんたは引っ込んでなさい!」
気が短く、先走りする傾向のあるミーシャはボッツの支援など初めから無視。
結果。
「相応の退職金は払ってやる。5分以内に出てく用意をしとけ」
パーティーのリーダーから、そう言い渡されてしまった。
反論はできず、抗議する余地もなく。
消沈。
肩を落とし、ギルドの受付に行ったところ、
「あ、ボッツ・ルフさん。はいはい、確かに……。はい、こちらになりますね」
預けられた退職金を受け取り、立ち去ろうとした時だった。
「ちょっと待って? ええと、あなたに特別な個別のクエストが入ってます。はい、名指しで」
ヤオアムト……。
西の大国。
そこへ、手紙を届けること。
――おいおい、えらい遠くじゃないか……。
領土は広く、軍事力も経済力も圧倒的な強国でもある。
「この手紙を届けていただいてほしい、と。報酬は前金がコレコレで。後金は、手紙を渡した後向こうが手形をくださるそうなので、それを地元の冒険者ギルドに持っていけば換金されます。あ、これは証明書となりますね。ヤオアムトへ入国するときにいりますので、無くさないように」
――ちゃんとした証明書がないと、流民扱いかあ……。
ヤオアムトへの旅。
その途中途中では、
「あそこも含めて、あのへんはサキュバスが普通にいて、暮らしてるだろ? だからまあ、その手の店とか商売を他の種族はやってない。というか、できない。違法だからな」
バレたら買うほうも売るほうもタダじゃすまんが……。
はずれはないし、病気も、ぼったくりの心配もない。
そんな話をよく聞いた。
これはまあ、良いとして。
歩いて。馬車に乗って。河を越えて。
色々苦労した末、ようやく到着。
入国の時は、証明書のおかげでわりとスムーズにいったが、
「犯罪行為には絶対関わらないように。あなたには裁判を受ける権利もありませんので。場合によってはその場で殺処分されますから」
そんなことを、念入りに伝えられた。
かくして――
ボッツはゴトクのもとを訪れることとなった次第で……。
他の冒険者からは、
「え。猫のゴトク? へえ、そりゃ運が良い」
「噂じゃ、かなりの
「そういやあ? ギルドの〝教本〟もあいつが書いたんじゃってのも聞いたような……」
「なに、知らんのか。冒険者でやってくための基本知識が書かれてるもんさ。訓練方法もカンタンだが書いてある。そいつをきちんとやっていけば、たいていのヤツはどうにかなる」
「問題は、その後だがな。基本ができたところ油断、うっかり、それで死ぬヤツが多い」
――やっぱ、すごいひとなんだなあ……。
訓練とソロのクエストを繰り返す中で、
「臨時のメンバーを募集しているところがありますよ」
ギルドの紹介で、何度か助っ人としてクエストに参加。
「ほおお……。若いのに、良い腕だなあ」
「弓だけじゃなく、ナイフや投石術も、かなりやるのか」
「騎射もいけるか。へえ、値は張るけど、ヒポグリフを使えばかなりやれるよ、絶対」
評価は、悪くなかった。
いくらかの、自信もついた。
――いやあ。でもなあ?
何度か、ギルドナイトの戦闘を見ることがあり、
――と、とんでもないな、これ……。
特に隊長クラスや、騎士の称号を持つ者。
その実力は、凄まじい。
武芸百般。
ほとんどのことができる。
そこにプラスして、一芸を持つ者は見上げるばかり。
――あの、青い
届くというビジョンさえも怪しかった。
「お前は、アホか」
そのことを弱音と一緒にこぼした時――
ゴトクには、一蹴された。
「目標にするなら、あっちにしとけ……とは言ったがなあ? 訓練始めて1年にもならねえヤツが、そう簡単にギルドナイトのレベルまでいけるか。一生かかっても行けないヤツがほとんどだぞ」
「は、はい……」
「目標があるのはけっこうだが、まずは足元を固めていくこった」
わかったか?
その言葉には、無言でうなずくしかなかった。
何度も、何度も。
また。
周辺を見まわしたり、あちこちにいけば?
とんでもない腕利きはいくらでもいるのだった……。