破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110・5 番外:弓使い(アーチャー)-4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボッツが生まれたのは、ヤオアムトよりずっと離れた遠国。

 その小さな町でボッツは育った。

 

 多くの者が冒険者を目指し、一攫千金や名誉、立身出世を求める。

 そういう国で――

 

 ボッツも他の少年と同じく、冒険者となる。

 猟師の父から教わり、ずっと続けてきた弓術。

 これには、いくらか自信もあった。

 

 冒険者の登録の際。

 古くからの幼なじみの少女も一緒だった。

 

 名は、ミーシャ・エルダー。

 父親の名前、ミハイルの愛称をとって名付けられたらしい。

 

 少女は、幼いながらに前衛……剣士となる。

 親がもと・騎士の生まれで、やはり幼少時から鍛えられていたのだ。

 

 が。

 冒険者として続けていく中。

 2人の差はどんどん開いていった。

 

 幼い頃は、気づいていなかった。

 もしかすると。

 気づかない()()をしていたのかもしれない。

 

 ミーシャの持つ優れた資質、才能に。

 一方で、ボッツ自身は凡人でしかないことに。

 

 剣士として才能と教育に恵まれたミーシャは、圧倒的な技でモンスターを倒していった。

 まさに天職。

 

 一方で、ボッツは補助の、そのまた補助。

 パーティーでの重要度は低かった。

 

 遠距離攻撃ならば、魔法を操る魔導士が上。

 補助ならば、回復を兼ねたヒーラーが上。

 罠の解除や細々としたものなら、シーフがいる。

 防御ならば、仲間をかばう重戦士がいる。

 

 何とも半端な存在。

 ミーシャのオマケみたいなもので。

 

 もともと勝気だったミーシャからは、どんどん雑に扱われていった。

 

 冒険者の間でも、物笑いにされることが多く……。

 下手すれば、存在すら認識されない。

 

 自主練を続け、クエストで踏ん張ろうとして――

 

「あんたは引っ込んでなさい!」

 

 気が短く、先走りする傾向のあるミーシャはボッツの支援など初めから無視。

 

 結果。

 

「相応の退職金は払ってやる。5分以内に出てく用意をしとけ」

 

 パーティーのリーダーから、そう言い渡されてしまった。

 反論はできず、抗議する余地もなく。

 

 消沈。

 肩を落とし、ギルドの受付に行ったところ、

 

「あ、ボッツ・ルフさん。はいはい、確かに……。はい、こちらになりますね」

 

 預けられた退職金を受け取り、立ち去ろうとした時だった。

 

「ちょっと待って? ええと、あなたに特別な個別のクエストが入ってます。はい、名指しで」

 

 ヤオアムト……。

 西の大国。

 そこへ、手紙を届けること。

 

 ――おいおい、えらい遠くじゃないか……。

 

 領土は広く、軍事力も経済力も圧倒的な強国でもある。

 

「この手紙を届けていただいてほしい、と。報酬は前金がコレコレで。後金は、手紙を渡した後向こうが手形をくださるそうなので、それを地元の冒険者ギルドに持っていけば換金されます。あ、これは証明書となりますね。ヤオアムトへ入国するときにいりますので、無くさないように」

 

 ――ちゃんとした証明書がないと、流民扱いかあ……。

 

 

 ヤオアムトへの旅。

 その途中途中では、

 

 

「あそこも含めて、あのへんはサキュバスが普通にいて、暮らしてるだろ? だからまあ、その手の店とか商売を他の種族はやってない。というか、できない。違法だからな」

 

 バレたら買うほうも売るほうもタダじゃすまんが……。 

 ()()のは最高だぜ?

 はずれはないし、病気も、ぼったくりの心配もない。

 

 そんな話をよく聞いた。

 

 

 これはまあ、良いとして。

 

 

 歩いて。馬車に乗って。河を越えて。

 色々苦労した末、ようやく到着。

 

 入国の時は、証明書のおかげでわりとスムーズにいったが、

 

「犯罪行為には絶対関わらないように。あなたには裁判を受ける権利もありませんので。場合によってはその場で殺処分されますから」

 

 そんなことを、念入りに伝えられた。

 

 

 かくして――

 

 

 ボッツはゴトクのもとを訪れることとなった次第で……。

 

 他の冒険者からは、

 

「え。猫のゴトク? へえ、そりゃ運が良い」

 

「噂じゃ、かなりの名伯楽(めいコーチ)って話だったが」

 

「そういやあ? ギルドの〝教本〟もあいつが書いたんじゃってのも聞いたような……」

 

「なに、知らんのか。冒険者でやってくための基本知識が書かれてるもんさ。訓練方法もカンタンだが書いてある。そいつをきちんとやっていけば、たいていのヤツはどうにかなる」

 

「問題は、その後だがな。基本ができたところ油断、うっかり、それで死ぬヤツが多い」

 

 ――やっぱ、すごいひとなんだなあ……。

 

 

 

 

 

 訓練とソロのクエストを繰り返す中で、

 

「臨時のメンバーを募集しているところがありますよ」

 

 ギルドの紹介で、何度か助っ人としてクエストに参加。

 

「ほおお……。若いのに、良い腕だなあ」

 

「弓だけじゃなく、ナイフや投石術も、かなりやるのか」

 

「騎射もいけるか。へえ、値は張るけど、ヒポグリフを使えばかなりやれるよ、絶対」

 

 評価は、悪くなかった。

 いくらかの、自信もついた。

 

 ――いやあ。でもなあ?

 

 何度か、ギルドナイトの戦闘を見ることがあり、

 

 ――と、とんでもないな、これ……。

 

 特に隊長クラスや、騎士の称号を持つ者。

 その実力は、凄まじい。

 

 武芸百般。

 ほとんどのことができる。

 そこにプラスして、一芸を持つ者は見上げるばかり。

 

 ――あの、青い悪鬼(フィーンド)どころか、ギルドナイトにだって、まるで届かない。

 

 届くというビジョンさえも怪しかった。

 

「お前は、アホか」

 

 そのことを弱音と一緒にこぼした時――

 ゴトクには、一蹴された。

 

「目標にするなら、あっちにしとけ……とは言ったがなあ? 訓練始めて1年にもならねえヤツが、そう簡単にギルドナイトのレベルまでいけるか。一生かかっても行けないヤツがほとんどだぞ」

 

「は、はい……」

 

「目標があるのはけっこうだが、まずは足元を固めていくこった」

 

 わかったか?

 

 その言葉には、無言でうなずくしかなかった。

 何度も、何度も。

 

 また。

 周辺を見まわしたり、あちこちにいけば?

 

 とんでもない腕利きはいくらでもいるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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