破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

195 / 357
その110・5 番外:弓使い(アーチャー)-5

 

 

 

 

 

 

 

 

 まるで――

 ひとりの人物が、無数に分裂したようだった。

 

 場所を問わず、影のように走り回って、敵を斬る。

 あるいは?

 魔法とも武術ともつかない技で、ダーツやブーメランのようなものを速射。

 近距離・中距離・遠距離を自在にこなす。

 

 トクベー。

 ボッツとそう年は変わらないが、驚くほどの手腕。

 その技術は、見ているだけでも多くのことを学ばされた。

 

「何をどうしたって、ひとりでやれることは限られてるし。限界はすぐ来るけどね」

 

 

 

 

 

 

 霧に変わり、幻惑し攻撃を無効にする。

 翼が刃物となり、手足が槍となる。

 

 吸血鬼という種族特性。

 それをフルに使うが、魔法も武術もこなす。

 正直見た目は汚いというか……。

 えげつない。

 時として、血も涙もないことをやる。

 

 ガジカ・バーバ。

 何をどうつくろっても、暴力を生業にする冒険者にとって――

 欠くことのできない要素。

 冷徹さ。冷酷さ。

 

「あたしなんぞ可愛いもんだよ。世の中、もっとひでえのがいくらでもいるね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 他人の能力を見れば、自信が揺らぐ。

 しかし。

 裏を返せば、盗んで応用ができる。

 

 それがゴトクの助言だった。

 

 

 

「落ち込むよりも、見て盗もうってほうが、前向き、建設的だよ」

 

 自分に合ってるかどうか、そこの判断が出来ればなお良いね。

 

 助言の時、師であるエルフはそう言って笑った。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ……。

 

 〝悪鬼(フィーンド)〟のカーシャ。

 

 彼女の戦いだけは、まるで参考にならなかったが。

 

 

 ――あんなのに狙われて攻撃されたら、どう転んでも破滅だ、絶対……。

 

 何があっても敵対はするまい。

 ボッツはそう誓うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――あれは……。

 

 小さな映像……いや、動画。

 それが、オープンテラスに見えた。

 

 マコネと一緒に、丸テーブルに座る少女。

 デザインが古い上、くたびれた尼僧服。

 

 ――確か、パーティーの? いや、冒険者って感じでもないしなあ。何なんだろ、あの()

 

 尼僧服の少女は、小さな映写機に映し出されるものを観ていた。

 その魔道具。

 映像を記録した宝珠(オーブ)を組み込んで、使用する。

 

「おーい。マコネ?」

 

「ん? おー、お前か」

 

 声をかけると、マコネは手をあげた。

 食事を終えた後らしい。

 

「あの子、なに観てるんだ?」

 

「さてね。最近は色々見てるようだし……」

 

「いろいろ?」

 

 何気なく、ひょいっと映像を見る。

 音声も一緒に入っているタイプらしい。

 何やら聞こえているが、

 

 ――え。

 

 映像を見て、ボッツは驚いて、固まった。

 

 古そうな異国の絵が、映し出されている。

 馬を駆る鎧の戦士。

 見たこともないデザインの鎧だった。

 それが、馬上で弓を引いている。

 

 大型の弓。大型の(やじり)

 

 ――あれは、多分鎧なんかを貫通するための……。鎧は、なんだあの肩……。

 

 両肩には、盾みたいな装甲。

 

 ――……両手がふさがってるから、あれが盾の代わりか……。ほおお……。

 

 騎射をする騎士は知っている。

 だが、それらはスピードを重視するもので。

 ああいうタイプは、見たことがなかった。

 

 ――広い場所だと、ああいうのも有りか……。それこそ、馬に乗れるような。ダンジョンだと、無理だな。

 

 ボッツは、いつの間にか考え込んでいた。

 

 ――降りて、できれば一緒に行動できる。やっぱ馬だと難しいな。犬とかじゃ、そもそも乗れないし……。乗り物がないと、あの重武装は……。いや遠距離攻撃を引き付けるとか。いやいや……。

 

 ブツブツ言いながら。

 知らないうちに、マコネたちから離れて歩き出していく。

 

「なんだ、あいつ?」

 

 ボッツの背中を見て、マコネは呆れたような怪訝そうな顔。

 

「あ~。これ、ちがいましたですねー。〝カッさん〟間違ったようですな」

 

 尼僧――ボロンは言いながら、映写機の宝珠(オーブ)を取り換えだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 動く。

 止まらない。

 一か所にとどまらず、同時に狙い、矢を放つ。

 動きは正確に――

 

「おいおいおい……」

 

 クエストが終わった後。

 メンバーは感嘆の声。

 

「チョロチョロ落ち着きないと思ってたら、エラいことしやがったなあ……」

 

 倒したモンスターの死体を見ながら、ひとりが首を振った。

 

 鎧コウモリ。

 

 甲殻類のような装甲をまとい、足は(はさみ)のようになっている。

 防御と攻撃、ともに優れている。

 加えて飛行するという厄介なモンスター。

 グリフォンやヒドラほどではないが、かなり討伐の難しいタイプ。

 

 その鎧コウモリ……。

 右翼が破壊され、装甲の継ぎ目に矢が突き刺さっている。

 

「翼を一点集中の上、継ぎ目狙いか。()()()()……」

 

 パーティー紅一点の重戦士がボッツを見て、ニヤリとする。

 

「見事な弓術だ。おまけに投石器(スリング)のダメ押しか。いや、大助かりだよ」

 

 弓による局所攻撃の後。

 道具を持ち替えて、モンスターの鼻先へ投石。

 もっとも?

 放ったのは石ではなく、砕けた壁の一部だったが。

 

「ダンジョンの壁ってのは、硬いからな。下手な石よりも痛かろうよ」

 

 投石を受けたモンスターは完全にひるみ、墜落。

 落ちたところを、集中攻撃。

 

 結果、見事討伐。

 

「その弓を称えて、何かプレゼントしてやろうか?」

 

 重戦士の女は笑いながら、ボッツの肩を叩く。

 

「いてっ。訓練の成果が出せた感じです」

 

 ボッツは苦笑して、照れ隠しに痒くもない頭を掻いた。

 

「アマゾネスのお前さんがそう言うってことぁ、やっぱ相当なもんだな?」

 

 メンバーの言葉に、

 

「あははは。アマゾネスったって、部族ごとに主武器(メイン・ウェポン)は違うのさ。うちの部族は……見ての通り、力で、頑丈さでぶちのめすんだよ」

 

 と。

 重戦士は愉快そうに笑う。

 

「いやいや。お前はお前でやればいいが? 一応リーダーとして、働きにあったボーナスを出さなきゃあなるまい」

 

 リーダーは何やらひとりでうなずいている。

 

「なんだい、そりゃ?」

 

 重戦士が怪訝な視線を送る。

 

「ボッツ・ルフ。お前さんは高確率で(レア)ランクに行けそうな器だが、()()()のほうはまだ仔犬ちゃんだ」

 

「あっち?」

 

 ボッツは聞き返す。

 

「うん。その訓練もキチッとやらんとな」

 

「――まったく、呆れるねえ? あんたが遊びたいだけだろ?」

 

 意図を察したらしい重戦士は、生温かい視線を向ける。

 

「もちろん? それもある!」

 

「否定しないのかい」

 

 重戦士は笑いを噛み殺すように、肩をゆすった。

 

「だがな。そっちを疎かにして、変なのに捕まってもつまらない、って話だ。お前らはどう思う?」

 

 リーダーが意見を求めるが?

 メンバーは苦笑するばかり。

 

「ま、そうとも言えるけどね」

 

 みんなを代表するように――

 重戦士アマゾネスはいくらか納得の様子で、ため息と笑顔。

 

「話がよく見えないんですけど???」

 

 

 

 

 

こんなやりとりの後。

 

 

 

 

 

「ええと。あの、ここは……」

 

 翌日の晩。

 

 ボッツはゴトクとリーダーと共に、サキュバス街の前にいた。

 

「野暮はいいっこなしだ。サキュバスのお姉様がたに、じっくり稽古をつけてもらえ」

 

 訳知り顔のリーダー。

 

「は、はあ」

 

「いくら冒険者として腕を磨いたって、ひとりでシコシコ()()()()()()()()()()()

 

 いや。

 アレはアレでまた違う味わいがあるけどな。

 

 リーダーは変なことを、妙に力を入れて補足。

 

「あのう?」

 

 ボッツは困惑の中ゴトクを見ると、

 

「まあ、そのうち勝手に行くだろと思ってたが……。レベル上げにハマりすぎたか」

 

 ゴトクは他人事だという顔で、

 

「いい加減ですませとかなきゃ、後で変な(こじら)らせかたをする、という(うれ)いもあるからな。さっさとすませてこい」

 

 そう言って、ボッツの背中を押した。

 

 

 と――

 

 

 

 

「待ちなさい!!」

 

 

 

 

 いきなり。

 聞き覚えのある罵声が、ボッツの耳へ響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は想定の分量より多めになってしまいました……

まあ、これはこれで?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。