破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
まるで――
ひとりの人物が、無数に分裂したようだった。
場所を問わず、影のように走り回って、敵を斬る。
あるいは?
魔法とも武術ともつかない技で、ダーツやブーメランのようなものを速射。
近距離・中距離・遠距離を自在にこなす。
トクベー。
ボッツとそう年は変わらないが、驚くほどの手腕。
その技術は、見ているだけでも多くのことを学ばされた。
「何をどうしたって、ひとりでやれることは限られてるし。限界はすぐ来るけどね」
霧に変わり、幻惑し攻撃を無効にする。
翼が刃物となり、手足が槍となる。
吸血鬼という種族特性。
それをフルに使うが、魔法も武術もこなす。
正直見た目は汚いというか……。
えげつない。
時として、血も涙もないことをやる。
ガジカ・バーバ。
何をどうつくろっても、暴力を生業にする冒険者にとって――
欠くことのできない要素。
冷徹さ。冷酷さ。
「あたしなんぞ可愛いもんだよ。世の中、もっとひでえのがいくらでもいるね」
他人の能力を見れば、自信が揺らぐ。
しかし。
裏を返せば、盗んで応用ができる。
それがゴトクの助言だった。
「落ち込むよりも、見て盗もうってほうが、前向き、建設的だよ」
自分に合ってるかどうか、そこの判断が出来ればなお良いね。
助言の時、師であるエルフはそう言って笑った。
ただ……。
〝
彼女の戦いだけは、まるで参考にならなかったが。
――あんなのに狙われて攻撃されたら、どう転んでも破滅だ、絶対……。
何があっても敵対はするまい。
ボッツはそう誓うしかなかった。
――あれは……。
小さな映像……いや、動画。
それが、オープンテラスに見えた。
マコネと一緒に、丸テーブルに座る少女。
デザインが古い上、くたびれた尼僧服。
――確か、パーティーの? いや、冒険者って感じでもないしなあ。何なんだろ、あの
尼僧服の少女は、小さな映写機に映し出されるものを観ていた。
その魔道具。
映像を記録した
「おーい。マコネ?」
「ん? おー、お前か」
声をかけると、マコネは手をあげた。
食事を終えた後らしい。
「あの子、なに観てるんだ?」
「さてね。最近は色々見てるようだし……」
「いろいろ?」
何気なく、ひょいっと映像を見る。
音声も一緒に入っているタイプらしい。
何やら聞こえているが、
――え。
映像を見て、ボッツは驚いて、固まった。
古そうな異国の絵が、映し出されている。
馬を駆る鎧の戦士。
見たこともないデザインの鎧だった。
それが、馬上で弓を引いている。
大型の弓。大型の
――あれは、多分鎧なんかを貫通するための……。鎧は、なんだあの肩……。
両肩には、盾みたいな装甲。
――……両手がふさがってるから、あれが盾の代わりか……。ほおお……。
騎射をする騎士は知っている。
だが、それらはスピードを重視するもので。
ああいうタイプは、見たことがなかった。
――広い場所だと、ああいうのも有りか……。それこそ、馬に乗れるような。ダンジョンだと、無理だな。
ボッツは、いつの間にか考え込んでいた。
――降りて、できれば一緒に行動できる。やっぱ馬だと難しいな。犬とかじゃ、そもそも乗れないし……。乗り物がないと、あの重武装は……。いや遠距離攻撃を引き付けるとか。いやいや……。
ブツブツ言いながら。
知らないうちに、マコネたちから離れて歩き出していく。
「なんだ、あいつ?」
ボッツの背中を見て、マコネは呆れたような怪訝そうな顔。
「あ~。これ、ちがいましたですねー。〝カッさん〟間違ったようですな」
尼僧――ボロンは言いながら、映写機の
動く。
止まらない。
一か所にとどまらず、同時に狙い、矢を放つ。
動きは正確に――
「おいおいおい……」
クエストが終わった後。
メンバーは感嘆の声。
「チョロチョロ落ち着きないと思ってたら、エラいことしやがったなあ……」
倒したモンスターの死体を見ながら、ひとりが首を振った。
鎧コウモリ。
甲殻類のような装甲をまとい、足は
防御と攻撃、ともに優れている。
加えて飛行するという厄介なモンスター。
グリフォンやヒドラほどではないが、かなり討伐の難しいタイプ。
その鎧コウモリ……。
右翼が破壊され、装甲の継ぎ目に矢が突き刺さっている。
「翼を一点集中の上、継ぎ目狙いか。
パーティー紅一点の重戦士がボッツを見て、ニヤリとする。
「見事な弓術だ。おまけに
弓による局所攻撃の後。
道具を持ち替えて、モンスターの鼻先へ投石。
もっとも?
放ったのは石ではなく、砕けた壁の一部だったが。
「ダンジョンの壁ってのは、硬いからな。下手な石よりも痛かろうよ」
投石を受けたモンスターは完全にひるみ、墜落。
落ちたところを、集中攻撃。
結果、見事討伐。
「その弓を称えて、何かプレゼントしてやろうか?」
重戦士の女は笑いながら、ボッツの肩を叩く。
「いてっ。訓練の成果が出せた感じです」
ボッツは苦笑して、照れ隠しに痒くもない頭を掻いた。
「アマゾネスのお前さんがそう言うってことぁ、やっぱ相当なもんだな?」
メンバーの言葉に、
「あははは。アマゾネスったって、部族ごとに
と。
重戦士は愉快そうに笑う。
「いやいや。お前はお前でやればいいが? 一応リーダーとして、働きにあったボーナスを出さなきゃあなるまい」
リーダーは何やらひとりでうなずいている。
「なんだい、そりゃ?」
重戦士が怪訝な視線を送る。
「ボッツ・ルフ。お前さんは高確率で
「あっち?」
ボッツは聞き返す。
「うん。その訓練もキチッとやらんとな」
「――まったく、呆れるねえ? あんたが遊びたいだけだろ?」
意図を察したらしい重戦士は、生温かい視線を向ける。
「もちろん? それもある!」
「否定しないのかい」
重戦士は笑いを噛み殺すように、肩をゆすった。
「だがな。そっちを疎かにして、変なのに捕まってもつまらない、って話だ。お前らはどう思う?」
リーダーが意見を求めるが?
メンバーは苦笑するばかり。
「ま、そうとも言えるけどね」
みんなを代表するように――
重戦士アマゾネスはいくらか納得の様子で、ため息と笑顔。
「話がよく見えないんですけど???」
こんなやりとりの後。
「ええと。あの、ここは……」
翌日の晩。
ボッツはゴトクとリーダーと共に、サキュバス街の前にいた。
「野暮はいいっこなしだ。サキュバスのお姉様がたに、じっくり稽古をつけてもらえ」
訳知り顔のリーダー。
「は、はあ」
「いくら冒険者として腕を磨いたって、ひとりでシコシコ
いや。
アレはアレでまた違う味わいがあるけどな。
リーダーは変なことを、妙に力を入れて補足。
「あのう?」
ボッツは困惑の中ゴトクを見ると、
「まあ、そのうち勝手に行くだろと思ってたが……。レベル上げにハマりすぎたか」
ゴトクは他人事だという顔で、
「いい加減ですませとかなきゃ、後で変な
そう言って、ボッツの背中を押した。
と――
「待ちなさい!!」
いきなり。
聞き覚えのある罵声が、ボッツの耳へ響いた。
今回は想定の分量より多めになってしまいました……
まあ、これはこれで?