破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110・5 番外:弓使い(アーチャー)-6

 

 

 

 

 

 

 

 ――あれ。えーと……。あれ?

 

 自分を睨みつけている少女。

 その顔には、見覚えがありすぎるほどにあった。

 

 オレンジがかった赤い髪。

 高めのポニーテール。

 金色の勝ち気なそうな、あるいは攻撃的な瞳。

 スレンダーっぽく見えるが、鍛えられた筋肉がわかる。

 

 小さな頃から、幼なじみとして過ごしてきた少女。

 

「ミーシャ、だよな。うん。久しぶり」

 

 ボッツの曖昧な返答に、

 

「……このッ!?」

 

 少女は目を怒らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミーシャ・エルダー。その功績により、国より騎士の称号を授ける――」

 

 宮廷の中で、ミーシャは正式にそれを受けた。

 

 玉座の前に跪いて……ではなく。

 国王自ら……とは、ならなかったが。

 

「そんなこと、よっぽどのことじゃなきゃないわよ。それこそ、ドラゴンを討伐した……くらいでなきゃね」

 

 パーティーのヒーラーから、事前にそう言われてもいた。

 

 ――やっと、お父様に報告できる……!

 

 貧しく、仕事に忙しい中でも何とか時間を作り、武術を教えてくれた父。

 

 騎士の称号。

 冒険者の中では、相当な実績がなければ得られない。

 それでも、過去にそこから出世していった者も多くいた。

 

「よっしゃあ!」

 

 宮廷からの帰り。

 ミーシャは往来で、拳を突き上げて叫んだ。

 衆人から変な眼で見られるが、気にしない。

 

 

 が。

 

 

「どういうことよ!?」

 

 ミーシャは噛みつくような態度で、リーダーに食ってかかった。

 

 クラウド・ミラ・ゾウニ。

 黒い短髪。黒い隻眼と眼帯(アイパッチ)

 岩のような肉体を持つ、巨漢。

 

「言ったとおりだ」

 

 クラウドは淡々とした声で、ミーシャを見おろしていた。

 

「戦力外通告で、やめてもらった。退()()()付きでな」

 

「なに勝手なことやってんのよ!?」

 

 ミーシャはクラウドの胸ぐらをつかんだ。

 しかし。

 身長差のため、だいぶ位置が低い。

 

「これでもパーティーリーダーだ。そのへんのことは決める権限がある。義務でもあるがな」

 

「ふざけないでよ!!」

 

 目を怒らせるミーシャに、クラウドはあくまで冷静だった。

 他のメンバーは、口をはさめずにいる。

 

「せいぜい後ろでヒョロヒョロ矢を飛ばしてろ」

 

 クラウドは、いきなり妙なことを言った。

 しかし?

 

「……!?」

 

 ミーシャは絶句する。

 

「それしか能がないんだろ」

 

「…………ッ」

 

 唇を噛み、ミーシャは血走った眼でクラウドを睨んだ。

 

()()()()()()()()()()()

 

 蔑むのではなく、挑発するのでもなく――

 やはり。

 クラウドの態度も声も冷静だった。

 

「~~~~~~…………!!」

 

 ミーシャはゆっくりとクラウドから手を放し、体を震わせる。

 悔しそうな顔で。

 

 そして、

 

「やめる」 

 

 押し殺したような声。

 

「このパーティー、ぬける!」

 

 ミーシャは叫んで、クラウドに背中を向けた。

 

「そうか。まあ、好きにしろ」

 

「好きにするわよ!!!」

 

 猛獣みたいな咆哮。

 それを残して、ミーシャは去っていった。

 

「やれやれ……。ガキってのは」

 

 クラウドは疲れたように自分の肩を揉む。

 

「……いいの? あの()は、100年にひとりの逸材よ」 

 

「100年だろうが1000年だろうが、本人がその気じゃねえなら仕方なかろうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幼馴染同士の、少年少女。

 両者がある種の膠着(こうちゃく)状態? となっているところ、

 

「痴話喧嘩ならよそでやってくれない?」

 

 迷惑そうな声が、横から割って入った。

 

 いつの間にか。

 サキュバスたちが迷惑そうな顔をして立っている。

 

「だ、誰が! ちわ……」

 

「いやぁ、そういうのではないんですが。すみません……」

 

 確かに。

 迷惑なのは揺るぎない事実。

 

 ボッツはミーシャが言い切る前に、謝罪して頭を下げた。

 

「な……!」

 

 ミーシャが驚きと屈辱で顔を赤くしているのへ、

 

「確かに迷惑でした。失礼します」

 

 ボッツはもう一度謝ってから、ミーシャの腕をつかんで早足に歩き出す。

 

「ちょっと、あんた、何を……!」

 

「ここで喧嘩売られたら、みんなの迷惑になるんだよ」

 

 ミーシャの抗議に、ボッツはため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた、今まで何してたわけ?」

 

 同じテーブルに座った途端、ミーシャは咎めるような声で言った。

 

 夜の冒険者食堂。

 半分酒場のようになっているが、専門の店に比べるとややおとなしめ。

 

「そりゃあ、訓練とクエストかなあ。基本そればっかり」

 

 テーブルに肘をついたボッツは、感慨深げに言った。

 

「ふん。少しは使えるようには、なったみたいだけど?」

 

「ああ。先生が良いから。勉強することも多いし」

 

「はあ、そう? それっていやらしい場所にいく余裕がある程度のもんなわけね」

 

「え。いやあ、言われても今日が初めてだったし。今までそんなヒマなかったぞ」

 

「どうかしら。わかったもんじゃないわ」

 

「そりゃあ、証明しろって言われても難しいしなあ」

 

「……」

 

「? なに?」

 

「ずいぶんと余裕ぶってるじゃない。だいぶ自信がおつきになったようで」

 

「ま、多少はね?」

 

「ふんっ」

 

 面白くない――

 そんな表情で、鼻を鳴らし、そっぽを向くミーシャ。

 

「考えてみると……。半年以上たってるのか……。ここに来るのもだいぶかかったし」

 

 ボッツは経過した時間を思い返しながら、何度かうなずいていたが、

 

「あ。そういえば。ミーシャは、どうしてここに? 何かのクエスト?」

 

「……腕試しよ。あちこち回ってね」

 

「ははあ。なるほど。確かに、ここには腕利きが多いからなあ」

 

 経験で知っているだけに?

 ボッツは実感を込め、またうなずいた。

 

「じゃあ、リーダーのクラウドさんや他のみんなも?」

 

「いないわよ。やめたから」

 

「やめたって、パーティーを?」

 

「決まってるでしょ? 鈍いわね」

 

「なんで?」

 

「そんなの私の勝手でしょ」

 

「ああ、まあ、うん。そうだけど」

 

 ――なに、その態度!?

 

 ミーシャは、ボッツに対してひどくいらだっていた。

 

 これまでとは違う。

 どこか、他人事というのか。淡白で……。

 かつてのように。

 ずっと自分を追うような、あの視線はない。

 

「なんか、生意気になったじゃない。昔はずっと私にひっついていたくせに」

 

「うん。そうだった、そうだった。ありゃみっともなかったな」

 

「……なに、それ」

 

 むきになるのでも、否定するのでもない。

 その対応に、ミーシャはまたイラついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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