破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「えっ!!? あのひとも一緒なんですか!?」
ギルドにやってきた直後、だった。
ミーシャは、ボッツの驚く声を聴いた。
――あの、ひと?
女だ。
少女の勘はそれを感じ取った。
受付を見ると、
「まあ、はい。何かあった際の保険と言いますか……」
「いや、保険って……」
明らかに動揺した顔のボッツが、受付のラミアと話していた。
「
「あああ……。そうらしいですけど」
「今回は、駆除と言うより狩りなんです。獲物をかたっぱしから粉々にしてたら、なんにもならないじゃないですか?」
「……た、確かに、はい。そうです」
ボッツは受付嬢の勢いに押されっぱなし。
「いや、でも。ちゃんとそういう依頼だって言えば良いんじゃないですか?」
「……あ~。そう言えば」
受付嬢は、魔導タブレットを見ながら首をかしげて、
「確かに、そういう地味なのは受けてませんね。最初のスライム駆除だけで……。その後は、あーー……懲罰クエストばっか続いて、うわあ……」
「と、とにかく? そっちのクエストではあんまり信用がないので。あくまでトラブルに備えて、なんです」
「わかりました」
ボッツがうなずいているところへ、
「ちょっと」
「「え?」」
声をかけるミーシャに、ボッツと受付嬢が同時に視線を送る。
「あっ。はいはい。今日もクエストをお探しですか?」
受付嬢はうなずき、そう言った。
昨日。
ミーシャはネビズに到着してすぐ、冒険者登録を行った。
この時、事前に次のようなことを言われている。
「実績がおありのようですけど……。ここではどんなかたでも1番下の
「しょうがないわね……」
まあ。
初心に帰るのもいいか。
そういうわけで。
ミーシャは
問題なく短時間でクリアしたため、
「はあ……。なるほど、確かに」
受付嬢も印象に残ったのだろう。
「ねえ? さっきの話を聞いちゃったんだけど。それってどんなクエストなの?」
「あっ。コレですか? えっとですね……」
受付嬢の説明を聞いたところ、
「大砲亀?」
「そうです、そうです」
「図鑑でしか見たことないけど、防御力が半端ないモンスターよね、それ」
「そうなんです。おまけにですね……?」
「名前の通り、大砲みたいに口から焼けた岩を吐き出す」
「ええ。このクエストは大砲亀の内臓、特に心臓が必要とされてるんです」
「ふーん。なるほど、確かに狩りよね」
「ボッツ・ルフさんも含めて、現在人手を集めてるところでして」
「まさか、こいつ……そんなにランクが高いの?」
ミーシャはジロリとボッツを見る。
「いえ、まだ
「つまり、お手伝いってわけか」
ミーシャはフンと荒い鼻息を出して、
「私も昨日登録したばっかの
「大砲亀、か。また面倒なのを狩るんだな」
ゴトクは大型の矢を、大型の矢筒に入れながら言った。
それはまるで、小さな槍のような代物で。
「そうなんですよ」
ゴトクの店。
カウンターの前でボッツはうなずいていた。
その後ろには、不愛想な顔をしたミーシャ。
「まあ、こんなコストの高いもんを買おうってんだからな。しかし、お前あくまで後方支援だろ?」
こんなもん使って、赤字にならねえのか?
ボッツに、ゴトクはそんなことを聞いた。
「トントン、って感じです。でも、今回のはかなり貴重な経験ができると思うし」
「なるほどね。どっちかといえば、訓練、修行の一環か」
「そう言われると、照れくさいです」
「――で」
ゴトクは、ボッツからミーシャのほうへ視線を移した。
「えらく、気を張ってる。いや」
虚勢を張ってるのか。
と。
エルフは、どこか呆れた顔で言った。
「どういう意味よ、それ……」
ほぼ黙っていたミーシャは、その言葉に目をむいた。
――
そんな勢いで、ついてきたのだが?
――なによ、このはぐれエルフ……。
はぐれエルフは何度も見たことがあるし、友人になった者もいる。
しかし、このゴトク。
どこか得体の知れないものがあった。
油断がならない……と、いうよりは――
侮ってかかると手痛い目にあう。
そういうモノを、感じた。
「お前さんは腕もいい。才能もある。状況次第でどんどん伸びるタマだ」
ゴトクはミーシャの疑問に答えず、おかしなことを言いだした。
「答えになってないわよ。だいたい、それ。まさか、嫌味?」
「ンなことを言って何の得がある」
ゴトクは睨みつけるミーシャに手を振って、
「だからこそ、わかる怖さもあるってことさ。本当のところ、この街には1分1秒でもいたくない。違うか?」
「……!?」
その指摘に、ミーシャは顔色を変えた。
「それに耐えるだけの胆力がある、とすべきか。あるいは、気づかないふりをしてるだけ……」
「あのう?」
「ボッツ、お前は鉄火場での勘どころは磨いているようだが……。仲間のことも察せないと命に関わるぞ? 時々な、見栄や恐れ、あるいは心配かけたくない、足を引っ張りたくないって
「め、迷惑?」
「当たり前だろ」
あわてているボッツに、ゴトクは若干荒い声で、
「そんな状態で、いざって時に倒れたりしてみろ。周りはそのフォローまでせにゃあならん。下手すりゃ大打撃、悪くすれば全滅する。心配だどーだって問題じゃなくなるんだ」
「そ、そうですね。ホントに……」
うなずきながら、ミーシャを見た。
ボッツは青くなったり赤くなったりしながら。
そんな幼馴染に、ミーシャはカッとしかけるが、
「っ!!」
弾かれたように振り返る。
「なるほど。あいつが原因か」
ゴトクがため息。
店先に、青い影が立っていた。