破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
ありがとうございます!
2月最初の投稿。
先月は年初めから困ったことになったけど
体調に気をつけて執筆を続けたいと思います
「――どうにか、なったなあ」
ボッツは木の根元へ腰をおろし、呼吸を整えていた。
大地に横たわる巨大なモンスター。
マカトク。
討伐が極めて難しい凶悪な種族。
その姿は、背中に巨大な黒い翼を持った猛牛。
物理と魔法を問わず、強い耐久性を誇る金属のような皮膚。
おまけに、強い麻痺毒を含んだブレスまで吐く。
麻痺をどうにかしても、火炎で焼かれる。
火炎を防いでも麻痺で動けなくなる。
そんな難敵だが、今は屍となり解体される途中。
「しかし……。お前、あんな最前線でよく無事だったなあ?」
「こっちにつくまで、観光旅行してたわけじゃないの」
ミーシャは、汗と埃で汚れた顔をぬぐいながらそっぽを向いた。
「武者修行の成果か」
ボッツは納得の顔で、弓の手入れを始めた。
「結局、高い矢は全部使っちゃったなあ……」
戦闘の中。
ボッツは、モンスターの足や翼を一点集中攻撃。
その防御力ゆえ致命傷にならなかったが……。
モンスターの機動性、攻撃のタイミングを何度も崩している。
「いい仕事したぞ。助かった」
「帰ったら一杯奢るからよ」
前衛の者から、そんな言葉を何度か受けていた。
男女問わずに――
「……ちょっとは、やるようになったじゃない」
ミーシャはムスッとしたまま、目を合わせずに言う。
「あー、まあ。一撃必殺とか、大ダメージとはいかなかったけどな。今後の課題だ」
ボッツは世間話のように言いながら、弓の手入れを続けている。
何度も何度も、念を入れて。
――そういえば……。昔から、道具の手入れは
少年の様子を見ながら、ミーシャは思い出す。
と。
「おいッす。弓のにいさん――!」
いきなり。
誰かが気安い声でボッツの前に座った。
チョロチョロとした動き。
頭はバンダナ。腰の後ろに厚めのナイフを装備。
灰褐色の髪に、黒っぽい茶の瞳。
色気のない少年みたいな様子だが、
「お互い、生きてて良かったッスねえ」
ボッツへ、妙に近い距離で話しかけた。
――シーフ系か。って、なにコイツ!?
ミーシャが不快に思っていると、
「うん。そっちもな」
「しかし、また弓のほうは腕が上がったんじゃあないッスか?」
2人はごく普通に会話を続けている。
「そうかもしれない。今回もいくらか結果を残せた感じだし」
ボッツは手入れを続けながら、普通に答える。
「にゃはは。じゃ、お互いの無事を祝って、今晩かるーく祝勝会といかないッスか?」
「あー。悪くはないけど。今回は色々出費が多かったし? また今度な」
「ちょいちょいちょい」
シーフ?は、断ったボッツの肩をポンポンと叩き、
「んーな野暮は言いっこなし。今回は私が奢るッスよ」
「お前の場合? なんか、後が怖いんだよなあ」
「かーっ! ひとを詐欺師みたいに言わんでほしいッスねえ。これでも、それなりに誠意と信用を大事にしてるんスよ?」
シーフ?は大げさな態度で肩をすくめてみせた。
「――ちょっと」
ミーシャは冷たい声で割って入る。
「は? なんスか?」
シーフ?は、不快そうに言った。
「このなれなれしいヤツ、誰?」
「あー。シーフ職のソテツ。何度かクエストを一緒にしたことがあって」
ミーシャの質問へ、ボッツは平静な態度で答える。
「ちょいちょい。そりゃーつれない言いかたッスね?」
と、ソテツはボッツの隣へ座り込み、
「私ら、いくつも冒険を乗り越えてきたマブダチじゃないッスか? いや、それ以上かも?」
「え。そうだったっけ? なんか飯とか奢らされたり、金貸したり。そんなんばっかだったような……」
「ちょっ!? また、そういう野暮を。飯は安いのをチョロッとだし、お金はちゃんと返済してるじゃないッスか」
ソテツはあわてながら、ボッツの肩を両手でつかむ。
「そりゃそうだけど。金の貸し借りってのはなあ?」
「むむむ。わかりました。今晩は奮発して美味い飯をごちそうするッス! お酒つきで!」
「うーん」
ボッツはちょっと困った顔になる。
――冒険者の女には色々注意しろって、ゴトクさんからも言われてるしなあ。
「ま、いいけど」
「良くないっっ!!」
「はい?」
ミーシャの怒声。
ボッツはそれに、怪訝な顔を向ける。
「なんなんスか?」
ソテツは不愉快そうにミーシャを見た。
「さっきから……。このうるさいひと、どこのどなたッスか?」
「前のパーティーで一緒にいた仲間だよ」
「ほえー。そういや、さっきの戦闘でも大暴れしてたッスねえ……」
ソテツは感心したような顔で、ミーシャを上から下まで見る。
――なんなの、こいつ? 観察でもしてるわけ?
「おお。確か、あっちのほうで
なにせ、期待の新人ッスから!
そう言って、ソテツはある方向を指さした。
ミーシャがチラ見したところ?
確かに、ソテツの言う通りらしい。
ミーシャを探しているかはわからないが。
「私がどこでどうしようと、勝手でしょう」
「ええ? なんスか、その反応。一応親切で言ったんスけど」
心外だ。
そんな様子で、ソテツはボッツの顔を見た。
同意を求めるような目つきで。
「こいつは、昔から勝気で頑固なところがあったからなあ……」
ボッツは苦笑するばかりだったが。
「そもそもさあ? あんた、昔っから私の後にひっついてきてたわねえ。なーんかいじましい感じで」
「うーん。あれは、やっぱり良くなかったなあ……」
「……はあっ?」
「前は、自分が不遇だって思ってたけど……。色々たりないことばっかりだったと思うよ。ミーシャにも甘えてたんだろうし……。そういう意味じゃ、やっぱここに来て良かったな」
「相当に厳しい修業をしてたッスからね! いや、大したもんッスよ!!」
「厳しいのは厳しいし、苦しいけど。つらくはない気がするなあ。そこがゴトクさんのすごいとこなんだけど……」
「いやいやいや。けっこう授業料を稼いで払っての修業。簡単にはできないッスよ」
「あんたねえ……横から口はさまないでくれる!?」
「なんなんスか?」