破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

199 / 357
いつも感想や誤字脱字報告をくださる皆様
ありがとうございます!

2月最初の投稿。
先月は年初めから困ったことになったけど
体調に気をつけて執筆を続けたいと思います


その110・5 番外:弓使い(アーチャー)-9

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――どうにか、なったなあ」

 

 ボッツは木の根元へ腰をおろし、呼吸を整えていた。

 

 大地に横たわる巨大なモンスター。

 

 マカトク。

 討伐が極めて難しい凶悪な種族。

 その姿は、背中に巨大な黒い翼を持った猛牛。

 物理と魔法を問わず、強い耐久性を誇る金属のような皮膚。

 

 おまけに、強い麻痺毒を含んだブレスまで吐く。

 麻痺をどうにかしても、火炎で焼かれる。

 火炎を防いでも麻痺で動けなくなる。

 

 そんな難敵だが、今は屍となり解体される途中。

 

「しかし……。お前、あんな最前線でよく無事だったなあ?」

 

「こっちにつくまで、観光旅行してたわけじゃないの」

 

 ミーシャは、汗と埃で汚れた顔をぬぐいながらそっぽを向いた。

 

「武者修行の成果か」

 

 ボッツは納得の顔で、弓の手入れを始めた。

 

「結局、高い矢は全部使っちゃったなあ……」

 

 戦闘の中。

 ボッツは、モンスターの足や翼を一点集中攻撃。

 その防御力ゆえ致命傷にならなかったが……。

 モンスターの機動性、攻撃のタイミングを何度も崩している。

 

「いい仕事したぞ。助かった」

 

「帰ったら一杯奢るからよ」

 

 前衛の者から、そんな言葉を何度か受けていた。

 男女問わずに――

 

「……ちょっとは、やるようになったじゃない」

 

 ミーシャはムスッとしたまま、目を合わせずに言う。

 

「あー、まあ。一撃必殺とか、大ダメージとはいかなかったけどな。今後の課題だ」

 

 ボッツは世間話のように言いながら、弓の手入れを続けている。

 何度も何度も、念を入れて。

 

 ――そういえば……。昔から、道具の手入れは丁寧(ていねい)だったな……。

 

 少年の様子を見ながら、ミーシャは思い出す。

 

 と。

 

「おいッす。弓のにいさん――!」

 

 いきなり。

 誰かが気安い声でボッツの前に座った。

 チョロチョロとした動き。

 

 頭はバンダナ。腰の後ろに厚めのナイフを装備。

 灰褐色の髪に、黒っぽい茶の瞳。

 色気のない少年みたいな様子だが、

 

「お互い、生きてて良かったッスねえ」

 

 ボッツへ、妙に近い距離で話しかけた。

 

 ――シーフ系か。って、なにコイツ!?

 

 ミーシャが不快に思っていると、

 

「うん。そっちもな」

 

「しかし、また弓のほうは腕が上がったんじゃあないッスか?」

 

 2人はごく普通に会話を続けている。

 

「そうかもしれない。今回もいくらか結果を残せた感じだし」

 

 ボッツは手入れを続けながら、普通に答える。

 

「にゃはは。じゃ、お互いの無事を祝って、今晩かるーく祝勝会といかないッスか?」

 

「あー。悪くはないけど。今回は色々出費が多かったし? また今度な」

 

「ちょいちょいちょい」

 

 シーフ?は、断ったボッツの肩をポンポンと叩き、

 

「んーな野暮は言いっこなし。今回は私が奢るッスよ」

 

「お前の場合? なんか、後が怖いんだよなあ」

 

「かーっ! ひとを詐欺師みたいに言わんでほしいッスねえ。これでも、それなりに誠意と信用を大事にしてるんスよ?」

 

 シーフ?は大げさな態度で肩をすくめてみせた。

 

「――ちょっと」

 

 ミーシャは冷たい声で割って入る。

 

「は? なんスか?」

 

 シーフ?は、不快そうに言った。

 

「このなれなれしいヤツ、誰?」

 

「あー。シーフ職のソテツ。何度かクエストを一緒にしたことがあって」

 

 ミーシャの質問へ、ボッツは平静な態度で答える。

 

「ちょいちょい。そりゃーつれない言いかたッスね?」

 

 と、ソテツはボッツの隣へ座り込み、

 

「私ら、いくつも冒険を乗り越えてきたマブダチじゃないッスか? いや、それ以上かも?」

 

「え。そうだったっけ? なんか飯とか奢らされたり、金貸したり。そんなんばっかだったような……」

 

「ちょっ!? また、そういう野暮を。飯は安いのをチョロッとだし、お金はちゃんと返済してるじゃないッスか」

 

 ソテツはあわてながら、ボッツの肩を両手でつかむ。

 

「そりゃそうだけど。金の貸し借りってのはなあ?」

 

「むむむ。わかりました。今晩は奮発して美味い飯をごちそうするッス! お酒つきで!」

 

「うーん」

 

 ボッツはちょっと困った顔になる。

 

 ――冒険者の女には色々注意しろって、ゴトクさんからも言われてるしなあ。

 

「ま、いいけど」

 

「良くないっっ!!」

 

「はい?」

 

 ミーシャの怒声。

 ボッツはそれに、怪訝な顔を向ける。

 

「なんなんスか?」

 

 ソテツは不愉快そうにミーシャを見た。

 

「さっきから……。このうるさいひと、どこのどなたッスか?」

 

「前のパーティーで一緒にいた仲間だよ」

 

「ほえー。そういや、さっきの戦闘でも大暴れしてたッスねえ……」

 

 ソテツは感心したような顔で、ミーシャを上から下まで見る。

 

 ――なんなの、こいつ? 観察でもしてるわけ?

 

「おお。確か、あっちのほうで(レア)ランク以上の腕利きが集まってるッスよ? クエスト成功を祝ってなんか宴会でも開くんじゃないッスかね。ひょっとしたらおねえさんも探してるかも」

 

 なにせ、期待の新人ッスから!

 

 そう言って、ソテツはある方向を指さした。

 

 ミーシャがチラ見したところ?

 確かに、ソテツの言う通りらしい。

 ミーシャを探しているかはわからないが。

 

「私がどこでどうしようと、勝手でしょう」

 

「ええ? なんスか、その反応。一応親切で言ったんスけど」

 

 心外だ。

 そんな様子で、ソテツはボッツの顔を見た。

 同意を求めるような目つきで。

 

「こいつは、昔から勝気で頑固なところがあったからなあ……」

 

 ボッツは苦笑するばかりだったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そもそもさあ? あんた、昔っから私の後にひっついてきてたわねえ。なーんかいじましい感じで」

 

「うーん。あれは、やっぱり良くなかったなあ……」

 

「……はあっ?」

 

「前は、自分が不遇だって思ってたけど……。色々たりないことばっかりだったと思うよ。ミーシャにも甘えてたんだろうし……。そういう意味じゃ、やっぱここに来て良かったな」

 

「相当に厳しい修業をしてたッスからね! いや、大したもんッスよ!!」

 

「厳しいのは厳しいし、苦しいけど。つらくはない気がするなあ。そこがゴトクさんのすごいとこなんだけど……」

 

「いやいやいや。けっこう授業料を稼いで払っての修業。簡単にはできないッスよ」

 

「あんたねえ……横から口はさまないでくれる!?」

 

「なんなんスか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。