破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
ちょっと遅れましたが、本日の投稿となります
――ありゃ?
ゴトクは、用事をすませて帰る途中でそれを見た。
ボッツ少年と、その横にいる2人の少女。
――例の昔なじみと、あっちはネズミ使いのソテツか。
ソテツなる少女。
シーフ職のようなことをこなすが、本職? と言えるものは――
いわゆる、ビーストテイマー。
ソテツはあだ名の通り、魔法で仕込んだネズミを使う。
――見た感じは、青春って言えるのかね?
ゴトクは離れた場所から見つめつつ、小さな苦笑。
…………。
それは……。
ボッツがゴトクに弟子入りして1か月ほどたった頃だった。
訓練終了後。
ボッツは草の上に座り込み、遠くを見ていた。
景色ではなく、もっと遠い――
「
少年の横へ立ったゴトクは、何気なく言った。
「え!?」
ボッツはあわてた顔でエルフを見たが、
「……ちょっと、友達のことを」
――
ボッツの反応に、ゴトクは心の内で苦笑する。
聞かずとも、察せる気がしたからだ。
「そいつぁ、良いヤツだったかね?」
「……騒がしいけど、元気で、明るいヤツでした」
「昔なじみの女か」
「へっ!?!」
ボッツはギョッとするが、反論はしなかった。
お互い、しばらく沈黙が続いた後、
「その
ゴトクは空を見ながら、静かに言った。
「いえ。今は、別に……」
少年の反応は、どこか淡白で。
――強がりではない、か。心の、奥の奥まではわからんが……。
他人も自分も騙してはいない。
ゴトクは、そう見て取る、
「お前さんは、大人になったんだよ。まだ一歩進んだくらいだが」
「そうなんですかね? だったら、嬉しいかも」
「若い頃は色恋で突っ走って、夢中になったりしくじったりするのも勉強のひとつさ」
「……」
「だが。そういうきれいな宝物と別れなきゃならん時がある。お前の場合、きれいに別れられたようだね」
…………。
街の往来を、ボッツをはさんで2人の少女はギャイギャイ言い合っている。
いや。
騒いでいるのは、主にミーシャだけか。
ソテツはすました顔でヘラヘラしている。
――芝居がかった台詞でかっこつけた手前、ああいうのを見ると照れくさいが……。
ゴトクはボッツの様子を観察してから、
――あいつの反応からして、また波乱のひとつふたつはありそうだなあ。
まあ。
その時はその時で、
――あいつの問題だ。
苦笑をしてから、少年少女へ背を向けた。
「あれ?」
店に入ってから、ボッツはキョロキョロとする。
主人であるエルフの姿がない。
店は開いているのだが、使い魔の猫たちが働いているばかり。
「何かお入り用ですか、ボッツさん」
使い魔の1匹がたずねる。
「あー、コレコレが欲しいんだけど……」
「はいはい。すぐに」
応えた使い魔は店の奥へ走っていく。
――どっかいってるのかな? 店が開いてるってことは、すぐに帰ってくるのか……。
ん?
ボッツはふと、カウンターの店側に目が行った。
何か書かれた紙。
いや。
手紙らしきものが置きっぱなしになっている。
――あれ? こんなんを置いたまま……。ずいぶんズボラというか、不用心というか。
ゴトクとしては珍しいこと。
怪訝に思っていたボッツだが、見るともなく手紙の文字を追っていくうち――
「…………え?」
『――……この手紙を持参した者、ボッツ・ルフへ貴君の教えを頼む』
『クラウド・ミラ・ゾウニより』
何度か読み返しても、間違いなかった。
――え? いや、え?
ボッツは理解しきれず、混乱する。
ちょうどその時、
「お待たせしました。7500ジュラとなります」
頼んだものを、使い魔が持ってきた。
「あ、うん……」
ボッツが代金を払っていると、
「おっと。いけない」
使い魔たちは手紙を片づけ、さらに店を閉め始める。
「申し訳ありませんが、主人が不在のため店は休業となります」
半ばボッツを追い出すようにして、
『休業中』
と。
書かれた木板を店先にぶら下げた。
「久しぶりだな。鷹目の」
ゴトクは愛想よく言いながら、酒場のカウンターに座った。
隣には、大柄の男が座っている。
グラスの酒はあまり減っていないようだ。
ヤオアムトよりずっと遠い国。
まともなルートでは、何か月もかかる距離。
しかし。
エルフは、あっという間に到着していた。
自分の店を出て3日もかからないうちに……。
「稼業はうまくいってるようだな」
「どうにか死んじゃいないってところだ」
男――クラウド・ミラ・ゾウニ。
グラスのふちを太い指でなぞりながら応えた。
「お前さんは、どうだ猫の」
「こっちはなかなか楽しいぜ。しばらく前に、おかしな依頼が来たんでな」
ゴトクは、クラウドの横顔を見てから金貨を1枚バーテンに渡す。
「先払いしとくぜ。っと、それから……依頼の手紙が届くのと、ほぼ同時に妙なルートで依頼料も来たぜ」
「酔狂な話だ」
クラウドは興味を示さない。
「ま。それはそれとして。入門料や授業料は払ってもらったがね」
ゴトクは酒を注文してから、どうでも良さそうに言った。
「当然だな」
「その分、授業内容はサービスしたぜ」
「ふうん」
「しかし、依頼料ってのはけっこうな額だったなあ」
グラスの酒を半分ほど飲んで、ゴトクはちょっと上を見る。
「どこの誰だろうな? あんな真似をしたのは」
「俺が知るわけねえだろ」
「そうかい? 依頼の手紙ってのはコレなんだが……。わざわざ、タイプライター使ってるから文字の癖もわからん」
ゴトクはしまっていた、
本物に、依頼主の名前はない。
「あちこちに聞いてるんだが、お前さんなんか知らないか?」
「俺が知るわけねえだろ」
「それもそうか」
ゴトクは手紙をしまいながら、
「あ、そうそう。手ほどきをしたヤツだが、呑み込みが早い。教えを工夫しなくとも、どんどん腕を上げてな。俺の趣味として、正直教えがいはなかったけど」
依頼主にはそこそこ満足いく結果だと思うぜ?
少しだけ笑った。
「そうかい」
クラウドの反応はあくまで淡白だったが、
「猫の――久しぶりに会ったんだ。今日は俺の奢りにしてやろう」
これでこのエピソードも終了です
次回よりまた新しいエピソードにいきます
今後もどうかよろしくお願いします!