破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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すみません
ちょっと遅れましたが、本日の投稿となります


その110・5 番外:弓使い(アーチャー)-10

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ありゃ?

 

 ゴトクは、用事をすませて帰る途中でそれを見た。

 

 ボッツ少年と、その横にいる2人の少女。

 

 ――例の昔なじみと、あっちはネズミ使いのソテツか。

 

 ソテツなる少女。

 シーフ職のようなことをこなすが、本職? と言えるものは――

 いわゆる、ビーストテイマー。

 ソテツはあだ名の通り、魔法で仕込んだネズミを使う。

 

 ――見た感じは、青春って言えるのかね?

 

 ゴトクは離れた場所から見つめつつ、小さな苦笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは……。

 ボッツがゴトクに弟子入りして1か月ほどたった頃だった。

 

 

 訓練終了後。

 ボッツは草の上に座り込み、遠くを見ていた。

 景色ではなく、もっと遠い――

 

故郷(くに)のことでも思い出したか」

 

 少年の横へ立ったゴトクは、何気なく言った。

 

「え!?」

 

 ボッツはあわてた顔でエルフを見たが、

 

「……ちょっと、友達のことを」

 

 ――()()()()ね。

 

 ボッツの反応に、ゴトクは心の内で苦笑する。

 聞かずとも、察せる気がしたからだ。

 

「そいつぁ、良いヤツだったかね?」

 

「……騒がしいけど、元気で、明るいヤツでした」

 

「昔なじみの女か」

 

「へっ!?!」

 

 ボッツはギョッとするが、反論はしなかった。

 

 お互い、しばらく沈黙が続いた後、

 

「その()に、会いたいか?」

 

 ゴトクは空を見ながら、静かに言った。

 

「いえ。今は、別に……」

 

 少年の反応は、どこか淡白で。

 

 ――強がりではない、か。心の、奥の奥まではわからんが……。

 

 他人も自分も騙してはいない。

 ゴトクは、そう見て取る、

 

「お前さんは、大人になったんだよ。まだ一歩進んだくらいだが」

 

「そうなんですかね? だったら、嬉しいかも」

 

「若い頃は色恋で突っ走って、夢中になったりしくじったりするのも勉強のひとつさ」

 

「……」

 

「だが。そういうきれいな宝物と別れなきゃならん時がある。お前の場合、きれいに別れられたようだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街の往来を、ボッツをはさんで2人の少女はギャイギャイ言い合っている。

 いや。

 騒いでいるのは、主にミーシャだけか。

 ソテツはすました顔でヘラヘラしている。

 

 ――芝居がかった台詞でかっこつけた手前、ああいうのを見ると照れくさいが……。

 

 ゴトクはボッツの様子を観察してから、

 

 ――あいつの反応からして、また波乱のひとつふたつはありそうだなあ。

 

 まあ。

 その時はその時で、

 

 ――あいつの問題だ。

 

 苦笑をしてから、少年少女へ背を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

 店に入ってから、ボッツはキョロキョロとする。

 

 主人であるエルフの姿がない。

 店は開いているのだが、使い魔の猫たちが働いているばかり。 

 

「何かお入り用ですか、ボッツさん」

 

 使い魔の1匹がたずねる。

 

「あー、コレコレが欲しいんだけど……」

 

「はいはい。すぐに」

 

 応えた使い魔は店の奥へ走っていく。

 

 ――どっかいってるのかな? 店が開いてるってことは、すぐに帰ってくるのか……。

 

 ん?

 

 ボッツはふと、カウンターの店側に目が行った。

 

 何か書かれた紙。

 いや。

 手紙らしきものが置きっぱなしになっている。

 

 ――あれ? こんなんを置いたまま……。ずいぶんズボラというか、不用心というか。

 

 ゴトクとしては珍しいこと。

 

 怪訝に思っていたボッツだが、見るともなく手紙の文字を追っていくうち――

 

「…………え?」

 

 『――……この手紙を持参した者、ボッツ・ルフへ貴君の教えを頼む』

 『クラウド・ミラ・ゾウニより』

 

 何度か読み返しても、間違いなかった。

 

 ――え? いや、え?

 

 ボッツは理解しきれず、混乱する。

 

 ちょうどその時、

 

「お待たせしました。7500ジュラとなります」

 

 頼んだものを、使い魔が持ってきた。

 

「あ、うん……」

 

 ボッツが代金を払っていると、

 

「おっと。いけない」

 

 使い魔たちは手紙を片づけ、さらに店を閉め始める。

 

「申し訳ありませんが、主人が不在のため店は休業となります」

 

 半ばボッツを追い出すようにして、

 

『休業中』

 

 と。

 書かれた木板を店先にぶら下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな。鷹目の」

 

 ゴトクは愛想よく言いながら、酒場のカウンターに座った。

 隣には、大柄の男が座っている。

 グラスの酒はあまり減っていないようだ。

 

 ヤオアムトよりずっと遠い国。

 まともなルートでは、何か月もかかる距離。

 

 しかし。

 

 エルフは、あっという間に到着していた。 

 自分の店を出て3日もかからないうちに……。

 

「稼業はうまくいってるようだな」

 

「どうにか死んじゃいないってところだ」

 

 男――クラウド・ミラ・ゾウニ。

 グラスのふちを太い指でなぞりながら応えた。

 

「お前さんは、どうだ猫の」

 

「こっちはなかなか楽しいぜ。しばらく前に、おかしな依頼が来たんでな」

 

 ゴトクは、クラウドの横顔を見てから金貨を1枚バーテンに渡す。

 

「先払いしとくぜ。っと、それから……依頼の手紙が届くのと、ほぼ同時に妙なルートで依頼料も来たぜ」

 

「酔狂な話だ」

 

 クラウドは興味を示さない。

 

「ま。それはそれとして。入門料や授業料は払ってもらったがね」

 

 ゴトクは酒を注文してから、どうでも良さそうに言った。

 

「当然だな」

 

「その分、授業内容はサービスしたぜ」

 

「ふうん」

 

「しかし、依頼料ってのはけっこうな額だったなあ」

 

 グラスの酒を半分ほど飲んで、ゴトクはちょっと上を見る。

 

「どこの誰だろうな? あんな真似をしたのは」

 

「俺が知るわけねえだろ」

 

「そうかい? 依頼の手紙ってのはコレなんだが……。わざわざ、タイプライター使ってるから文字の癖もわからん」

 

 ゴトクはしまっていた、()()の手紙を出しながら言った。

 本物に、依頼主の名前はない。

 

「あちこちに聞いてるんだが、お前さんなんか知らないか?」

 

「俺が知るわけねえだろ」

 

「それもそうか」

 

 ゴトクは手紙をしまいながら、

 

「あ、そうそう。手ほどきをしたヤツだが、呑み込みが早い。教えを工夫しなくとも、どんどん腕を上げてな。俺の趣味として、正直教えがいはなかったけど」

 

 依頼主にはそこそこ満足いく結果だと思うぜ?

 

 少しだけ笑った。

 

「そうかい」

 

 クラウドの反応はあくまで淡白だったが、

 

「猫の――久しぶりに会ったんだ。今日は俺の奢りにしてやろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これでこのエピソードも終了です
次回よりまた新しいエピソードにいきます

今後もどうかよろしくお願いします!
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