破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「しかし、妙に色っぽい奥様だなぁ?」
「そうですねえ。まあ、セクシーというのかなんというか……」
見回りの途中――
マコネとバッキーはジャコーを遠目に見ながら話す。
「そら、貴族のご婦人なんてのは美容だなんだに気を回せるからトーゼンではあるかも、だけど……」
と。
マコネは心底感心した顔で、
「姐さんもすげえ美人だけど? なんつうか、色気ってのかスケベェな雰囲気っつーの? その点に関しちゃ負けてるかねえ?」
「いやあ、というか……」
バッキーは困った顔ながら、
――ひいき目かもだけど、リーダーはたぶん最高クラスの美人さんなんだよ。けど、なんかこう……そういう点では、魅力が乏しいっていうか。
きれいはきれいでも、刃物とか銃? みたいなきれいさなんだよねえ……。
おそらく、だが。
引き締まり、隙の見えない硬度と柔軟性を匂わせる肉体。
それより――
ジャコーの年齢に見合った、しかし……?
決して見苦しくない脂肪のついた肢体。
――あっちのほうが、エッチさでは魅力的だなぁ。私でもそう感じるし。まあ、リーダーはそんなのぜんぜんどーでもいいんだろうけど……。
カーシャのそういった割り切りというか、無関心さ。
――正直、ああいう思考だったら変なコンプレックス
その一方で。
――スケベってところじゃ、
マコネは生暖かい目で、黒髪黒髪・地味目の小太りヒーラーの横顔を見た。
美人ではないが、ひどい醜女というわけではなく。
控えめだが、普通に礼儀はわきまえている。
――聞いた話じゃ、こーゆーちょうど良い感じの顔で、ちょうどいい感じでだらしない肉づきの女って、けっこう人気あるらしいし?
以前、男連中がそんなよた話をしていたことを思いだす。
加えて、
「まあ、そうだろうなあ。遊びならともかく、女房としてならバッキーのほうが需要はあるだろうよ」
ゴトクもそう言っていた。
「サキュバスが普通にいる国じゃ、中途半端な美人なんか若かろうが需要はねえ。問題なのは中身だ」
――まあ、
「おかわりをお願い――」
と。
しっとりとした、どこか耳に響く声でジャコーは言った。
「はい。ただ今」
侍女のひとりが、すぐに空のグラスへ
雇われて、まだ日が浅い。
13歳ほどの少女。
「あの、私がお付きに?」
そういった仕事は、普通ベテランで信用の厚い者が選ばれる。
「もちろん? あくまで補助の補助。おまけみたいなものです」
侍女長は言って、
「それでも、経験をつまないと仕事は覚えられないのだから」
と、いうことだった。
「こういう機会があるだけ、幸せだと思いなさい」
――ああは言われたけど……。
グラスを手渡す時も、緊張で震えそうになっていた。
「ありがとう」
ジャコーは優しく微笑み、グラスを受け取る。
それから。
何気ない動作で……。
少女の手を触るような、あるいは撫でるような。
微妙な動きをしたようだった。
――っ?
その感覚に、少女は一瞬おかしなものを感じて小さく震える。
不快ではない。
が。
どこか、おかしい。どこか妙な。
少女は――
以前、王都のある料理店で働いていた。
単なる料理屋ではない。
貴族など、富裕層が私的や商談、あるいは密会などで使用する店。
高位の貴族は、個室を取ることが多い。
トーザ侯爵と、その夫人も例に漏れなかった。
というよりも。
巨漢であるトーザ侯爵は、広めの個室でなければ狭苦しいようだ。
その日。
少々ひと手が少なかったため、少女がトーザ夫妻の個室へ料理を運んだ。
緊張と不慣れのため、少女の仕事ぶりはぎこちなかったが、
「そう緊張しないで。落ちついておやりなさい?」
ジャコーは優しく、リラックスさせるように言った。
侯爵のほうは、我関せず……というか、気にした様子はない。
何とか仕事を終えた少女に、
「あなた、可愛いわね。良ければ、うちで働く?」
ジャコーはからかうように言ってきた。
「は、はい?」
反応に困っている少女へ、
「ふふ。なんて、ね。これ、とっておいて」
いつの間にか、小さな紙包みが手渡されていた。
後でわかったが。
中身は高額紙幣をきれいにたたんだもの。
こういった場所でのチップは、普通のことではあるが。
ジャコーの手に触れた時。
少女は、そのなめらかで柔らかい、同時に吸いつくような感触にゾクリと震えた。
それからしばらくして。
少女は、店主の紹介で本当にトーザ家で働くことになったわけで――
「やれやれ」
少女があわてながら退室した後のこと。
侯爵はからかうような目つきで、
「あんな子供に食指が動いたのか?」
「ふふ。女は、あれくらいでもう大人みたいなものですわ」
グラスをかたむけながら、ジャコーは微笑する。
妖艶。
まさに、そういう笑みだった。
「場合によっては、嫁に行ってもおかしくはない年ではあるか」
肩をすくめる侯爵へ、
「私があなたのもとへ輿入れしたのは、だいぶ
ジャコーはグラスを揺らし、そんなことを言った。
彼女がトーザ家の花嫁となったのは、20代前半……半ば近い頃。
現代日本の感覚で言えばまだまだ若い。
しかし。
こちらの常識、さらに貴族階級の常識では晩婚だった。
「お前の好き好きにうるさくは言わんが……。あまり無茶はしてやるなよ。お前はオトナとは言ったが、やはり子供だ」
「あら、失礼な。きれいな花をちぎったりするような野暮だと思いまして?」
「ふふふ。まあ、俺が言えたことではないか」
「本当に」
「こいつめ。ハハハッ」
ジャコーの言葉に、侯爵はその大きな腹を揺らして笑う。
心底、愉快そうな顔で。
さて。
店を出る際――
見送りに立った中にいたひとり。
十代半ばの、整った容姿と清潔さを感じさせる少年がいた。
ジャコーはそれをチラリと見て、
「あなたから見て、ああいう子はどうかしら?」
「つまらんことを」
こっそりとささやく妻へ、
「
わかっていることを聞くな。
侯爵は呆れた顔でそう返した。
本作執筆にあたって……
色々影響していると思われるものを思い返してみました
・ジャンル:悪役令嬢もの
・ゼロの使い魔
・某常勝無敗の天才漫画家作品全般
・まどかマギカ
・某小池一夫原作劇画
・鳥山石燕:画図百鬼夜行
・その多分色々
※
舞台設定よりもキャラのほうが比重大きいようです
わりとてきとーにあげているので、実は違うものもあると思います