破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その111、ウズコッケの保養地-2 「バッキーのほうが需要はあるだろうよ」

 

 

 

 

 

 

「しかし、妙に色っぽい奥様だなぁ?」

 

「そうですねえ。まあ、セクシーというのかなんというか……」

 

 見回りの途中――

 マコネとバッキーはジャコーを遠目に見ながら話す。

 

「そら、貴族のご婦人なんてのは美容だなんだに気を回せるからトーゼンではあるかも、だけど……」

 

 と。

 マコネは心底感心した顔で、

 

「姐さんもすげえ美人だけど? なんつうか、色気ってのかスケベェな雰囲気っつーの? その点に関しちゃ負けてるかねえ?」

 

「いやあ、というか……」

 

 バッキーは困った顔ながら、

 

 ――ひいき目かもだけど、リーダーはたぶん最高クラスの美人さんなんだよ。けど、なんかこう……そういう点では、魅力が乏しいっていうか。

 

 きれいはきれいでも、刃物とか銃? みたいなきれいさなんだよねえ……。

 

 おそらく、だが。

 引き締まり、隙の見えない硬度と柔軟性を匂わせる肉体。

 

 それより――

 ジャコーの年齢に見合った、しかし……?

 決して見苦しくない脂肪のついた肢体。

 

 ――あっちのほうが、エッチさでは魅力的だなぁ。私でもそう感じるし。まあ、リーダーはそんなのぜんぜんどーでもいいんだろうけど……。

 

 カーシャのそういった割り切りというか、無関心さ。

 

 ――正直、ああいう思考だったら変なコンプレックス(こじ)らせないですみそう。

 

 その一方で。

 

 ――スケベってところじゃ、バッキー(こいつ)もそうなんだけどよ?

 

 マコネは生暖かい目で、黒髪黒髪・地味目の小太りヒーラーの横顔を見た。

 

 美人ではないが、ひどい醜女というわけではなく。

 控えめだが、普通に礼儀はわきまえている。

 

 ――聞いた話じゃ、こーゆーちょうど良い感じの顔で、ちょうどいい感じでだらしない肉づきの女って、けっこう人気あるらしいし?

 

 以前、男連中がそんなよた話をしていたことを思いだす。

 加えて、

 

「まあ、そうだろうなあ。遊びならともかく、女房としてならバッキーのほうが需要はあるだろうよ」

 

 ゴトクもそう言っていた。

 

「サキュバスが普通にいる国じゃ、中途半端な美人なんか若かろうが需要はねえ。問題なのは中身だ」

 

 ――まあ、バッキー(こいつ)は自覚ないみたいだけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかわりをお願い――」

 

 と。

 しっとりとした、どこか耳に響く声でジャコーは言った。

 

「はい。ただ今」

 

 侍女のひとりが、すぐに空のグラスへ冷やしたお茶(アイス・ティー)を注ぎ、手渡す。

 雇われて、まだ日が浅い。

 13歳ほどの少女。

 

 

「あの、私がお付きに?」

 

 (とも)を命じられた時、少女は驚き、困惑した。

 そういった仕事は、普通ベテランで信用の厚い者が選ばれる。

 

「もちろん? あくまで補助の補助。おまけみたいなものです」

 

 侍女長は言って、

 

「それでも、経験をつまないと仕事は覚えられないのだから」

 

 と、いうことだった。

 

「こういう機会があるだけ、幸せだと思いなさい」

 

 

 ――ああは言われたけど……。

 

 グラスを手渡す時も、緊張で震えそうになっていた。

 

「ありがとう」

 

 ジャコーは優しく微笑み、グラスを受け取る。

 それから。

 何気ない動作で……。

 少女の手を触るような、あるいは撫でるような。

 微妙な動きをしたようだった。

 

 ――っ?

 

 その感覚に、少女は一瞬おかしなものを感じて小さく震える。

 不快ではない。

 が。

 どこか、おかしい。どこか妙な。

 

 

 

 

 少女は――

 以前、王都のある料理店で働いていた。

 

 単なる料理屋ではない。

 貴族など、富裕層が私的や商談、あるいは密会などで使用する店。

 高位の貴族は、個室を取ることが多い。

 トーザ侯爵と、その夫人も例に漏れなかった。

 

 というよりも。

 

 巨漢であるトーザ侯爵は、広めの個室でなければ狭苦しいようだ。

 

 その日。

 少々ひと手が少なかったため、少女がトーザ夫妻の個室へ料理を運んだ。

 

 緊張と不慣れのため、少女の仕事ぶりはぎこちなかったが、

 

「そう緊張しないで。落ちついておやりなさい?」

 

 ジャコーは優しく、リラックスさせるように言った。

 侯爵のほうは、我関せず……というか、気にした様子はない。

 

 何とか仕事を終えた少女に、

 

「あなた、可愛いわね。良ければ、うちで働く?」

 

 ジャコーはからかうように言ってきた。

 

「は、はい?」

 

 反応に困っている少女へ、

 

「ふふ。なんて、ね。これ、とっておいて」

 

 いつの間にか、小さな紙包みが手渡されていた。

 後でわかったが。

 中身は高額紙幣をきれいにたたんだもの。

 

 こういった場所でのチップは、普通のことではあるが。

 

 ジャコーの手に触れた時。

 少女は、そのなめらかで柔らかい、同時に吸いつくような感触にゾクリと震えた。

 

 

 

 それからしばらくして。

 少女は、店主の紹介で本当にトーザ家で働くことになったわけで――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ」

 

 少女があわてながら退室した後のこと。

 

 侯爵はからかうような目つきで、

 

「あんな子供に食指が動いたのか?」

 

「ふふ。女は、あれくらいでもう大人みたいなものですわ」

 

 グラスをかたむけながら、ジャコーは微笑する。

 妖艶。

 まさに、そういう笑みだった。

 

「場合によっては、嫁に行ってもおかしくはない年ではあるか」

 

 肩をすくめる侯爵へ、

 

「私があなたのもとへ輿入れしたのは、だいぶ(とう)が立った頃でしたわねえ」

 

 ジャコーはグラスを揺らし、そんなことを言った。

 

 彼女がトーザ家の花嫁となったのは、20代前半……半ば近い頃。

 現代日本の感覚で言えばまだまだ若い。

 

 しかし。

 こちらの常識、さらに貴族階級の常識では晩婚だった。

 

「お前の好き好きにうるさくは言わんが……。あまり無茶はしてやるなよ。お前はオトナとは言ったが、やはり子供だ」

 

「あら、失礼な。きれいな花をちぎったりするような野暮だと思いまして?」

 

「ふふふ。まあ、俺が言えたことではないか」

 

「本当に」

 

「こいつめ。ハハハッ」

 

 ジャコーの言葉に、侯爵はその大きな腹を揺らして笑う。

 心底、愉快そうな顔で。

 

 

 

 

 さて。

 店を出る際――

 

 

 

 

 見送りに立った中にいたひとり。

 十代半ばの、整った容姿と清潔さを感じさせる少年がいた。

 

 ジャコーはそれをチラリと見て、

 

「あなたから見て、ああいう子はどうかしら?」

 

「つまらんことを」

 

 こっそりとささやく妻へ、

 

()()()()。それ以前に……。俺の趣味に合わん」

 

 わかっていることを聞くな。

 

 侯爵は呆れた顔でそう返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







本作執筆にあたって……
色々影響していると思われるものを思い返してみました

・ジャンル:悪役令嬢もの
・ゼロの使い魔
・某常勝無敗の天才漫画家作品全般
・まどかマギカ
・某小池一夫原作劇画
・鳥山石燕:画図百鬼夜行
・その多分色々


舞台設定よりもキャラのほうが比重大きいようです
わりとてきとーにあげているので、実は違うものもあると思います




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