破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その111、ウズコッケの保養地-3 「稼げる男へ寄っていきたいのは普通っしょ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――なんなんだ、このクエスト……。

 

 プールサイドに座り、ボッツはどうにも落ちつかない気分でいた。

 納得がいかない。

 

 観光地での、変装監視員。

 そういう内容であったはずだが。

 

 一般客のふりをして見張れ。

 監視員だと悟られるな。

 

「とにかく、それが仕事の内容だから」

 

「まあ目立って囮? みたいな感じで……」

 

 こんなことを言い含められて――

 

 まあ、それはわかる。

 遊んでいるふり、あるいは本当に遊んでいたとしても?

 

 ――ダンジョンがわいたりすれば、わかるけど。そんなの、他でもすぐ察知するだろ……。だいたい、ダンジョンだってわいて速攻モンスターが出てくるわけじゃないし……。

 

 こういう、モヤモヤした思考の中。

 

「へいへい。ボッツさん? こんな場所でショボクレてちゃあ野暮ってもんスよ? パーッといきましょうや」

 

 隣へ座ってきたソテツが、バンバンと背中を叩く。

 妙に体を密着させて。

 

「ああ……」

 

 正直な話。

 ボッツ・ルフ少年も、健康な10代の少年。

 女の子に友好的に迫られ、嫌なわけがない。

 ないのだが……。

 

 ――まあ、なんというか……。

 

『こいつ、自分に気がある!?』

 

 無邪気に思えるほど、恵まれた人生は送っていない。

 

 いや?

 そういう〝純情〟な少年であろうと――

 ヤオアムト……特に、ネビズのような冒険者の街では、

 

「ほぼ99%は、スレるというか、さめたもんになるだろーな。いや、なまじ純なヤツほど、そうなる」

 

 ゴトクはそんなことを語っていた。

 

「冒険者として腕を上げて、金も実力も手に入れたら? そらぁ、女は寄ってくるわな。別に、冒険者だろうが商人だろうが、そこは変わらねえ」

 

 これは、先輩冒険者たちの談。

 

 だが、しかし。

 それゆえに、()()()()()を同時に味わうことになる。

 

 サキュバスの存在があるため、女性(オンナ)の価値、需要の低いヤオアムト。

 一般人だろうと、冒険者だろうと。

 良い男をゲットするには、さりげないアプローチとか、誘い待ちというのは通じない。

 

 当然だが、上位層には女が群がる。

 ライバルは数多い。

 まどろっこしい、遠回しなやり方ではあっという間に脱落確定。

 

 さらに?

 中や下位の男も女欲しさで必死にならない。

 金を稼ぎ、足元を固めていくことを優先する。

 愛情はないが、確実で信用のおけるサキュバスとの関係、契約を選ぶ。

 

 ――まあ……。殺伐としてるよなあ。風通しが良いとも言えるけど……。

 

 ボッツも当初――

 ヤオアムトの男女関係には、カルチャーショックを受けた。

 

 すぐに慣れてしまったが。

 

 だから……。

 

「あんたねえ、なんなのよ。いやらしい!」

 

 ソテツに対し、ミーシャが噛みついた。

 

「なんスか?」

 

「そもそも、あんたらは態度が露骨で気持ち悪いわ! やたら男に媚び売って」

 

「は~。これだから外国人(よそもん)は困るンすわ」

 

 ソテツは小バカにした顔で肩をすくめ、

 

「芝居のお姫様みたく王子様待ちとか、上から必死こいてアプローチかけてくる騎士さまを見おろすとか? そんなもん、現実でカマしてたらタダのアホっスよ?」

 

「な、なによソレ!?」

 

「あのね?」

 

 ミーシャに対し、ソテツは憐れみさえこもった眼で、

 

故郷(くに)じゃどうか知らんスけど。あんたはここじゃ多少こぎれいなだけの、そこらにいるような小娘にすぎないんス。お姫様でも、お芝居のヒロインでもねーの? わかりますぅ?」

 

「えらそうに……! あんたなんか、どう見たって下心まる出しで。ほとんどお金目当てじゃない!?」

 

「あ~。そこは否定はしないっス。でも、稼げる男へ寄っていきたいのは普通っしょ?」

 

 と。

 ソテツはチラリとボッツを見た。

 

「そりゃわかるけどな。がんばる姿に惹かれて、とか……。そういうのがないのは、知ってるよ」

 

 ボッツは、ため息と一緒にそう答えた。

 

「……あ、あんた。フンッ。スカしちゃって、バッカじゃないの!? カッコイイとでも思ってるわけ?」

 

「カッコいいか悪いかなら、カッコ悪いな」

 

 言いながら、ボッツは立ち上がる。

 

「待ちなさいよ」

 

「え? いや、ちょっと疲れたから飲み物買いに行くんだけど」

 

「う゛っ……」

 

 ボッツの返答に、ミーシャは一瞬つまるが、

 

「あんた、サキュバス街に入りびたってる連中に感化されたんじゃないでしょうね?」

 

「?」

 

「いい? あんなので満足してるのは、ちゃんとした女と向き合えない、振り向いてもらえない。そういう努力もできない、情けない連中なのよ!? あんたも、そうなりたいの!?」

 

「……え? いや、まあ……。うん。え?」

 

 意味が分からない。

 

 ボッツは、ミーシャの発言がよく理解できなかった。

 

「じゃあ、ちょっと行ってくるから」

 

 反応に困ったボッツは、ひとまずそこを離れることに。

 

「おっとと。ひとりで行くとは水臭いっス」

 

 それに、引っ付いていくソテツ。

 

「こら、話を……」

 

 引き留めようとするミーシャへ、

 

「あんたの言ったことは、間違ってないっスけどね」

 

 ソテツは振り返りながら冷笑して、

 

「ンことをゴチャゴチャ言ったって、なーんの意味もないスねえ? ちょっとの間スッキリするかもしれんスけど……」

 

 結局、単なる愚痴、八つ当たりっスから。

 そーゆーことばっかしてる(ヤツ)はね?

 

 

 ここじゃ、早死にするんスよ――

 

 

 言い残して。

 ボッツと並んで歩き出した。

 

「ま、待ちなさいって言ってるでしょう!?」

 

 ミーシャは顔を真っ赤にして、それを追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――なんなのかしらね、あの人選は。

 

 カーシャは、ボッツたちの様子を観察しながら(いぶか)しく思う。

 見た目。

 10代の男女がワチャワチャと騒いでるだけ。

 

 ――まあ、青春? のいち場面と言えなくもないかしら。

 

 ただ。

 カーシャと同じく、依頼主がああいうメンバーを選んだ理由。

 そこがよくわからない。

 監視員としても、囮としてもどこかそぐわないような。

 

 ――別に、なんでもいいけれど……。

 

 どんな場所であろうと?

 世の中、一寸先は闇。

 こんな場所にも、いつダンジョンがわいて出るか知れたものではない。

 

 ――まして。ここは貴族の客も多いようだから?

 

 街全体、下手な冒険者の街以上の警備・監視がされている。

 

 ――依頼人は、どういう意図で……。

 

 そう思った時。

 カーシャはふと、何か気配を感じとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






あれ……?

萌えアニメっぽいキャッキャウフフを書こうと思ったのに
なんか殺伐としてるような
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