破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その111、ウズコッケの保養地-7 「じゃあ、もう絶望的だわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「毛むくじゃら?」

 

「あー。なかなか厄介なヤツだから気をつけな。特に今の時期はな」

 

 先ほど――

 

「もらったから、あげるわ」

 

 と。

 カーシャが籠ごと渡してきたアイスクリーム。

 

 これを美味しく食べながら、マコネとバッキーは話していた。

 

「単純な戦闘力で言えば、そこまで大したものじゃねー。動きも鈍いしな」

 

「ってことは変な特殊能力とか」

 

「うん。そいつらは、媚薬みてえな効果のあるガスを吐き出してよ、獲物を弱らせる」

 

「? いや……ダメなんですか、フツーに麻痺とか睡眠とかじゃ」

 

 バッキーは疑問を口にしてから、

 

「でも、そういえば……」

 

 発情ってのは、つまるところ――

 次の世代を残そうって本能だ。

 つまり生命力をガンガンに上げて、そいつで子供を作るってこと。

 男女で違いはあるが、特に女の場合は……。

 

「性欲が上がりまくって、あんまり言いたくないけど、雌の本能? それがものすごく高まってる状態だから。捕食者から見れば、かなりの栄養源?」

 

「そういう感じっぽい。でまあ、動けなくして。タコの足みてえな舌で体中モミクチャにして? 頭がパープリンになったところを()()

 

 マコネは空になった紙のカップをつぶしながら言った。

 

「喰うって、それは当然エロス的なことではなくって」

 

「食事的な意味だよ。腹からモシャモシャと」

 

「ですよねえ。しかし、でも女性を欲情させて襲うかあ。薄い本的というか、スケベなオッサンみたいというか……」

 

「ギルドの本で読んだけど、それするのはメスだけだぞ」

 

「え?」

 

 意外な情報に、バッキーはちょっと驚く。

 

「卵を産むための栄養源らしいな。普段はもっと狙いやすいのを襲うんだと」

 

 子供を産むために、他の生物……の子宮を食べる。

 筋が通っているような、いないような。

 

「……つっても。やっぱ、大して強いモンスターでもねーからなあ」

 

 上澄みの連中なら、先手を取れば負けることはないけど。

 第一、あんま出くわすことはないし。

 一定の需要はあるから、けっこう良い金にはなるらしいや。

 

「需要? 素材として、ですよね」

 

「うん。そいつらの子宮は最高の精力剤になるんだと。ヨボヨボのじぃさまでも元気100倍に」

 

「あ、そういう……」

 

「ま? このへんじゃ売れんから遠国の商人が買い付けに来るぐらいだけど」

 

「なんで?」

 

「そりゃサキュバスがいたら、そんなもんいらねーし」

 

「なるほど」

 

「サキュバスが少なかったり、住民と認めてねえ。下手すりゃモンスター扱い。そういう場所じゃ高値で売れるんだとさ? 特に、金持ちやら貴族とかがよ」

 

「ほほう」

 

「けどよ。時期が限られてるし、そんなに出てこねーし、メスじゃなきゃダメだし? めんどーくせーからあんまり狩るヤツはいねーな。逆にそれを狙って行く連中もいるけど」

 

「ニッチなとこを攻めるんですね」

 

「そういう連中は、媚薬ガスだのエロ触手な(ベロ)への対策やらをキッチリしとくんだ。死なねーように」

 

「大変なんですねえ……」

 

「苦労の分、儲けはでかいんだと。リスクもでかいだろな」

 

 語りながら?

 

 ――そーいやぁ。あの()()()も、毛むくじゃら狩りで儲けてる、とか聞いたな? 噂だけど。

 

 マコネは、ソテツの姿を思い出していた、

 残ったアイスカップへ手を伸ばしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ、そう」

 

「ふーん。良かったわね」

 

「すごいわねえ」

 

 顔を見ずに、適当な返事。

 ほとんど聞き流しているようなもの。

 

 カーシャの対応に、肥満体中年男は焦っていた。

 

 引きずられていく途中――

 何とか、弁舌で言いくるめようとしたが……。

 まるで効果なし。

 

 ()()()()()()()()は、美少女や女教師、人妻……エトセトラ、エトセトラ。

 とにかく?

 狙った獲物は全て孕ませてきた。

 

 しかし。

 この女には、体から自在に発する媚薬効果の体臭は効かない。

 次なる手の話術も同様で。

 

 ならば、仕方がない。

 芸がなくて、いささかつまらぬ。

 こういう理由で、あまり使わない技だが。

 

 

 パチリ

 

 

 男は、指を鳴らした。

 

 喰らえ!

 催眠!!

 

 心の中で男は叫ぶ。

 

 功を奏したのか?

 カーシャは、立ち止まる。

 

 

 

 

 そして、振り返って、

 

 

 

 

「ああ……。そんな程度、なわけねえ。じゃあ、もう絶望的だわ」

 

「え?」

 

「場所や状況がちがえば、それなりに成果は上げられたでしょうけど。長続きはしないでしょうね」

 

「き、きかな……」

 

「正確には、弱すぎるし、薄すぎるの。心を操る厄介な能力なんてもの、対抗策を練らないわけがない。下手すれば、個人どころか国の破滅になりかねないのだから」

 

 男の頭をつかんだまま、カーシャは静かに言った。

 

「外国人ならともかく、ヤオアムト人、特に貴族はね――」

 

「な、な……」

 

「私も以前何度か、それでやられたことはある。結果は悲惨だったわねえ……。犯されるなんて、()()()()()()()()()ではなかったから」

 

 何しろ?

 まさに終わりも救いもない地獄の中だもの。

 それを一瞬でも忘れようとして振るうわけだから。

 本当に……。

 凄まじいものだったわ。

 

「気づいた時には、手足を釘付けにされてたり。切り落とされたり。他にも……」

 

 乙女の花園へ、槍だの剣だのを突きこまれてたりね。

 

 と。

 カーシャは自分の股間を指さしてみせた。

 

 絶句している男に、

 

「基本そんなことしてるバカは、すぐ死んだけど。なにせ、隙だらけになるし?」

 

 青い乙女はつまらそうに言った。

 

 そして、また歩き出す。

 男の頭をしっかりとつかみ、ぶれない足取りで。

 

「お前がどこから来たのかは知らないけど。こんなところでウロウロせずにサキュバス街にでも行けば良かったのに。そうしたら、可愛がって死ぬまで世話してもらえたわ。質の良い乳牛として」

 

 男で乳牛はおかしいかしら?

 いえ。

 似たようなものを出すから、良いのかも?

 

 カーシャはブツブツ言いながら、

 

「ま。どうだっていいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様からいただく感想でヒントや気づきを何度もいただいております

改めて感謝!!
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