破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
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「で――」
帰りの準備をしながら、カーシャは振り向きもせずに言った。
背後には、エルフの美少女――
ユオン・キナが立っている。
「どっから来たのかまでは知りませんけど。おかしな技で好き勝手してましたので? ちょっとばかり小細工をしたんですよ」
あれでなかなか、普通の歩兵や冒険者じゃ手こずるか……。
捕縛できても派手になりそうなので。
ユオンはそう言って苦笑。
「来月か
「ふうん。なるほど? おかしなスケベ男が暴れたなんて話が出たら」
「はい。
「それで、捕まったアレは今頃解剖でもされてると」
「ははは。いやあ、そこまでは。けど、わりとサンプルの多いタイプだから、死んじゃっても問題なし、ということになりそうですねえ」
気づけば……。
黒いような白いような。
あるいは灰色のような。
奇妙な場所に浮かんでいた。
空間内のあちこちから、いくつもの声が響く。
「まったくもって――」
「女を寝取った相手から闇討ちにあって死んじゃうなんて、君には失望したよ」
「そんな根性のかけらもないお前に朗報だ」
「新たに肉体を再生させて、司法も追ってこれない場所に送ってやろう」
「女子校生だの美人教師だの、そんなチャチなものじゃあない」
「高貴な姫君や貴婦人。凛々しい女騎士や可憐な魔法使い。美貌のエルフ。創作の中にしかいない美女や美少女が盛りだくさんだ」
「今まで種付けしてきた女どもが、薄汚いホームレスババァに思えるぞ?」
「ただし――」
「剣と魔法、日本社会とちがってモンスターがあふれた世界。命は紙のように軽い」
「そこのところはよく呑み込んでおけよ?」
そして、現在。
男は、そのブヨブヨとした体を揺らしていた。
腕を完全に拘束され――
天井に伸ばしたまま、つるし上げられている。
三角木馬へ乗せられた下半身。
薄暗い部屋だった。
「なかなか荘厳じゃあないか」
大きな影が、楽しそうに言った。
「ま、待ってくれ……!」
男は、必死で叫んだ。
「俺みたいなのを捕まえなくっても、イケメンはいくらでもいるだろ?! ナニしたって、面白くねえよ!」
だからカンベンしてくれ。
そういうものを込めて、男は許しをこう。
「いやいや」
大きな影……巨漢。
ラージ・トーザ侯爵は苦笑して手を振った。
まるで。
親しい友人に接するような態度で。
「そうじゃない。そこは重要じゃないんだよ、
「へ……?」
「気づいてはいないんだろうが――」
と。
侯爵は太い葉巻へ火をつけた。
マッチもライターも使わない。
火は、勝手についたのだ。
単純な着火魔法のひとつ。
葉巻の香りは、タバコのそれではなくコーヒーのもの。
「知ってるかね。こいつはカフェ・シガーというんだ?」
君もやるかい?
侯爵は友好的な態度で、葉巻を一本差し出す。
当然。
男のほうに、そんな余裕はない。
「やらんか? もっと豪胆だと思っておったんだが」
侯爵は肩をすくめてから、
「ところで……自分の体を見て気づいたことはないかな?」
言われて、男は気づいた。
全身、特に腹を中心に不気味な
「少し特殊な刻印でな? お前さんの特技……〝スキル〟だったか。そいつを潰す効果がある」
その言葉に――
男は一瞬ポカンとなるが、すぐに顔色を変えた。
「あー、封じるんじゃあない。潰すんだぞ? つまり、二度と使えなくなるんだ。
侯爵はカフェ・シガーを
何でもないことのように。
「女を骨抜きにして、奴隷にする技か。便利なもんだ。こっちの手駒になってくれれば、相応の待遇はしたんだがなあ。いや、残念だ」
「ま、待ってくれ!?」
首を振る侯爵へ――
男は必死で弁解と〝売り込み〟をした。
が、
「悪いがな? こっちだってバカじゃあない。君の素性は洗わせてもらった。近くの街で、なかなか派手にやったそうじゃないか」
「……!」
「うまくやったつもりだったかな? いささか考えが甘いね。とはいえだ……」
侯爵はコーヒーの臭いがする煙を吐きながら、
「こっちにも色々事情があってね。ことを大げさにしたくはなかった。ケチがつくんでね。それがなかったら、即座に捕縛したんだが」
おかげで、面倒なことをする羽目になった。
しかし、まあ……。
バカンスのついでと思うことにしたよ。
言いながら、侯爵は男の頬をペチペチと叩く。
「こ、殺さないでくれ……」
男はそういった内容のことを言った。
侯爵はそれに対して、
「ほう。震えあがっても、そこだけ縮んでおらんね。見事な大筒だ」
男の下半身を見ながら楽しそうに言った。
やめてくれ……!
やめてくれ……!
男は――
部屋の床に転がっていた。
空っぽの
死んではない。
ただ……。
ある意味。
死んでいたほうが、男にとっては救いかもしれない。
「なぁに気にすることはない」
侯爵は全身の汗をぬぐいもせずに、カフェ・シガーを
「こっちに関しては、
男は答えない。
答えることも、言葉を認識することもできなかった。
「それにだ。君、モテるぞ。その体も、立派な大筒も」
巨体を揺すり、侯爵は笑った。
「女というやつは、男が気にするほどサイズは気にせんものだ。男のほうが、そっちには執着するものだよ」
「運が悪いのか、自業自得か……」
プールサイドでバカンスを続けながら、ジャコーはつぶやいた。
「奥様、なにか」
つぶやきを聞いた侍女が反応すると
「いえ? ちょっと考え事をね」
艶っぽい笑みの後、
――けれど。我が旦那様相手なら良かったとも言えるかしら。あれで、お優しいかただから。
ジャコーは夫の顔を思い浮かべていた。
――世の中には、もっと趣味の悪い男もたくさんいることだし……。
今エピソード、あと一回ございますので
よろしくお願いいたします