破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
ちょっと考え直して書き直しプラス1話分増やしました
よろしければ前回をちょっと見返してから読んでいただけると……
あてもない放浪の中。
マコネは死んだ真似がうまくなった。
死体に偽装すれば、無視されるからだ。
それでピンチをやりすごしたことは1度や2度ではない。
こんな毎日では、水も食い物もあるはずはなく……。
水は川でどうにかなることもあったが、食い物はいつも苦労した。
川で魚をとっても、焼くために火を起こせばそれを見てよってくる連中もいる。
中には、モンスターも。
他の子どもと一緒に行動することもあった。
だが、途中で飢えや病気、ケガで死ぬ者が後を絶たない。
病気となった者をどうにか連れいっても、気づけば死んでいることも。
逃げ回るうち、すぐにひとりになった。
飢えに耐えかねて、死体を食いかけたことも。
「ひとを食えば、いずれ病になって死ぬ」
いつか、父親から聞いた話。
それがなければ、とっくに食人をしていたかもしれない。
ゾンビとなった死体から逃げ回ったこともあった。
あちこちで転がる、適切に処理されなかった死体。
場所によるが土地にたまった魔力でゾンビとなったのだ。
「食べ物、水、ちょうだい。なんでも、言うこと聞くから――」
無気力な、飢えた子供を演じて、油断させ、すばやく盗んで逃げる方法もおぼえた。
相手はよく見て、選ぶ。
交渉など通じない相手や、大勢に囲まれてオモチャにされる者はいくつも見たから。
が。
それはすぐにやめた。
なにしろ当時、マコネは薄汚い物乞いの子供でしかない。
こんなものの色仕掛け? に引っかかるのは、同じような立場の――
つまり、ろくにものを持っていない連中なのだから。
ある程度余裕のある者は
「失せろ、クソガキ!」
と。
追い払ってくる。
盗む。奪う。
それがやりやすい相手は、女を襲っている最中の男だったりした。
この発見? は、女を組みしき、殴っている男を見た時で、
「死ね、バカ」
夢中になって油断している背後から、大きな石で殴る。
その後、念のため石を思い切り叩きつけた。
死んだのか、どうなったのか。
いちいち確認などしてはいない。
取れるものをすばやく奪って、全力で逃げる。
リスクも大きいので、そう何度もやることはなかったが……。
どうにもならない時は、
所詮は子供なので、体力でも腕力でも大人や年上にかなわない。
だから、二重三重、あるいは四、五と罠を張り、準備をする。
時には、囮としてモンスターに襲わせて、その隙に……。
という手段も。
少しでも危ない、失敗したと判断すれば即座に逃げた。
せっかく手に入れかけた食い物も、放り出して。
「死んで、死んでたまるかよ……!」
ひとり落ちのびながら、何度も口にした。
故郷を、家を、親を無くして――
ショックも恐怖も嫌になるほど味わった。
でも、死にたいと思ったことはない。
「死にたい」
へたりこんで、そんなことをこぼしている者は老若男女問わずにいたけれど。
同情も共感もしたことはない。
マコネにとっては、ものを盗みやすい相手でしかなかった。
死にたくない。
そう思い、叫んでも、死んでいく者は大勢いたのだから。
どうにか。
ヤオアムトに流民として入り込んだ後。
生きやすい、逃げやすい場所を選んでいるうちにネビズへたどりつき、
――捕まって、孤児院に放り込まれたんだよな……。
そこも、ハッキリ言っていいかげん極まる場所だったが。
抜け出すことは、マコネ以外の子供でもできた。
おまけに。
抜け出して帰ってきても、気づくことさえない時も。
街をうろつき、適当な手伝いや雑用をして小銭を稼いだ。
ギルドでは、子供でも冒険者登録はできた。
ヤオアムトでは……。
流民として逃げている時と同じようにはいかない。
何かすればすぐに捕まる。
軽率に犯罪を行い、縛り首、斬首、あるいは逆さづり。
そうやって、見せしめになった連中も大勢見た。
子供でも、12~3ほどになれば大人並みに罰を受ける。
つまり。
死体となってつるされることもあるわけで。
ネビズで多少落ちついた暮らしが続くと――
何度も、死人の夢を見た。
焼け跡の中から、死体が起き上がる。
石で殴りつけた男や、食い物を盗み取った女。
実際には、死んでいないかもしれないが?
夢の中で死人だった。
それでも。
マコネにとっては、悪夢というレベルではない。
死体など飽きるほど見た。
同じ流民の男から、犯されかけたことも。
本物のゾンビの群れに追われたことも。
モンスターに喰われかけたことも。
「恨みごとしか言えねえ
そんな中。
わりと、早い頃だったろうか。
マコネは、エルフのゴトクと出会った。
このエルフ。
あわれな物乞いであろうと、飢えた子供だろうと?
タダではものをくれないし、教えてもくれない。
が。
逆に言うと、仕事をすれば相応のものや金をくれた。
あるいは、何かを教えることも。
「その身軽さは天性だな。だからまあ、それに合ったものは教えてやる。基本の基本、さわりのさわりだが」
こうして教わったのが、軽身術。
つまり、体を軽く、敏捷に動かす技。
そして遁術、隠形。
これは逃げて、隠れる技。
「見合った金を出せば、もっと教えてやる」
ゴトクはそう言ったが。
マコネにとっては、基本の基本だけで十分だった。
わざわざ危険など冒さない。
危ない橋は渡らない。
いただけるものは、いただく。
そうやって、野良猫のごとく生きていたところに、
「お前、なに?」
青い髪の女に出会った。
「あーあ……」
瞬きみたいな、わずか時間。
少しの、感傷みたいなもの。
それを打ち切ると、マコネは立ち上がる。
「死んで、たまるかよっと――」
屋根をスルスルと降りて、
――なんか、良い
ネビズの街で小走りに走り出す。