破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
今回より新エピソードです
「――なんか、変なモンばっかだなあ?」
周辺を見まわしながら、マコネは首をひねる。
この日……。
ネビズでは一種のフリーマーケットが開かれ、大勢の者が集まっていた。
基本、ヤオアムト国民や冒険者登録をした者なら自由に出店できる。
そこでの売り上げには税がかからないため、遠くから参加しにくる者も。
マコネはその中で、ガラクタだらけの売り場を歩いていた。
少なくとも、彼女からはそうとしか見えないモノばかり並んだ場所。
基本骨董品を中心にしているらしい。
――ん?
歩くうち、マコネはある売り場に目を止めた。
やはり。
ゴミだかガラクタかわからない古道具ばかり並んでいるのだが、
――なんだコレ。
マコネはしゃがみこみ、あるモノを見る。
くすんだ、青い香炉。
本来彼女には用のない代物。
しかし?
一瞬、目に入った香炉の表面。
マコネはそれに、ピリリとしたものを感じたのだ。
手に取って確認すると、
――あれ、これって……。
鳥の姿を
おそらくは、
その紋章にマコネはおぼえがあったのである。
少し前のこと。
王都で行われた、王太子の結婚式。
これがデカデカと載った新聞。
王太子とその妃となる少女の【写真】も一緒で。
花嫁の着ている、青を基調としたウェディング・ドレス。
それには、青い鳥の紋章があった。
「こりゃ何の鳥だろな?」
新聞を読みながら、マコネは何気なくつぶやいた。
それほど興味があったわけでない。
思ったことをちょっと口にしただけのこと。
すると――
「花嫁のドレスについてるのなら、多分
ゴトクとカードゲームに興じていたカーシャ。
青い髪の乙女は、カードに目を向けたまま言った。
なじみの喫茶店。
そこのオープンテラスにマコネはいたのだが、
「なんでわかンの?」
「花嫁が着ているのでしょう。なら、チーフウォールの紋章が入っているはずだから」
「うむン……」
どうでもよさそうなカーシャの言葉に、マコネはちょっと口を閉じた。
チーフウォール。
かつて、カーシャの家名だったもの。
大貴族、公爵の家柄。
「確か、あそこの家紋は青い
カードを1枚とりながら、ゴトクが言った。
「そうね。魔術神の使い……とされている鳥」
こうした経緯で、マコネはそれを知っていた。
――しかしなあ?
まさか。
公爵家と関わりのある品がこんな場所にあるはずがない。
ただ、その香炉自体は何となく気に入った。
別に香りを楽しむなど、優雅な趣味はないのだけど。
「それで、いくらしたんですかこれ?」
机に置かれた香炉を見て、バッキーはたずねる。
「3000ジュラ」
――つまり、およそ3000円。高いんだか、安いんだか……。
バッキーは判断に困りながら、香炉を手に取ってみる。
意外に重い。
触れてみてわかったが、かなりしっかりとした造りのようだ。
「デザインも上品だし……。けっこういいものかも」
するとマコネは、
「売ってたおっさんは、偽物だって言ってたぞ」
「まあ、それはそうでしょうね」
バッキーは苦笑しながら、
「けど、やっぱり良い感じですよね。きれいにしたら、けっこうイケるんじゃないかなぁ」
そういうわけで。
バッキーは香炉をきれいにふいて磨いた。
予想通り。
きれいになった香炉は、かなり見栄えがする。
「これ、どこに飾りましょうか?」
「さあ? こういうのって寝室とか客間かねえ?」
2人がそんなことを話していると、
「んんん~~~~………???」
にゅうっ、と。
尼僧姿の少女……ボロンが顔を突き出してきた。
「うわ」
「ひゃ?」
まるで気配がなかったため?
不意を突かれた野良猫とヒーラーは、思わずのけぞる。
「おい、声くらいかけろよ」
照れ隠しもあってか。
マコネは若干不機嫌そうに言ったが、
「んん~~~~。これは……」
ボロンはジロジロと香炉を見つめている。
目つきが、どこかおかしい。
「あの、ひょっとして、これ何かあるの?」
バッキーの質問に対して、
「なんじゃ、よくわかりませんですねえ? これは、まいるなあ?」
ボロンは目をキョトキョトさせて言った。
返事をしたのか、独り言なのかわからない。
「お前、こいつになんか見えるのか? あんま大したことはないと思うがな?」
マコネがのぞきこむようにボロンを見ると、
「うううう~~~ん。どうしたものですかなあぁ……」
ボロンは両手で包み込むように――
香炉に触れた。
しばらく、そのままだったが……。
「ンにゅあ~~~~~~~~~…………!!!」
得体の知れない叫び。
ボロンはそれを発しながら、ひっくり返った。
両手には、香炉をつかんだまま。
「おいおいおい……!?」
「ちょ、ちょちょちょ……!」
マコネとバッキーは、あわててボロンを助け起こす。
と、
「ピカ、ピカ、ピカ。シュシュシュシュシュ………!」
ボロンは奇声を発しながら、目を見開く。
その眼には瞳がなく、サーチライトみたいな光が飛び出していた。
「こいつは、いつもの?」
マコネのつぶやきに、
――道具の、記憶? それがまた映る? でも……。
ボロンのこんな反応は初めてだ。
バッキーはボロンを抱えながら、光の先を見る。
しかし。
何か、砂嵐みたいなものが薄く映っただけ。
これだけだった。
光はすぐに消え、ボロンの眼には瞳が戻る。
「……はて?」
ボロンは起き上がりながら、不思議そうな顔。
「わたし、なにしてたんでしたっけ?」
マヌケな顔でマヌケな言葉。
「なんなんだよ、お前は……」
「ンもおぉ……」
マコネとバッキーは、思わずそれに脱力する。
「――なんの騒ぎ?」
部屋に入ってきたカーシャが見たもの。
それは。
ひとかたまりになってマヌケな姿をさらしている3人の乙女たち。