破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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ちょっと遅れてしまいました……

今回より新エピソードです


その112、反魂香炉-1 青い(さぎ)

 

 

 

 

 

 

 

「――なんか、変なモンばっかだなあ?」

 

 周辺を見まわしながら、マコネは首をひねる。

 

 この日……。

 

 ネビズでは一種のフリーマーケットが開かれ、大勢の者が集まっていた。

 基本、ヤオアムト国民や冒険者登録をした者なら自由に出店できる。

 そこでの売り上げには税がかからないため、遠くから参加しにくる者も。

 

 マコネはその中で、ガラクタだらけの売り場を歩いていた。

 少なくとも、彼女からはそうとしか見えないモノばかり並んだ場所。

 基本骨董品を中心にしているらしい。

 

 ――ん?

 

 歩くうち、マコネはある売り場に目を止めた。

 

 やはり。

 ゴミだかガラクタかわからない古道具ばかり並んでいるのだが、

 

 ――なんだコレ。

 

 マコネはしゃがみこみ、あるモノを見る。

 くすんだ、青い香炉。

 

 本来彼女には用のない代物。

 しかし?

 

 一瞬、目に入った香炉の表面。

 

 マコネはそれに、ピリリとしたものを感じたのだ。

 

 手に取って確認すると、

 

 ――あれ、これって……。

 

 鳥の姿を(かたど)った紋章。

 おそらくは、(さぎ)(たぐい)か。

 

 その紋章にマコネはおぼえがあったのである。

 

 

 少し前のこと。

 

 

 王都で行われた、王太子の結婚式。

 これがデカデカと載った新聞。

 王太子とその妃となる少女の【写真】も一緒で。

 

 花嫁の着ている、青を基調としたウェディング・ドレス。

 それには、青い鳥の紋章があった。

 

「こりゃ何の鳥だろな?」

 

 新聞を読みながら、マコネは何気なくつぶやいた。

 それほど興味があったわけでない。

 思ったことをちょっと口にしただけのこと。

 

 すると――

 

「花嫁のドレスについてるのなら、多分(さぎ)でしょうね」

 

 ゴトクとカードゲームに興じていたカーシャ。

 青い髪の乙女は、カードに目を向けたまま言った。

 

 なじみの喫茶店。

 そこのオープンテラスにマコネはいたのだが、

 

「なんでわかンの?」

 

「花嫁が着ているのでしょう。なら、チーフウォールの紋章が入っているはずだから」

 

「うむン……」

 

 どうでもよさそうなカーシャの言葉に、マコネはちょっと口を閉じた。

 

 チーフウォール。

 かつて、カーシャの家名だったもの。

 大貴族、公爵の家柄。

 

「確か、あそこの家紋は青い(さぎ)だったな」

 

 カードを1枚とりながら、ゴトクが言った。

 

「そうね。魔術神の使い……とされている鳥」

 

 

 こうした経緯で、マコネはそれを知っていた。

 

 ――しかしなあ?

 

 まさか。

 公爵家と関わりのある品がこんな場所にあるはずがない。

 

 ただ、その香炉自体は何となく気に入った。

 別に香りを楽しむなど、優雅な趣味はないのだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、いくらしたんですかこれ?」

 

 机に置かれた香炉を見て、バッキーはたずねる。

 

「3000ジュラ」

 

 ――つまり、およそ3000円。高いんだか、安いんだか……。

 

 バッキーは判断に困りながら、香炉を手に取ってみる。

 意外に重い。

 触れてみてわかったが、かなりしっかりとした造りのようだ。

 

「デザインも上品だし……。けっこういいものかも」

 

 するとマコネは、

 

「売ってたおっさんは、偽物だって言ってたぞ」

 

「まあ、それはそうでしょうね」

 

 バッキーは苦笑しながら、

 

「けど、やっぱり良い感じですよね。きれいにしたら、けっこうイケるんじゃないかなぁ」

 

 そういうわけで。

 

 バッキーは香炉をきれいにふいて磨いた。

 予想通り。

 きれいになった香炉は、かなり見栄えがする。

 

「これ、どこに飾りましょうか?」

 

「さあ? こういうのって寝室とか客間かねえ?」

 

 2人がそんなことを話していると、

 

「んんん~~~~………???」

 

 にゅうっ、と。

 

 尼僧姿の少女……ボロンが顔を突き出してきた。

 

「うわ」

 

「ひゃ?」

 

 まるで気配がなかったため?

 不意を突かれた野良猫とヒーラーは、思わずのけぞる。

 

「おい、声くらいかけろよ」

 

 照れ隠しもあってか。

 マコネは若干不機嫌そうに言ったが、

 

「んん~~~~。これは……」

 

 ボロンはジロジロと香炉を見つめている。

 目つきが、どこかおかしい。

 

「あの、ひょっとして、これ何かあるの?」

 

 バッキーの質問に対して、

 

「なんじゃ、よくわかりませんですねえ? これは、まいるなあ?」

 

 ボロンは目をキョトキョトさせて言った。

 返事をしたのか、独り言なのかわからない。

 

「お前、こいつになんか見えるのか? あんま大したことはないと思うがな?」

 

 マコネがのぞきこむようにボロンを見ると、

 

「うううう~~~ん。どうしたものですかなあぁ……」

 

 ボロンは両手で包み込むように――

 香炉に触れた。

 

 しばらく、そのままだったが……。

 

 

「ンにゅあ~~~~~~~~~…………!!!」

 

 

 得体の知れない叫び。

 ボロンはそれを発しながら、ひっくり返った。

 両手には、香炉をつかんだまま。

 

「おいおいおい……!?」

 

「ちょ、ちょちょちょ……!」

 

 マコネとバッキーは、あわててボロンを助け起こす。

 

 と、

 

「ピカ、ピカ、ピカ。シュシュシュシュシュ………!」

 

 ボロンは奇声を発しながら、目を見開く。

 その眼には瞳がなく、サーチライトみたいな光が飛び出していた。

 

「こいつは、いつもの?」

 

 マコネのつぶやきに、

 

 ――道具の、記憶? それがまた映る? でも……。

 

 ボロンのこんな反応は初めてだ。

 バッキーはボロンを抱えながら、光の先を見る。

 

 しかし。

 

 何か、砂嵐みたいなものが薄く映っただけ。

 これだけだった。

 

 光はすぐに消え、ボロンの眼には瞳が戻る。

 

「……はて?」

 

 ボロンは起き上がりながら、不思議そうな顔。

 

「わたし、なにしてたんでしたっけ?」

 

 マヌケな顔でマヌケな言葉。

 

「なんなんだよ、お前は……」

 

「ンもおぉ……」

 

 マコネとバッキーは、思わずそれに脱力する。

 

 

「――なんの騒ぎ?」

 

 

 部屋に入ってきたカーシャが見たもの。

 それは。

 ひとかたまりになってマヌケな姿をさらしている3人の乙女たち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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