破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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すみません
ちょっとしたミスで更新が遅れてしまいました






その112、反魂香炉-4 タイトル:『舞い踊る愛の女神』

 

 

 

 文献によると。

 

 ガヒューは?

 数百年前にあった、そこそこ大きな国の名前。

 国があった場所を中心とした土地。

 それを総称したもの。

 

 

 この地方に伝わっていた説話。

 

 

 ある国に、ひとりの王がおり……。

 王には若く勇敢な騎士が仕えていた。

 

 ――明言はしてないけど、王様とお妃は年の差婚みたいな? でも、こっちじゃフツーか。特に王様だし。

 

 騎士は美しい少女と恋仲で、結婚も間近だった。

 

 が、しかし。

 王はその少女に横恋慕。

 

 何とかして、自分のものにしようとする。

 当然だが、事態は揉める揉める。

 

 結果、国は乱れて滅びた。

 

 ――でも、この話……。

 

 2冊目の本である、『名作演劇特選』。

 これに、同じあらすじのものがあった。

 

 初演はソーゲン王の時代から数十年後。

 

「どういうことなの?」

 

 バッキーにはカーシャの意図がよくわからなかった。

 

 なので?

 

 ――もうちょっと調べてみようかな……。

 

 元の説話について、他の文献を色々とあさる。

 

 そして、わかったこと。

 

 ――あれ? 逆じゃん。

 

 時代をさかぼっていくと、話は逆になっていた。

 

 つまり。

 若く美しい王妃と、騎士との浮気。

 それによって引き起こされる内乱。

 

 騎士と王妃は駆け落ちしたとか、遠くで別の国を興したとか。

 怒った王に処刑されたとか。

 結末のバリエーションは色々だったが。

 

 ――こういうの、どっか聞いたことある気もするな。

 

 しかし。

 舞台のほうでは役割が逆になっている。

 それは、どういうことなのか。

 

 ――題材にするなら、別に話を変えなくっても良さそうもんだけど……。

 

 作者はなぜんそんなことをしたのか。

 

 バッキーはさらに文献を調べつつ、

 

 ――ええと……? もとのお話……は、ヤオアムトじゃぜんぜん知られてなかった感じで……。

 

 むしろ。

 舞台をきっかけに、知られるようになったのだ。

 

 ――人口に膾炙(かいしゃ)するってヤツだね。で、このせいで説話のあらすじも変形しちゃったと……。

 

 後世の創作の影響。

 これによって、さかのぼって説話のほうが変化してまった。

 そういうことらしい。

 

 ――???

 

 やはり、バッキーにはよくわからない。

 

 そして。

 舞台に関する記録などを読んでいくと……。

 

「ん?」

 

 芝居の脚本。

 それは、初演よりもずっと前――

 ソーゲン王が亡くなってから5年もたたない頃に完成していたとある。

 

 あるいは?

 王の没後間もない頃、という可能性もあるそうだ。

 

 脚本の作者は、名手として今も名の残っている人物。

 多くの傑作を生みだした名作家。

 

 ――けど、そんなひとの書いた脚本なのに、みんな公演には消極的だった。

 

 役者は劇場の支配人など、関係者。

 記録を読むに……。

 消極的どころか、忌避されていたとも言える。

 

 ――でも、ずっと後に公演されて、名作と呼ばれるようになってるんだよね。

 

 数十年後。

 ある人気役者が、死蔵されていた脚本を見つけて、

 

「これはすごい」

 

 脚本の出来栄えに感動して、自腹を切るような形で初演まで持っていったという。

 その証言から、大きく書き直されたのでもなさそうだ。

 

 ――なんだ、これ……。

 

 妙なもの。

 表沙汰にできないなにか。

 書かれた脚本には、そういったものがあったのではないか?

 

 また。

 ソーゲン王没後の記録などでは、

 

 ・先王に対する、悪質な風聞が流布した。

 

 こういうものが見つかった。

 

 ――じゃあ、問題のお芝居は……。

 

 ソーゲン王のスキャンダルに関係するものだった。

 そういうことではないか。

 

 ――だからみんな怖がって協力しなかった、ってこと?

 

 確かに。

 王が亡くなった直後に、それを揶揄した舞台などできるわけがない。

 

 ――でも? 作者さんは、そういうことも平気でやるような人物だった……。

 

 作家としては天才だが。

 その言動はかなりエキセントリックで、困った性格で。

 関係者もしょっちゅう迷惑をこうむっていたようだ。

 

 ――それで……。王様のスキャンダルは女性がらみ、だっただろうなあ。きっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……結局? あの美人はいったいどこの誰なんだよ?」

 

 マコネは、疲れた顔のバッキーにたずねた。

 図書館近くの軽食店。

 3人の乙女は、そこでお茶を飲んでいる。

 

「いやあ、それが。色々調べてみたけど、あの女性(ひと)に関する記録っていうか? 写真とか肖像画も見つけられなくって。そもそも、名前がわからないですからね……」

 

 バッキーは、頬を指で掻きながら苦笑する。

 

「あれだけの美人だし、宮廷関係者だったら? なにかしら残ってそうなものなんですけど……?」

 

「身分は、それほど高くなかったかもしれないわ」

 

 黙っていたカーシャはいきなり言った。

 

「え?」

 

「平民が王族・貴族の側室になる。別によくある、普通のことだけど。やっぱり、軋轢(あつれき)はあるから」

 

「するってーと。王様のお気に入りだったけど、身分の低い生まれだから扱いが悪かったとか?」

 

 マコネがそんな問いを投げると、

 

「その通りよ。子供でも産めば、また別だけど。でも?」

 

 絵姿が残ってないとは限らないわ。

 

 カーシャは髪をかき上げて、お茶をひとくち。

 

「えと、それは――」

 

 バッキーが顔を上げると、

 

「本人だと記さず、女神や伝説・神話の人物を描いたもの。そういう建前にして、とかね」

 

「けど他のヤツにはすぐわかるだろ、そんなの」

 

「あくまでモデルにしたと言えば、良いのよ。そっくりに描かない場合も、わかる者に誰それだとわかるようにしてるパターンもある」

 

 政敵や恨みのある相手を、怪物や悪魔に見立てたものだってあるしね?

 

 この。

 カーシャの言葉が終わるか終わらないかのうちに、

 

「……すみません! また行ってきます!」

 

 バッキーは立ち上がって店を飛び出し、また図書館へ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてバッキーは、

 

『舞い踊る愛の女神』

 

 という題名の絵画を、ある本で発見した。

 

 描かれている女神の姿。

 それは、まさしく。

 幻影の女と同じ顔。同じ姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

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