破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その112、反魂香炉-5 つまりはそういうことらしい

 

 

 

 

 

 

 

 

 香が焚かれる中――

 4人の乙女はテーブルを囲んでいた。

 テーブルの上には、問題の香炉。

 

「何かあるのか、どうか」

 

 試してみるもいいわね。

 

 カーシャは指を切り、血のしずくを香炉へ落とした。

 

 小さな、青い光の(さぎ)

 それが女の幻影周辺を飛ぶ。

 

 

「んーふ……?」

 

 ボロンは青く光る香炉を見つめていたが?

 

「あ、よいっせと」

 

 いきなり。

 香炉を両手でつかんだ。

 

「あ。おい?」

 

 マコネが手を伸ばしかけた時、

 

 

 バオーーン

 

 

 どこか、銅鑼(どら)か鐘のような奇妙な音。

 いや。

 振動が部屋全体へ響き渡る。

 

 そして?

 香炉を中心に青く、白く……。

 まわりが、塗り替えられていった。

 

「なにぃ!?」

 

「な、なんだぁ!?」

 

 マコネは身を低くし、バッキーは混乱のためやや乱暴な口調。

 

「……」

 

 カーシャは目を鋭く、観察を続ける。

 

 

 すぐに、〝景色〟は安定した。

 

 多くの声が飛び交い、街には群衆があふれていた。

 

 

「木神祭か……」

 

「え?」

 

「春から夏になりかける、その開かれるお祭り。私の知ってるものとは、けっこうちがうようだけど」

 

「へえ……」

 

「木の神が荒地に植林をした。その話が由来になってるそうだけど」

 

 カーシャは大神殿と、そこに集まる群衆を見て肩をすくめる。

 

 バッキーから見ると大神殿は、

 

 ――お寺か神社みたい……。

 

 構造や雰囲気から、そう思えた。

 

「ん?」

 

 そこで、バッキーは気づく。

 自分の体が、半透明となっている。

 そればかり、浮遊していることに。

 

 見れば。

 カーシャもマコネも同じだった。

 

「これ、一種の幻覚、いえ夢みたいなものかしらね」

 

「どういうこったい?」

 

 浮遊状態に適応したのか?

 マコネはあぐらをかきながらカーシャにたずねる。

 

「言ったままの話。それ以外に言いようがない。少なくとも、私には説明する言葉がないわ」

 

「たぶん? 香炉の記憶、みたいなものをこういう形で見てるんじゃないですかね」

 

「別に、映像でもいいけどな。ここまでサービスしてくれなくっても……」

 

 バッキーの意見に、マコネは皮肉げに周辺を見る。

 

 と?

 

 景色が変わった。

 どこかの建物に、多くの貴族たちが集まっている。

 

「たぶんここ、さっき見てた大神殿……の最上階ね。様子は変わってるけど、見覚えがある。で――」

 

 カーシャは言いながら、ある方向を指した。

 

「あそこにいるのが、当時の国王。ソーゲン王ね」

 

「ははあ。なるほど……」

 

 バッキーはうなずいた。

 多くの家臣に囲まれた威厳のある老人。

 確かに、【写真】で見たソーゲン王そのひとである。

 

 興味をそそられ、近づいてみると?

 

「あの娘は、誰だ?」

 

「え!?」

 

 王の言葉に、バッキーがは一瞬ドキリとした。

 

 自分が見られているのではないか? 

 と、思ったのだが。

 

 王の視線は、離れた場所で歓談をしている女性に向けられていた。

 

「あ」

 

 バッキーは思わず、王の顔と女性を見比べた。

 

 その女性。

 幻影として現れ、絵に女神のモデルとして描かれていた人物。

 これに間違いはなかった。

 

 名前は、ララ・ケーケ・プルンプアン。 

 記録によれば。

 第7王子リフラ・バルカン・ヤオアムトの婚約者だとあった。

 

 ただ。

 

 結婚前に病気で亡くなっている。

 あとは、プルンプアン子爵家の末娘だいうこと。

 それくらいしか、記録になかった

 

「はっ。リフラ殿下の婚約者にございます」

 

「――なに、リフラの?」

 

 バッキーは王と家臣の会話を見ながら、

 

「王様……が、王子の、息子の婚約者を知らないって……」

 

 あきれながらつぶやくと、

 

「まあ、この時代なら珍しくもないでしょうね」

 

 横に立っていたカーシャが言った。

 

「そ、そうなんですか?」

 

「ソーゲン王は退位する直前まで、アレコレ忙しく動いていたらしいから。いくら王子でも、7番目となれば、ね」

 

 ある程度優秀なお付きや教育係がいた場合……。

 そいつらにまかせておけば、放置してても問題はなかったのよ。

 

 カーシャはそう言いながら、ソーゲン王の動向を観察。

 珍獣でも見るような目つきで。

 

 

 すると?

 

 

 また、景色が変わった。

 どうやら王宮内部らしいが、

 

「何と仰せられます!?」

 

 家臣がソーゲン王の背中に向かって叫んだ。

 かなり焦り、動揺している。

 

「お。このひとって」

 

 家臣の顔を見て、バッキーは反応。

 

 ゾース・カオ。

 宰相をつとめ、ソーゲン王の右腕とも呼ばれた人物。

 歴史書の記述によると……。

 ソーゲンの功績には、彼の助けが大きく貢献したようだ。

 

「ララ様は、リフラ王子の婚約者でありませぬか!」

 

 ゾースは王の横へと近寄り、

 

「それを、いきなり側室になどと……あまりにも。お戯れにしても、趣味が悪うございますぞ!!」

 

 頼むから冗談と言ってくれ。

 ゾースの顔は、そう言いたげだった。

 

「戯れではない。本気でもうしておるのだ」

 

「へ、陛下……」

 

「ゾースよ。余は国王にして父。それにふさわしい、求められる働きをしてきたつもりだ」

 

「もちろん存じております。不肖わたくしも、おそばでずっと見続けてまいりました。1000年後にも名君とうたわれることは間違いなし。全ての神々に誓って断言できますれば」

 

「ならば」

 

 ソーゲンは鋭い瞳で宰相を睨んだ。

 どこか、少年を思わせる熱い視線。

 

「その対価として、多少の無理、我儘(わがまま)としても良いのではないか?」

 

 王に対し、宰相は答えることができない。

 大きく見開いた瞳で、見返すのみだった。

 

 その瞳にあるのは――

 

 悲しみなのか。

 怒りなのか。

 失望なのか。

 

「これはこれは」

 

 カーシャは手を叩いて、その様子を笑う。

 

「確かに、1000年後も名君と呼ばれているわね。功罪ともに大きいらしいけど」

 

「えらいもん見ちゃったなあ」

 

 マコネは両手に顎をのせ、同情的にゾース宰相を見た。

 

「つまり、こういうことだったのか……」

 

 バッキーはストンと納得してしまった。

 

 ――あのお芝居。それって、この揉め事を皮肉った、どころか。ほぼ暴露してるようなものじゃん。いや、そりゃみんな怖がるわ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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