破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「私のような――」
言いかけた少女へ、ソーゲン王は手をかざした。
「別に聞く必要もない。野暮なことは無用」
「では。さぞ、安い女だとお思いでしょうね」
少女を少し首をかたむけ、笑った。
「それも野暮というやつだ」
ソーゲンは笑って、少女を抱き寄せた。
そして。
また、景色が揺らいで、変わる。
「いくら王族と言っても、あのかたではなあ……」
「今少し、上のかたにつなげられなかったものですか?」
「それが簡単にできれば、苦労はしない」
「仮にも王族とコネができるのだから、悪くもないと思うが」
「しかし、そいつは今までかけた手間や金に見合うものか?」
「何のため、これまで虫がつかないように気を配ってきたのやら――」
「勝手なことばかり言う。だったら、もっと上のかたがたへつなぎをつけられたか?」
「まま、そう興奮せずに。ここで喧嘩口論をしても仕方がない……」
ドア越しに聞こえる声。
少女はそれに耳を寄せながら、感情のない目をしていた。
「――どういうことなんですかね、これ……」
壁をすり抜けながら、バッキーは言った。
中の会合? を見てきたわけだが、
「このひとは……」
複雑な気分で、少女――ララ・ケーケ・プルンプアンに視線を送る。
「おいらみてえなモンには、お偉方の事情なんざわからねえがよ」
マコネは、ララのヒップを触りながら……。
といっても。
実体がないため、手は少女を突き抜けるだけ。
「このねーちゃんはさ? 売り物かもしれねーな」
「う、売り物?」
「お偉いかたに差し出して、代わりに色々見返りをもらうための売り物、贈り物というか袖の下っつーの?」
「な……」
バッキーは息をのむ。
「そうね」
カーシャはララの横顔を見て、
「一族の女が王の側室となれば、一族全体にうまみはあるでしょう。出世もしやすくなるし、箔もつく」
もっとも……。
代替わりとか? 政変があったら、潰れる可能性も高いけど。
どこか冷たい声で言った。
そんなカーシャをマコネとバッキーは同時に見る。
「急激に力を
「わりにあわねーバクチだなぁ」
マコネは言ってから、
「バクチなんて、みんなそんなもんか」
「一発逆転したら、落ちる時も一発で……」
「落っこちて大ケガ。悪くすりゃあの世いきだ」
バッキーのつぶやきに、マコネは小さくため息。
「側室でも子供が出来ればまた別だけど。女の子なら他国へ輿入れさせることもできる」
政治や外交の道具としては有用。
男の子でも、将来的に軍人として育てるという手もね。
「嫁に行くのはわかるけど、軍人?」
「王族が戦場に立つ。特に前線となったら士気が高まることがあるそうよ。私には理解できないけど」
「そういうもんなの?」
「そういうものらしいわ」
――
バッキーは、ドロドロした貴族・政治の世界にテンションが落ちていく。
「……陛下の!?」
「こ、これは……」
「いや、話自体は良い。めでたいのだが……いや」
「どうして今になって……! もっと前なら……」
「だがこれは願ったりかなったりでは? 陛下のお気に入りとなれば……」
「バカか! このままではすむか!」
「かように面子を潰されては、リフラ殿下も……」
「下手をすれば、こちらに」
「うむ。こちらが仕組んだと思われては……」
「話……というのはだな」
王太子――静かに椅子へ腰をおろす。
まわりでは、数人の男たちが表情を硬くしていた。
その中に、ワヌゥ伯爵もいる。
「リフラの婚約者な。あの娘には、病があったらしいのだ」
目を閉じた王太子は、妙なことを言い出す。
「今まではわからなかったが、輿入れの準備として入念に調べたところ、それが見つかったという」
「殿下、それは……」
「病、ですか」
「なるほど……」
男たちは、確認するように言った。
「ゆえに、残念ながら王族の妻としては不適格」
そこで王太子は目を開き、水色の瞳で男たちを見た。
「だが、仮にも王族の末席に加わりかけていた者。療養のためにセーヅへ向かわせる。薬代もこちらで負担しようとな」
まあこういうことだ。
そして。
王太子は顔の前で手を組みながら、
「娘もそうだが、リフラも気の毒なことになった。なので、代わりというのはおかしいが、次の縁談を探してやらねば、と思ってな」
「……好事魔多しとは申しますが」
「仕方がないこと、ですわ」
男たちは小さく顔を見合わせる。
さらに王太子は、
「諸君らにも、そこのところで協力を仰ぎたい。良い嫁を世話してやりたのだよ。7男といっても、王家の男子。粗略な扱いをするのは、むしろ王家の恥となると思うのだが、どうか?」
「いや、まこと。ごもっとも」
ワヌゥ伯爵はうなずいた。
続くように、
「そうことなれば、不肖の身ながらお手伝いをさせてくださいませ」
「不幸はめでたいことで払うに限りますからな」
納得顔で賛同していった。
「ありがたい。感謝するよ」
王太子は微笑してから、
「ああ。ついでいうのは、無礼ではあるのだが――」
忘れていた、という感じで手を打ち、
「近頃父王はお疲れが出たようでな。セーヅのほうで休まれるとのこと。念のために、医者やヒーラーを用意させねばと思う。聞かれればお怒りになろうが、やはりお年なのでな」
「え、いや、あの、これは」
「おうおう。さすが次期国王陛下だ。
困惑と恐怖。
嘲笑と納得
そんな反応をする乙女2人。
カーシャは、
「つまりはそういうことになる、わけか……」