破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「しかしよ?」
マコネは腰を上げながら、カーシャたちを振り返った。
「姐さんたちまで付き合うこたぁないだろうに」
「まあ、ちょっとしたバカンスだと思えばいいことよ」
流れる水を見ながら、カーシャはあっさりとした返事。
ネビズの街から少し離れた河原。
パーティーはそこでテントを張り、キャンプをしていた。
バッキーは鍋で料理をしている。
主な材料は、先ほどカーシャが釣った魚。
「でも」
と。
カーシャは振り返りながら、
「すまないと思うのなら、早くテイムを終わらせることね。ま、簡単にいかないでしょうけど」
「いやあ。そうなんだよなあ」
マコネは苦笑して、汗をぬぐう。
ついさっきまで――
暴れるモンスターを制御するのに、必死だった。
今は魔法陣で封じているが、
「いつまでも、閉じ込めるのは無理がある」
指導をする際、ゴトクは言って、
「お前の場合は基礎をしっかりやらずに、いきなり本番に突っ込んだようなもんだからな? 小器用だし、モンスターの相性も良さそうだから、できんわけじゃない。きついってだけだ」
やや意地の悪い顔で笑っていた。
「ったく。なにがきついだけ、だよ。」
エルフの顔を思い出しながら、マコネは首を振る。
「何回ゲロ吐いたか……。食ったもん全部出しちまったよ」
「今日は全部で7回ね。最初に比べれば、半分以下になってるわ」
カーシャは平静な顔をマコネの顔を見る。
その内心は、よくわからない。
「数えてたのかよ……。って、それ、ほめてンの?」
「まあ、一応」
「はは。一応か……。けど、姐さんにほめられてるこたぁ、まんざらでもないな」
「私は三流だったし。今はもう魔導士ですらないけどね」
カーシャは小首をかしげ、小さく笑った。
猫のゴトク。
エルフは最初に、相談――その後で。
「お前の場合、かなり器用で飲み込みも早い。だから、付きっ切りで指導するほどでもない。まずは基礎をやれ」
と。
マコネに基本的なことを教えてから、
「これに当面の訓練方法が書いてある。これに書いてることをキッチリやれ。そうすりゃ、一夜づけでも多少は使えるようになるさ。ああ、それから?」
合間に仮眠をとっとけよ。
やり方は、前に教えたはずだ。
ゴトクは念を押すように言い残し、街に帰った。
「やっぱり……。ちょっと、ハードすぎません?」
飲み物の入った木製コップ。
バッキーはそれを手渡しながら、マコネに言った。
中身は、ぬるま湯にハチミツと塩を混ぜたもの。
「いくら体力のあるマコネさんでも……。今日で5日ですよ?」
「へっ。そりゃ、かなりきついけどよ。死ぬほどじゃねえし」
ハチミツ湯を飲みながら、マコネは照れ笑い。
「それに、姐さんやバッキーもいるし。ぶっ倒れて、そのまんまって心配もないからな」
「私の場合、当てにしてもらっては困るのだけど」
治癒魔法も使えない。まともな対処法もわからないし。
カーシャは、即座に言った。
「一緒にいてくれるだけありがたいさ」
「ふうん?」
マコネの声や言葉に、カーシャは不思議そうな顔。
「とはいえ。川のそばだし、今朝のアレで食料もあまり心配はなしだから、手間もないかしら」
カーシャの向いた先。
そこには、バラバラに解体されたモンスターの残骸。
肉の一部は、焼かれた後で燻製処理の真っ最中。
今朝がた。
キャンプ周辺でこのモンスターは現れた。
どうやら、この河原を縄張りとしていたらしく?
出てきてすぐに攻撃をしてきたが――
カーシャに首を落とされ、即座に絶命した。
「おかげで、持ってきた斧がダメになったけど」
武器として使った手斧は、使用後ボロボロになってしまった。
カーシャの使用には、耐えられなかったためだ。
色んな意味で。
「しかし。3メートル近くもあって、可食部があの程度とはね」
「ありゃ体ン中の金属部分が値打ち高いからなあ」
モンスターの名前は、イバク。
金属類を常食としており、別名を鉄喰いとも。
姿はアルマジロに似ており、体長は3メートルほど。
体をおおう装甲は硬く、対魔力も強固。
というのか……。
装甲も骨も、ほぼ金属。
さらに。
長い尾の先には、ナイフ……いや、剣のような突起がある。
これも、相当な強度で知られていた。
「でも、そんなモンスターのお肉食べて大丈夫なんですか? 今さらですけど」
バッキーは、即席の燻製器を見ながら言った。
河原の石で造ったものだ。
「貧血にゃよく効くって評判だぞ。肉は硬いが、ようく煮込んだら美味いらしいや。食ったことないけどな」
「あはは。じゃあ、もうすぐ食べられますね」
「食った先から吐きそうだけどな」
笑うマコネとバッキー。
「なら、吐かないようになるしかないわね」
「あひゃひゃ! ちがいねえ」
カーシャの言葉に、マコネは爆笑した。
「ゲロ吐きまくったかいもあって、いくらかコツもわかってきたしよ」
食事と、20分ほどの仮眠。
これらを取った後、マコネは訓練を再開。
意識を集中し、魔力を束ね、手から魔法陣を造り出す。
「魔法陣を出さなきゃならんのは、初心者も初心者だがな。嘘か真か、熟練者は酒飲みながらでも、モンスターを操る……てなことをぬかす
というのは、ゴトクの弁。
魔法陣をモンスターに向け、自分の魔力をモンスターへと流す。
同時に。
モンスターの魔力、その一部を自分へと吸収。
ただ。
流す魔力のほうが圧倒的に多い。
制御するため、強い集中力と体力を消耗する。
汗が滝のように流れて――
気づけば鉛のような疲労感が全身をつつむ。
暴れるモンスターを抑えて制し、かつ殺さないように。
加減を間違えてしまえば、弱いモンスターなら死んでしまうのだ。
そうなれば、反動が自分に返ってくる。
訓練の時間。
それは実に長く感じるものだった。
一連の過程を何回か繰り返した後、
「おげぇぇえぇ!!!」
マコネは昼食を吐き出した。
これも、すでに慣れてしまったが。