破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その112・5、番外:モンスターをテイムせよ-3 ヤバい源流

 

 

 

 

 

 

「それってなんですか?」

 

「ヘルバを乾燥させたもんだ」

 

「ああ。毒消しとかに使う……」

 

「そのまま使ってもいいがな。いつもいつも見つかるとは限らん」

 

 ゴトクは、バッキーの質問に答えながら鍋をかきまわしていた。

 鍋の中でイバクの肉がコトコト煮られている。

 

「こいつは野外で料理するもんじゃないんだがな」

 

 香辛料などを加えつつ、ゴトクは言った。

 

「切るだけでも苦労するし、じっくりと仕込まなきゃ噛むのも苦労する。顎を鍛えるにはピッタリだが、だったらコルクの栓でも食ってたほうがマシだ。安いしな」

 

 肉を煮始めてから、すでに数時間たっている。

 

「けっこうかかるんですねえ」

 

「この分だと、明日の今頃までかかるだろうよ」

 

「ひゃあ」

 

「それでも、かなりかたいだろうがな。ま、食えんことはない。ちょっとよく噛まにゃならんから、量が少なめでもそれなりに満足できるってもんだ」

 

 あはは――とゴトクは笑い、鍋にふたをした。

 

「これで火の様子を見ながらじっくり煮込めばいい」

 

「明日まで、ですか?」

 

「そうだ」

 

 

 しばらく後。

 バッキーは仮眠中のマコネを膝にのせていた。

 

 

「しかし、マコネさんすごく寝つきいいんですねえ。起きる時もパッと起きるし」

 

「コツは教えたが、もとからそういうのが得意な性分なんだろう」

 

 鍋の火を見ながら、ゴトクは声だけを返す。

 

「けど。私の訓練も大変だったけど、マコネさんのは……」

 

「お前の場合はもとから魔法が使えてる上に、魔力もけた違いだからな。一緒にはできん。それに、扱う分野も違う」

 

「モンスターテイマー」

 

「ああ。使いこなせりゃ便利だが、強いモンスターになるほど反動も消耗もデカい。スライムや死肉ころがしみてえなのでも、ちゃんとしこむには積み重ねがいるんだ」

 

「ははぁ」

 

「扱うモノがモノだけに、土地によっては限られた一族だけしか使わん術だ。場合によっちゃ、街に入ることもものを買うのも怪しくなる」

 

 石もて追われる身の上ってやつだな。

 

 ゴトクはそう言って、小枝を火にくべる。

 

「この国でも?」

 

「ヤオアムトは、まあだいぶマシな部類だ。なにせ、魔導大国でもあるし、王家の始祖はサキュバスの子だって建国神話になってるほどだからな」

 

「でも、取り締まりが厳しいって。連座とか……」

 

「ああ。そりゃ素人が勝手にやったり、裏でこっそりやる場合だ。こいつの場合は冒険者登録ずみで、ある意味ギルドの支配下、監視下だからな」

 

 ゴトクは振り返って、マコネの寝顔を見た。

 

「へへぇ……」

 

「どーして、テイマーがそういう扱いかと言えばだ」

 

 相づちを打つバッキーに、ゴトクは少し目を細めて、

 

「源流をたどっていけば、そりゃお世辞にも()()()とか()()()()とは言えねえもんだ」

 

「呪いみたいな、ですか」

 

「みたいじゃない。呪い、どこに出しても嫌がられる邪術だよ」

 

「それは――」

 

「まあ、例をあげれば」

 

 と。

 ゴトクはちょっと上を仰いで、

 

 

 犬を地面に埋めておく。

 その前に肉のかけらを置く。

 犬は肉を欲しがり、吠えて荒れ狂う。

 しばらくして。

 その飢えと欲求が頂点に達した時――

 犬の首をはね落とす。

 切り落とされた首を、呪術に使用する。

 

 

「そういう、えげつない術が獣を手なずける技と混ざり合って……。やがて、それを専門とする術師が出てきた」

 

 これが、モンスターテイマーの始まりだ。

 

「えええ」

 

 とんでもない内容に、バッキーは本気でドン引き。

 

「正確には犬じゃなくって狼だな。犬のほうが手に入れやすいって話で」

 

「そういう問題ですか?」

 

「こんな術だからな。犬を大切にする狩猟民や、そういう文化圏では忌み嫌われる」

 

「とーぜんですよ……」

 

「他にも、猫を使って」

 

「あー、いいです。いいです。聞きたくないです」

 

「お前さんも魔導士なら、知っとくべきだと思うぜ」

 

「うぐ……」

 

 そんな中――

 

「色々めんどーなもんだな、テイマーってのは」

 

 マコネが口を開いた。

 

「ま、どっちにしろ。やめるわけにもいかねーけど」

 

 身軽に起き上がり、マコネはコキコキと首を鳴らす。

 

「だいぶなじんできた気もするしよ」

 

「あまり吐かなくなったのは、大したもんだ」

 

「今日は、朝に一回きりだな」

 

 ゴトクの称賛? に、マコネは屈伸を始める。

 

「けど。まだぜんぜん手綱(たづな)をにぎれねえ。なかなかしぶといっつーか、頑固っつーか」

 

 魔法陣で捕縛されてるモンスター。

 マコネはそれを苦笑交じりに見る。

 

「そうそう簡単にはいくもんか。おまけに、そいつはなかなかレベルの高いモンスターだ」

 

「わりとちっこいのにか?」

 

「大きさは、厄介さと関係ない」

 

 ゴトクは首を振り、

 

「最初に捕縛できたのは、運もあるが相性のせいだろう」

 

「良かったんだか、悪かったんだか」

 

「そうだな」

 

 ため息をつくマコネに、ゴトクは苦笑した後、

 

「ところで――お前らのリーダーはまた寝てるのか?」

 

「ん? ええ、はい。時どき森のほうに行ったりする以外は」

 

 バッキーはテントを振り返って答えた。

 中では、カーシャが横になっている。

 

「これまでも、なんだかんだありましたから。疲れとか出たんじゃないですか?」

 

「それはないな」

 

 ゴトクは即座に言った。

 

「でも、ああやって寝てばかりっていうのは……。飽きたんなら、街に帰るんじゃないですか?」

 

「ああ。それもそうだが」

 

 ゴトクはチラリとテントを見てから、

 

「とりあえず、それはそれだ。3日に一度見に来てやるから、キッチリやっとくんだな」

 

 マコネにそう言って、去っていった。

 

 

 こういうわけで。

 

 

 モンスターを捕獲してしまってから、ひと月以上。

 マコネはネビズに戻れず、ひたすらテイマーの訓練を繰り返し――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っしゃあ! ヤモリソード!!」

 

 叫んだ時。

 モンスター・ゲカットは体を車輪のように回転させ、

 

 ゾガッ

 

 岩を切り裂いた。

 

 そのまま。

 回転して空中を走り、マコネの足元へ。

 

「おおおお……」

 

 見ていたバッキーは、パチパチと手を打った。

 

 一方。

 バッキーの横にいたゴトクは、

 

「ひと月で、これか……。天賦(てんぷ)の才と言ってやりたいが――」

 

 ちょいと、()()()じゃないな。

 

 と。

 困ったように言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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