破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「あーー。やっと帰ってこれたか」
ネビズの街を歩きながら、マコネは大きく背伸び。
テイムしたモンスター・ゲカットはその足元で控えている。
「しかし、結局バッキーも姐さんも、まるまるひと月つき合わせちまったなあ?」
屋敷へ帰る道のり。
マコネはバッキーの肩に触れる。
「いえいえ。けっこう面白かったですよ。色々勉強にもなったし」
「そうかい?」
「ええ。けど、マコネさんは出費が」
「あー。登録料かぁ。聞いてはいたけどなあ……」
マコネはため息を吐く。
街に入る前後――
「では、このモンスターを正式登録しますね。それと、月々で8500ジュラの保証金がかかりますから」
「けっこうするのな……」
「払っていない場合、何かあれば全てあなたが賠償などすることになりますが?」
「嫌だとは言ってないっしょ? 払いますよ……」
「あ。それから、登録したからといって、なるべくモンスターを街中に連れてこないように」
パニックの原因にもなるので。
と。
ギルド職員は念を押した。
「でもけっこう貯金はあるんでしょ?」
「そうだけどさあ……」
バッキーの意見に、マコネは首をひねる。
カーシャとパーティーを組んでのクエスト。
報酬の半分はカーシャ。
残りの半分をマコネとバッキーで分ける。
これが基本。
もちろん。
カーシャなしで2人、というか臨時パーティーでクエストをこなす場合もあるが……。
クエスト報酬が基本高額なため、2人の取り分も大きい。
1千万クラスのものなどざら。
バッキーの場合。
ほとんど何もしないで大金を得ているという感覚。
彼女の性格上、どうしても後ろめたさがある。
――それなりに命がけってはあるけど。それは他のひともおんなじだし……。
このためか。
街のあれこれ、例えば祭りの際にはけっこうな大金を寄進。
そういうことをちょくちょくしている。
ちなみに。
ギルドからはミゾイを通してこう言われている。
「寄進もありがたいけど、ギルドマスターはちゃんと使って回してくれとさ」
――使えったってなあ?
バッキーは悩む。
自由に使えるお金。
それは、ほぼ不自由していない。
――将来? に備えて蓄えはしておきたいんだけど……。
ヤオアムトの文化や考え方として――
金を稼ぐのは良い。
しかし。
ただ貯めこむだけのやり方は、周囲から軽蔑される。
最初は良くても?
ひとはどんどん離れていき、商売でも取引先が減っていく。
財や地位を成した者には、相応の行為が求められる。
男ならば、複数の妻や愛人を持つ、というように。
――日本だったら、ソシャゲのガチャとか推し活? 色々あるんだけど……。
考えてから、
――なんか、なあ。こんなのしか思いつかないって。
バッキーは我ながら情けなくなるものの、
――外食とかそんなに好きじゃないし。ブランドとかあんま興味ないし……。よく考えると推し活もやったことなかったわ。
ひとがやったとか、やってるとは聞いた。
――けど、それで破産したり、離婚ざたになったのも聞くしなあ?
さて。
一方でマコネは、
――モンスターテイマーかあ。なったはいいけど、色々とめんどいこともあるし。厄介なもんだ。
今までのように、気楽にはいかない。
そう思うと、やはり考えるところがある。
――……あとは。
思い返すもの。
ゴトクから、2人だけの時に言われた内容。
「お前さんはひと月あまりで、まあとりあえずクエストでやれるだけのもんにはなった」
「そりゃひでえ苦労したからな」
「ああ。認める。大したもんだ。あんな突貫のやり方をよくこなした」
だがな。
と。
エルフは真剣な顔で、
「あんなムチャでも、お前さんのレベルやらを考慮した場合最低半年はかかるんだ」
「はあっ!? ウッソだろ!?」
「俺がそんなくだらん嘘つくメリットがどこにある」
驚くマコネに、ゴトクはピシャリと言って、
「お前がそこまでになったのは、青いご令嬢の影響なんだよ」
「姐さんの?」
「ああ。あいつからは常に黒い邪気とか毒気が発散してる。わかりにくいだろうがな」
「まさか、それでおかしくなったっての?」
「ある意味ではな。毒ってのは転じれば薬だ。それも個人で効きようは違うが――」
ゴトクは両腕を組んで空を仰ぎ、
「バッキーの場合はそうでもない。しかし、お前はその影響が強いらしい。魔力の練度や適性、耐性が強まってる。おまけに成長期だろ? 数年後にはとんでもねえことになるかもしれん」
「山みたいなバケモノになるってのかよ」
「それも、ある意味ではな」
ゴトクは苦笑して、
「気づいてないかもしれんが。お前、あいつと組んでからどれだけたつ? ま、1年にはなってないが、その間にかなり身長がのびてるぞ。それまでがチビだったからちょうど良いとも言えるけど」
「そうかもしれねえけど……」
確かに。
マコネ自身も、思い当たることがある。
カーシャとパーティーを組んで、何度か服を買い替えた。
男だと勘違いされることも、いくらか少なくなった気もする。
「でもさ? その影響っての? 別に悪いことじゃねーだろ? ポテンシャルが上がるのは良いことじゃん」
「そうだな」
ゴトクはうなずいてから、
「だが。お前の場合、普通のヤツが後から天賦の才を得るようなもんだ。その分代償や反動があることは、覚悟しといたほうがいい。今から距離とっても、無意味だろうしな」
「ンなもん。今さら怖がるほどかよ」
「――そうか。ま、そうだろうな」
マコネの表情を見て、ゴトクは苦笑した。
「余計なお世話だろうが、それでも、知っておくべきことだからな。一応指導した者としての」
――いつか、姐さんと別れることもあるだろうし。自分でやれることが増えるのに、こしたことはねえさ。
そう考えながら、ちょっとだけ笑った。
今回で番外編もいち段落です
次回はちょっと番外っぽいけど一応本編ということで