破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その113、青龍石の枕-1

 

 

 

 

 

 これは――

 マコネがテイマーの訓練で四苦八苦している間のことだが……。

 

 

 その日。

 カーシャはキャンプ地周辺の森を歩いていた。

 

 周辺にモンスターの気配がないか。

 近づく者はいるか。

 そういうことを調べるためだった。

 

 この途中で、

 

「?」

 

 木の陰で、ひとつの宝箱を見つけた。

 

 これ自体は珍しいことでもない。

 ボスが倒れて崩壊したダンジョン。

 そこから、残った宝箱が放出されることはよくある。

 おそらくこれも、そのひとつだったのだろう。

 

 開けて見ると、

 

 ――青龍石?

 

 青い鱗のようなものがいくつも走った石。

 貴金属ではないが、魔法や魔道具の素材としてわりとよく用いられるもの。

 

 入っていたのは、それで造られた長方形の物体。

 いや。

 枕のように見えた。

 

「でも……?」

 

 山中に入って修行する魔導士は、石を枕に眠る……などとはいうが。

 それはあくまで比喩、ものの例えだろう。

 

 取り上げて調べてみるが、

 

 ――魔道具という感じではないし。そもそも、魔力は感じられない……。

 

 魔力そのものが感知できないよう、コーティングされた道具もあるとは聞く。

 

 ――だけど、こんなものに?

 

 あるいは。

 誰かが(たわむ)れで、宝箱に入れて放置したのか。

 

 ――ダンジョンの宝箱は、アイテムを取り出せば消えるもの……。

 

 その宝箱も、石を取り出すと砂のようになって消えさった。

 

 よくわからないが、好奇心はくすぐられてしまう。

 

 だから。

 キャンプに戻った後。

 カーシャは石の枕を使い、ひと眠りしてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 目を覚ますと。

 ベッドの中。見知った天井。見慣れた自室。

 起きて準備をしながら、自分について考える

 

 長壁(おさかべ)カーシャ。

 

 **人の父と、日本人の母。

 両親は離婚して、諸事情により現在はひとり暮らし。

 

「16歳で、今日から**高校へ転校と……」

 

 つぶやいて、手荷物のチェックをした後、部屋を出た。

 オートロック式のマンション。

 

 【日本の街】を歩く。

 

 ――妙な気分……。

 

 この世界で暮らしてきた記憶も実感もある。

 日常生活を含めて、不自由に感じることはない。

 

 同時に。

 

 こことは、違う【異世界】。

 そこで暮らし、体験してきたこともカーシャの中にある。

 

 ――常識的に考えれば、中二病か……一種の精神疾患かしら? いえ?

 

 こんな思考をするということは、

 

 ――正常、ということになる? まあ、なんでもいいけれど。

 

 登校の途中。

 

 何人もの人間が、カーシャを振り返った。

 あるいは。

 そっと視線を向ける。

 

 彼女の美貌は、日常風景とは明らかにそぐわない。

 

 ある種……。

 異形とも言えるものだった。

 

 自分の容姿に相応の自負も自信もあるカーシャだが――

 そこについては、いささか認識不足でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長壁カーシャです。色々わからないこともあるので、教えていただければ嬉しいです」

 

 型通りの挨拶と自己紹介。

 

 クラス中が息を飲んでカーシャを見ていた。

 

 見惚れている。

 硬直している。

 現実逃避している。

 

 カーシャにとって。

 この反応も、別に驚くことではない。

 

 ――()()()では、あまり考えにくいけれど……。

 

 絶世の美女と言えるエルフの女やサキュバスたちが普通にいる世界。

 見た目が良いだけの女なら、そこら中にいるのだ。

 

 ――まあ、それもここでは夢か妄想だけど。

 

 そんなことを考えながら、カーシャは微笑した。

 

 魔性の笑み。

 大げさながら、()()ではそう言えるほどの威力がある。

 

「ひとつ、ご注意をお願いしたいのですけれど――私の顔は、整形ではありません」

 

 

 もし。

 あの顔が整形だったら。

 何千万とつぎ込んでも、その医者にかかりたい。

 そう思った女子は何人いただろうか?

 

 

 転校生といえば、色々囲まれて質問されたりするものらしい。

 だが。

 クラスは一種の緊張状態にあり、互いに顔色をうかがっている

 

 特に、男子の多くは意図的に意識から外そうしていた。

 

 ――どうせ、自分たちには縁のない相手。

 

 そういう諦めがあったのだろう。

 

 

 こういうわけで。

 新しい学校生活は驚くほど静かに過ぎていった。

 

 もっとも。

 休み時間中、学年を問わず他のクラスからやってくる者が大勢いた。

 

 さすがに度胸のある者もいて、

 

「長壁さんって、部活とかやってた?」

 

「前の学校はどんなの?」

 

「彼氏とかいる?」

 

 そんな質問を繰り出す。

 

「特になにも」

 

「別に、普通の学校よ?」

 

「特にいないけど。デートくらいは何度か」

 

 こんなやり取りの効果があってか。

 クラスの緊張感も、やや薄らいでいった。

 

 しかし。

 

 それでも、なお。

 カーシャに積極的なコミュニケーションを取ろうとする者はいなかった。

 

 美貌に気圧されただけではない。

 何か――

 得体の知れない圧力を、意識無意識に関わらず感じ取ったせいか。

 

 これは……。

 逆に異世界(あちら)においては、気にならないレベルのものだった。

 

 一歩街や村を出れば。

 否。

 要塞の中にいても、運が悪ければ……。

 場所を選ばず、ダンジョンがわく。

 防壁を飛び越え、あるいは破壊する大型モンスターが襲来する。

 

 たとえ王族貴族であろうとも。

 常に死と隣り合わせ。

 住人は、

 

「そういうもの」

 

 と。

 完全に慣れてしまっているが。

 

 カーシャの放つ臭い、気配、それとも空気?

 とにかく、内部から発散するモノは、完全な異物だった。

 

 そして。

 カーシャ自身はそこに、ちょっと無自覚でもある。

 他人のことなど、気にしていないせいだった。

 

 

 時間は――

 何事もなく、3日ほどすぎる。

 

 

 この日の放課後。

 

 帰路につく校舎から出た、すぐ後。

 

 ――誰か来る。

 

 気配を感じながら、歩いていると、

 

「あ、あの」

 

 知らない男子生徒が、小走りにやってきた。

 

「な、なにか?」

 

「あの……。僕と、付き合ってください!」

 

 いきなり、告白された。

 

 ――は?

 

 カーシャは訝しく思いながら、その男子を見る。

 

 かなり緊張しているが……。

 どこか。

 投げやりというか、自暴自棄というか。

 

 とても、熱い想いを伝えに来たというものではなかった。

 

 それゆえ。

 好奇心を刺激されたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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