破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その113、青龍石の枕-3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無理」

 

 ひと言。

 それだけで、カーシャは背を向けてしまった。

 

 ゲームを1回やった後のこと。

 

 遊んでいたのは――

 いわゆる……。

 クレーンゲームというもの。

 

「こういう繊細なのは苦手」

 

「あ、はい。いや、けどもう1回できるけど……?」

 

「じゃ、あなたがやりなさい。私はけっこう」

 

 そう言って、カーシャは宗吾をゲーム機へと押しやった。

 

 ――うわっ……。力(つよ)っ……。

 

 ゆっくりと、静かに。

 しかし。

 その白い手に押された瞬間、宗吾は巨大な重機をイメージした。

 

 ――そういえば……。学校から引っ張って来られたんだっけ……。ものすごい力だった……。

 

 チラッと振り返れば。

 カーシャはどうでも良そうな顔。

 

 でも。

 

 宗吾やゲーム機から視線を外さない。

 

 ――なんか、すごいプレッシャーだ……。

 

 宗吾は一瞬身震いした。

 クレーンゲームはわりと得意だが、こんな状況では、

 

 ――とても、とれる自信ないよな。あ、でも。別に頑張って取る必要ないのか?

 

 態度を見るに、カーシャも別に景品を期待していないのがわかる。

 

「こういうのも、慣れとかコツがいるんだけど……」

 

 結果。

 

「へえ?」

 

 見事景品を取った宗吾に、カーシャは少し驚いた顔。

 

「そういう特技はあるとは、自己紹介で聞かなかったわね」

 

「いや。別にわざわざ言うことでも」

 

「ふむ。それもそうか」

 

 その後。

 カーシャは宗吾の案内や紹介で、メダルゲームなどを軽くやっていたが、

 

「あの丸いの、なにかしら」

 

 白くきれいな指がさした先は――

 丸形の大きな筐体(きょうたい)

 

「んん。あー、簡単に言うと、ロボットに乗り込んで戦う体感ゲーム」

 

「機動兵士ムガダン。私もそれはわかるけど」

 

 カーシャに、この世界における知識では……。

 

「なんだったかしら? 主人公が変な仮面のロボットと戦うアニメ?」

 

「それ、正確にはサイボーグなんだけど」

 

「ああ、そう。ま、それはどうでもいいとして」

 

 どうやって遊ぶわけ?

 ひょっとして2人用?

 

 言いながら、カーシャは筐体へ近づいていく。

 

「いや、入って遊ぶのはひとりなんだけど」

 

「それならけっこう」

 

 うなずいて、カーシャは遊び方、操縦方法を確認する。

 

「なるほど……。ふーん……。こういう感じと」

 

 それから。

 宗吾を放置して、ゲームを始めてしまった。

 

 ――マイペースだなあ……

 

 呆れながらも、

 

 ――楽しんでるなら、それでいっか。

 

 そばに設置された、ゲーム状況を確認できるモニター。

 宗吾はそれを見ながら、小さく笑った。

 

 色んな意味で怖い()ではある。

 が。

 

 ――こういうとこは、フツーなんだなあ。

 

 カーシャがゲーム内で操るロボット。

 敵方の量産型……の、カスタムタイプ。

 アニメでは、初期に主人公のライバルが乗っていたものだ。

 

 ――あ、これってけっこう癖が強いんだよな? 使いこなすと強いけど、そこまでいくのが……。

 

 ゲーム画面の中、カーシャの機体は一応基本動作はできる。

 そういうレベルだった。

 

 ――あ~。そういえばこれ、1回遊ぶのもちょっと高めだった。機嫌悪くしなきゃいいけど。

 

 宗吾はやや不安を感じながら見ていた。

 

 ただ歩いているだけのカーシャの機体。

 それはもう。

 狙ってくださいと言ってるようなものだった。

 

「ああ」

 

 こりゃすぐヤラれる。

 

 宗吾はそう確信して、思わずため息。

 

 

 しかし。

 

 

 ただ歩いているだけの機体。

 それは、敵の攻撃をひょいとかわした。

 

 いや?

 勝手に外れた、あるいは偶然の動きがたまたま回避になった。

 そういう感じなのだが……。

 

 カーシャの機体は、その後も同じように攻撃をかわす。

 あるいは、シールドで防いだ。

 

 まるで打ち合わせでもしているような動き。

 

 敵がいつ、どうやって攻撃するのか。

 あらかじめ知っているみたいだった。

 

 ――これって、最初のステージでもけっこう被弾するんだよな?

 

 このゲームは、かなり難易度が高い。

 最初のステージで即ゲームオーバー、というほどではないが、

 

 ――慣れるまで、だいぶ削られるのが普通? なんだけど……。

 

 遠・中・近。

 いずれにおいても、カーシャは攻撃をかわし、防いでいった。

 そして。

 慣れてくると、攻撃にも移りだす。

 

 見ていると――

 

 敵が勝手に攻撃に当たっている。

 そんな印象さえ受けてしまう。

 

 次々と。

 虫でも潰すように敵機は破壊されていき、

 

「いや、おいおいおい……」

 

 宗吾は思わず、驚きを口にしてしまう。

 

 カーシャのプレイ。

 初めのほうこそ、何度か攻撃しての撃破。

 まあ、普通だ。

 

 が。

 

 気づけば、一撃で敵の急所――つまりコクピットを破壊していた。

 

 最後においては、ボスを一方的に倒す。

 それはもう……。

 見ていて気の毒になるほどだった。

 

 ステージを重ねるごとに、それは顕著になっていく。

 進めば進むだけ、難易度は上がっているのだが。

 

 カーシャのプレイはどんどん向上していった。

 いや。

 容赦のないものになっていった、というべきか。

 

 現れる敵。

 倒せる敵。

 それらは全て撃ちもらさない。

 

 所詮は単なる娯楽、ゲームではある。

 

 ――いや、だけど、これ……。

 

 皆殺し。

 虐殺。

 

 そんな単語が浮かぶほど、カーシャのプレイは殺伐としていた。

 

 ――……対人プレイだったら、色んな意味で荒れるな、絶対。

 

 宗吾が嫌な確信を抱いている中で、

 

「うわああ……」

 

「なんだ、これ……」

 

「どんだけやりこんでんの?」

 

 後ろのほうには、数人のギャラリーが集まっていた。

 みんな、カーシャのプレイに驚き、とまどっている。

 

 やがて。

 当然のごとくゲームクリア。

 

「まあまあ面白かったわ」

 

 筐体から出てきたカーシャは、宗吾に向かって言った。

 

「あ、はい」

 

「しかし……。けっこう時間をくったわね。まあいいけど」

 

 カーシャは時間を確認しながら、

 

「それにしても。あなた、ずっとそこで待ってたわけ?」

 

「え? まあ、はい。プレイしてるのを見てて……」

 

「なるほど。ふむ。ちょっと悪いことをしたわね」

 

 カーシャは少し考えて、

 

「時間はまだある、か。あなた、他にも遊びたいゲームとかあるの?」

 

「あ、いや? 今日は案内してきただけ、みたいなもんだし」

 

「そ。なら、場所を変えましょうか」

 

 

 

 

 

 ギャラリーたちは――

 宗吾を引っ張っていくカーシャを、半ば放心状態で見送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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