破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
本日より復帰、と思います(;^ω^)
「ど、どうかな?」
「長壁さんが来てくれたら、即戦力になると思うんだけど」
「体育の時、すごかったし」
3人の女子が緊張しながら、つっかえつっかえ言っている。
放課後。
帰り支度をしていたカーシャへ、突撃? してきたわけだが……。
つたない説明と勧誘を黙って聞いていたカーシャだが、
「無理」
スッパリと、まさに切り捨てるような返答。
「団体競技は無理。運動は嫌いじゃないけど、そういうのは苦手なの」
真正面から言われた女子たちは、無意識に一歩退きながら、
「あ。はい」
「ごめんね? 時間とらせちゃって……」
「き、気が向いたら、見学とか大丈夫だから」
弁解みたいなことを言いつつ、去っていった。
カーシャは見送ることもせず――
すぐ、別のほうを向いた。
また、別の女子が立っている。
視線が合った瞬間、その女子はビクリとして後退した。
ショートカットで、少し癖のある黒髪。
いかにも、スポーツ少女という印象。
「なにか?」
カーシャはゆっくりと近づき、ショートの女子へたずねる。
「えっと……。実はさっきの子たちとおんなじ用事、なんだけど……」
「ああ。つまり、部活への勧誘?」
「そ、そうだね」
「聞いていたかもしれないけど――団体競技は苦手なの」
「ああ。それなら、大丈夫、かな? うちは、陸上で」
「なるほど、なるほど」
カーシャはうなずきながら、
「けど。で?」
「いや。えっと。良かったら見学だけでも来てくれると……」
「ふーん」
カーシャは少し考えて、
「まあ? あなたほどの人気者がそういうのなら」
「に、人気???」
「なかなかファンが多いと聞いたけれど? 滝王リョウさん」
「え!? な、なんで?」
「名前を知ってるかって? 言ったでしょ、人気者だって。噂は耳にするのよ。女子陸上部で素敵な王子様がいるって」
驚く少女に対し、カーシャは目を細め――
「ふうん。王子様「あ、あはは……」
と呼ばれ方はお気に召さない?」
「そうでもないけど……」
「なら。プライベートじゃ、お姫様扱いしてくれる、それこそ王子様がいるのかしら」
「うぇ!?」
スポーツ少女――滝王リョウの反応。
カーシャをそれを観察しながら、また目を細めた。
時間にすれば――
30分いくか、いかないか。その程度。
カーシャは無言で練習風景を見学していた。
正直なところ。
どれだけ見ても、興味を引かれるものはなかったが。
それよりも。
「ありゃ男できたね」
「わかる、わかる」
離れた場所で、そんな会話が流れてくるのを聞いていた。
距離もある。
声も小さい。
しかし、少し意識を集中すれば容易に聞き取れる。
さて、その内容はいえば。
あの、〝王子様〟……滝王リョウについてだった。
むしろ?
陸上部員の練習より、そちらのほうにしか注意がいっていない。
「ちょっと! そんなとこで無駄口叩かない!」
途中、上級生の一喝で中断となったが。
「悪いけど、そろそろ行くから。滝王さんにヨロシク」
カーシャは近くを歩いていた部員へ言い残して、去る。
ほぼ一方的に、あわてた部員が何か言ってるのを聞き流して。
――ん?
校舎を出ようとした時、だった。
前のほうを、袖引宗吾が歩いているのを見る。
宗吾はカーシャにまったく気づかず、笑ったり騒いだりしていた。
数人の男子生徒とバカなことを言い合いながら。
――まあ、そんなものよね。
カーシャはひとり肩をすくめて、笑った。
それは袖引宗吾に対して、ではなく……。
運動場から視線を投げてくる、スポーツ少女へのものだった。
袖引少年は――
勘違いがありやなしとはいえ?
近しい年代の少女たちとそれなりに、交流できていた。
と、なれば。
別に友人知人が多くいても不思議ではない。
むしろ、いないほうが不自然。
「この間は、どーも」
「ふぁい!?」
マヌケな声。
が。
話しかけたカーシャに反応したのは、宗吾ではなかった。
一緒にいた男子連中である。
「あ、長壁さん」
「お元気そうでなにより」
ペコリと挨拶する宗吾に、半分皮肉めいた声をかけながら、
――しかしまあ……。
他の男子たちを順番に見て、ため息。
「こぎたないのばかり、そろっているわねえ」
いきなり暴言。
実のところ、
――さほど気にすることはなかったけど、
正直、心良くない点が多々あったわけで。
その翌日より。
クラスの中でカーシャの指導、いや独裁がされ始めた。
といっても。
女子と、何割かの男子は対象外ではある。
髪がどーの。
身だしなみがどーの。
スキンケアがどーの。
体形がどーの。
歯の色がどーの。
特に、ランク底辺の男子たちには具体的かつ容赦ない
「あなたたちの取り柄は、
そういうことを言い出す。
逆らえる者などいない。
かといって。
改善方法を具体的かつ詳細に指導。
カーシャいわく、
「今日明日でやれとは言ってない」
とのこと。
誹謗中傷、無理難題を言ってるわけでもない。
なので、反論もしにくい。
「要するに……自分の周辺にいる男、の外見レベルを上げたいんですよね?」
「そーだけど? なにか」
「いえ」
昼休み。
クラスの代表、『見本』としていじられる宗吾の姿があった。
「そもそも、クラスが違うんですけど」
「同じ学校で同じ学年である以上、目につくことは多いのよね」
「そうですか……」
「あなたの場合、多少小手先を変えるだけで良いのだから楽なものよ?」
「どうも……」
宗吾の場合。
いくらかイメチェンをした程度だったが――
それでも女子が見る目はかなり変化した。
他の男子は改善に向けて、個人差はあれど奮闘中。
少したつと。
宗吾は他の女子たちと、普通に話したり話しかけられたりするようになっていた。
いや?
別に以前からそうではあった。
ただ。
女子からの距離が近くなっただけだ。
カーシャはそれを、正確にはそれを見る複数の視線。
その主たちを面白く、観察していた。
密かに、ではあるが。