破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
かの男子。
名前は出す必要もないので書かないが……。
中学の頃から柔道で名を馳せている。
体格にも恵まれ、幼少時より父親から手ほどきを受けていた。
その父親も、柔道選手としてかなりの功績を残している。
サラブレッドというやつだろうか。
順調にいけば、スポーツ選手として道が開けていた。
それが、どう間違ったモノか。
高校に上がる頃からおかしくなる。
気づけば実に古典的な〝不良〟となっていた。
学校をサボることは当たり前。
他の生徒に大小の暴言や暴力も当たり前。
親の頭痛、胃痛の種と化していた。
さて。
そんな彼だが、しばらく学校をサボっていたところ――
・クラスにすごい美人が転校してきた。
・色気づいた男子が〝調子に乗ってオシャレをしはじめた〟。
こんな話を聞いて、興味をそそられた。
軽い気持ちで登校していった結果、
半殺しにされた。
どうしてそういう流れになったのか、よく思い出せない。
学校にいってみたところ?
教室の隅にいるのか、いないのか。
そんな連中が、妙にシャレた感じになっていた。
今までが地味だったから、ちょっとのことで変化が大きかったのだろう。
だから。
面白半分、興味半分でからんでいった。
彼の体格や腕力を恐れ、逆らう者はクラスどころか校内でもいるかどうか。
そういう認識だった。
しかし。
気づけば一方的に殴られ、痛めつけられていた。
体格も長年汗を流して身に着けた柔道も意味をなさず。
まるで巨大な肉食獣にいたぶられている。
そんな気分を嫌というほど味わう羽目になった。
「これは――漫画の話だけど」
馬乗りになりながら、その美少女転校生は言った。
女子としてはかなりの高身長。
だが。
あくまで女子は女子であり、体重は相応。
いや?
そのプロポーションからすれば、さほど重くはない……はず。
しかし。
上に乗った少女はまるで、鉄の塊みたいだった。
ビクリともできない。
「嘘か真か? こうやって一方的に殴られると、レイプされる女性の気持ちになるそうよ」
その拳は、まるで金属の塊。
殴られるたび、頭蓋骨が粉砕されるイメージがよぎった。
柔道の厳しい練習はずっとやってきた。
疲労も痛みも慣れている。
格上にあしらわれることも。
が、しかし。
少女から受けた暴力は、そんな性質のものではなかった。
喰い殺される。
自分が……。
単なる餌、あるいはオモチャとして捕食される存在。
嫌でもそう認識させられてしまう。
そういう
終わった後。
下半身から失禁と脱糞をしていた。
病院でも?
自分が生きていることさえ、よくわからないままだった。
「まあ、もっとも?
カーシャは鬼台あかりを見おろすように話を続けていた。
「あの
そういうことになっているけれどね?
警察やら何やらが来て、騒々しかったわ。
と。
あかりに向かい、カーシャは微笑む。
「かの柔道少年は、色々悪さをして恨みも買っていたようだし。自然な話とも言える」
「……このっ!?」
非人道的。
そうとしか言えない暴力を平然と振るった。
今現在も平然と……どころか、ヘラヘラと笑っている。
「あら? 怖い顔? 〝人間としてはクズの部類〟に入る……とでも言いたそうね? 否定はしないけれど」
でもね?
カーシャはいきなり、刃物のような視線であかりを見る。
「今現在のあなたに、そんなこと言えるのかしら? 風紀がどうの規律がどうのとえらそうに
「……!?」
その冷笑を受け、あかりの顔は屈辱と羞恥で真っ赤に染まる。
「誤解のないように言っておくけど」
カーシャは動揺するあかりに、やや穏やかな顔で、
「あなたの私生活がどうあろうが、私の知ったことじゃない。けど、
気づいた時には、
「色々と、ねえ?」
カーシャはあかりのすぐそば、肉薄していた。
「とはいえ? おかたい人間は一歩間違えて堕落したりするなんて、ありふれすぎて喜劇にもならないけれど」
「……」
「ああ。そういえば? あなたのお友達、いえ同類? そう、なんといったか……」
言いつつ、カーシャは無言のあかりからスッと離れる。
ステップでも踏むような動作だった。
「んん。あ、そうだ。
「何が言いたいの……」
「モヤモヤとハッキリしない状況の中で、ちがう男性にアプローチを受け、そっちへ行った。ま、別にどうってことはない。普通のこと。だけど、彼女はそれが気に入らない? それとも、おかしいと思っているかもしれない。本人もわかっていない感じだったわ」
「そんなこと、私には」
「関係ない?」
カーシャはククク、と笑った。
それは。
まるで蛇が吐き出す音のような……。
「一緒に、素敵な王子様と毎日ステキな時間を過ごしておられるようだけど?」
美貌の乙女は、あかりの耳元でささやく。
カッ、と――
あかりは目の前が真っ赤になりそうだった。
「だから、最近あなたも生活がダラけているのじゃなくって?」
「しかしまあ……」
カーシャはその白く美しい指を、バランスの整った顎に添えながら、
「
「い、いいかげんに……!」
反射的に、あかりが手を振り上げた。
その瞬間。
「よくないなぁ? ちょっと気に入らないことを言われたからってボーリョクは……」
あの、白く美しい指。
それが一本、あかりの鼻先に突き付けられていた。
「まずいでしょ、鬼台さん? 私のようなクズはともかく、あなたみたいな成績優秀で規律を重んじる、でもちょっとポンコツな真面目っこが逆切れして暴力に訴えるなんて」
カーシャは困ったように首を振り、腕をおろす。
「ま。群れになって、ひとりの王子様にかしずく色ボケだからしょうがないけれどね。じゃ」
さんざん勝手なことを言ってから――
カーシャはひとりで勝手に去ってしまった。