破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
蛇足かもしれませんので読み飛ばしてくれてダイジョブです
*シリング・クローラー。
姿はゴブリンに似ているが、人間並の大きさで肌は灰色。
手足の爪で天井や壁を這いまわり、剣や槍など武器を使う。
ダンジョンなどに群れで出現する。
*オウルベア。
その名の通り、
――どっちもその起源は魔法で造られたもの、らしい……。
ネイテクは戦闘の最中、そんなことを思っていたが、
ブン! グシャ……!
シリング・クローラーが壁に叩きつけられ、頭を潰されてる。
「ガッハハハハハハ! ぜんぜん出番がのうてモヤモヤしとったんじゃ! おどれら、
キューモは金砕棒を小枝のように振り回し、モンスターを殴り飛ばしていく。
シリング・クローラーの中には、革製の……雑な造りだが鎧をつけている個体もいる。
あるいは、同じような革製の盾。
しかし、怪力で振るわれる金砕棒にはまるで無力。
オウルベア相手でも、キューモの勢いは止まらない。
相手をめった打ちにして、まともな反撃もさせず殴り殺す。
「……5匹。……6匹。……7匹」
メッカイは影のように動き回りながら、手甲の爪で切り裂く。
急所を正確に攻撃して、隙がない。
「******………」
タロザはなにか呪文を唱えつつ、扇のようなものを振るっていた。
それに合わせて小さな何かが飛び回り、モンスターたちの足や目を攻撃。
後衛にモンスターたちを寄せつけない。
――驚いたな……。少数ならともかく、この大軍をまるで相手にしてない。
獣人娘たちの戦いを見ながら、ネイテクはため息を吐いた。
――シリング・クローラーもそうだが、オウルベアまで複数だぞ? しかも……。
モンスターは次々出てくるが、倒される速度のほうが早かった。
勇猛果敢。
というよりは、まさしく血に飢えた野獣。
「ぎゃあああああああッ!」
しかし。
パーティー内でも悲鳴をあげている者もいた。
タンク役であるジロである。
獣人娘たちのおかげで、モンスターが殺到するほどではない。
だが、武器を構えたシリング・クローラーが何匹も迫る。
遠くから石やガラクタを投げてくる個体までいた。
その攻撃をボカスカ受けながら、ジロは時々悲鳴をあげていた。
ヘイトを集めているため、シリング・クローラーだけなくオウルベアも狙ってくる。
「やめてくれぇええ……!」
「魔力連弾――」
ネイテクは文字通りジロを盾にしながら、攻撃魔法で何匹ものモンスターを撃ちぬいた。
シリング・クローラーは一撃で即死しなくても、ダメージを受けて動きを止める。
しかし。
オウルベアの場合、多少ひるむだけで動きは止まらなかった。
「ぎぇぇええええええ!!」
接近してくるオウルベアに、ジロはへたりこんでしまう。
その時、
「十字手裏剣」
オウルベアに十字型の刃が突き刺さった。
直後、
ボムッ……!
刃は爆発してモンスターの内部を破壊する。
「……!」
ネイテクがチラリと見ると、
ビュビュビュビュ……――
トクベーは次々と刃を放っていた。
刃はクルクルと回転しながら、まるで生き物のように飛び回り、
ボオオォ……ッッ!!
ギュオエアッッ!?
モンスターたちに突き刺さって、爆発していった。
そうかと思えば。
トクベーは音もなく、影のように動いてモンスターの間をくぐり抜けていく。
ハッとした後。
モンスターは切り裂かれて倒れていった。
――なんと……。こういうのを
いつどんな風に斬ったのか、ネイテクにはまるで見えなかった。
「……ごっついのぉ!? ちゅうか……。マジで忍者やん」
トクベーの戦いぶりを見ながら、ジロはため息。
「一時は覚悟しかけましたが、これなら何とかなりそうです」
「ホンマに? あー、良かった……」
「……経験上こういう時がかえって危ないんですがね。さ、防御に専念してください」
「気楽に言うなや。どつかれるんはわしやで?」
「仕方ないですねえ、それがタンクの仕事なので」
さて。
修羅場の中でマコネとバッキーはと言えば、
「やるもんだねえ……。どいつもこいつも良い腕してら。あのオッサンをのぞいて」
マコネは少しだけ、笑う。
ふところにしまった
「私たち、なにもしなくっていいんでしょうか……?」
「なにができんだよ。おいらはナイフ一本もないんだぜ? あったってゴメンだけどさ。あんたも、ケガ人いないなら出番ないだろ」
「他にも魔法おぼえとけば良かった……かな」
「あんたの場合、治癒魔法が反則レベルだ。大体ヒーラーは後方支援担当だろ」
「……でも、こんなことになるなんて」
「……まあなあ。助かったのはメチャ運が良かったと思わにゃ」
:ある冒険者の述懐。
私は、使い魔の目を通して周辺の索敵をしていた。
『エルフの凶悪なテロ組織が活動している』
その情報は、あちこちに伝わっていた。
ギルドナイトが何度も討伐に乗り出し、その度に失敗している。
少し前も、ミズイの街がドラゴンの襲撃を受けているそうだ。
どこのギルドもピリピリしていた。
そんな中。
私たちのパーティーも、斥候に送り出された。
正直、みんな気は進まなかったと思う。
エルフのテロ集団なんて、考えただけでゾッとする。
でも、断ることはできなかった。
ギルドに睨まれたら、今後に影響してしまう。
使い魔の鷹を飛ばして、上空から探っている途中、
「……!」
森と岩場の境目あたり。
そこから煙が上がっているのを発見する。
さらに観察していくうちに、戦闘の跡を確認した。
あちこちに黒い何かが転がっている。
死体……。
多分、人間かそれに近い種族の……。
「……えらいもの、見つけちゃった」
私は仲間を振り返りながら、どうにかそれだけ言った。
後で聞いたら、完全に引きつった顔だったという。
みんな、どうしようか迷った。
でも、結局は――
「……俺が先頭に立つ。やばいとわかったら、速攻で逃げろ」
リーダーの言葉で、決まった。
私たちがその場所に行って見たものは、
「ひでえな……」
誰かが言った。
たぶんだけど、みんなおんなじ感想だったろう。
あちこちに武器の残骸や、攻撃魔法の跡がある。
死体はほとんど、メチャクチャになっていた。
まるで、そう……。
大きな生き物に踏みつぶされるか、ものすごい力で引きちぎれたような。
「こいつら……みんな、エルフだ」
死体を観察していた仲間が震えながら言った。
「少なくとも、10人以上はいるぜ……?」
それが、こんな風に無残に……。
「たぶんだが……こいつらは、テロ組織に所属していた連中だろうな」
転がっている杖を拾い上げて、リーダーがみんなを振り返った。
「警戒を頼む……。近くに、やばいモンスターがいるかもしれない」
リーダーは私に言いながら、武器を握りしめていた。
私が探知の魔法を使おうとした時、
「……なにか、いる!」
仲間の一人が小さく叫んだ。
いつの間にか、少し岩の上に
「なんだ、お前らは――」
冷たい女の声。
座っていたのは、あちこちが血に染まった女。
軽鎧……ライトアーマーを着た、すごい美形。
まるで、こう……。
お姫様か、深窓の令嬢みたいな。
だけど、きれいな顔に反してゾッとするような目つきだ。
「……俺たちは、冒険者ギルド所属のパーティーだ。ギルドのクエストでこのへんを調べている」
「ああ……」
女は納得したようにつぶやいてから、
「こっちも同じ立場よ。クエストの途中」
言いながら、女は立ち上がった。
片手に、なにか大きな塊を持っている。
「魔石?」
それに気づいた私は、思わず言ってしまう。
間違いなく、未加工の魔石だった。
しかも……。
かなりの高品質だと、遠目からでもわかるほどの。
「……あ、あの、その魔石は?」
「さあ? 奥に転がってたのよ」
そう言った後。
女は私たちに興味を失ったらしい。
「お、おい! ちょっと……!」
リーダーが止めようとしたけど、
「あっ……」
女は、まるで空を飛ぶみたいに高く高くジャンプして……。
消えてしまった。
「ば、バッタか、あいつは……」
仲間がつぶやくの聞きながら、私はただ呆然とするだけだった。
その後。
岩場の陰に住居の入り口らしいものを見つけた。
扉が破壊されて、中からムッとするような血の臭いが……。
このへんが、テロ集団のアジトだったらしい。
正直、私は中にまで入る勇気はなかった。
ひょっとすると生き残りがいる可能性もあるし――
「さっきのヤツは、なにかの罠かもしれない」
リーダーはそう言ってすぐにギルドへ連絡を入れた。
これで、私たちが実際に見た話はおしまい。
後で聞いた噂では?
ギルドが調査したところ、その内部はかなり広くて――
しかも大量の魔石が発見されたらしい。
「えらいもんが見つかりましたわ」
支部長室で、シュニオは言った。
通信機ごしに本部との会話途中。
<――そんだけの量かあ。よくそこまで集めたもんだ。それをアジトまで運ぶとはなぁ>
「アジトというかねえ……。天然の洞窟を利用した工房というか、貯蔵庫というか……」
<工房?>
「はい。大量の魔石と一緒に、王都でも数えるほどしかないような立派なもんが。あれならドラゴン・ホルン作るのも簡単でしたやろうねえ……」
<ふーん……。ともかく、魔石の出どころが重要だな。国外だったとすれば、探索は厄介だが――>
「まあ、結果だけ見れば? 全員無事だし、クエストも完了。メデタシメデタシってところか」
料理の並んだテーブルの前。
マコネは食事の手を止め、ホッとした顔で言った。
カーシャはただ無言で料理を食べている。
その所作は、やはり元・令嬢らしい作法にのっとったもの。
「……あんまり、経験したくはなかったですけど」
バッキーはちょっとずつ野菜料理を食べながら、微妙な笑い。
「……しかしよぉ」
マコネは首をかしげ、
「おいらたちの情報、どっから漏れてたんだろうな?」
「情報の取り扱いが
カーシャはあっさりと切り捨てた。
「まあ、ギルドも支部ごとで善し悪しがあるっていうしなあ……」
マコネは肩をすくめ、食事を再開した。
* おまけ? *
バタムにある冒険者が集まる酒場。
その片隅で、
「はぁ……」
トクベーは何も手をつけず、辛気臭い顔のままだった。
「正直なところ、アレは下策中の下策どしたなあ」
扇であおぎながら、タロザは淡々と語る。
「……バカだって言いたいんだろ」
「見た目は可憐な
「ほんなら、おやっさん言うてくれたら良かったですが」
キューモは飲み干したジョッキを置きながら、
「あの女ァ
「いや、おま……」
「危ない」
メッカイが端的に言った。
「そがぁなこと言うてたら、この界隈じゃあやっていけんじゃないの? おやっさん、
「……お、お前なあ?」
キューモの言い分に、トクベーが反論しようとした時、
「その場合――」
メッカイが割り込んで、
「
「とはいえ、とっとと始末するんがおススメどすけど」
「……」
「ま、しかし? 逃げたメスエルフはどーせまたなんかやらかしますよって、下手打ったんは事実です。はい」
「……」
「のう、おやっさん! うちらぁみんな
「勝手にやってたらいずれ暴走。自滅」
「
獣人娘たちが言ってくるのに対し、トクベーは、
「……ハチミツに砂糖ぶちこんだようなヤツに?」
「それ、ギルドで言われた?」
「まあね……」
メッカイの問いに、トクベーはうなずいた。
「いかにもその通りではおますけど」
タロザは少年の肩に細く形の整った指を置いて、
「それを言うたらあてらは
「……」
「そうとちがいますか?」
「おやっさん、アタマぁはるおかたならそれらしゅう振るまってつかぁいや。ほしたら、うちらもおやっさんから色々と勉強させてもらうが」
トクベーは仲間の意見を聞きながら、黙って酒を飲んで――
「わかった。すまない……」
うなずいた。
するとさらにキューモが、
「おやっさん、男の本懐ちゅうたらよ? 子分衆ずらーっと並べて、うまい酒やうまいもん食って、ほんで
――なんちゅう価値観だ……。女の子とは思えんぞ。