破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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急遽、最後のほうにおまけをたしました
蛇足かもしれませんので読み飛ばしてくれてダイジョブです


その21、クエスト、無事? 終了

 

 

 

 *シリング・クローラー。

 姿はゴブリンに似ているが、人間並の大きさで肌は灰色。

 手足の爪で天井や壁を這いまわり、剣や槍など武器を使う。

 ダンジョンなどに群れで出現する。

 

 *オウルベア。

 その名の通り、フクロウ(オウル)の頭と(ベア)の体を持つ怪物。

 

 ――どっちもその起源は魔法で造られたもの、らしい……。

 

 ネイテクは戦闘の最中、そんなことを思っていたが、

 

 ブン! グシャ……!

 

 シリング・クローラーが壁に叩きつけられ、頭を潰されてる。

 

「ガッハハハハハハ! ぜんぜん出番がのうてモヤモヤしとったんじゃ! おどれら、ブチのめしてやる(シゴウしたる)ぞ!!」

 

 キューモは金砕棒を小枝のように振り回し、モンスターを殴り飛ばしていく。

 シリング・クローラーの中には、革製の……雑な造りだが鎧をつけている個体もいる。

 あるいは、同じような革製の盾。

 しかし、怪力で振るわれる金砕棒にはまるで無力。

 オウルベア相手でも、キューモの勢いは止まらない。

 相手をめった打ちにして、まともな反撃もさせず殴り殺す。

 

「……5匹。……6匹。……7匹」

 

 メッカイは影のように動き回りながら、手甲の爪で切り裂く。

 急所を正確に攻撃して、隙がない。

 

「******………」

 

 タロザはなにか呪文を唱えつつ、扇のようなものを振るっていた。

 それに合わせて小さな何かが飛び回り、モンスターたちの足や目を攻撃。

 後衛にモンスターたちを寄せつけない。

 

 ――驚いたな……。少数ならともかく、この大軍をまるで相手にしてない。

 

 獣人娘たちの戦いを見ながら、ネイテクはため息を吐いた。

 

 ――シリング・クローラーもそうだが、オウルベアまで複数だぞ? しかも……。

 

 モンスターは次々出てくるが、倒される速度のほうが早かった。

 勇猛果敢。

 というよりは、まさしく血に飢えた野獣。

 

「ぎゃあああああああッ!」

 

 しかし。

 

 パーティー内でも悲鳴をあげている者もいた。

 タンク役であるジロである。

 

 獣人娘たちのおかげで、モンスターが殺到するほどではない。

 だが、武器を構えたシリング・クローラーが何匹も迫る。

 遠くから石やガラクタを投げてくる個体までいた。

 その攻撃をボカスカ受けながら、ジロは時々悲鳴をあげていた。

 ヘイトを集めているため、シリング・クローラーだけなくオウルベアも狙ってくる。

 

「やめてくれぇええ……!」

 

「魔力連弾――」

 

 ネイテクは文字通りジロを盾にしながら、攻撃魔法で何匹ものモンスターを撃ちぬいた。

 シリング・クローラーは一撃で即死しなくても、ダメージを受けて動きを止める。

 しかし。

 オウルベアの場合、多少ひるむだけで動きは止まらなかった。

 

「ぎぇぇええええええ!!」

 

 接近してくるオウルベアに、ジロはへたりこんでしまう。

 

 その時、

 

「十字手裏剣」

 

 オウルベアに十字型の刃が突き刺さった。

 直後、

 

 ボムッ……!

 

 刃は爆発してモンスターの内部を破壊する。

 

「……!」

 

 ネイテクがチラリと見ると、

 

 ビュビュビュビュ……――

 

 トクベーは次々と刃を放っていた。

 刃はクルクルと回転しながら、まるで生き物のように飛び回り、

 

 ボオオォ……ッッ!!

 

 ギュオエアッッ!?

 

 モンスターたちに突き刺さって、爆発していった。

 

 そうかと思えば。

 

 トクベーは音もなく、影のように動いてモンスターの間をくぐり抜けていく。

 ハッとした後。

 モンスターは切り裂かれて倒れていった。

 

 ――なんと……。こういうのを手練(しゅれん)の技と言うのか。まだ若いのに……。

 

 いつどんな風に斬ったのか、ネイテクにはまるで見えなかった。

 

「……ごっついのぉ!? ちゅうか……。マジで忍者やん」

 

 トクベーの戦いぶりを見ながら、ジロはため息。

 

「一時は覚悟しかけましたが、これなら何とかなりそうです」

 

「ホンマに? あー、良かった……」

 

「……経験上こういう時がかえって危ないんですがね。さ、防御に専念してください」

 

「気楽に言うなや。どつかれるんはわしやで?」

 

「仕方ないですねえ、それがタンクの仕事なので」

 

 さて。

 

 修羅場の中でマコネとバッキーはと言えば、

 

「やるもんだねえ……。どいつもこいつも良い腕してら。あのオッサンをのぞいて」

 

 マコネは少しだけ、笑う。

 ふところにしまった角笛(ドラゴン・ホルン)を触りながら。

 

「私たち、なにもしなくっていいんでしょうか……?」

 

「なにができんだよ。おいらはナイフ一本もないんだぜ? あったってゴメンだけどさ。あんたも、ケガ人いないなら出番ないだろ」

 

「他にも魔法おぼえとけば良かった……かな」

 

「あんたの場合、治癒魔法が反則レベルだ。大体ヒーラーは後方支援担当だろ」

 

「……でも、こんなことになるなんて」

 

「……まあなあ。助かったのはメチャ運が良かったと思わにゃ」

 

 

 

 

 :ある冒険者の述懐。

 

 私は、使い魔の目を通して周辺の索敵をしていた。

 

『エルフの凶悪なテロ組織が活動している』

 

 その情報は、あちこちに伝わっていた。

 ギルドナイトが何度も討伐に乗り出し、その度に失敗している。

 少し前も、ミズイの街がドラゴンの襲撃を受けているそうだ。

 どこのギルドもピリピリしていた。

 

 そんな中。

 

 私たちのパーティーも、斥候に送り出された。

 正直、みんな気は進まなかったと思う。

 エルフのテロ集団なんて、考えただけでゾッとする。

 でも、断ることはできなかった。

 ギルドに睨まれたら、今後に影響してしまう。

 

 使い魔の鷹を飛ばして、上空から探っている途中、

 

「……!」

 

 森と岩場の境目あたり。

 そこから煙が上がっているのを発見する。

 さらに観察していくうちに、戦闘の跡を確認した。

 あちこちに黒い何かが転がっている。

 死体……。

 多分、人間かそれに近い種族の……。

 

「……えらいもの、見つけちゃった」

 

 私は仲間を振り返りながら、どうにかそれだけ言った。

 後で聞いたら、完全に引きつった顔だったという。

 

 みんな、どうしようか迷った。

 でも、結局は――

 

「……俺が先頭に立つ。やばいとわかったら、速攻で逃げろ」

 

 リーダーの言葉で、決まった。

 

 私たちがその場所に行って見たものは、

 

「ひでえな……」

 

 誰かが言った。

 たぶんだけど、みんなおんなじ感想だったろう。

 あちこちに武器の残骸や、攻撃魔法の跡がある。

 死体はほとんど、メチャクチャになっていた。

 まるで、そう……。

 大きな生き物に踏みつぶされるか、ものすごい力で引きちぎれたような。

 

「こいつら……みんな、エルフだ」

 

 死体を観察していた仲間が震えながら言った。

 

「少なくとも、10人以上はいるぜ……?」

 

 それが、こんな風に無残に……。

 

「たぶんだが……こいつらは、テロ組織に所属していた連中だろうな」

 

 転がっている杖を拾い上げて、リーダーがみんなを振り返った。

 

「警戒を頼む……。近くに、やばいモンスターがいるかもしれない」

 

 リーダーは私に言いながら、武器を握りしめていた。

 私が探知の魔法を使おうとした時、

 

「……なにか、いる!」

 

 仲間の一人が小さく叫んだ。

 いつの間にか、少し岩の上になにか(・・・)が座っていた。

 

「なんだ、お前らは――」

 

 冷たい女の声。

 座っていたのは、あちこちが血に染まった女。

 軽鎧……ライトアーマーを着た、すごい美形。

 

 まるで、こう……。

 

 お姫様か、深窓の令嬢みたいな。

 だけど、きれいな顔に反してゾッとするような目つきだ。

 

「……俺たちは、冒険者ギルド所属のパーティーだ。ギルドのクエストでこのへんを調べている」

 

「ああ……」

 

 女は納得したようにつぶやいてから、

 

「こっちも同じ立場よ。クエストの途中」

 

 言いながら、女は立ち上がった。

 片手に、なにか大きな塊を持っている。

 

「魔石?」

 

 それに気づいた私は、思わず言ってしまう。

 間違いなく、未加工の魔石だった。

 しかも……。

 かなりの高品質だと、遠目からでもわかるほどの。

 

「……あ、あの、その魔石は?」

 

「さあ? 奥に転がってたのよ」

 

 そう言った後。

 女は私たちに興味を失ったらしい。

 

「お、おい! ちょっと……!」

 

 リーダーが止めようとしたけど、

 

「あっ……」

 

 女は、まるで空を飛ぶみたいに高く高くジャンプして……。

 消えてしまった。

 

「ば、バッタか、あいつは……」

 

 仲間がつぶやくの聞きながら、私はただ呆然とするだけだった。

 

 その後。

 

 岩場の陰に住居の入り口らしいものを見つけた。

 扉が破壊されて、中からムッとするような血の臭いが……。

 このへんが、テロ集団のアジトだったらしい。

 正直、私は中にまで入る勇気はなかった。

 ひょっとすると生き残りがいる可能性もあるし――

 

「さっきのヤツは、なにかの罠かもしれない」

 

 リーダーはそう言ってすぐにギルドへ連絡を入れた。

 これで、私たちが実際に見た話はおしまい。

 

 後で聞いた噂では?

 

 ギルドが調査したところ、その内部はかなり広くて――

 しかも大量の魔石が発見されたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

「えらいもんが見つかりましたわ」

 

 支部長室で、シュニオは言った。

 通信機ごしに本部との会話途中。

 

<――そんだけの量かあ。よくそこまで集めたもんだ。それをアジトまで運ぶとはなぁ>

 

「アジトというかねえ……。天然の洞窟を利用した工房というか、貯蔵庫というか……」

 

<工房?>

 

「はい。大量の魔石と一緒に、王都でも数えるほどしかないような立派なもんが。あれならドラゴン・ホルン作るのも簡単でしたやろうねえ……」

 

<ふーん……。ともかく、魔石の出どころが重要だな。国外だったとすれば、探索は厄介だが――>

 

 

 

 

 

 

「まあ、結果だけ見れば? 全員無事だし、クエストも完了。メデタシメデタシってところか」

 

 料理の並んだテーブルの前。

 マコネは食事の手を止め、ホッとした顔で言った。

 

 カーシャはただ無言で料理を食べている。

 その所作は、やはり元・令嬢らしい作法にのっとったもの。

 

「……あんまり、経験したくはなかったですけど」

 

 バッキーはちょっとずつ野菜料理を食べながら、微妙な笑い。

 

「……しかしよぉ」

 

 マコネは首をかしげ、

 

「おいらたちの情報、どっから漏れてたんだろうな?」

 

「情報の取り扱いが杜撰(ずさん)だったんでしょう」

 

 カーシャはあっさりと切り捨てた。

 

「まあ、ギルドも支部ごとで善し悪しがあるっていうしなあ……」

 

 マコネは肩をすくめ、食事を再開した。

 

 

 

 

 

 * おまけ? *

 

 バタムにある冒険者が集まる酒場。

 その片隅で、

 

「はぁ……」

 

 トクベーは何も手をつけず、辛気臭い顔のままだった。

 

「正直なところ、アレは下策中の下策どしたなあ」

 

 扇であおぎながら、タロザは淡々と語る。

 

「……バカだって言いたいんだろ」

 

「見た目は可憐な少女(おなご)やし、殿方がほだされるんもわかりますけどねえ」

 

「ほんなら、おやっさん言うてくれたら良かったですが」

 

 キューモは飲み干したジョッキを置きながら、

 

「あの女ァ()ってこいや言うたら、やりようもありますけえの」

 

「いや、おま……」

 

「危ない」

 

 メッカイが端的に言った。

 

「そがぁなこと言うてたら、この界隈じゃあやっていけんじゃないの? おやっさん、一家(パーティー)のアタマはろうちゅうお人がですよ、あんなメス一匹いてこませんようでは、いけませんわ」

 

「……お、お前なあ?」

 

 キューモの言い分に、トクベーが反論しようとした時、

 

「その場合――」

 

 メッカイが割り込んで、

 

テキトーに楽しんだ後(・・・・・・・・・)、始末すれば問題なし」

 

「とはいえ、とっとと始末するんがおススメどすけど」

 

「……」

 

「ま、しかし? 逃げたメスエルフはどーせまたなんかやらかしますよって、下手打ったんは事実です。はい」

 

「……」

 

「のう、おやっさん! うちらぁみんな腐り外道(・・・・・)じゃ言うて同族からはじき出されたもんですが」

 

「勝手にやってたらいずれ暴走。自滅」

 

自分(おのれ)でも、そこはわかってますよって、あなたを束ね役にかついどるんです」

 

 獣人娘たちが言ってくるのに対し、トクベーは、

 

「……ハチミツに砂糖ぶちこんだようなヤツに?」

 

「それ、ギルドで言われた?」

 

「まあね……」

 

 メッカイの問いに、トクベーはうなずいた。

 

「いかにもその通りではおますけど」

 

 タロザは少年の肩に細く形の整った指を置いて、

 

「それを言うたらあてらは(つよ)うて辛いばっかの、しょーもない悪酒(わるざけ)どすわ。せやから、一緒に混ぜることでようやっと飲めるもんになる」

 

「……」

 

「そうとちがいますか?」

 

「おやっさん、アタマぁはるおかたならそれらしゅう振るまってつかぁいや。ほしたら、うちらもおやっさんから色々と勉強させてもらうが」

 

 トクベーは仲間の意見を聞きながら、黙って酒を飲んで――

 

「わかった。すまない……」

 

 うなずいた。

 するとさらにキューモが、

 

「おやっさん、男の本懐ちゅうたらよ? 子分衆ずらーっと並べて、うまい酒やうまいもん食って、ほんで()え女と***することじゃないの? それにゃあ銭も力もいるんですよ?」

 

 ――なんちゅう価値観だ……。女の子とは思えんぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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