破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
――こういうのを、アレか。〝手持ち
マコネは、先ほど買った鶏肉の串焼きを食べながら街を歩く。
街の周辺……。
それも、街道近くをうろついているモンスターの駆除。
目標は、白熱ガニ。
名前が示す通り。強固な外殻を持つ巨大なカニ型モンスター。
最大の特徴は、口から吐き出す白熱光。
鉄をも溶かす、それは冒険者どころか、ひとつの街を単体で焼き尽くす――
とさえ、言われている。
しかもその外殻は炎も氷も寄せ付けない。
物理的防御力に加えて、強い対魔力まであるのだ。
また、半端な雷撃魔法では足止め程度。
「装備の充実した国軍でも不覚を取りかねない……」
依頼を受ける時も、そのように注意された。
――フツーなら、まず命はねえわな……。
なにしろ?
カーシャたちの前に、SRランクの冒険者パーティーが全滅しかけている。
SR、とはいっても。
パーティーの全員がSRなわけではない。
リーダーか、主戦力となる者がそのランクというだけ。
メンバー内に2人もいれば上出来なのだ。
また、そういうパーティーの構成員は当然だが腕ききばかり。
用心深くもあるし。
時には非情な判断をすることもある。
仲間どころか、自身を犠牲にすることも覚悟するほどに。
運も良い。
しかし。
それでもなお、どうにもならない時は、
――どうにもならねえんだよなあ……。
腕自慢。
豪傑。
英雄となる男。
こんな評価を受けた者たちが、あっさり死ぬ。
そういうことは、何度も目にして、聞いた。
――ドラゴンの幼体にでもでくわしゃ、全滅しかねねえ……。
希少と思われがちなドラゴン種だが?
人間で言えば幼児、場合によっては赤ん坊。
そんなものは、ちょくちょく出てくる。
「つっても。これも、種類とか場所、季節で色々変わるがな」
ゴトクはそう語っている。
「成長してないヤツはドラゴンの血ってのかい。そいつが薄い。体も出来上がってない。だから、素材としての価値はまあ低いな。といっても、並のモンスターよりはずっと上だが」
色々と思い返しつつ、マコネはふと足を止める。
前を通りがかった路地裏。
そこに、うごくものを見たからだ。
気配からして、小動物ではない。
――物乞い? いや……。
道端などで寝転がったりしていれば、ギルドナイトや役人に捕まるか、追い払われる。
特にギルドの勢力が大きい、つまり冒険者の多い街では、
――大道芸人ならともかく、単なる物乞いなんざできねえし?
浮浪児と言われる子供でも、ギルドの下働き、あるいは監視下にあるという。
――なにより……。
どこか気配が、妙だった。
――ああ、もう……!
マコネは首を振りながら、路地裏を調べた。
怪しいものは、すぐに見つかる。
いや。
もとから、隠れてもいなかったのだ。
ひとりの少女が、倒れていた。
「なんだぁ?」
マコネはしゃがみこんで、少女を観察。
小汚い浮浪児、ではない。
汚れてはいるが、着ている衣服はあきらかに値の張る代物。
どう見ても浮浪児が着るものではない。
――厄介ごとか。
どうにも、きな臭い。
血生臭い気配がする。
そういう状況だった。
――まさか、どっかのお嬢様ってんじゃなかろーな? いや、服だけならそうも見えるけど……。
服の汚れには、血痕もあった。
傷もおっているようだ。
「まいったなあ……」
マコネは頭を掻き、ため息。
――こういう場合、見なかったことにしてほっとくのが賢い判断なんだけど。
いや?
身の丈に合ってる、ってのかね?
複雑な気分で腰を上げる途中、
――おいおいおい……。
動きを止めずに、マコネはげんなりとした気分。
そして。
ヒュッ
「っのぉ!?」
宙を飛んできたモノを、抜いたナイフで迎え撃った。
斬られたそれは、壁にぶつかって転がる。
――虫?
確かに、何かの虫である。
ただし。
そのサイズは子猫ほどはあった。
加えて。
明らかに殺気があった。
虫、というよりもそれを操っている者に。
――ヤロォ!? いきなり、おいらを狙いやがったな!?
マコネはとっさに少女をかつぎ、走り出した。
「あのまま、ほっときゃ何もしなかったかもな!?」
聞こえているかは、わからない。
だが、それでも。
マコネは襲撃者に向かって怒鳴り、風のごとく逃げる。
「変なもの拾って来たわね?」
カーシャはあやとりをしながら、淡々と言った。
「そうだな。つまんねーことしちゃったよ……」
マコネは肩を落としながら、大きなため息。
かついできた少女は、現在ベッドの中で眠っている。
先ほど――
バッキーが治療し、衣服を着替えさせたところだ。
「柄にもねえとは、このこった」
「そうですか?」
手をふきながらニコリと笑い、マコネを見る。
「ああ。そーだよ」
「でも、私なら何もできずに逃げるだけだった、ですね」
少女の寝顔を見ながら、バッキーは少し情けなさそうに言った。
「それが普通だし。逃げられるなら上等だよ」
つまらなそうに言うマコネ。
その顔を、バッキーは穏やかな眼で見ていた。
「――でも。確かに、そこらの町娘が着るものではないわ」
机に置かれた少女の衣服。
それを見ながら、カーシャは目を細めた。
「やっぱ、高いのかい?」
「素材は、特製のシルクらしいわ。肌触りも着心地も最高。その上、防御力まである。助かったのは服のおかげね」
「あ、確かに。傷は浅めでした」
バッキーもうなずく。
「どこのお嬢様だか、お姫様だか……。謝礼金をたっぷりもらわなきゃ割にあわねえ」
マコネは少女をちょっと睨んだ。
「もらえればいいけど――」
カーシャは肩をすくめ、
「場合によっては、私たちが誘拐犯にされるかもしれないわ」
「えええ……」
バッキーはあわて、
「カンベンしてほしいぜ……」
マコネは、再び肩を落とした。