破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その114、きみは虜囚か姫君か-6 マコネとバッキーは伯爵邸へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 目の前にいる、不機嫌そうな顔の美男子。

 ベルツ・フォイア伯爵。

 

「まあ、旦那。そういうことですんで、ひとつ」

 

 マコネは頭を下げながらも、やや居心地が悪そうで。

 しかし。

 萎縮もせずに挨拶(あいさつ)

 

「よろしくお願いします……」

 

 バッキーは屋敷に伯爵の美貌にドギマギしながら、挨拶。

 

「……()()()も余計なことを」

 

 小さなつぶやき。

 マコネの優れた聴覚は、それを(とら)える。

 

 

 

「ヒーラーとして、ですか?」

 

「そう」

 

 カーシャは窓の外を見ながら、応えた。

 

「いっそ護衛じゃなくって、何かあった時の医者……ヒーラーとして行っていただきましょうか」

 

 あなたはその助手としてね?

 

 言いながら、カーシャは振り返ってマコネを見る。

 小さな笑みを浮かべて。

 

「確かに? 護衛ってのよりは説得力あるよな?」

 

 マコネは腕を頭の後ろに回して、わずかに視線を上げる。

 

 ある部分では――

 バッキーはカーシャ以上に名が売れていた。

 トップクラスのヒーラーとして。

 

 こういうわけで。

 そういうことになった。

 

 

 

「――お前たちの主人は、どういう意図だ」

 

「え?」

 

 伯爵の問い。

 それに、バッキーは一瞬返答につまった。

 意味がわからなかったのだ。

 

「姐さんのことですかぃ? まあ、あのひとは休暇中ってことで。それに、荒事専門ですからねえ」

 

 マコネは笑って説明する。

 

「別にご主人様ってわけでもないですけど……。確かにパーティーのリーダーではあります」

 

 バッキーも続いてそう言った。

 

「そうか。なら、お前たちはお前たちの仕事をすればいい」

 

 伯爵は興味をなくしたのか。

 後は使用人に任せ、行ってしまった。

 

 

 2人は用意された部屋に案内され、ひとまず荷物を置く。

 

「美形だけど、怖い感じのひとですねえ」

 

 荷物を整理・確認しながら、バッキーは言った。

 言うほど、怖さは感じていなかったのだが……。

 

 美形という点も、男というところが大きい。

 

 怖さも美貌も――

 カーシャと共にいると免疫ができてしまう。

 

 ――でもまあ……。イセンサさんみたく、タイプが全然ちがうかな?

 

 カーシャが刃物や兵器の美しさなら……。

 イセンサは花かお人形か。

 

「部屋は屋敷にふさわしく上等だな。これで飯が美味けりゃ最高なんだけどさ」

 

 マコネはヘラヘラしつつ、部屋を見回す。

 

「いっそボロンも連れてくりゃ良かったかな? ふわふわしたヤツ同士、あの()()()とは相性良いかもしれねえや」

 

「それはちょっと危ないんじゃあ……。あの()、時どき突拍子もないことするから」

 

 バッキーがそう言うと、

 

「まあ、そうだろうな」

 

 マコネはケラケラ笑う。

 ベッドや壁、置かれた家具などをあちこち触りながら。

 

「あいつが一緒だと、またおかしなトラブルを起こしかねないしよ? 姐さんは面白がるかもしんねーが、おいらぁゴメンだ」

 

「でも……。このお屋敷って、けっこう警備厳重ですよ。殺し屋……? とかが襲ってきますかね?」

 

 バッキーは首をかしげる。

 

 

 フォイア家の屋敷。

 使用人の数は多くない。

 

 だが?

 

 あちこちに特殊な結界や魔道具を用いた警備システムが配備。

 パッと見にはわからないが、迎撃用の装備もあるようだ。

 

「さあね。襲ってこないなら余計な仕事しなくっていいけどさ。そうなると、おいらたちはいつまでここにいるのやら」

 

 マコネは窓の外を見て、ややうんざりした顔。

 そこからは、庭にいるイセンサの姿が見えた。

 

 またバッキーも、

 

 ――SRの冒険者はドラゴン討伐もできる人材がいる、とは聞いたけど……。

 

 そんなことを考えていた。

 思い返すのは、出発の前日にゴトクより聞いた話。

 

 

 

「ひと(くち)にドラゴンと言っても、まあ色々だからなあ」

 

 準備のため買い物に来たマコネはそれとなく?

 ドラゴンスレイヤーのアレコレを聞いてみたところ、

 

「伝説に出てくるようなドラゴンなんか、まず出てこねえし。冒険者が束になっても勝てる相手じゃねえ。ま、俺も話でしか知らんけど」

 

「はえー……」

 

「だが? 成長途中のドラゴンを見れば成体がどれだけヤバいかは、想像できるってもんだ」

 

「でもドラゴンも色々なんでしょ? 中には成長が早い種もいるんじゃ」

 

「それも確か。その通りだ」

 

 ゴトクはメモ用紙にサラサラと、何かを書いた。

 

 

『幼体~中間体~成体』

 

 

「大別すれば、こういう感じだ。で、それにもうちょい細かい分類をすれば……」

 

 

『幼体~2・3・4~中間体~2・3・4~成体』

 

 

「これでもだいぶ大ざっぱ、だがな。つまり? 幼体から中間体になるまでにも、いくつもの段階を経て成長してくんだ。どんな生き物も、いきなり蛹だの成体になるわけじゃないだろ」

 

「なるほど。確かにそうですね……」

 

「幼体といっても、まあなんだ。卵から生まれた直後なんてのは、むしろ希少だ。種類によっちゃあ、幼体同士で共喰いすることもある」

 

「えええ……」

 

「そういうのは、たいがい凶暴でな。たちの悪いことに、そういうのに限って数も多いから、出現数も多い」

 

 一番被害を出してるタイプじゃねえかな?

 

 と。

 おっかない、とばかりにゴトクは首をすくめた。

 

「出てくるのはたいがい、幼体か中間体さ。そうだな、青い女傑が最初に殺したのも中間体だよ」

 

「あれで、成長途中……」

 

 火炎竜の猛威と巨体。

 それを思い返して、バッキーはゾッとする。

 

「とはいえ。中間体もやっぱり成長過程で色々。種で色々。一概には言えんが……」

 

 あいつの場合、火炎竜だけじゃなく飛竜(ワイバーン)の群れも潰してるからな。

 

 そこまでいったら、もう普通じゃねえ。

 今さら言うことでもないか。

 

 ゴトクはそう言って、品物を渡して来ながら、

 

「ああ、そういやあ。モンスターによっちゃあ、幼体のドラゴンを襲うヤツもいるな。返り討ちや同士討ちもよくあるが……中には、何匹も喰うヤツもいる」

 

 嫌な情報を教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、お(めかけ)さんは屋敷から出ないようですねえ?」

 

「2回も襲われりゃあ、警戒もするわな」

 

「貴族ってのは、中身はかなり臆病で用心深い……。そうでなきゃやっていけない」

 

「よくご存じで」

 

「茶化しているつもりか」

 

「何にしろ、請け負った仕事はきちんとせにゃあな。信用に関わる……」

 

「そうだな。面倒だが、やり方は色々だ。どうにかするさ」

 

 どうにかな。

 

 言いながら、その男は自分の座っている()()をなでた。

 

 その巨大なモノは、獲物を貪りながら身を揺らす。

 (かえ)って間もない蛇竜(ワイアーム)の幼体を喰いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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