破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その114、きみは虜囚か姫君か-12 再びの襲撃とマコネ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ノックの後、顔を見せたバッキーへ、

 

「飯だとよ」

 

 マコネは運んできたキッチンワゴンを指した。

 

「まさか、メイドの()()()()をするたぁね」

 

 イセンサが休んでいる部屋。

 そこへワゴンを入れながら、マコネは苦笑。

 

「ありがとう」

 

 バッキーは礼を言って、ワゴンから料理を並べだす。

 

「これも仕事だからな」

 

 マコネが肩をすくめていると、

 

 ――あン?

 

 イセンサもバッキーのとなりで手伝い始めた。

 

 ――ふうん。

 

 少女の所作というか、手つき。

 そこには慣れ、自然さがある。

 

 ――見た目はともかく、出生(うまれ)は高貴の血筋とはいかねえ……とは思ってたけど。

 

 かなり貧しい生まれ。

 おそらくは幼少時から様々な仕事に従事していたであろう。

 それがわかる動き。

 

 ――やらせれば、水汲みから(まき)割り。掃除、洗濯。畑仕事もやれるだろうな。

 

 マコネは、そのように見て取る。

 

 ある部分では、バッキーよりも生活力はあるかもしれない。

 

「えっとな、バッキー」

 

 マコネは頭を掻きながら、黒髪で眼鏡のヒーラーを見る。

 そんな彼女へ、バッキーは笑ってみせた。

 どこか自嘲するような……。

 しかし、開き直ったような、腹をくくったような。

 

「なんかありゃ、おいらが取り次ぐことになってるからよ」

 

「はい」

 

「ま、ゆっくりな」

 

「……あの」

 

 ドアノブに手をかけたマコネ。

 そこに、イセンサは言葉を駆けようとする。

 

「ちゃんと食べろと、伯爵様はおっしゃってたよ」

 

 マコネは振り返らず、軽く手をあげながら部屋を出た。

 

 ――やれやれ。

 

 両手を頭に回しつつ、マコネは廊下を歩く。

 

 ――バッキー、なんかガキは苦手っぽかったけどなあ。

 

 マコネに付き合って、子ども連中のモンスター駆除を手伝った時。

 とにかく、会話がうまくできず。

 しても当たり障りのない挨拶(あいさつ)程度。

 

 ――おっかなびっくり、つーンかねえ? おかげでクソガキどもになめられたけど。

 

 思い出すと、マコネは笑えてくる。

 

 ――けど、そこも。結局は慣れだからなあ。ああ、なるほど?

 

 その()()が、今出てるってことか。

 

 マコネは苦笑する。

 

 ――そいつぁ、余計なおせっかいってか。関わりすぎっていうか……。言うまでもないか。

 

 さっき見た、バッキーの顔。

 彼女はもうすでに、

 

 ――最後まで関わる気か? いや、どこまでが最後か、そこが問題だぜ……?

 

 悶々とする中、ため息を吐くマコネ。

 

 ――こんなンもおいらには似合わねえよなあ、キャラじゃないっつーの? いかんなぁ、いかんいかん……。

 

 ひとり、首を振った後。

 

 廊下を行く途中、ひょいっと窓の外を見る。

 夜の庭が、(あか)りで照らされている。

 

 兵士や騎士が、庭を歩き回ったり柵を修理したり。

 見ているだけで忙しくなる光景。

 

「当たり前か。仮にも、貴族……領主様のお屋敷が襲われたんだ」

 

 皮肉げにつぶやき、肩をすくめる。

 

 

 と。

 

 

「あン……?」

 

 ざわり。

 

 背中に走る、冷たい感覚。

 

 マコネは窓を開けると、身を乗り出す。

 それから。

 まるでムササビのように壁へと飛びついて――

 ヤモリのように昇っていく。

 

 屋敷の屋根に昇ったマコネ。

 野良猫みたいな少女は、目を細めて灯りの届かない闇のほうを見た。

 

 何も、起こらない。

 ただ時間が流れるだけ。

 

 だが、マコネは屋根から動かない。

 

 そして……。

 

 

 ズン

 

 

 巨大な振動。

 否。

 地響きが、屋敷を揺らす。

 

「なにぃ……!?」

 

「なんだぁ!?」

 

 騎士たちが騒ぎ出し、走り出す。

 

「接近に気づかなかったのか!?」

 

「クソッタレ……! うまく隠れてやがったな……!」

 

「でかいぞ!」

 

「迎撃準備――!」

 

 喧騒の中。

 青黒い、巨大な影が大地を揺らして近づいてくる。

 

「こいつぁ……!?」

 

 見上げ、マコネは思わず叫んだ。

 

 巨大な両生類型のモンスター。

 大きさは……立ち上がっただけでも6メートルを超えるか。

 

 おそらく、先に襲ってきたオオサンショウウオと同じ。

 あるいは、近しい系列にあるのか。

 

 ただし。

 そいつは後ろ足で立って歩き、顔つきも体つきも凶悪なもの。

 比較にもならぬほど。

 

 迎撃する騎士たちは、矢継(やつ)(ばや)に攻撃魔法を放つ。

 

 さらに

 小型の大砲。

 大型の矢。

 投げ槍。

 

 いずれも魔法が付与され、あるいは強化(バフ)を受けた騎士や兵士が放つもの。

 さらに統率され、数も多い。

 

 ――普通なら、倒せなくっても追い払うことは簡単だけど……。

 

 身をかがめて観察するマコネ。

 

 しかし?

 

 モンスターはちょっと(ひる)みはしても、まるで止まらない。

 どんどん距離を縮めていく。

 

 ――あいつぁ……特別に育てたヤツだな……!? 硬さも対魔力も並じゃねえ……!!

 

 

 そして、さらに。

 

 ボファアア……

 

 巨大な口から、赤黒い気体を吐き出す。

 

 ――やべえ!!

 

 マコネは、あわてて屋敷の裏へと飛び降りていく。

 口を片手で押さえ、ゴキブリ顔負けの素早さで。

 

 一方、庭のほうでは、

 

「が……!」

 

「やべーぞ、毒気だ!」

 

「ヒーラー、ヒーラーはどうした!」

 

「毒消しは!?」

 

 倒れる者。

 咳こむ者。

 走り出す者。

 

 さらには、

 

 毒の気体を浴びた武器、さらには騎士たちが着ている鎧。

 そこから、シュウシュウと煙が上がり出す。

 

「ぎゃあ……!」

 

 加えて、火傷のような傷を負う者が続出。

 

「防御魔法だ、急げ!」

 

「ダメだ、結界でなきゃあ……!」

 

「おい、毒消しを急げ!!」

 

 対処に追われる騎士たちを嘲るように――

 モンスターは我が物顔で屋敷に近づき、修理中の柵を踏み潰す。

 

「下がってろ!!」

 

 混乱の中に怒号が飛んだ。

 同時に、

 

 柵の外――地面の土が盛り上がり、ヒト形を成していく。

 土は固まり、硬質化し、岩となる。

 

 巨大な腕と足。

 ほぼ形だけの小さな頭。

 いや?

 頭らしきもの。

 

 胸部に、輝く魔法陣がゆっくりと回転している。

 

「デカブツには、デカブツだ。行け!」

 

 そう命じたのは、紫の貴族。

 片手で組んだ印と、そこに浮き上がる魔法陣。

 

 巨大ゴーレムはモンスターの行く道をふさいだ。

 

 さらに加えて、

 

雷電豪雨(サンダー・レイン)……!!」

 

 強烈な雷撃がいくつも――

 雨のようにモンスターへ降り注ぎ、破裂した。

 

 爆風に、髪とマントをなびかせた美貌の男。

 ベルツ・フォイア伯爵が、暗く鋭い目でモンスターを睨んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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