破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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カクヨムの再構成版もどうぞよろしく!
進みにつれて変化が出てくると思います

https://kakuyomu.jp/works/16818093082887030996



その114、きみは虜囚か姫君か-15 伯爵と暗殺者

 

 

 

 

 

 

 

 

「らしくないな――」

 

 幾度か剣で切り合い、刃をぶつけ合った(のち)――

 ベルツは観察でもするようにヒョーズを見た。

 

「殺し屋らしい、貴様の剣技(わざ)……まるで」

 

 騎士だな。

 

 その言葉に、ヒョーズはただ笑うだけ。

 皮肉、あるいは自嘲的な笑み。

 

 

 ヒョーズ。

 

 本名……生来の名前ではない。

 その名前は、とっくに捨てた。

 

 生まれたのは、ヤオアムトから離れた国。

 弱小ではないが、強国と言えるレベルではない。

 その程度の国。

 

 ただ。

 レベルは劣るが、ヤオアムトと同じく魔導国家でもあった。

 

 支配階級は魔導に通じ、その力で国を統治する。

 魔法は、あくまで貴種のみに許された技。

 そういう国だ。

 

 平民が魔導を学び、識字率も100%に近いヤオアムトとは、

 

 ――決定的に違っていたな。

 

 後年。

 何度も思い返し、皮肉な気分になったものだ。

 

 歴史も文化も、成り立ちも異なる国同士。

 単純に同じことをすれば、発展するというわけでもなかろうが……。

 

 ヒョーズは、その国で貴族の家に生まれた。

 

 嫡男ではないものの……。

 ちょっとした秀才であったため、婿入りの口はあった。

 

 そのまま何事もなければ、婿入りした家を継いでいたのだろう。

 

 しかし。

 

 婚約者であり、古くからの友人でもあった娘。

 彼女は他の男と情を通じ、婚約を破棄してきた。

 その上で、相手の男と一緒に出奔、つまり駆け落ち。

 

 恋でのぼせ上った結果の暴走とも言える。

 

 貴族として、男として――ヒョーズのメンツは徹底的に潰された。

 

 ヒョーズもまた憎しみで暴走。

 悪魔のような執念で逃げた2人を見つけ出し、逃走先で惨殺した。

 

 伊達に文武両道の秀才と言われていたのではない。

 魔法だけではなく、武術においても相当に使えたのだ。

 

 殺した2人を路上にさらした後。

 そのまま、逃げた。

 

 たとえ自分に正当性があったとしても――

 砕かれたプライドはもはやどうにもならない。

 

 

 名前を捨て、身分を捨て。

 あちらこちらへの放浪をへて。

 

 気づけば、ヤオアムトに潜り込み、

 

 

 ――たどりついた先は、チンケな殺し屋か。

 

 モンスターテイムの技を重ね、強力なモンスターを鍛え、育てる。

 それは、唯一残ったよりどころだったのかもしれない。

 

 ――だが、それもしまいだ。

 

 ヒョーズは内心で自分をあざ笑う。

 

 こんな失敗(しくじり)をさらした以上、先はない。

 

 ――ならば。術の限り、技の限りを尽くして、勝ってから死にたい。

 

 真名(なまえ)故国(くに)を捨てた男。

 その肩から、殺気と闘志が炎のように燃え上がる。

 

「……いいだろう」

 

 ベルツは、ヒョーズの顔を睨み剣と盾を構えなおす。

 

 何故、そんな言葉を返したのか。

 自分もわからない。

 

 ただ、こう思った。

 

 ――あるいは、俺もこうなっていたかもしれない。

 

 やはり、理由とか根拠はわからないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……クッソ。きりがねえ」

 

 片腕に手甲(ガントレット)となり、武器となった守宮猫(ゲカット)

 何度その鞭を振るったか。

 

 地面に散らばる羽根を睨み、マコネは毒づいていた。

 

 敵方のモンスター(ラダマンティス)の毒気から急いで逃れ、

 

 ――ああ、もう! バッキーに……いや、こんだけ騒いでりゃわかるだろうけどさあ!?

 

 自分たちの仕事(クエスト)……その本分は、『護衛』。

 イセンサの身を(まも)ることが、今回の依頼。

 

 ならば。

 まずは、そこを最優先としなければならない。

 

 そう判断しての行動だった。

 

 ――とりあえず、毒気をよけて裏手から……。ああー、いっそ窓ぶち破ってすぐ行けば良かった! 失敗した!!

 

 この時、

 

「うひゃ!?」

 

 闇から襲ってきた複数の何か。

 マコネは、その攻撃を寸前で回避した。

 

 しかし、下へと転がり落ちてしまう。

 

 ――また虫か?!

 

 落下しながら思うマコネ。

 ゲカットを装備に変えながら、壁に張り付く。

 

 そこを狙い、攻撃はさらに続き……。

 

「あー。ちっきしょ……」

 

 応戦するうちに、マコネは地面に着地。

 走り、鞭を振るい続ける苦行。

 

 倒した相手は、地面に落下するか、闇の中に消えるのだが。

 

「鳥か……」

 

 落下したのは、鳥。

 正確には、鳥の形をした黒い塊。

 しばらくすると、わずかな羽を残して霧となって散った。

 残った羽根もやがて消える。

 

 だが、周囲にはまだまだ殺気が満ちている。

 

 ――こりゃ、まずいわ。

 

 孤立状態。

 これはよろしくない。

 

 マコネはそう判断するや、

 

「おらぁ!!」

 

 武器を鞭から巨大な鉄拳へ変え、

 

 バギンッ

 

 屋敷の壁を叩き壊す。

 

 空いた穴から、中へと逃げ込んでいった。

 

 飛び込んだ後は、そのへんの家具など適当なものを、

 

「よいせっと……」

 

 鞭を触手のごとく操って移動させ、穴をふさぐ。

 そして、すぐに走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおや――」

 

 闇の向こうで、女は肩をすくめた。

 白衣にグルグル眼鏡の妙な女。

 

 ――とりあえず、戦力を削っておこうと思ったけど……。こりゃ予想外でしたわ

 

 右手をかざした体勢。

 手のひらには、目玉。

 いや。

 目玉のような、紋様が不気味に輝いている。

 

 しかも、その紋様。

 時々まばたきみたいな動きをする。

 

 グルグル眼鏡は、樹上の陰で使い魔を操っていたのだが、

 

 ――まいったなあ~。今回の仕事は、アカンですかね。こんな有様じゃ……。

 

 このドタバタ騒ぎでは、

 

 ――暗殺者っていうより、テロリストですわ。

 

 グルグル眼鏡は、ふわっと樹上から跳び、空中に浮かぶ。

 

「しかし。あきらめちゃったら、そこでお仕事失敗ですよね」

 

 まだ機会(チャンス)はござーますわ。

 

 おどけた(ひと)(ごと)

 それを残し、グルグル眼鏡は闇へと溶ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボゥ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 炎が燃えた。

 普通の火ではない。

 

 暗い、紫の炎。

 

 燃え続ける不気味な炎が群れる蟻の大群を焼き尽くしていく。

 

「そういえば……」

 

 青い乙女は一歩進み、つぶやいた。

 全身に紫の炎をまとって。

 

「あまり、使う必要も機会もなかったわね?」

 

 わずかに首をかたむけ、カーシャは淡々とつぶやく。

 水色の瞳へ、暗い紫の火を映しながら――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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