破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

259 / 357
こちらはカクヨムの再構成版です!
https://kakuyomu.jp/works/16818093082887030996


その114、きみは虜囚か姫君か-18 殴りヒーラー

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベルツがイセンサのもとへ駆け寄ったのは……。

 

 いきなり――

 モンスターが異常な行動を取り出したのとほぼ同時だった。

 

 ギュルルアアアアアッッッ!!!

 

 巨大モンスターは毒の砲弾を連続して吐き出し、庭を破壊していく。

 逃げまどう兵士の中に、次々と犠牲者が出ていた。

 

「うわあああああ……!?」

 

「た、助け……」

 

「待ってくれ、待って……!」

 

「おかあちゃん……!!」

 

 この惨状に、

 

「ちぃっ……!!」

 

 ベルツは舌打ちを漏らしながら、

 

「ヒーラー! イセンサを連れて避難しろ!」

 

 バッキーの前に立つと、数条の雷撃でモンスターを撃った。

 鼻先に強烈なものを喰らい、モンスターは悶絶して後退。

 

「はい!?」

 

「早くしろ……! 命令だ!」

 

「えらいひとなのはわかってますけど、私、あなたに雇われてるわけじゃないんですけどね!?」

 

 バッキーは叫びながら、杖を振り回す。

 

 瞬間。

 

 魔力の防壁が円盤のように回転。

 そのままモンスターへとぶち当たった。

 

 屋敷外へ転がり出るモンスターを、

 

「ありがたい!!」

 

 紫の貴族が、再びゴーレムを動かして押さえつけていく。

 

 さっきまで何をしていたのか、といえば……。

 モンスターの毒砲弾を何発も受け、ほぼ半壊状態というありさまだった。

 

「遅いぞ、ベルツ!」

 

 紫の貴族は伯爵(ベルツ)へ怒鳴り、

 

「それはすまなかった……な!!」

 

 ベルツは、押さえつけられたモンスターのあちこちへ、雷撃の槍を放つ。

 

 そこへ、

 

「おーい、生きてるよな!?」

 

 屋敷から、マコネが飛び出してきた。

 

「マコネさん! 彼女をお願い! 避難させて!!」

 

「はいはい。しょーがねーなあ!」

 

 バッキーの声に、マコネは苦笑しながら、

 

「どっこいせっと……!!」

 

 イセンサが入った結界ボールを、屋敷の中へ転がしていく。

 

「さ、て……」

 

 それを見届けた後、バッキーは杖を振り回し、

 

「********……。***********!!!」

 

 今まで以上に魔力を練り、収束させて呪文を詠唱。

 

 すると?

 振り回す杖から無数の縄が庭中へ伸びていく。

 魔力で構成された、光り輝く縄。

 

 縄は、兵士たちをつかんで後方へ運んでいく。

 まるで小さな荷物を運ぶがごとく。

 

「動けるひとは、自分で逃げてください! こっちにもキャパシティってものがあるんで!!」

 

 負傷した騎士や兵士を後方へ移動させると、

 

「そのお二人、邪魔です!!」

 

 バッキーの叫び。

 これと共に、縄から巨大な鎖と化した魔力は、

 

 ギュルルル

 

 ゴーレムを破壊して、そのままモンスターを拘束する。

 

「おいおいおい……。こっちは苦労して押さえつけてたんだぞ???」

 

 ボヤキなのか、感嘆なのか。

 よくわからないつぶやきを、紫の貴族は小さくもらす。

 

 動けなくなったモンスターに対し、

 

「*********…………」

 

 バッキーは杖を夜空へ掲げる。

 その先へ、今まで以上に巨大な魔力の球体が生み出された。

 スパイクもより凶悪な物へ――

 

 バッキーの振り回す杖に合わせ、魔力の『スパイク鉄球』は動き、

 

「おりゃああああああ!!!」

 

 モンスターの脳天へ、叩きこまれた。

 

 ――これは……! 浮遊魔法の逆か。

 

 ベルツは、バッキーの繰り出す魔法の性質を推測した。

 

 物体を浮遊させる魔法。

 これは、その逆。

 物体を重くする、いわば加重魔法。

 

 インパクトの瞬間。

 モンスターの頭部へ強烈な重量が発生。

 肉体の一か所が、何倍にも重くなったわけだ。

 

 たまったものではない。

 むしろ。

 巨体であるだけに、負荷も並大抵ではなかったのだ。

 

 全身から血を噴き出し、モンスターは崩れ落ちて。

 二度と動かなかった。

 

「ぜえ、ぜえ、ぜえ……」

 

 モンスターが絶命した後。

 バッキーはしばらく、杖にすがって立ち尽くしていた。

 

 いや。

 次の魔法を放てるように構えていた。

 

 ようやく、終わったことを確認してから、

 

「ぶはああ……」

 

 杖を握ったまま、へたりこむ。

 

「……良い仕事をしてくれたな」

 

 そんなバッキーへ、紫の貴族が手を差し出した。

 

「あ。ええと……」

 

「イスキ・ダーマだ。一応、お前さんたちへの依頼主だな」

 

 紫の貴族――イスキは、苦笑しながらバッキーに手を貸して、立たせる。

 

「え。ああ……。このたびは、どうも……」

 

「思った以上に厄介なことになったが……。ひとまずは、助かった」

 

「だと、良いんですけど……」

 

 バッキーが不安を口にした時、

 

 遠くで何かおかしな音が――

 

「!?」

 

 どうやら。

 それが、モンスターが吠えた声だとバッキーは即座に理解した。

 

 しかし?

 

 一度聞こえただけで、もう声は聞こえなくなる。

 

 ――気のせい? いえ、どこかへ行った? だけど、あの声は……。

 

 明らかに、敵意を放つものだったと。

 

 少なくとも。

 バッキーはそう感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やりやすくて、助かったわ」

 

 頭部を破壊され、横たわるモンスター。

 それを見おろしながら、カーシャはつぶやく。

 

 黒頭巾(ガゴゼ)が死んで、すぐ……。

 

 地面を揺らして、巨大な虫が姿を見せた。

 蟻の特徴を持っていながら、後ろ足で二足歩行する虫型モンスター。

 体高は6メートル近い。

 

 強い酸を吐いて、そこらじゅうの木々を枯らしたが、

 

 ――こっちのほうが良い。

 

 カーシャは、モンスターを愛用の黒い剣(カーラナーガ)で叩き殺した。

 

 むしろ。

 叩き潰したというほうが正しい。

 

 ――飼い主が死んだから、本能のまま暴れ出した……というわけか。

 

 厄介な。

 

 そうは思ったが、さほど引きずることではない。

 

 ――さて……。向こうもどうにかしたようだけど……。

 

 他にも、刺客はいるのか。

 

 考えつつ、カーシャはフォイア邸へと走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。