破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その114、きみは虜囚か姫君か-20 次なる嵐の前?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ええ。

 まあ……。

 

 そういった次第で?

 他の2人は天に召されました。

 要するに死んじゃったわけで。

 

 いえいえ。

 途中で投げ出すなんてことはいたしませんよ。

 こんなお仕事でも、信用が第一ですから。

 

 お受けした以上は必ず成功させます。

 

 はい、もちろん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ?」

 

 カーシャはわずかに眉を上げながら、

 

「心当たりがおありになる、と?」

 

 振り返り、男たちを見る。

 

 部屋にはカップから湯気が上がっていたが……。

 男たちの周辺には厳しく、冷たいものが流れている。

 

「断言はできない、けれどな」

 

 紫髪の男――

 イスキ・ダーマはため息を吐き出し、ソファーへもたれかかった。

 

「……」

 

 ベルツは、無言。

 だが。

 男の眼はここではない、標的とした相手を見ているようだった。

 

「それなら良かった、というべきかしら?」

 

 カーシャはテーブルに近づき、カップを手に取る。

 ()()()()()、優雅な所作

 

 ――こういう姿は様になっているし、絵になるな。

 

 青い乙女の姿を見て、イスキは内心で感心した。

 

 ――前は、こうじゃなかった。いや……。

 

 そういうのに意識が行かなかった、か。

 

 と。

 男は思い返す。

 

 かつての乙女(カーシャは)

 以前の彼女は、遠くから見たり、あるいは話を聞いた限りでは、

 

「周りへ当たり散らす、反抗期の子ども」

 

 に……過ぎなかった。

 外見は最上級でも、

 

 ――中身は、まあ。アレだ。

 

 貴族としての教育やマナーがしっかり教えられていても、

 

 ――生かせることができてなかった、ってところだな。

 

「ああ。そういえば?」

 

 すっかり忘れていたけど……。

 今思い出した、というような顔で、

 

「フォイア伯は、ガッコイ侯爵家と縁談のお話があるとか?」

 

 カーシャはベルツを横目に見て、言った。

 

「……っ」

 

 これに。

 反応したのは、むしろイスキ。

 

「第三者ながら、お互い悪いお話ではないと思いますけれど?」

 

「……」

 

 一瞬。

 ベルツは鋭い眼でカーシャを見る。

 

 一方のカーシャは素知らぬ顔で、

 

「あなたはまだ独身(おひとり)。さらに一家の当主でもあらせられる。そろそろ伴侶となるかたをお迎えになっても――」

 

 気安い態度で言いかけたが……。

 

「おや、失礼を。わたくしごときが口を挟むことでは、ございませんでした」

 

 クスクスと笑い、飲み終えたカップをテーブルに戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「縁談ですか?」

 

「あー」

 

 フォイア邸の庭先――

 マコネとバッキーは、それを二階の窓から見ていた。

 

「チラッと聞いたがな? ちょいと前にそういう話が持ち上がったらしい」

 

「はあ。まあ、ちょっと遅いくらいですかね?」

 

 この時代。

 この国。

 この文化圏。

 

 貴族同士が若いうちから婚約を結ぶ、縁談を持ちかける。

 当たり前すぎる話。

 

 特に、女性ならば。

 13~14歳での結婚もありふれたこと。

 

「まだ若いとはいえ、領主様と言われる身分だからな。嫁さんの2~3人いねえのは不自然だ」

 

 場合によっちゃ、ほら。

 世間体、ってのがな?

 そこらはお貴族様ともなりゃあ……。

 

 マコネは語りながら、肩を半分だけすくめてみせた。

 

「すると、この場合イセンサさんは」

 

「まあ、そら。愛人か良くて側室だろうよ。伯爵様の正妻となるにゃ無理がある」

 

「ですよね」

 

 バッキーはうなずきつつも?

 

 正直なところ。

 イセンサを応援したい気持ちもある。

 

 とはいえ、

 

 ――少女漫画とかおとぎ話みたいに、たったひとり選ばれたお嫁さんってのは……。

 

 無理だろう。

 

 仮になったとしても、彼女(イセンサ)はより苦しむ結果になる。

 それは、確実で。

 

「なんですかね。貴族の奥方というのは、アレでかなり大変らしいですし」

 

「そこはおいらなんぞにゃ、縁のねえ話だけど。平民だってさ? でかい家じゃ、おかみさんの仕事や責任はでかいって聞くぜ? 下手すりゃ、旦那は飾りでおかみさんが家を取り仕切ってる、なんてのもよくある話さ」

 

 つっても、その旦那も遊んでるだけじゃないらしいけどよ。

 付き合いやら接待やら、めんどくせーことをやらなきゃいけねえんだと。

 

「ふーん。じゃあ、貴族の奥様も……」

 

「大変じゃねえのかな? あの()()()に、できるとは思えないね。少なくとも、現状(いま)の段階じゃあな」

 

「……聞いてるだけで胃が痛くなりますね」

 

「世の中、楽に生きてられるヤツなんかいねーのかもな」

 

 マコネは皮肉げに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんと言ったのかしら……?」

 

 その女性は、驚きに目を見開いて聞き返す。

 

 屋敷の中。

 テラスの見える部屋。

 

 振り返ったと同時に、ドレスの(すそ)がわずかにひるがえった。

 質素だが貴族らしい品のあるデザイン。

 

「ちゃんと、説明をしてくれる?」

 

 女性――ハメシハは、厳しい声でメイドに言った。

 

 この家――娘。

 れっきとした貴族令嬢である。

 

 ハメシハ・ガッコイ。

 

 長い銀髪。赤い瞳。

 凛とした雰囲気の、背筋が伸びた女性だった。

 首の両脇から、ドリルみたいな縦ロールが伸びている。

 

 年齢は18歳だが……。

 雰囲気、表情のせいか年齢より大人びて見えた。

 

「は、はい……」

 

 メイドは委縮して、令嬢の顔色をうかがう。

 

「あなたを責めているのでなくてよ。ゆっくりでもいいから、わかるように話して」

 

 ハメシハは、口調をやわらげて続きをうながす。

 

「実は、その。さっき聞いたばかり、なのですが……」

 

 お付きのメイド。

 彼女が語る内容に、

 

「どういうこと……?」

 

 ハメシハは、愕然とした。

 

 ベルツ・フォイア伯の屋敷。

 昨夜、そこがモンスターに襲撃された。

 正確には、刺客の操るモンスターに。

 

「私にはさっぱり……。ただ……」

 

 メイドはおずおずと、

 

「伯爵様が、引き取って世話をされているという娘さんが――」

 

 何度も狙われた。

 殺されかけた。

 

 その内容を聞き、ハメシハは顔を強張らせる。

 

「……急いで車の用意をお願い」

 

「え?」

 

「すぐに、フォイア伯のお屋敷へまいります」

 

「お、お嬢様……」

 

「先触れを送るよう、伝えてちょうだい。すぐに準備します!」

 

 ハメシハは大急ぎで歩き出し、メイドもあわててそれに従った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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