破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
カクヨム版のストックが減ってきましたので
同時進行のため毎日更新が難しくなりました(;^ω^)
今エピソードは毎日を目指してまいりますが
その後は更新頻度が落ちると思われます……
代わりにカクヨムの再構成版に力を入れますので
なにとぞ応援お願いいたします!
――???
走っていく、イセンサの背中。
周りを囲むモンスターの群れ。
そんな中で。
マコネは妙な違和感をおぼえていた。
一方で、
「ダメだよ、戻って!!」
叫び、追いかけようとするバッキー。
それに小型のモンスターは群れとなって襲いかかる。
「邪魔だぁぁ!!」
バッキーは周りを魔力のシールドで
オオサンショウウオも、蟻も。
行く手を
しかし?
不快な羽音をたてて、羽蟻が空中からまとわりつく。
シールド自体はびくともしないが……。
視界を邪魔され、足元には潰れたモンスターの死体が広がる。
汚れや不快感は無視できても、
「この……!?」
ヌルヌルと滑る床は、移動を確実に妨害していた。
「マコネさん!」
うまく進めないバッキーは、マコネに手助けを求めるが、
「わかっちゃいるけどよ……!」
マコネも、群がるモンスターを蹴散らすので忙しい。
「おい、結界ボールはどうだ!?」
「それがあった!!」
バッキーはハッとして杖を握り直す。
一瞬後。
結界の球体に入って転がり出していった。
今度は、何物にも邪魔はされない。
ボールは高速で走っていく。
かと思ったら。
突然、ボールは消えた。
いや。
床の下へ沈んだ。
「あ……」
「あれ?」
マコネも、バッキーも、ほぼ同時につぶやく。
蟻が這い出る過程で食い荒らされ、
走り出したボールはそれを突き破ってしまい……。
落っこちた。
「なんだ、これ! 下手なギャグじゃねーぞ、おい!」
マコネは叫んで駆け寄ろうとする。
と。
「ぬああ!!」
バッキーの
それと共に、ボールは陥没部分から浮遊してくる。
思わず、マコネはホッとした。
すると――
建物がさらに崩れ出し始めた。
もはや、イセンサを追うどころではない。
「おい、このままじゃ生き埋めだぜ!?」
「な、なんてタイミングの悪い……!」
悔しがるバッキーだが、
――タイミングね……?
この状況に、マコネは怪しいものを感じていた。
――この虫ども、なんであのお姫様を一気に殺さなかった?
確かに群れて、襲っているようには見えた。
しかし?
イセンサが逃げて、走るところを攻撃していない。
むしろ。
追いかけようとするバッキー達の邪魔をしていた。
明らかにモンスターの本能ではなく、
――操ってるヤツがうまく誘導してやがる。家が崩れるのも、外のでかい連中か。
「ともかく、外へ逃げるぞ。お姫様ももう外に出ちまったよ!」
マコネはバッキーの背中を叩く。
「こんちきしょおぅ!」
バッキーは悔しさを込めて叫んだ。
「イセンサ、待て!!」
少女の背中へ、ベルツは叫んだ。
屋敷から飛び出し、イセンサを見つけた時。
彼女は、一心不乱に走っていた。
まるで。
何かに
追いかけるところへ、モンスターの群れが邪魔をする。
雷撃魔法を広範囲で放つが、
「くそ……! 切りがない!?」
敵は、後から後から無尽蔵にわいて出るのだ。
それでも。
傷を受けるのも承知で進もうとするベルツへ――
攻撃を防ぎ、回避すれば、
「おのれ……!」
その隙をついて襲ってくる小型モンスター。
モンスターの連携攻撃に、ベルツは歯噛みするばかりだった。
「ハァ、ハァ……」
と。
イセンサは息を整え、振り返った。
遠く、小さくなったフォイア邸。
モンスターは暴れ続けている……。
しかし。
少しづつだが、その動きが緩慢になっているのがわかった。
「おやおや。こんな時に、こんな場所で。物騒ですよ、
からかうような声。
「……!」
上から聞こえたその声に、イセンサはキッとして顔を上げる。
樹上。
太い枝の上に、グルグル眼鏡に白衣の女が腰をかけていた。
「私、レディーなんかじゃない」
静かだが、強い口調。
そして強い視線で、イセンサは女を見る。
否。
睨みつけた。
「おや?」
「田舎での村で生まれた
不思議そうに首をかしげたグルグル眼鏡。
それに、イセンサは吐き捨てるように言った。
山出し――つまり、
「田舎育ちの野暮ったいヤツ……」
だいたい、こんな意味だ。
「無意味な自己卑下はよろしくありませんね?」
グルグル眼鏡は音もなく着地して、イセンサと向かい合う。
「あなたはねえ? 自分が思っている以上に重要で希少な存在なんですよ?」
「そんなの知らない」
「ですよねー」
グルグル眼鏡は大げさに肩をすくめ、
「だけど。本当のことです」
言いながら。
グルグル眼鏡は、イセンサの後ろに回り、
「あなたが他とは違うってことは」
イセンサの、亜麻色の髪を掬うように撫でた。
「ッ!?」
亜麻色の乙女は、嫌悪を剝き出しにして飛びのく。
「おや? ひどい反応。傷ついちゃいますよ」
グルグル眼鏡は軽くのけぞるような仕草の後、
「ふむ。そうか。まあ、名前も知らないヤツがなれなれしくしてもね?」
ポンと手を打ち、きどった礼を取った。
「私は、メテノと申しまして。まあ、何ということのないモンスターテイマーです」
「やっぱり、あんたが……」
「ええ。アレらを使ってる者」
言いながら、長い袖で隠れた腕を屋敷のほうへ向ける。
「ご心配なく。もうしばらくしたら、動かなくなりますよ。いちいち操るのも疲れますから」
メテノと名乗る女は笑いながら、顔も屋敷へ向けてしゃがみこむ。
袖に隠れた両手に顎を置きながら、
「まあ、仕事仲間の置き土産ですが。わりとよく働いてくれました。今度お墓にお酒かお花でもお供えしますかねえ?」
そんなことをヘラヘラ語るメテノ。
イセンサは、その背中に睨んでいた。
が。
ギュっ、と。
後ろ手に隠したものを握りしめる。
そして。
メテノを狙い、振り上げたものを叩きつけた。
「なかなか気が強い。いえ、覚悟を決めたのですか?」
イセンサの打撃は空振りした。
いつの間にか?
メテノは空中へ、2~3メートルほど浮遊している。
「さすが、山神の娘というべきでしょうか。あはは」
メテノは愉快そうに笑いながら……。
石を握りしめたイセンサの手を見つめていた。