破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その114、きみは虜囚か姫君か-26 光熱

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「襲われた――?」

 

 魔導通信機を手にした後――

 カーシャは即座に言った。

 

<さようで。いきなりでっかいモンスターが2匹。伯爵のお屋敷に突っ込んでった感じッス>

 

「ふーん」

 

 カーシャはそれを聴きつつ、指で自分の顎を撫で、

 

「で。落ち着いて連絡もできるわけね。まだ騒がしいのに」

 

 通信機越しに、遠くからの騒音が聞こえてくる。

 会話を妨げるほどではないけれど。

 

<それほど落ちついてもいないッスけど……。あれ>

 

「なに? 3匹目が出てきたとでも」

 

<いえ。まさにドンピシャッて感じで。ちょっと離れた森のあたりで、フクロウみたいなのがバサバサやってるスよ>

 

「他の連中も、ちゃんと働いてるんでしょうね」

 

<大丈夫ッス。そのへんはキッチリと。お仕事ですから>

 

「よろしい。では、また」

 

 カーシャは通信を切ってから、外を見る。

 

 

 野外の広い場所。

 外観としては運動場のようでもある。

 そこで、翼蛇竜(アンピプテラ)の死体が解体中。

 

 体長10数メートル近い個体。

 

 ガッコイ領内のギルド支部――

 正確には、ギルドが所有している大型施設。

 

 

 

「中間体のドラゴンかよ……」

 

「私、本物は初めて見たわ」

 

「これ1匹で、どれくらいの値段になるんですかね?」

 

「さあねえ……」

 

「しかし? ()()()()が何匹も狩ってるっていうし、値崩れとしないのかな」

 

「するもんか。宮廷からすりゃ、ドラゴンの素材なんてどんだけあっても買い占めたいシロモノだよ」

 

 その様子を見ながら……。

 カーシャは、昨日のことを思い返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ。山椒魚と黒蟻、だろ」

 

 画面上の相手――カーシャ。

 それに対して、ミカリ・バーバは即答した。

 

 ギルドのスミオ支部。

 そこで支部長を務める吸血鬼(ヴァンパイア)種族の女は、

 

「ざっと調べたが、なかなかの()()()()だったらしいやね」

 

 手元の資料を確認しつつ、語る。

 

<名前は知れているのね>

 

 カーシャは、興味深そうに言った。

 

「そっちの仕事じゃ、腕が良いって話だったが……。えらく、派手なことをやらかしたもんだよ」

 

<まあ確かに。あれは暗殺というより、ちょっした戦争だったわねえ>

 

「あれだけのことができるなら、他にも食う方法なんかいくらでもあるのにな。厄介なもんさ」

 

<それはまあ、ともかく?>

 

「おっと、いけない。で……場所(ところ)によって色々だが、そういう汚れ仕事を束ねる連中ってのもいるにはいる。けどなあ? 貴族同士の揉め事となりゃ、商売で請け負うってのは、考えにくい」

 

<へえ>

 

「相手が相手だけに、下手すりゃ宮廷が出てくるからな。そーなれば、芋づる式に捕まって獄門行きだ」

 

<ふむ。それはその通りね?>

 

「……と、すれば。依頼相手はともかく、請け負ったのは()()()()の可能性が高い」

 

<そんなものがあるのかしら>

 

「多くはないが、あるにはある」

 

 ミカリは答えながら、大きくため息。

 

「まあ? さすがに標的になるのは裏道歩いてる連中がほとんどだね。一般人(カタギ)、まして貴族相手にしちゃあ……さっきも言ったが、えらいことになるからな」

 

<なるほど、なるほど>

 

「そういう意味じゃ、今回の話はおかしな感じだね。貴族同士のイザコザで個人とはいえ、その道にいる連中が加わってる、てのはさ」

 

<相手が貴族関係者でも、依頼者が貴族や富裕層とも言い切れない――のでは、なくって?>

 

「だとしてもなあ?」

 

 カーシャの意見。

 ミカリはそれに首をかしげて、

 

「どうやってそういう連中と渡りをつけたか、どうやって頼み金を用意したか、だ。ンーなもんの代金をそこらの一般人(カタギ)がホイホイと用意できるわけがない」

 

<それも正しい意見ね>

 

「と、すりゃあ……。それなりのご大家(たいけ)か? 何かしらで泡銭(あぶくぜに)でも、手に入れたか……」

 

 だがよ?

 そんな銭を、そんなヤバいことに使うか……ってことだ。

 

 ミカリは、牙をのぞかせて苦笑した。

 紅い唇から、小さな刃のような牙を。

 

<そういうお金だからこそ、危険な使い方をすることも、ありうるけどね>

 

 画面の向こうから、カーシャは()()()()を返す。

 美術品のように美しいが、温度を感じさせない冷たい微笑。

 まるで……。

 青い宝石のような。

 

「ああ、なるほど? そういうこともあるか」

 

<それとも>

 

「ん?」

 

<自分の保身を、まったく考えていないか>

 

「ふうん。そいつは厄介だ……。完全な捨て身、そーゆー(やから)はドラゴン以上に性質(たち)が悪ぃ」

 

 オマケに?

 たいてーの場合、しとめたって1ジュラにもならない。

 損ばっかりだ。

 

 と。

 黒髪の吸血鬼(ヴァンパイア)は、忌々しそうに前髪を掻き上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボッ

 

 

 鳥型モンスターの両目が開いた瞬間。

 

 バッキーたちの周辺を、閃光と高熱が襲った。

 木々が黒焦げとなり、焼かれた土から陽炎が立ち昇る。

 

 それなのに。

 何故か、火が燃え広がることはなかった。

 

 残るのは熱さだけだ。

 

「あぶねえな……」

 

 マコネは、あせった声でつぶやく。

 バッキーの後ろからチョコンと顔だけのぞかせながら――

 

 彼女たちのまわりは、魔力壁のドームで(おお)われていた。

 

「それじゃ。そういうことで?」

 

 と。

 メテノは芝居がかった仕草をしながら、

 

「お先に失礼」

 

 イセンサを、いわゆるお姫様だっこで(かか)え上げた。

 

「はなして、バカ!!」

 

「できませんねえ。それと」

 

 少女の怒声をせせら笑って、

 

()()じゃないと魔導の技は極められないですよ」

 

 ぐるぐる眼鏡の魔導士は、空中へ舞い上がった。

 

 バサリ

 

 その背中には、猛禽の翼が広がる。

 

「なにぃ!?」

 

「つばさっ!?」

 

 マコネとバッキーはあわてるが、

 

 

 ヴォオオオオ……!

 

 

「こいつ……ッ!!」

 

 巨大な翼で風を起こす怪鳥が行手を阻む。

 

「好き勝手しやがって!」

 

 マコネは携帯していた投石器を振り回す。

 

 が。

 反撃が繰り出されるよりも早く、

 

 ボッ

 

「ふぎゃ!?」

 

 怪鳥の目が開いて輝き、閃光と熱波が襲った。

 

 たまらず顔を伏せるマコネと、

 

「なんて厄介な……!」

 

 杖を握りしめ、半目で歯噛みするバッキー。

 

 幸い……。

 バッキーの魔法で火傷はゼロなのだが、

 

「おいっ!? 便利な補助魔法でどーにかしてくださいよ!!」

 

 混乱のためか?

 マコネは何故だか敬語になって叫んだ。

 バッキーのぽっちゃりしたヒップを、パンパンと叩きながら。

 

「変なとこ叩かないでっ。女同士だって、セクハラは成立するんだから!!」

 

「なんだよ、セクハラって!? 専門用語か、ヒーラーの!!」

 

「あー、もー! 非常事態にめんどくさいッ。こんな状態、サングラスでもないと……」

 

 バッキーはヒステリックに叫んだが、

 

「それだ!!!!」

 

 今度は――

 目を輝かせて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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