破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
忘れてるかたも多いかなあ……
今後ともよろしくお願いいたします!
「えらい光ッスねえ?」
手をかざしながら、ソテツは言った。
離れた森の上空では、フクロウ型のモンスターが暴れまわっている。
モンスターの放つ光熱で、マコネとバッキーは大苦戦の真っ最中。
「熱と光か……。厄介だよな」
つぶやきながら、ボッツは矢を取り出していた。
かなりの大型で――
矢というよりも……。
小さめの槍というほうが的確かもしれない。
「あんなピカピカチカチカしてるの、当てられたッスか?」
「やれるとか、やれないとかじゃなくて。やらないといけないんだよ」
仕事(クエスト)だからね……。
ボッツは愛想のない顔で言いつつ、弓をつかんだ。
こっちも大型。
かなりの強弓であることが、見ただけでわかる。
「そりゃーッスね。しくじったら、後が怖いッスよ。注文先は、あのドラゴンスレイヤーさんだし」
「……」
ソテツはヘラヘラしながら、肩をすくめた。
ボッツは、ただ黙々と準備を始めていく。
――う〜ん。なんかねぇ?
まるきり愛想のないボッツに、ソテツは困っていた。
――会った時からこんな感じだったけど? どんどん無愛想になってくよなあ……。
いや、ちょっと違うのか?
ソテツは最初の出会いから現状までを軽く思い出しながら、
――職人気質? んー、確かに専門の技とかジョブ? スペシャリストになればなるほど偏屈、変人が多くなるって言うけどさぁ。
自分のリソースっての? そいつをどんどん専門技術に注ぎ込んでくんだろうなぁ〜〜……。
そんなことを考えて、ボッツの背中を見ていたが、
――ンにして、愛想が悪すぎるよねえ? 下心ありでもけっこうなラブコール送ってるんだから、もうちょっとさあ……。
小さな不満の中で、ふとイタズラ心がうずいた。
完全に背を向けて、作業に集中しているボッツ。
その背中へ――
ソテツは気配と音を殺しながら、ゆっくりと近づく。
しかし。
「なに?」
「うぐ」
わずかに振り向いたボッツの視線。
それを受けて、ソテツは硬直状態に。
「後ろからおかしなことをする気じゃないだろうな」
「アハハハ。まさか、そんな」
「……」
「えーと」
ソテツは両手のひらを向けながら、一歩後退。
――気まずい……!
気づかないうちに、汗が流れ落ちる。
無言のボッツは、とにかく怖かった。
「嘘つきめ」
「う」
ボッツは、絶句したソテツに再び背中を向け、
「時と場合を考えろよ」
「そ、そうッスね。すみません……」
ソテツはただ平謝りするばかり。
――どうなんだろうねえ、コレ。
数歩さがったところから、ソテツはため息を吐く。
ヤオアムトの男。
特に冒険者などは、女……特に同業者の女にはドライな側面がある。
――別に、バカにするとかそういうんじゃないけどさぁ?
あくまで同業者や、仲間。
それ以上でもそれ以下でもない。
――惚れ合うってパターンもあるけど……。
ソテツはひとりで首を振り、
――ヤクザな稼業から足を洗わなきゃ、そんな余裕はないんだな。それがフツーだって、私もそう思ってたし。
さて。
その一方で――
「これなら……!」
バッキーは杖を構えて、新たな魔法を放っていた。
「何かあるのかよ!? 頼むぜ!?」
マコネはバッキーの背中――
というよりは、大きめのヒップに隠れるように叫んだ。
魔法発動と同時に、ふたりを守る魔力のドームが暗く染まった。
半透明のドームである。
そこへ、
ヴォオオォッ!!
フクロウ型の怪鳥はまたも光熱を放った。
再び――
熱波が森を焼き、閃光が周辺を包む。
その時。
ボッッ!!!
緑の光。
いや。
緑に輝く魔力で形作られた巨大なボール。
それが、いくつも魔力ドームの周辺に浮いていた。
そして――
ボールの群れは、次々に怪鳥へと襲いかかる。
ボム、ボン……!!!
上昇しかけた怪鳥だが、対処しきれずにいくつも被弾。
ヴォアァァッ!
苦しげな悲鳴を発して、バランスを崩した。
が、そこでは終わることはなく、
ボボッ……!
落下しかけながら、怪鳥は目からの光熱を地上へと放つ。
「それは、もう効かない!!」
杖を構えるバッキーは、大声で叫んだ。
普段から想像できない凛々しい顔と声。
「ひゅーーっ!!」
バッキーの雄姿に、マコネが口笛みたいな声を発した。
この魔法、本来なら……。
様々な状況下で狙撃手を補助するための魔法。
バッキーはそれを応用して、サングラスの役目に使ったのだ。
モンスターの武器である熱も光も、もはや通用しない。
巨大な魔力ボールは間断なく飛び、怪鳥を叩き続ける。
ついに怪鳥は地面に落下。
そこへ、数と勢いを増した魔力ボールが押し寄せていった。
「……これは意外な」
上空から、メテノは驚きの声。
「少々、侮りすぎていたようですね。失敗でした。失敗失敗」
と。
頭を掻いてつぶやくメテノへ、
「ふん」
捕まっているイセンサは、鼻を鳴らした。
「おや。可愛い顔に似合わず小憎らしいことをなさる」
そんなイセンサを、メテノは大げさな顔と態度で見返した。
「腹が立ったなら、ここから放り出せばいいわ」
「はあ。度胸を決めるとなかなかどうして……」
メテノはどこか楽しそうに、イセンサの顔を撫でる。
「……触らないで」
「そう言われてもね? 女である私からしても、あなたの肌や髪、それに匂いは魅力的ですよ。私に、そっちの趣味はないんですけど」
グルグル眼鏡の女は肩をすくめた後――
「いずれにしろ、長居しないほうが良さそうですな」
翼を大きくはためかせ、より高度を上げていく。
そして、
「アイアコス!」
地上にいる怪鳥に向かい、叫んだ。
すると。
ヴォアアアア!!
瞬間。
その巨大な翼から、無数の羽根が嵐のように放たれていく。
羽根の雨は、またたく間に周辺を覆い尽くし、視界を塞いでいった……。