破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
今回も敵のバックボーン? について描写してます
「ひゃあああ!?」
バッキーは叫びながらも、杖の先端に魔力を集中した。
「いくら方法を変えたって……! それならこっちも……!」
が。
しかし。
無数の羽根は、それぞれ火花を散らして音と光をまき散らし始めた。
そればかりではなく、
「うぐぅっ!? ほ、捕捉できない……!」
半目状態のバッキーは唇を噛む。
「何が、何だって!?」
手をかざして怒鳴るマコネへ、
「羽根が魔力の波動……。いや……? 何かの魔法を仕込んでて、相手の動きや場所がつかめないんだよ!?」
「また目くらましかよ!?」
「私じゃ、これ以上精度を上げられないし、コントロールもできない……!」
「クッソ……! 逆転しかけたのによぉ!!」
バッキーの返事に、マコネは悔しさで唇を噛む。
――目くらましが途絶えた。
ボッツはかざしていた左手をおろす。
これと同時に、右手の弓を持ち上げた。
あくまでも静かに、しかしスムーズに弓を構える。
わずかに細めたボッツの眼は、遠くの怪鳥を
――改めて見ると……。弓というか、ボウガンだなアレは。
後ろで控えながら、ソテツは唾を飲んだ。
――アレ造るのに、かなり金使ったらしいけど……。
弓を専門とする職人へ、特注したものだ。
例のはぐれエルフ。
通称・猫のゴトクに紹介された職人らしい。
――しっかし……。
ボウガンを構えるボッツの姿に、ソテツは戦慄した。
一点集中。
そんな状態なのに、
――何かあったら即座に反撃されそうだ。さっきみたく……。奇襲のつもりが先手を打たれそうだよ。
いや……。
後の先ってやつか? これも違うのかしらン?
攻撃を誘い、逆にその隙をついて攻撃すること。
ただ。
このボッツという
――そのつもりがなくても、自然にそうやってるってわけ? ンなバカな……。
ソテツは自分自身の考えに苦笑する。
一方で。
ボッツは狙撃の対象に、神経を集中させていた。
――魔力の中心……。使い魔の心臓、いや……。核ってやつか。
後ろに備えつけられたレバーをつかみ、引く。
――そこだ。
矢が、飛んだ。
強く収束、そして圧縮された魔力の矢。
それは怪鳥が身構えるよりも早く、その核を撃ち抜いた。
怪鳥の巨大な眼が大きく見開かれて、光を失っていく。
――何と……!!?
メテノは恐怖を感じながらも、口元に笑みを浮かべていた。
魔力で形作った翼は、高速で空を駆けている。
怪鳥が撃たれる前から、すでに大きく距離をとっていた。
その腕の捕まえたイセンサは、
「………!」
その速度に、眼を閉じて口をつぐむ。
――この場は逃げさせてもらう!!
そこから、さらに加速。
――アイアコスを失うとは……! 損失は覚悟していたけれど……。
でも、それだけの収穫はあった。
――だが、勝利は勝利……!
メテノが心の中で叫んだ時、
「ごぼ?」
つぶやきが、血の塊と一緒に口からこぼれる。
――?
メテノは――
その声と血が、自分が吐き出したものとは理解できなかった。
さらに。
状況が理解できない中、両腕の感覚が消える。
――な、何が……?
反射的に、下を見る。
イセンサが、捕まえていた自分の腕ごと落下していく光景。
――撃たれた?
それを理解したイセンサは、振り返ろうとする。
しかし。
狙撃した相手を確認する前に、背中の翼が2枚同時に撃ち抜かれた。
これによって、
「ま、さか……」
メテノはバランスを失って、イセンサとは反対方向へと墜落していく。
――まさか自動追尾の攻撃魔法だとでも……!? い、いや……。私は、かなりの高速で飛んでいたはず……。まさか、そんなレベルの……。
こんなことで。
こんなところで。
メテノは激しく動揺し、身を震わせた。
「じょ、じょ、じょ……」
冗談じゃねえよ!!
叫ぼうとした瞬間――
内部へ撃ち込まれた魔力が一気に膨張、爆発した。
肉体が砕け散る、その刹那。
メテノの内では様々な記憶が逆流、あるいは奔流となっていた。
生家も故郷も……。
すでに記憶の片隅で
ヤオアムトからは比較的近い国。
魔導の技術レベルも、近隣諸国の中ではほぼトップだった。
「筋が良い」
「教えがいある」
「いずれ大物、大魔導士となるな」
そんな言葉をメテノはずっと受けて育った。
生まれたのは、両親ともに魔導士の家。
貴族ではない。
しかし。
ランクで語るのなら中の上程度だった。
贅沢ではないが……。
魔法の勉学も修業も思うようにできたし、飢えた記憶もない。
両親が優秀な魔導士だったおかげだろう。
メテノはその才を受け継ぎ、成長するごとに頭角を現した。
才能と実績から、国の研究施設に採用されるほどに。
その中で、メテノは周囲が期待通りの実績を出した。
いや。
期待以上――の成果を出し、皆もそれを認め、称賛した。
ただメテノにとって称賛も、名誉も。
さらには、立身出世も金銭も。
特に興味のあるものではなかった。
それらは、全て研究を円滑に進めるための道具でしかない。
場合によっては、功績さえも。
研究の手柄が他人のモノとなった場合ですら――
メテノにとっては、どうでも良かった。
ひたすらに、魔導の研究と探求を進めていくだけ。
ただそれだけが、メテノの行動原理であり、欲望であり、快楽だった。
そんな彼女を周囲は、
「謙虚で優しい真面目な
という評価をしていた。
が。
それは次第に大きく変化していく。
いや?
むしろメテノの本質に気づいていった、とするのが正しい。
メテノは自分の研究を進めていくための犠牲。
それをほぼ考慮しなかった。
自分の時間や金銭、体力。功績や名誉。
さらには、倫理とか法さえも平然と無視していった。
これも正確ではない。
メテノという女は、最初からそうだったのだ。
そこから……。
ある意味で非常に稀有で有用な人材と見られた。
事実。
メテノは多くの利益を国家、あるいはパトロンにもたらした。
しかし。
それも――