破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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以前よりは早めに投稿できました
今回も敵のバックボーン? について描写してます


その114、きみは虜囚か姫君か-28 射手

 

 

 

 

 

「ひゃあああ!?」

 

 バッキーは叫びながらも、杖の先端に魔力を集中した。

 

「いくら方法を変えたって……! それならこっちも……!」

 

 魔力照準(マナ・スコープ)を制御・操作して、怪鳥の動きを探る。

 

 が。

 しかし。

 

 無数の羽根は、それぞれ火花を散らして音と光をまき散らし始めた。

 そればかりではなく、

 

「うぐぅっ!? ほ、捕捉できない……!」

 

 半目状態のバッキーは唇を噛む。

 

「何が、何だって!?」

 

 手をかざして怒鳴るマコネへ、

 

「羽根が魔力の波動……。いや……? 何かの魔法を仕込んでて、相手の動きや場所がつかめないんだよ!?」

 

「また目くらましかよ!?」

 

「私じゃ、これ以上精度を上げられないし、コントロールもできない……!」

 

「クッソ……! 逆転しかけたのによぉ!!」

 

 バッキーの返事に、マコネは悔しさで唇を噛む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――目くらましが途絶えた。

 

 ボッツはかざしていた左手をおろす。

 これと同時に、右手の弓を持ち上げた。

 

 あくまでも静かに、しかしスムーズに弓を構える。

 わずかに細めたボッツの眼は、遠くの怪鳥を(とら)えていた。

 

 ――改めて見ると……。弓というか、ボウガンだなアレは。

 

 後ろで控えながら、ソテツは唾を飲んだ。

 

 ――アレ造るのに、かなり金使ったらしいけど……。

 

 弓を専門とする職人へ、特注したものだ。

 例のはぐれエルフ。

 通称・猫のゴトクに紹介された職人らしい。 

 

 ――しっかし……。

 

 ボウガンを構えるボッツの姿に、ソテツは戦慄した。

 

 一点集中。

 そんな状態なのに、

 

 ――何かあったら即座に反撃されそうだ。さっきみたく……。奇襲のつもりが先手を打たれそうだよ。

 

 いや……。

 後の先ってやつか? これも違うのかしらン?

 

 攻撃を誘い、逆にその隙をついて攻撃すること。

 

 ただ。

 このボッツという弓使い(アーチャー)の場合、

 

 ――そのつもりがなくても、自然にそうやってるってわけ? ンなバカな……。

 

 ソテツは自分自身の考えに苦笑する。

 

 一方で。

 ボッツは狙撃の対象に、神経を集中させていた。

 

 ――魔力の中心……。使い魔の心臓、いや……。核ってやつか。

 

 後ろに備えつけられたレバーをつかみ、引く。

 (つる)が引き絞られ、内部で魔力が収束。

 

 ――そこだ。

 

 矢が、飛んだ。

 

 強く収束、そして圧縮された魔力の矢。

 それは怪鳥が身構えるよりも早く、その核を撃ち抜いた。

 

 怪鳥の巨大な眼が大きく見開かれて、光を失っていく。

 

 

 

 

 ――何と……!!?

 

 メテノは恐怖を感じながらも、口元に笑みを浮かべていた。

 

 魔力で形作った翼は、高速で空を駆けている。

 怪鳥が撃たれる前から、すでに大きく距離をとっていた。

 その腕の捕まえたイセンサは、

 

「………!」

 

 その速度に、眼を閉じて口をつぐむ。

 

 

 ――この場は逃げさせてもらう!!

 

 そこから、さらに加速。

 

 ――アイアコスを失うとは……! 損失は覚悟していたけれど……。

 

 でも、それだけの収穫はあった。

 

 ――だが、勝利は勝利……!

 

 メテノが心の中で叫んだ時、

 

「ごぼ?」

 

 つぶやきが、血の塊と一緒に口からこぼれる。

 

 

 ――?

 

 

 メテノは――

 その声と血が、自分が吐き出したものとは理解できなかった。

 

 さらに。

 状況が理解できない中、両腕の感覚が消える。

 

 ――な、何が……?

 

 反射的に、下を見る。

 イセンサが、捕まえていた自分の腕ごと落下していく光景。

 

 ――撃たれた?

 

 それを理解したイセンサは、振り返ろうとする。

 

 しかし。

 

 狙撃した相手を確認する前に、背中の翼が2枚同時に撃ち抜かれた。

 

 これによって、

 

「ま、さか……」

 

 メテノはバランスを失って、イセンサとは反対方向へと墜落していく。

 

 ――まさか自動追尾の攻撃魔法だとでも……!? い、いや……。私は、かなりの高速で飛んでいたはず……。まさか、そんなレベルの……。

 

 こんなことで。

 こんなところで。

 

 メテノは激しく動揺し、身を震わせた。

 

「じょ、じょ、じょ……」

 

 

 冗談じゃねえよ!!

 

 

 叫ぼうとした瞬間――

 内部へ撃ち込まれた魔力が一気に膨張、爆発した。

 

 肉体が砕け散る、その刹那。

 メテノの内では様々な記憶が逆流、あるいは奔流となっていた。

 

 

 生家も故郷も……。

 すでに記憶の片隅で(ほこり)をかぶっているだけ。

 

 ヤオアムトからは比較的近い国。

 魔導の技術レベルも、近隣諸国の中ではほぼトップだった。

 

「筋が良い」

 

「教えがいある」

 

「いずれ大物、大魔導士となるな」

 

 そんな言葉をメテノはずっと受けて育った。

 

 生まれたのは、両親ともに魔導士の家。

 貴族ではない。

 

 しかし。

 ランクで語るのなら中の上程度だった。

 

 贅沢ではないが……。

 魔法の勉学も修業も思うようにできたし、飢えた記憶もない。

 両親が優秀な魔導士だったおかげだろう。

 

 メテノはその才を受け継ぎ、成長するごとに頭角を現した。

 才能と実績から、国の研究施設に採用されるほどに。

 

 その中で、メテノは周囲が期待通りの実績を出した。

 いや。

 期待以上――の成果を出し、皆もそれを認め、称賛した。

 

 ただメテノにとって称賛も、名誉も。

 さらには、立身出世も金銭も。

 特に興味のあるものではなかった。

 

 それらは、全て研究を円滑に進めるための道具でしかない。

 場合によっては、功績さえも。

 研究の手柄が他人のモノとなった場合ですら――

 

 メテノにとっては、どうでも良かった。

 

 ひたすらに、魔導の研究と探求を進めていくだけ。

 ただそれだけが、メテノの行動原理であり、欲望であり、快楽だった。

 

 そんな彼女を周囲は、

 

「謙虚で優しい真面目な()

 

 という評価をしていた。

 

 が。

 それは次第に大きく変化していく。

 

 いや?

 むしろメテノの本質に気づいていった、とするのが正しい。

 

 メテノは自分の研究を進めていくための犠牲。

 それをほぼ考慮しなかった。

 

 自分の時間や金銭、体力。功績や名誉。

 さらには、倫理とか法さえも平然と無視していった。

 

 ()()()

 これも正確ではない。

 

 メテノという女は、最初からそうだったのだ。

 

 そこから……。

 ある意味で非常に稀有で有用な人材と見られた。

 

 事実。

 メテノは多くの利益を国家、あるいはパトロンにもたらした。

 

 

 しかし。

 

 

 それも――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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