破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その114、きみは虜囚か姫君か-29 ヒロイン救出?

 

 

 

 

 

 ああ……。

 知っている。

 

 メテノ?

 

 ふーん。

 今はそう名乗ってるのか。

 

 ……本名は、別に知らんでもよかろうと思うぜ?

 

 ……。

 

 そうだな。

 優秀だったよ。

 

 天才ってのは、ああいうヤツを言うんだろうね。

 他の奴が何年も、何代も重ねて成し遂げるようなことを、あいつは独りでやった。

 

 え?

 

 ははは。

 あんた、自分でわかってるだろうに。

 

 確かにやつぁ本物の天才だった。

 

 だがね。

 それにしたって、研究に必要なもんは山ほどある。

 

 全部を賄うにゃあ……。

 あの国の財布は小さすぎた。

 

 ヤオアムトね。

 あそこなら、まあ?

 

 いや。

 それでも結局は弾き出された、と俺は思うがね。

 

 どれだけ天才でも……。

 異物とか異分子ってのは排除されるもんだ。

 

 そいつが、有害だったらなおさらな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なにぃ?!」

 

 マコネはそれを目撃して、思わず叫んだ。

 

 さっきまでヤケクソみたいに暴れ狂っていた怪鳥。

 それが、バッキーの攻撃を喰らいながら急上昇した直後――

 

 

 ボッッッ!!!

 

 

 怪鳥はいきなり爆死した。

 砕け散った残骸がパラパラと落ちてくる。

 

「な、なんだぁ!?」 

 

 バッキーはドームに阻まれる落下物を見ながら叫ぶ。

 いきなりの事態で、いつもより柄の悪い口調で。

 

「じ、自爆……???」

 

 バッキーは混乱した顔でつぶやく。

 

 ――まさか、使い手がトカゲのしっぽ切り的な感じで? いや、でも。あんなモンスターを育てるとか、テイムするのにかなりの手間とか色々あったはず……。

 

 ヤケクソ?

 それとも、あれだけのモンスターを使い捨てにできるほどの実力者なのか。

 

 バッキーがマイナス思考に傾きかけていると、

 

「違う。狙撃だ」

 

 周辺を見回しながら、マコネが緊張した声で言った。

 

「そげき?」

 

「たぶん、どっか遠くから狙い撃ったんだ。けど、半端な攻撃じゃ通じるわけがねえ……」

 

「……そういえば。あの鳥、魔法にも物理にも強かったですね」

 

 マコネの言葉へ、バッキーは応えながら杖を握り直し、

 

「それに、弱めだけど矢封じ(アンチ・ミサイル)の魔法もかかってような」

 

 今までの戦闘を思い出していた。

 

 ――そっか。そこんところは、あのおっきなオオサンショウウオも似た感じだったな。

 

 ついでに。

 邸で暴れまわった大山椒魚(ラダマンティス)についても考える。

 

 ――モンスターはそもそも、普通? の、物理攻撃は効きにくいけど……。今回のやつらは特にそうだったし。

 

 が。

 

 魔法うんぬんについて、あれこれと考察する余裕(ヒマ)はなかった。

 

「って……! それどころじゃない!!」

 

 バッキーは顔を上げ、

 

「****……!!」

 

 短く呪文を詠唱して、杖を突きあげた。

 

 ――彼女を、イセンサを……!

 

 魔法で探知しようとする。

 その矢先だった。

 

 

 ボン

 

 

「え?」

 

 いきなり、遠くのほうで爆発音。

 

「また、狙撃? 撃たれたのって、誰だ……!?」

 

 マコネは叫んで、

 

「行きましょう!」

 

 バッキーはそれに応える。

 

「よっしゃ! こいつに乗れ!」

 

 マコネは自分の使い魔である守宮猫(ゲカット)を呼び出して、バッキーへ叫んだ。

 

「え。乗れって……。ああ、もう! 緊急時ですし!?」

 

 バッキーは一瞬驚くが、猫とヤモリの合成獣を見てうなずく。

 

 使い魔の特性上、サイズはある程度自由に変えられるわけだが……。

 この時ゲカットは大型犬くらいのサイズになっていた。

 

 ――ん? いや、けど? 大丈夫かな?

 

 

 それでも。

 バッキーは一瞬心配になる。

 大型と言っても、犬サイズでは成人女性を乗せるのは難しい。

 

 ――大丈夫か、モンスターだし……。多分……。

 

 悩んでいる暇はないので、すぐに乗った。

 

 

 そして。

 

 

「ぬぅおおおおおおっ!?」

 

 向かい風を受けて、バッキーは叫ぶ。

 守宮猫(ゲカット)に必死でしがみつきながら。

 

 心配は無用だった。

 まさに杞憂、取り越し苦労というやつで――

 

 ややぽっちゃり気味のバッキーを乗せながら、守宮猫(ゲカット)は猛スピードで走る。

 

「こりゃ、いいや! 初めてだったけど、いけるなコレ!」

 

 守宮猫(ゲカット)と並走して走りつつ、マコネはニカッと笑った。

 

 相当なスピードで走り続けているのに……。

 マコネは余裕だった。

 

 ――前々から思ってたけど、こいつをテイムしてから調子が良くなってきたな?

 

 横の守宮猫(ゲカット)を見て、マコネはそんなことを考える。

 

 これは――

 後でゴトクから聞かされることだが

 

「ああー。モンスターテイマーは、相性によって術者とモンスターが強化されるってパターンがあるんだ。相互作用的にな」

 

「わかってるだろうが、モンスターのレベルによっちゃあ制御のために、術者の消耗が大きいことはある。お前も最初は苦労しただろ。何度もゲロ吐いたよな」

 

「――あン? あ~、いや。そいつぁは、ほぼないだろうな。そもそも相性が悪いとテイムは難しい。ほぼ99%失敗する。それでも、()()()に弱体化することはあまりない」

 

「術者が一方的に消耗するだけだ」

 

「お前と、そいつの場合は本当に相性が良いんだな。出くわしたのも、まあ天運ってやつかもしれねえや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――死ぬのかな……。

 

 地上へ落下しながら、イセンサは思った。

 

 自分を捕らえていたあの女は、死んだらしい。

 だが。

 このまま行けば、やがてはイセンサ自身も、

 

 ――同じ運命……。

 

 なのは、確実だろう。

 

 ――ああ……。嫌なこと、つらいことはたくさんたくさん、あったけど……。

 

 それでも。

 死にたくないよ。

 

 泣きたい気持ちで、少女は自分を抱きしめてくれた柔らかい体を思い出す。

 

「バッキー……さん」

 

 つぶやきかけた時である。

 

 ボフン

 

 と。

 そんな感触だろうか。

 

 蜘蛛の巣みたいなもの――

 イセンサはその上に落ちていた。

 

「え?」

 

 柔らかいそれは、イセンサを包んだままフワフワと地上へ降りていく。

 

 ――え? なに、これ?

 

 イセンサが困惑しているところへ、

 

 

「おーい、そこのヤツ!」

 

 地上から女の怒鳴り声。

 思わずそっちを見ると、

 

 シュルリ

 

「あ……」

 

 空中へ魔力のロープが伸びてくる。

 ロープは蜘蛛の巣ごとイセンサを優しく捕まえ――

 静かに、地上へと降ろしていった。

 

 やがて。

 

 イセンサは、柔らかい腕と体にポテンと落ちる。

 

「……良かった」

 

 そう言って、微笑むバッキー。

 

「……!」

 

 イセンサは無言。

 

 ただ全力で、黒髪ぽっちゃりの眼鏡ヒーラーに抱きついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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