破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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このエピソードもここで完結。
またもや反省の多いものになりました……。


その114、きみは虜囚か姫君か-32 結果は良しか悪しか

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ……。終わってみれば――屁みたいな結果だよなあ」

 

 テーブルに両肘を突き、マコネは呆れたように言った。

 

 今や常連客になっている喫茶店。

 オープンテラスで、2人は会話していた。

 

 その横で――

 

 バッキーは2人の会話を半分聞き流しつつ、

 

 ――あ。美味し……。

 

 ヤギのミルクと砂糖が入ったコーヒーを楽しんでいた。

 

 さっきまで、わりと大勢のケガ人を治療してきたばかり。

 

 ――しかし、ギルドの兵士ってのはハードなんだなあ……。

 

 ギルドが行った大型モンスターの討伐。

 これが予想外に苦戦して、大勢のケガ人が出てしまった。

 

 そういうわけで。

 

 バッキーも助太刀の参加を要請され――

 

 とにもかくにも……。

 治癒魔法を連発することになった次第。

 

 ――何度も思うけど……。ヤオアムトって何か異世界ファンタジーっぽくないよね。ネットやテレビがないのが不自然なくらい……。

 

 そんなことを思ったりもする。

 

 ――まあ? この国は文化も文明もハイレベル? らしいから……。

 

 一方で、

 

「そうね」

 

 マコネの声にカーシャは新聞に目を向けたまま言った。

 どうでも良さそうな声で。

 

「あの乳母は結局ガッコイ領から所払い、永久追放。フォイアー領にも居住どころか進入禁止」

 

「けどあっちから出向いてくのは自由なんだろ?」

 

「でしょうね」

 

「やったこと考えりゃ、首チョンパか、逆さ吊りにされるレベルじゃねーの? いくら正式な国民だからって温情つうか()()()()()つうか」

 

「そのへんはテキトーに誤魔化したんでしょ」

 

「良いのかね、それで」

 

「代わりに預けられた領内では死ぬまで監視されるわ。何かあれば即座に処分されるし。それに……」

 

「……家族も訪ねては行きづらいし、オバハンだって来てくれとも言えないか」

 

「そんなところでしょう」

 

「とはいえさ。あのオバハンが二度も大それたことするたぁ思えないけど」

 

「だったらそれで良いんじゃない? 知らないけど」

 

「預けられたほうは災難だなあ」

 

「どうかしら。相応のものはもらってるでしょ」

 

「まあ、そうだろうな」

 

「私も、口利きの代金としていくらかお土産をいただいたけどね」

 

カーシャは、淡々とどうでも良さそうに言った。

 

「ふーん」

 

 マコネも薄い反応。

 

 ――いくらか、って金額じゃないだろうが……。このヒトはなあ?

 

 カーシャという女。

 元々金銭欲はない。

 稼ごうとすれば、いくらでも稼げる。

 

 ――大型モンスターの2~3匹も叩き殺せばいいんだからな。ま、それがあっさりできるってのが、マトモじゃねえんだけど。

 

 マコネは軽く息を吐いた後、

 

「だけど、あの連中どうすんのかね。いや、もうおいらたちの知ったことじゃないけどさ?」

 

「さあね」

 

 カーシャは読み終えた新聞をたたむ。

 

「どっちが追い出されるか、逃げ出すか。それとも、女同士の喰い合いが始まるのか……」

 

 それはわからないけど。

 まあ、血を見る可能性も無くはない、かしら?

 

 お茶のカップを取りながら、青い乙女は肩をすくめる。

 

「そうですかね……?」

 

 コーヒーの味と香りを楽しんでいたバッキーは、独り言のように言った。

 

「ん?」

 

 マコネはその言葉に振り返り、

 

「何かあるのか? そういう確信みたいなのがさ」

 

 興味本位でたずねる。

 

「確信はないっていうか、ハッキリとはわかりませんけど……」

 

 バッキーはコーヒーを一口飲んでから、

 

「でも――」

 

 イセンサとハメシハとの、初対面の場。

 そこに、バッキーはほぼなし崩しで同席していた。

 

 どうも、

 

「イセンサ嬢の頼み。それもたっての……」

 

 と、いうことだったらしい。

 

「あのヒトの、イセンサちゃんを見る目はどこか優しかった気がするんです」

 

「はあ。そうなん?」

 

 マコネは首をひねりつつ、

 

「おいらは直接見てないから、何とも言えんけど」

 

 チラッとカーシャを見る。

 

「そうね。確かに、殺気とか敵意はなかったわね」

 

 カーシャはあやとりをしながら、バッキーに同意した。

 

 彼女もそこに同席はしていた。

 これは別に頼まれたわけではない。

 単なる野次馬である。

 

 敵意とか殺意。

 そういうものはすぐわかるが、

 

 ――善意とか好意っていうのは、どうにもね。

 

 

 

 

 後日。

 

 

 

「――まあ、縁談は進みだしたようだな。うまくいったとも言えるか」

 

 バッキーがそれを聞いたのは、魔法の訓練中。

 指導を受けるためにゴトクのもとを訪れた時だった。

 

「いったんですか、うまく」

 

「ああ」

 

「良かった」

 

 バッキーは正直な感想を、率直に言った。

 

「けど。そうなっちゃうとイセンサちゃんは」

 

「まあ。同居する側室ってことになるわな。珍しい話でもないが、どこでもここでもある話でもない」

 

 どれだけ合理的に考えても――

 感情面ではな……。

 

 ゴトクはバッキーと話しながら、

 

 ――何か修理? してる?

 

 のだった。

 視線もそちらに向けられている。

 

 ――それでいて、こっちにも向こうにも支障がないんだからなあ……。

 

 バッキーは感心と同時に呆れたが、

 

「ガッコイの侯爵家やら領地を調べた時にわかったが……。ハメシハ嬢は子供の頃、妹を亡くしてるようだ。そこらへんが理由かもな」

 

「妹さん……」

 

「ああ。モンスターに襲われた時、傷がもとで亡くなったらしい」

 

「それは……」

 

「相当複雑な心境だった、だろうなあ」

 

「ですよね」

 

 うなずいた後バッキーは、

 

「あのおばさんはどうなってるんですかね?」

 

「質素にひとり寂しく暮らしてるとよ。いっそ首切られてたほうがマシだったかもしれねえよ」

 

「……」

 

 バッキーは静かにため息を吐き出した。

 

 罪は罪。

 やってしまったことは、重すぎる。

 

 ――息子家族や長年仕えてたお嬢様からも切り離されて、孤独な老後かあ……。

 

「かといって。首でもつったらイセンサ嬢に恩を仇で返すことになる。あそこまで減刑されるのに四苦八苦してたからなあ」

 

「それだけ、大事に思ってたんでしょうか。そうなんでしょうね」

 

「らしいなあ」

 

 ゴトクは修理を終えたらしく、いじっていた道具をしまい始める。

 

「非常時以外は手紙も送れないそうだから、かなりのもんだわ」

 

「それもダメなんですか。いえ、そうかもしれません」

 

 バッキーは、またもため息。

 

「さて――今日の訓練はこんなもんだろう。俺はでかける」

 

 ゴトクは立ち上がり、

 

「この後、その哀れなオバチャンに差し入れなんぞ持ってくからな」

 

「え。ゴトクさんが」

 

「ああ。()()()()()()()()で、ガッコイの魚だの野菜をもらったからな」

 

 そう言って――

 猫のゴトクは金髪を掻いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次は番外編です
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