破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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カクヨム版のほうもよろしくお願いします!

誤字脱字報告だけもよいので……!
どうかひとつ!


その115、子守唄を海に流せ-4 海で戦うやつら

 

 

 

 

 

 

 

 カーシャは、波の上を飛び跳ねていた。

 

 潜っては跳ぶ。

 跳んでは潜る。

 

 同じことを繰り返す。 

 ただ、それだけ――

 

 しかし。

 

 見る見るうちに、モンスターは死体……。

 いや、残骸となって海に消えていく。

 

 ――凄まじいな……。

 

 ジェリフは、戦慄するばかりだった。

 自分も船に近づくモンスターを魔法剣で迎撃するが、

 

 ――こういうのを、落ち穂拾いと言うのか。いや、ちょっと違うか?

 

 モンスターは半数以上がカーシャに撃破されていく。

 時には複数が一気にミンチと化していた。

 海はモンスター……の血と肉で黒く染まっている。

 

 ――視界は悪いが……!

 

「***……!」

 

 後ろで目を閉じ、杖をつかむヒーラー。

 バッキーは、大規模な索敵魔法を展開させている。

 一定距離近づいたモンスターは、目立つ光に包まれていく。

 このため。

 潜ってくるモンスターの動きもすぐにわかった。

 

「こういう使いかたがあったとはなぁ!!」

 

 バッキーの横では、野良猫みたいな赤い髪の少女。

 マコネというレンジャー職の少女が、弓を連射している。

 

 弓を引き絞る方の腕。

 そこには、変形したモンスターがくっついている。

 守宮猫(ゲカット)

 こいつが、魔力を弓から矢へと流し込んでいるようだ。 

 

 魔力を帯びた矢は、意思を持つ生き物のようにモンスターへと命中していく。

 それはもう、面白いほどに。

 

 ――こりゃあ、すごい……。

 

 カーシャの非常識な戦闘力のせいで目立たないが……。

 ふたりの能力もかなりの高レベル。

 

 ――今のランクは、(レア)だったか? このままいくと、HRもすぐか。

 

 そんなことを考えているジェリフだったが、

 

「毎度毎度、カンベンしてくれやーーー!?」

 

 大型の盾を構えた、フルアーマーのジロが叫んだ。

 2メートル近い、盾というより鉄板みたいな代物。

 

 その盾に向かってモンスターの遠距離攻撃が集中している。

 ヒットするたびに、盾が爆発で揺れた。

 

 モンスター……シーモンク。

 イカとエイの合成獣(キメラ)は、爆発性の墨を吐く。

 粘性を帯びた黒い塊。

 それはもはや小型爆弾のようなもの。

 

 ――ひとたび食らえば……運が良くても動けなくなるか。

 

 致命傷を免れても、爆発の衝撃は相当らしい。

 

 ――あの盾にはモンスターのヘイトを集める作用があるのか。

 

「しんぼうしてくださいよ、あなたも重要な役をしてるんだから!」

 

 ジロの後ろで、ネイテクは魔法を使いながら叫ぶ。

 

「けど。いつおっこちても大丈夫だから安心してください!」

 

「そんなことできるか、アホゥ!」

 

「その気合があればいけますって」

 

「じゃかましわぃ!!」

 

 ――面白い連中だ……。

 

 必死な戦闘の中。

 フッと笑いたくなる。

 

 ジェリフは攻撃に集中しながらも、少しだけ頬が緩んだ。

 頭の隅で――

 

 

「シー・ポープ討伐だね」

 

 

 冒険者ギルド・リキュール支部。

 そこで受付と交わした会話だった。

 

「そいつは、確か」

 

「はあ。こういうヤツだね」

 

 受付は真上のボードを指す。

 その画面へ、モンスターの姿が映し出された。

 

 ウツボの首とウミガメの胴体を持った合成獣(キメラ)

 

「サイズはだいたい10~15メートル。肉を溶かす毒のブレスを吐く。体のでかさと、場所が海ってのも厄介だけど」

 

「船がいるな」

 

「いや、このクエストでは船はギルドが用意する。相応の装備をしてな」

 

「だったらギルドでやればいいんじゃないか?」

 

「これでも、忙しいからね。どこもそうだけど、人手も金もかかる。おまけにこいつは防御力もあるからね。半端な武装だと余計に被害がデカくなるんだよ」

 

 受付は苦笑した。

 

「なら、海軍がいるだろ。一番確実だ」

 

「海軍は、クラーケンだの海棲ドラゴンの警戒でもっと忙しいよ」

 

「それはどっちもレアなモンスターだろう? そう何度も……」

 

「出てきてからじゃ遅いんだよ」

 

 受付は首を振って、

 

「俺がガキの頃、ケートスの幼体が港まで近づいてきてな。えらい騒ぎになった。ヒトもけっこう死んだなあ……」

 

 ケートス。

 海棲ドラゴンの一種。

 

 クジラに似ているがイノシシみたいな牙を持ち、水のブレスを吐く。

 水といっても、大量に、しかも強烈な勢いで吐き出される。

 範囲は狭いが、それは津波に襲われるようなものだ。

 

「いくらドラゴンでも、幼体で?」

 

「幼体、子どもっつったって成長段階ってもんがある。人間の子どもだって、赤ん坊と3歳、3歳と6歳じゃ別モンだろ?」

 

「まあ、そうだな」

 

 ジェリフは納得した。

 乳飲み子と、自分で歩いて話せる6歳児。

 

 どっちも子供だが、その差は大きい。

 

「6歳のガキだって虫けらを踏み潰すことは簡単なんだぜ?」

 

「なるほど」

 

 ドラゴンからすれば、俺たちは虫けらか。

 

 と。

 ジェリフは苦笑するしかなかった。

 

「で、まあ……。その時は軍隊が出てきて始末したけどな。けっこうな被害が出たもんだ。金の損害だけでも……考えたくないな」

 

「だから嫌でも取りこぼしが出るか。陸も海も厄介なものだ」

 

「空もな。いつ気まぐれでドラゴン御大が飛んでくるのかわからない」

 

「わかったよ。それで報酬は」

 

「前金でこれだけ。後金はこうだね」

 

「ふうん。前金がもらえるのか」

 

「かなり危ないからな。準備やら身内に渡すやらで必要ってことだ」

 

「それを持って逃げたりは……できないか」

 

「当たり前だろ。冒険者はみんな、それつけられてるからな」

 

 受付はジェリフの右手。

 正確にはその甲部分、刻まれたギルドの紋章を指して、

 

「そいつがついてるってことは、見えない鎖と鈴がついてるのと同じだ。どこに逃げてもすぐにわかる。すぐに捕まる。後はまあ、地獄だな。見せしめで縛り首か、悪くすると『藁踊り』か」

 

「バカな真似はしないさ。ああいう死に方はしたくないからな」

 

 ジェリフは肩をすくめる。

 

 特製の油をしみこませた特製の藁。

 これで包まれた者へ、生きたまま火をつける。

 そのまま焼き殺されるわけだが……。

 のたうち回るその姿から、いわく藁踊り。

 

 

 ――溺死とどっちがマシか。比べたくもないな。

 

 ジェリフはゾッとしながらも、剣を振るう。

 

 生きるため、糧を得るために。

 

 そして。

 

 恨み、憎む者たちへの、復讐のために。

 

 

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