破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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最後に色々つけ足したら
予定よりも文字数多くなってしまいました……


※試作品ですがこちらにも
 ご意見ご感想をいただけると助かります
https://syosetu.org/novel/387736/




その115、子守唄を海に流せ-8 歌は流れて消える

 

 

 ()()()のクエストを終えてから――

 

「いやあ。ここらの飯屋はどこ行ってもうまいねえ? 魚もエビもカニも安いのに、ボリュームあってよ」

 

 マコネは笑いながらバッキーを振り返る。

 

 ふたりが歩く魚市場のすぐ近く。

 そこには色んな飲食店が並び、活気があった。

 あちこちから食欲を誘う香りが漂っている。

 

「さすが港町ですねえ」

 

 バッキーはさっき出てきた店を振り返り、

 

「よくわかんないけど、あの美味しさは素材の良さが大きいんですかね? やっぱり目利きの専門家が集まる場所だからかなあ」

 

「食いもんだけでも、ここに来る値打ちあるな」

 

 マコネは両手を頭の後ろにやって、

 

「せっかくだし、何か土産でも買ってくかねえ。魚でも買ってかえってさ。サキュバス街の料理屋で何か作ってもらうとか」

 

「あ、いいですね」

 

 けど――それって、迷惑じゃないですか?

 

 バッキーはマコネに賛同したものの、すぐ困った顔で疑問を口にする。

 

「紹介状でも持ってきゃいいさ」

 

 マコネはカラカラ笑い、

 

「ゴトクでも、ギルドの親分でも、ギルドナイトの隊長さんでも。なじみの、良い店は知ってるだろうぜ」

 

「そんなの簡単に……」

 

 と。

 バッキーは逡巡しながらも? 

 マコネの口にした面々の顔を思い浮かべた後――

 

「いや、大丈夫かも???」

 

「おうよ。ただ、それには……」

 

 我らがリーダー。

 ドラゴンスレイヤーたるカーシャ姐さん。

 その口利きが()るけどな?

 

 マコネはニッと猫のような笑み。

 

「OKもらえますかね」

 

「さてね。ただよ?」

 まあ。ああいうヒトだけども?

 食い物にはわりかし()()()()というか。

 そういうとこあるからな。

 いけるかもだぜ。

 

 それから。 

 マコネはポンとバッキーのお尻を叩いた。

 

 

 ・ ・ ・

 

 

「なるほど。チームか」

 

 ネイテクに向かい、ジェリフはうなずきながら顎を撫でた。

 場所は、とある飯の隅っこである。

 

「さよう。私が後衛でジロさんがタンク」

 

「そして俺が前衛の攻撃、いわば火力担当か。一応バランスはとれるわけだな?」

 

「そうです、そうです」

 

 ネイテクはうなずき、

 

「ジロさんは魔導アーマーの性能もプラスして、パワーはあるのですが……。いささか瞬発力や対応力がね?」

 

「悪かったのう」

 

 ジロはやや不機嫌そうに言った。

 それから。

 無言でジョッキのビールをぐいぐい飲み干していく。

 

「飲み過ぎないようにね」

 

 ネイテクはジロに対し、あくまでクールだ。

 

「遅くても3日後には次のクエストに向かいたいですからねえ。我々は貧乏暇なし……なのですよ」

 

「そうなのか?」

 

 ジェリフはそこに疑問を挟んだ。

 

「ん……? しかし例の()()()クエストはなかなかの報酬だったと思うがね。」

 

「いやいや、それが――」

 

 ネイテクは苦笑して手を振り、

 

「彼に使わせている魔導アーマー。あれの整備、いえいえ研究開発でお金がかかるんですよ。何せ個人でやってますからねえ?」

 

「魔導アーマー。確かにすごかったが」

 

 ジェリフの相づちに、

 

「そうでしょう、そうでしょう。いやあ、後始末ではだいぶ水中戦のデータが取れてホクホクでした。シー・ポープの時はミズ・カーシャの活躍で、こっちはちょっと……でしたから。」

 

 ネイテクは『喜色満面』で語る。

 

「実験に使われるこっちの身にもなってくれや」

 

「仕方ありませんね。私もあなたをひろってから、今日までだいぶにお世話焼いてきましたよ。今回でけっこう減ったけど、まだ借金残ってますからね」

 

 不満のジロに、ネイテクは指を振る。

 

「いや、それはしゃーないけど……」

 

 ジロは大柄を縮こませるように……。

 所在なさげ。

 と、いう感じでモジモジしていた。

 

「しゃーけど、わしかて体はってるやん」

 

「そこのケアもしてるでしょ」

 

「まあまあ。お前さんがたのことはちょっと置くとしてだ……。さっきの話に戻りたいんだが?」

 

「チームのことですな」

 

「ああ、そうだ」

 

 ジェリフは振り返ったネイテクにうなずく。

 さらにジロのほうにも視線を送り、

 

「面白い。やろうじゃないか」

 

 笑って、ジョッキを持ち上げた。

 

「ほう? これはまた……。快諾していただけるとは嬉しいですな」

 

「ダメかい?」

 

「とんでもない。大歓迎ですよ」

 

「はは。まあそういう反応も、仕方なくはあるかな。何しろ俺はどうも――いや、口にするのも野暮かな」

 

「まあ、そういうことです」

 

「いや、どういうことやねん?」

 

 ひとり蚊帳の外なジロ。

 いわゆるジト目で男ふたりを見比べる。

 

「ちょっと前なら――」

 

 ネイテクは三角帽子を取り、

 

「私たちのような零細、雑魚冒険者と組むとは考えにくかったということです。おっと、野暮でしたかね?」

 

「ハッキリ言う。まあ事実だからしょうがないけど」

 

 ジェリフは苦笑して、

 

「表面上はとりつくろっていたがね、腕利きだったり、これというモノを持ち合わせた実力者や富者。そういうのとつながりを持ちたかったのだよ」

 

「あんた、そんなんやったんかい」

 

「恥ずかしいが、そうなのだよ」

 

 こういった経緯をへて……。

 『ソロ』と『コンビ』は3人パーティーとなった。

 

 

 

 

 機嫌よく店を出た後――

 

「おや……」

 

 ジェリフたちは、マコネとバッキーに出会った。

 乙女二人は波止場で船を見ていた途中。

 

「これはミズ・カーシャの」

 

「ん。魔法剣士のあんちゃんか」

 

 マコネは返答をしながら――

 ちょっとバッキーと顔を見合わせて、

 

「昼間から酒かよ」

 

「ちょっとした前祝でね」

 

 ジェリフは苦笑した後。

 ふと何かに気づいた顔となった。

 そして。

 荷物から紙包みを取り出して、

 

「よければもらってくれ」

 

「何だよ、これ」

 

「いやあ。こいつは俺が使ってた古着なんだが、もう着ることはないんでね。生地はわりと上等なものだ」

 

 マコネはちょっと考える。

 

 罠という雰囲気ではないが――

 

「もらえるってんならな? ……はあ。確かにこりゃなかなかのシロモノらしいけど。あんた、これ……」

 

 マコネは一瞬疑わしそうにしたものの、

 

「まあ、いいか。けど良いのかい?」

 

「ああ。もう、いらないんだ。気に入らなかったら捨てる売るなり好きにしてくださって結構」

 

「かえってやりにくぜ、その言いかた」

 

 そんなジェリフに対して、

 

「あんたさ、最初と雰囲気変わったな。前は何か――いや、気のせいかな。今のは無し」

 

 マコネはとぼけるように笑った。

 

 ジェリフは頭を掻き、

 

「そりゃあ、アレかな。あの女性(ひと)、ミズ・カーシャに惚れてしまったせいかもしれない」

 

「は……?」

 

 これに驚いたのは、マコネだけではない。

 

 ――リーダーに? いや、うん。確かにすっごい美人だし、女の私でもいまだに見惚れちゃうことあるし。でもなあ、このヒトすごいわ。

 

 バッキーは驚き戸惑っている。

 

 ――これまた豪傑な発言だ。

 

 ――惚れたって。そら見た目は最高中の最高やけどなあ。色気というそういうのはゼロやし。だいたい……中身はバケモンやで、色んな意味で。怖っ……。

 

 ネイテクは称賛。ジロは恐怖。

 

 マコネは、

 

「そりゃあえらいロマンスだな? 何なら口をきいてやろうか? 案外うまくいくかもだぜ?」

 

 半分探るように提案。

 

「いやあ、それはけっこう」

 

 ジェリフは少し離れて、遠くの水平線へと顔を向けた。

 マコネたちから表情は見えない。

 

 ……♪

 …………………♪~~♬ 

 ……♪♪♪

 

 ジェリフは少しの間――

 遠い国の歌を小さく口ずさんだ。

 その後、ゆっくりと背伸びをする。

 

 ネイテクはあることに気づいた。

 

「おや、その歌は……。確か、嫌いなのでは?」

 

「まあ好きではないけどな。格別嫌う意味もなかったなと、気づいたんだよ。」

 

 ネイテクの問いに、ジェリフは肩をすくめる。

 

「でも、きれいな歌ですね」

 

「そうかい。こいつは私の国に伝わってる子守唄でね。みんなこれを聞いて育つのさ」

 

 バッキーへジェリフは微笑を返す。

 

 ――う……。

 

 その笑顔に、バッキーはハッとして赤面しながら顔を伏せる。

 

 ジェリフはもう一度海を向いて、

 

 …………………♪~~♬

 

 その歌声はさらに小さく、ゆっくりと波間に流れていき――

 静かに、消えていった。

 

 

 ・  ・  ・

 

 

 後日。

 

 ――おいおいおい。こりゃあ……カワディー布地の上物、いや上物中の上物じゃねえか。王族か大貴族しか着れないシロモノだぜ?

 

 ゴトクは、上着を鑑定して驚く。

 

「ヤバいもんかい?」

 

「いや――品物自体はまっとうだ」

 

 まっとうどころか、相当な値打ちもんだな。

 かなり大事に保管してたらしいが……。

 これをくれたってヤツぁ……?

 

 その疑問へ、

 

「これこれしかじか、の……あんちゃんさ」

 

 マコネが説明すると、

 

 ――……そういや、あの国で後継者争いでゴタゴタがあったそうだが……。ってことは、その()()()()()は関係者、下手すれば……。

 

 ゴトクはそこまで考えて、

 

「うちじゃ扱いたくないね」

 

「おいおい……。やっぱり厄ネタだな、 タダだったから変だとは思ってたがあの野郎……」

 

「よせよ」

 

 ゴトクは首を振って、

 

「売りたきゃお前らの大将に売りな。今の話を説明してからよ。ダメだったら、捨てるかしまっとくかにしとけ」

 

「姐さんにぃ……?」

 

「あいつなら、多少の厄ネタは娯楽だろうよ」

 

 で。

 

「ふーん。ま、いいわよ。いくら? わからない? ……ああ、そう。ふむ、じゃあこれくらい出しましょうか」

 

 カーシャは相当の代金で買い取り、

 

「うわあ、マジかよ……」

 

 マコネを恐怖させた。

 

 

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