破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その116、決闘-3 跳梁

 

 

「おどりゃあああ!!!」

 

 特別製の金砕棒が振るわれるたびに、ゾンビの群れが砕け散った。

 

 辺境の街道――

 

 そこで動き回る冒険者たち。

 中でも、獣人だらけのそのパーティーは凄まじく目立っている。

 

 タヌキが暴れれば……。

 キツネが呪符をまき、

 

「**、********、***、**、***……。**、****……」

 

 その魔力はゾンビを朽ちさせる。

 

 さらに――

 コボルトが低地を、音もなく、しかし風のように駆け抜けていく。

 ゾンビの足を切り裂きながら。

 

 そして、最後のひとり。

 

 半透明の魔力ダガー……いや、手裏剣が無数に飛び交って、ゾンビを引き裂く。

 

 まるで瞬間移動のごとく――

 前衛から後衛、補助。

 ともかくあちこちに飛び回って、敵を攪乱。味方を援護。

 

「すげえな……」

 

 冒険者のひとりが、つぶやく。

 

 ――年は若いが、動きに無駄がねえや。しかし、才能ってのも何か違うタイプだな、あいつぁ……。

 

 それなりに経験を積んだ彼は、

 

 ――いわゆる天才肌じゃねえ。

 

 活躍する獣人パーティーのリーダーをそのように見て取った。

 

 ひとりだけ人間。

 ひとりだけ男。

 魔導ではキツネに劣り、パワーではタヌキに負け、速度ではコボルトに及ばず――

 

 だが、総合力では?

 

 持てる能力の全てを合わせると、

 

 ――こいつは、すごい。他の3人がたばになっても……勝てはしなくても負けることはないな。

 

 その密かな称賛を知らずに、

 

 ――何か、妙だよな?

 

 次々にゾンビを駆逐しながら、リーダーの少年ことトクベーは不思議がっていた

 

 ――このゾンビ、どっから来た?

 

 ゾンビ化を防ぐため……。

 死体は可能な限り火葬するか、()()()()の処置をしておく。

 

 ――多分流民だろうけど……。

 

 トクベーは術を使いながら、

 

 ――何だってこんな場所にゾロゾロと……。流民が入ってきたらすぐにわかるはずだが???

 

 

 

 ・  ・  ・

 

 

 

「再編成ですか」

 

 ギルドマスターと相対しながら、ギルドナイトの一番隊長は直立不動。

 

 ライワの質問に、

 

「まあ、そういうことだね」

 

 ギルドマスターは苦笑交じりに、しかし疲労の見える顔でうなずいてから、

 

「いや正確には強化だな?」

 

 頭を掻いて答えた。

 

「強化? それ自体は結構ですが、この時期にですか? ダンジョン外大型モンスターの活動時期とは少々ズレているようですが」

 

 ライワはたずねる。

 

「今の時期、さほど危険なものは」

 

「ああ、いやいや。そことは違う線なんだが……しかし、今だからこそだよ。ご覧の通り、予算もそこそこ増やす」

 

 肩をすくめるギルドマスターだが――

 

「そこそこですか……」

 

 ライワは、示された書類を確認しながらギルドマスターの顔を見つめて、

 

「ずいぶん控えめな表現ですね」

 

「国が増額してくれてね」

 

「宮廷のお偉方ってのは、まあ……あれでなかなか用心深い。トラブルはできるだけ金で解決したいのさ」

 

「けっこうなことで」

 

「まったくなあ」

 

 皮肉とも同意ともとれるライワの言葉に、ギルドマスターはちょっと笑う。

 

「増額の理由は?」

 

「皆まで言いなさんな」

 

「噂、いえ――情報の流れてきた首切り魔が理由ですか?」

 

「そういうことだ」

 

「眉唾な気もしますが……」

 

 ライワは応えながら、深刻な表情で深いため息を吐き出した。

 

「前例がありますからね」

 

 思い出すのは、青い乙女。

 

「この場合、そいつの強さというよりは行動だ。やたらめったら死体を転がしてもらっちゃ困るんだよ」

 

「ヒト死にや死体はみな迷惑ですよ」

 

 ギルドマスターの愚痴に、

 

 ライワは同意の念を出しながらも、より不快感を露わにした。

 

「処理するのは我々ですからね」

 

「ホントに困るよ」

 

 放置された死体なんてロクなことにならんからな。いや、良い具合に作用することが希少(まれ)だろうね。知らんけど

 

 と。

 ギルドマスターは言った。

 

「そうですね。いえ、すでにゾンビが発生しておりますから。現地は後手後手にならないように苦慮しております」

 

 ライワは首を振り、

 

「犯人はやはり首切り魔だと?」

 

「可能性は、かなりのもんだ。首切り魔と呼ばれちゃいるが、別に必ず首を落とすわけじゃないらしい。つまりは……」

 

 ヒトを斬りたい――

 ただ、それだけらしいのだ。 

 

 ギルドマスターは天井を見上げながら、うんざりとした声を出す。

 

「迷惑な趣味ですね」

 

「まさに悪趣味だよ」

 

 吐き捨てるライワに、ギルドマスターは片手で顔をおおって冷笑した。

 

「して、そいつの動向は?」

 

 ライワは姿勢を正し、

 

「今のところはキーア方面で暴れてたようですが、首切りのお姫様が本当に侵入したとして、好き勝手に移動したらどうなるか……」

 

「考えたくもないが……」

 

 考えんわけにもいかんね。

 

 ギルドマスターは背を起こして、まっすぐにライワの紫瞳を見つめ、

 

「だが、できるだけ」

 

 ひと呼吸ほど沈黙して、

 

「できれば、青いドラゴンスレイヤーさんは出張って欲しくない。大きい力ってヤツはさ、必ず代償がつくもんだ」

 

「メンツもありますか」

 

「ああ。いかにもだ」

 

「いくらドラゴンスレイヤー、いえ竜の虐殺者(ドラコサイダー)ですか。たったひとりの冒険者に依存するのは……」

 

「そ。まずいんだよね」

 

 

 ・  ・  ・

 

 

「あれ?」

 

 買い物の途中、バッキーは足を止めて、ある冒険者たちを見た。

 

「どしたい?」

 

 一緒のマコネは不思議がるが、

 

「おおう。あいつ、リキュールのクエストで会った……。おっと、馬のおっさんやネイテクも一緒か」

 

 とある街の表通り。

 

 クエスト帰りのふたりは、

 

「よう、男3人そろって悪だくみでもしてんのかよ? 色っぽくない組み合わせだな」

 

 ジェリフたちのパーティー。

 それらと遭遇していた。

 

「ああ、ミズのお仲間衆じゃないか。あの上着は売れたかい?」

 

 微笑のジェリフへ、

 

「ああ、売れたよ」

 

 マコネの返答通り、ジェリフより譲られた某王族の衣服はかなりの高額で売れたのだ。

 

 ただし――

 買ったのはカーシャだが。

 

「そうか。まあ、何かの足しにできたなら良かった、良かった」

 

「皆さんは、クエストですか?」

 

 バッキーが質問すると、

 

「そうですね。しばらくはウストゥムのほうでやるつもりです」

 

「ウストゥムっていやぁ」

 

 マコネが言いかけると、

 

「まあ、おっしゃりたいことはわかります。あまりもうからない地域ですよね」

 

 ネイテクは苦笑。

 

「なんだっけ、あそこは……」

 

「尚武の気風というヤツですかねえ? 代々強力な騎士団、軍隊を率いていることで有名ですわ」

 

「そうなんですか?」

 

 バッキーがたずねた。

 

「ええ。領主の一族も軍人ばかりですねえ。技術屋や学問に秀でた人材もいるが、技術士官や何かになってるそうで。ま、それゆえに冒険者はもうからんわけで……」

 

「え、なんでですか?」

 

 バッキーが言えば、

 

「土地全体がモンスターや野盗討伐に積極的ってことです。だからまあ、地味なインフラ作業ばかりが仕事になると」

 

 もちろん?

 

 ネイテクは肩をすくめ、

 

「それも冒険者ギルドの役目ですがね。手に職をつけやすい場でもあるわけだから。ただ金をためるにはあまり向かない」

 

「どうして、そんな……」

 

「悪い噂があるからですよ」

 

 そう言ってから、ネイテクは困った顔でジェリフやジロと顔を見合わせた。

 

「キーアで何かあったそうですけど……」

 

「そうです、そうです」

 

 ネイテクはバッキーへうなずき、

 

「どうも? 冒険者の活動が大きい地域へ何か危険な人物が潜り込んでいるらしい、とね。あ、もちろんそちらのリーダーじゃないですよ? 危険なのは間違いないけど」

 

 

 

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