破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その116、決闘-14 後日

 

 

 その日――

 ヤオアムトの王都・サムーシャ。

 

 特に過激とされる勢力。

 その一派が、連座で処刑された。

 

 リーン王太子妃。

 

 流血は……。

 国民の印象を一夜にして変えた。

 苦難を乗り越えて、王子様と結ばれた悲劇のプリンセス。

 オンナノコの夢。

 理想。

 

 これが――

 自分の家来さえ、容赦なく処断する冷血な女王に。

 

 恐怖する者。

 失望する者。

 

 逆に、評価をプラスとした者。

 頼もしいと思った者。

 

 混沌とはしたが――

 リーンの失墜とはならなかった。

 

 王太子の心情は、定かではないが。

 

 

 ・  ・  ・

 

 

「まあ死んだ過激派は、十数人らしいや」

 

「へえ」

 

 新聞を読みながら、ゴトクは呆れた声。

 対するカーシャは気のない返事。

 聞いているのかさえ、疑わしい。

 

「しかしよお?」

 

 マコネは首を突き出しながら、

 

「新聞の感じだと、そいつらはお姫様が王子様と結婚するのにも、だいぶ骨折ったんだろ?」

 

「欲と二人連れじゃあるが、まあそうだな」

 

 新聞をたたみながら、ゴトクは苦笑する。

 

「つうことは、恩があるってことだよなあ。そんなのをあっさり切り捨てるのかよ」

 

「よくある話ではあるかしら」

 

 出されたお茶を飲み、カーシャは淡々と言う。

 

「いざとなれば、ダメな連中、邪魔な連中を排除しなければ王族は立ち行かない」

 

「それに、やらかしたことがことだからな、弁護も難しかったろうよ」

 

「やらかしたって、まさか……」

 

 棚の商品を見ていたバッキーが振り返る。

 

「これにゃ書かれていねえが」

 

 ゴトクはたたんだ新聞をつつきながら、

 

「あのプラジナを呼び込んだのは、こいつらだろうな」

 

「何でそんなバカなこと……」

 

「どんな賢いヤツでも――追いつめられてテンパるとバカみたいなことをするんだよ」

 

「それに、権謀術数の世界で生きていると推測や憶測がバケモノみたいになることもあるの」

 

 カーシャは淡々と言って、自分の青い髪を撫でた。

 ゴトクを補足するように。

 

「どうなるんですかね、それ……」

 

「さあね。悪くすると、連座で一族もろとも……だが」

 

「この場合、たぶんそうはならないわね」

 

 と。

 カーシャはカードの束をシャッフルしながら、

 

「さすがに恩もあるし、自分を支える地盤でもある。適当な跡継ぎを見つくろい、後はお咎めなし。そんなところでしょう」

 

「一族も、連座を喰らうぐらいなら喜んで受け入れるわな。誰が跡継ぎになるかで揉めるかもしれんが」

 

 ゴトクは、ボードをカウンターに置いて言った。

 

「こんな不祥事の後だもの。事後処理は大変なことでしょうね」

 

 ホホホ、と。

 カーシャは冷笑した。

 

「そもそも。貴族の家督とか、宮廷の役職ってのは、()()()の分だけ忙しいからなあ」

 

 ゴトクも自分のカードの束を出しながら、席に着く。

 

「権威と権益の分だけね」

 

 応えて、カーシャはカードを一枚ボードに置く。

 歩兵のカードだった。

 

 それぞれ52枚のカードを用いるゲーム。

 一種の戦略ゲームである。

 

「だいたい、家の当主なんてものは、いざとなれば首を差し出す義務と責任があるから」

 

「他人に威張れるが、内情はやっぱりキツいか」

 

 ゴトクは重装兵のカードを置いた。

 

「役職、家のランクにもよるけど」

 

「だがね、傍目から見ると本家と分家、役付きと役無しじゃまるで違うぜ」

 

「そうでなければ、当主になる意味はないもの」

 

「まあ、そうだな」

 

「ある意味楽な分、社交界でも相応の扱いだし?」

 

 そんな会話を交わしながら――

 カーシャとゴトクはカードゲームを進めていく。

 

 ボードの上では……。

 カードに合わせ、戦士やモンスターが戦う。

 

 ――ああいうのが、地球にあったらすごいだろうねえ……。

 

 とりとめのない思考。

 それをしながら、バッキーはたたまれた新聞を手に取る。

 

 新聞一面の内容。

 先日、王都で大勢の貴族が内乱、あるいは内乱準備罪などで捕縛――

 そのまま、取り調べの後で斬首されたとある。

 

 処刑された一連の貴族たちは、リーン王太子妃派閥であったらしい。

 あくまで風聞では……とあるが。

 

 ――ふたりの言ってるとこから、まあ事実なんだろうなあ。

 

 バッキーの知る限りでは、

 

 ――王太子妃派でも過激な派閥が、殺し屋をこの国に招き寄せた……。リーダーを殺すために。でも、その殺し屋はとんでもない危険人物で……。

 

 そこから、

 

 ――半ば外患誘致って感じで、大急ぎで処刑されちゃったと……。

 

 大体、こういったところ。

 

「世知辛い話ですねえ、色々と……」

 

「いくら恩があるからって、とんでもねえ殺人鬼を引っ張り込んだからな」

 

 ゴトクは、物資:食料のカードを切りつつ、

 

「この()()()()だけでも持て余し気味なのに、さらに増えてもらっちゃ困るぜ」

 

「まるでバケモノ扱いね。まあ、事実だからしょうがないけど」

 

 カーシャは罠のカードを置きながら、肩をすくめる。

 

「といっても。本丸は殺し屋どうこうよりも、あんたを狙ったのが大きいとは思う」

 

「へえ?」

 

「あんたは、大げさに言えば、歩く自然災害みたいなもんだからな」

 

「おやおや」

 

「対策を取るにしても何にしても、今回のはあまりにも稚拙だったな。およそ、政治(まつりごと)に関わる連中がとっていい行動じゃない。客観的に見れば、だけどよ」

 

「ふふん」

 

 カーシャは騎士とグリフォン、それに武具のカードを同時に出して、

 

「空中騎兵」

 

「おっと、そう来たか」

 

 ゴトクは頭を掻いた。

 

「まあ……。世の中、偉い連中がくだらねえ失敗やら、ガキみてえな行動したせいで大惨事……ってのは、ありふれたもんだが」

 

「迷惑な話ですね……」

 

 バッキーはげんなりとして言った。

 

「まったくなあ」

 

 ゴトクは、砲兵と魔法兵、軍事物資のカードで、

 

「魔導砲兵だ」

 

「ふむ――」

 

 カーシャも少し考え、次のカードを出す。

 これに、

 

 ――前世からそうだったけど、この手のカードゲームってややこしいなあ。見てるだけでわけわかんないや……。

 

 バッキーはそんなことを考えつつ、

 

「こういうのって、新しいカードとかを売ったり買ったりしないんですか?」

 

 この質問に、

 

「なにそれ」

 

 カーシャは呆れた声で返した。

 

「ンなわけあるか。ゲームもルールもムチャクチャになるじゃねえか。ハンデ戦ってのはあるけどよ」

 

 ゴトクも苦笑。

 

「はんでせん」

 

「例えば、物資や兵士のカードを減らしてやるとかな。籠城戦を想定したもんとか。まあ、色々だが違うカードを作るなんてのはない」

 

「はあ。そういうもんですか」

 

「そういうもんだ」

 

「まあ。過激派連中も、そろそろ他勢力(ほか)から目障りに思われていたことでしょうし。たぶん、王太子派からもね」

 

「そのふたつは、味方同士じゃないんですか?」

 

「旗印ふたりはともかく……。王太子派からすれば、女房の家来まで大きな顔をされては面白いはずがないでしょう」

 

 分をわきまえろ、とねえ?

 

 カーシャは言って、また次のカードを切った。

 

 ボードの上では――

 幻影の軍隊が、粛々と戦闘を繰り返している。

 

 この時――

 ネビズの街はまた平穏を取り戻していた。

 

 

 

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