破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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今回から新エピソードです
前々から構想?はしてたんですが、長めなのとタイミング的に先送りになってました

https://kakuyomu.jp/works/16818093082887030996
※カクヨム版です
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その117、悪魔が来りて嘘をつく-1 場所は遠国

 

 

「……」

 

 カーシャは、鏡に映る自分を見た。

 水色の瞳――

 そこは変わらない。

 ただ、髪の毛は少しウェーブの入った金髪となっていた。

 

 カーシャは着こんだ鎧を再確認しながら、

 

「いかがでございましょう?」

 

「そうだな。知り合いが見てもあんたとはわかるまいよ。多分な」

 

 問われたゴトクは肩をすくめる。

 

「多分ね……」

 

「わかりにくさは、外見よりも雰囲気、気配だからな」

 

「ふーん」

 

 カーシャは金髪をかき上げ、もう一度鏡を見る。

 

「まあ、それもいいでしょう」

 

 カーシャは新調した剣を手にマントを羽織った。

 新しい剣。

 ただし、()()()()だが。

 

 外を見る。

 

 ――ずいぶんと田舎だわ。

 

 カーシャは内心、肩をすくめた。

 ヤオアムト国内では辺境にあたるネビズ。

 あそこのほうが、もっと進んでいるのではないか。

 

 シーマ王国。

 ヤオアムトからは3万キロ近く離れている遠国。

 

 現在。

 カーシャはそこで、別人のようなふりをしている。

 

 何故、そうなっているかというと――

 

 

 ・  ・  ・

 

 

「へえ。これが……」

 

「ああ……。『高速トンネル』だ」

 

 目の前に広がる巨大な地下トンネル。

 それがどこまでも前方に広がっている。

 

 天井や壁には、ダンジョンと同じく正体不明の光源。

 横には、時々小さな小部屋らしきものがあった。

 

「広いわね、大型モンスターでも楽々通れそう」

 

 どこまでも高い天井を見上げながら、カーシャは微笑した。

 

「こいつも一応ダンジョンの一種ではある」

 

「なるほど」

 

 うなずくカーシャに、先を歩くゴトクは、

 

「ただし、ボスモンスターはいない」

 

 寿命も……。

 俺が知る限りない。

 あるのかもしれんが、普通のダンジョンより何十倍も長いだろうね。

 それに出現するモンスターは、完全にランダム。

 特定の法則もよくわからん。

 おっと……。

 

 言いながら、金髪のエルフは足を止めた。

 

 前方に、巨大な影。

 四足歩行の巨大なドラゴン種が炎の息吹を吐いている。

 

「さっそく、お出ましだ」

 

「そうね」

 

 カーシャは、静かに愛用の黒剣(カーラナーガ)を手に取った。

 

 それから。

 起こった事態を要約すれば――

 

 カーシャはドラゴンのブレスを跳ね返し、頭蓋を粉砕した。

 その余波で、壁の一部が破壊されたのだが、

 

「……!?」

 

 崩れた部分から、魔力の波動が噴き出していく。

 カーシャはそれを受けながら、地面に着地。

 

 魔力はカーシャの黒いオーラと反応し合い、やがて消えたが……。

 

「なにか、妙な……」

 

 特に不都合はないが、奇妙な違和感。

 それを感じつつ、カーシャは埃を払った。

 

「……呪いだな」

 

「呪い?」

 

 頭を掻くゴトクに、カーシャはたずねる。

 

「ああ、『石ころの呪い』ってヤツだ。喰らうと存在感がどんどんなくなり、悪くすれば……」

 

 言いかけて、少しゴトクは黙った。

 

「いいから続けなさい」

 

「……誰からも認識されなくなる。声も聞こえず、視界にも映らない」

 

「――殺し屋にはありがたい呪いねえ」

 

「そうだな。しかし、今回の場合」

 

 ゴトクはまた黙り込み、困った顔をした。

 

「感覚として、苦痛や病気とは思えないけど」

 

「あー。なるほど、あんたのオーラと反応して変な作用をしたんだなあ」

 

「結論を言いなさい」

 

「殺気と邪気が薄くなった。いや、薄く感じるようになった」

 

 実際は何も変わっちゃいないんだが。

 こいつはどうも……。

 

 と。

 ゴトクは首をひねる。

 

「私ってそんなに毒々しい存在だったわけ?」

 

「自覚は誰よりもあると思ったがね」

 

「それはそう」

 

 カーシャは笑って、カーラナーガをしまう。

 

「結論を言うとだ。あんたが常時発してた血の臭いが薄くなって、まあ、その()()()がわかりにくくなってる。勘のいいヤツなら、素人でもわかっちまう例のアレがな……」

 

「つまり、見た目通りの小娘程度に思われると?」

 

「鈍いヤツは特にな。それとなく感じるヤツも当然いるだろうが、バケモノじみた本性を見抜けるかと言えば……疑問だな」

 

「ふーん」

 

「……アレはあんた自身よりも、周りを危険から遠ざけるのに役立っていたんだが。まあ、しょうがない。自然に解呪されるのを待つしかないさ」

 

「ま。いいわ。遠出をするのだから別人になっても良いでしょう。さっさと目的地へ行きたいわ」

 

「はいはい……。しかし、他の連中を置いてきていいのかね?」

 

「たまには良いでしょう」

 

「そうかい。ま、ここから数キロも歩けばナーロッパ地方だ。普通なら3万キロ近い遠距離だが……」

 

 

 ・  ・  ・

 

 

「――で。鎧や剣の具合は?」

 

「まあまあね。中古品にしてはそこそこ」

 

 カーシャは青い鎧を軽くなで、微笑した。

 

「さて……。帰りまでは別行動でいきましょうか。とはいえ」

 

「ああ。適当な案内役は紹介する。ハーフエルフだ。エルフとブーカのな」

 

「ブーカ? ああ、体の小さな種族だったかしら」

 

「そうだよ。連中はガキみてえな背格好(なり)でも大人だから、そこは注意しとくんだね」

 

「心得ておきましょう」

 

 こういうわけで。

 カーシャは遠い異国の地で、単独行動を開始した。

 目的は、特にないが――

 

「冒険者登録をしたいのだが」

 

 とりあえず動きやすくするため、その国の冒険者ギルドへ向かった。

 単なる旅人、風来坊よりも冒険者という身分を得たほうが良い。

 

「登録の料金、1500ナローになります」

 

「ナローか……」

 

 意識して口調を変えながら、カーシャは紙幣を出した。

 

「これで足りるか?」

 

「え? 何ですか、これ」

 

 ヤオアムト紙幣を見て、受付女性は胡散臭そうな顔をした。

 

「ん? ああ……。なるほど、そうか」

 

 通貨が違う。

 それをうっかり失念していたらしい。

 

「これなら使えるだろう?」

 

 カーシャは紙幣を引っ込め、金貨をカウンターに置いた。

 

「あ。ダンジョン金貨ですね。はい、大丈夫です。でも、お釣りがたくさんだなあ……」

 

 ダンジョン金貨。

 ランクが高めのダンジョンで、宝箱などから見つかる金貨である。

 純度が高く、大抵の金貨よりも価値が高い。

 

「それで、ジョブは何でご登録されますか?」

 

「とりあえず前衛の戦士系で――」

 

 カーシャは淡々と応えた。

 受け取った大量の釣銭を小さい袋に入れながら――

 

「では……」

 

 受付女性はチラリとカーシャの剣を見て、

 

剣士職(ソードマン)でご登録させていただきます」

 

「それでけっこう」

 

「では、こちらが登録の証明になります。なくさないでくださいね」

 

 出されたのは魔法合金製の腕輪。

 鎧や服の上から問題なく装着できるようだ。

 

「一応最初の登録なのでレベル1からになります。がんばってレベルを上げてください」

 

 ――レベルねえ?

 

 こちらの方式では――

 レベル10で一人前。

 レベル20~30で中堅。

 50から一流クラスとなるようだ。

 

「せいぜいがんばるさ」

 

 カーシャは自分自身の言動に苦笑しながら、周囲を見た。

 かなり注目が集まっている。

 金髪碧眼の美女。

 その美貌はヤオアムトよりもずっと目立つものだった。

 

 カーシャは注目の中……。

 隅のテーブル。

 そこで、何かをいじっている小柄な人物。

 これを見つけて、ゆっくり近づいた。

 

 

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