破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
前々から構想?はしてたんですが、長めなのとタイミング的に先送りになってました
https://kakuyomu.jp/works/16818093082887030996
※カクヨム版です
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「……」
カーシャは、鏡に映る自分を見た。
水色の瞳――
そこは変わらない。
ただ、髪の毛は少しウェーブの入った金髪となっていた。
カーシャは着こんだ鎧を再確認しながら、
「いかがでございましょう?」
「そうだな。知り合いが見てもあんたとはわかるまいよ。多分な」
問われたゴトクは肩をすくめる。
「多分ね……」
「わかりにくさは、外見よりも雰囲気、気配だからな」
「ふーん」
カーシャは金髪をかき上げ、もう一度鏡を見る。
「まあ、それもいいでしょう」
カーシャは新調した剣を手にマントを羽織った。
新しい剣。
ただし、
外を見る。
――ずいぶんと田舎だわ。
カーシャは内心、肩をすくめた。
ヤオアムト国内では辺境にあたるネビズ。
あそこのほうが、もっと進んでいるのではないか。
シーマ王国。
ヤオアムトからは3万キロ近く離れている遠国。
現在。
カーシャはそこで、別人のようなふりをしている。
何故、そうなっているかというと――
・ ・ ・
「へえ。これが……」
「ああ……。『高速トンネル』だ」
目の前に広がる巨大な地下トンネル。
それがどこまでも前方に広がっている。
天井や壁には、ダンジョンと同じく正体不明の光源。
横には、時々小さな小部屋らしきものがあった。
「広いわね、大型モンスターでも楽々通れそう」
どこまでも高い天井を見上げながら、カーシャは微笑した。
「こいつも一応ダンジョンの一種ではある」
「なるほど」
うなずくカーシャに、先を歩くゴトクは、
「ただし、ボスモンスターはいない」
寿命も……。
俺が知る限りない。
あるのかもしれんが、普通のダンジョンより何十倍も長いだろうね。
それに出現するモンスターは、完全にランダム。
特定の法則もよくわからん。
おっと……。
言いながら、金髪のエルフは足を止めた。
前方に、巨大な影。
四足歩行の巨大なドラゴン種が炎の息吹を吐いている。
「さっそく、お出ましだ」
「そうね」
カーシャは、静かに
それから。
起こった事態を要約すれば――
カーシャはドラゴンのブレスを跳ね返し、頭蓋を粉砕した。
その余波で、壁の一部が破壊されたのだが、
「……!?」
崩れた部分から、魔力の波動が噴き出していく。
カーシャはそれを受けながら、地面に着地。
魔力はカーシャの黒いオーラと反応し合い、やがて消えたが……。
「なにか、妙な……」
特に不都合はないが、奇妙な違和感。
それを感じつつ、カーシャは埃を払った。
「……呪いだな」
「呪い?」
頭を掻くゴトクに、カーシャはたずねる。
「ああ、『石ころの呪い』ってヤツだ。喰らうと存在感がどんどんなくなり、悪くすれば……」
言いかけて、少しゴトクは黙った。
「いいから続けなさい」
「……誰からも認識されなくなる。声も聞こえず、視界にも映らない」
「――殺し屋にはありがたい呪いねえ」
「そうだな。しかし、今回の場合」
ゴトクはまた黙り込み、困った顔をした。
「感覚として、苦痛や病気とは思えないけど」
「あー。なるほど、あんたのオーラと反応して変な作用をしたんだなあ」
「結論を言いなさい」
「殺気と邪気が薄くなった。いや、薄く感じるようになった」
実際は何も変わっちゃいないんだが。
こいつはどうも……。
と。
ゴトクは首をひねる。
「私ってそんなに毒々しい存在だったわけ?」
「自覚は誰よりもあると思ったがね」
「それはそう」
カーシャは笑って、カーラナーガをしまう。
「結論を言うとだ。あんたが常時発してた血の臭いが薄くなって、まあ、その
「つまり、見た目通りの小娘程度に思われると?」
「鈍いヤツは特にな。それとなく感じるヤツも当然いるだろうが、バケモノじみた本性を見抜けるかと言えば……疑問だな」
「ふーん」
「……アレはあんた自身よりも、周りを危険から遠ざけるのに役立っていたんだが。まあ、しょうがない。自然に解呪されるのを待つしかないさ」
「ま。いいわ。遠出をするのだから別人になっても良いでしょう。さっさと目的地へ行きたいわ」
「はいはい……。しかし、他の連中を置いてきていいのかね?」
「たまには良いでしょう」
「そうかい。ま、ここから数キロも歩けばナーロッパ地方だ。普通なら3万キロ近い遠距離だが……」
・ ・ ・
「――で。鎧や剣の具合は?」
「まあまあね。中古品にしてはそこそこ」
カーシャは青い鎧を軽くなで、微笑した。
「さて……。帰りまでは別行動でいきましょうか。とはいえ」
「ああ。適当な案内役は紹介する。ハーフエルフだ。エルフとブーカのな」
「ブーカ? ああ、体の小さな種族だったかしら」
「そうだよ。連中はガキみてえな
「心得ておきましょう」
こういうわけで。
カーシャは遠い異国の地で、単独行動を開始した。
目的は、特にないが――
「冒険者登録をしたいのだが」
とりあえず動きやすくするため、その国の冒険者ギルドへ向かった。
単なる旅人、風来坊よりも冒険者という身分を得たほうが良い。
「登録の料金、1500ナローになります」
「ナローか……」
意識して口調を変えながら、カーシャは紙幣を出した。
「これで足りるか?」
「え? 何ですか、これ」
ヤオアムト紙幣を見て、受付女性は胡散臭そうな顔をした。
「ん? ああ……。なるほど、そうか」
通貨が違う。
それをうっかり失念していたらしい。
「これなら使えるだろう?」
カーシャは紙幣を引っ込め、金貨をカウンターに置いた。
「あ。ダンジョン金貨ですね。はい、大丈夫です。でも、お釣りがたくさんだなあ……」
ダンジョン金貨。
ランクが高めのダンジョンで、宝箱などから見つかる金貨である。
純度が高く、大抵の金貨よりも価値が高い。
「それで、ジョブは何でご登録されますか?」
「とりあえず前衛の戦士系で――」
カーシャは淡々と応えた。
受け取った大量の釣銭を小さい袋に入れながら――
「では……」
受付女性はチラリとカーシャの剣を見て、
「
「それでけっこう」
「では、こちらが登録の証明になります。なくさないでくださいね」
出されたのは魔法合金製の腕輪。
鎧や服の上から問題なく装着できるようだ。
「一応最初の登録なのでレベル1からになります。がんばってレベルを上げてください」
――レベルねえ?
こちらの方式では――
レベル10で一人前。
レベル20~30で中堅。
50から一流クラスとなるようだ。
「せいぜいがんばるさ」
カーシャは自分自身の言動に苦笑しながら、周囲を見た。
かなり注目が集まっている。
金髪碧眼の美女。
その美貌はヤオアムトよりもずっと目立つものだった。
カーシャは注目の中……。
隅のテーブル。
そこで、何かをいじっている小柄な人物。
これを見つけて、ゆっくり近づいた。