破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

302 / 357
https://kakuyomu.jp/works/16818093082887030996
※カクヨム版です
 こちらにもいいねやレビュー(星)をどうかお願いします!
 いや、本当に……


その117、悪魔が来りて嘘をつく-2 魔導強化鎧装(ドラグーン)

 

 

「リブオ・サッコだな」

 

「まあ、そうですけど」

 

 薄緑の髪をした子供のような人物。

 尖った耳からエルフの流れを汲む、とわかる。

 

()()から紹介されている」

 

「なになに……」

 

 リブオは紹介状とカーシャを見比べ、

 

「あー。猫の……。で、あんたが……」

 

「カーシャだ。カーシャ・オーサ・ガヴェル」

 

 適当に考えた偽名を名乗り、カーシャはリブオと同じ席に座る。

 

「で。何すか?」

 

「この国は初めてでな。色々と教えてもらいたい」

 

「まあ、いいですけど」

 

「差し当たって、私がやりやすいクエストだな」

 

「そんなん、会ったばかりでわかるわけねーっす」

 

「ふふん」

 

 カーシャは、注文した飲み物を飲み干すと、

 

「ふ」

 

 コップを空中に放り投げた。

 それから、片手でコップをキャッチ。

 ただ。

 コップはいつの間にか、4分割されていた。

 

「よ、よく見えなかったすね……」

 

 リブオは誤魔化すように言いつつ、

 

「でもあなたなら、たいがいのクエストはいけると思いますよ」

 

「それは重畳。で、どんな?」

 

「えーと。そうっすね……」

 

 リブオは、ちょっと視線を上げて考え出す。

 この時――

 

「……」

 

 カーシャも同じように、視線を上げる。

 それから、

 

「ついてこい」

 

「え? 何すか?」

 

「いいから。支払いはここへ置くぞ」

 

 カーシャは銀貨を一枚テーブルに置く。

 そして。

 小柄なリブオを脇に抱えてその場を後にした。

 

 街中を駆け、飛び――

 カーシャが向かうのは小高い場所。

 そこへ到着と同時に、

 

 GAAAAAAAAAAA……!!

 

 遠くから、凄まじい音が響いた。

 いや。

 音ではない。

 叫び声である。

 

「な、なに、何???」

 

 あわてふためくリブオを放り出すと、

 

「ドラゴンだ」

 

 カーシャは、新調した剣を背中から外した。

 

 いわゆる大剣――

 ツヴァイハンダー。

 刀身も長さばかりではなく、横幅も広め。

 見るからに重量のある大型武器だった。

 

「ど、ど・ど・ど・ど、ドラゴン!?」

 

 空の向こうに、大きな翼が見えた。

 

「火炎竜か。サイズは……」

 

 以前倒したものよりは小さい。

 また。

 あくまで単体。

 他のモンスターはいないようだ。

 

「街ひとつを潰すには、十分すぎる」

 

「えええ……!?」

 

 真っ青になるリブオに、カーシャはそう言った。

 

「こ、こういう時は勇者、英雄の出番っすね……!」

 

「そんな都合の良い者がいればな」

 

「え?」

 

「ん?」

 

「いや、いるじゃないっすか」

 

「どこに――」

 

 言いかけた時、

 

 ――これは。

 

 何か高速で迫る気配。

 カーシャはそれを察知して、また空を睨む。

 

竜騎士(ドラグーン)

 

 別方向から、ドラゴンへ向かっていく影。

 黒い装甲。

 鋭角的なブレードアンテナ。

 ドラゴンと人間(ヒト)を融合させたような形。

 

 飛行型魔導アーマー。

 

 魔導技術の結晶――

 知性種族(マーナヴ)がドラゴンに対抗するために生み出した兵器。

 

「ああ、なるほど。確かに対抗手段ではあるか」

 

 カーシャは、いったん大剣を下におろす。

 

「あ、ほら。あれ」

 

 リブオはドラグーンを指して言った。

 カーシャが気づいていることに、気づかずに――

 

 それから。

 ふところから小型の望遠鏡を取り出して、

 

「あー、やっぱり。黒炎の竜騎士ですね。行動が早い」

 

 黒いドラグーンは、高速でドラゴンの周辺を飛び回る。

 そして。

 的確に急所や死角を狙い、打ち抜いていく。

 

「これは……」

 

 芝居がかった顔で目を見開く。

 

「強い」

 

「そりゃそうっすわ。周辺国を含めても、随一の英雄ですから」

 

「ドラゴンの騎士か。そう呼ばれるヤツがドラゴンを狩るとは皮肉な」

 

「詩的っすね」

 

 そんなやり取りの中――

 ついにドラゴンは討伐され、横倒しに崩れ落ちた。

 

「ああー、あのサイズだとだいぶ素材取れますね。儲かるんやろなあ……」

 

 リブオは()()()()で感慨深く言った。

 

「国は大喜びだな」

 

「まあ、そうっすね。また黒炎の名が上がるなあ」

 

「黒い火か」

 

 確かに。

 魔力の炎を噴き出して空を駆けるドラグーン。

 黒い装甲も映えて、異名にふさわしい。

 

「この国は、ずいぶんと高性能なドラグーンを持っている。単騎で、しかもこの短時間でドラゴン討伐だ」

 

「いやー、アレはスペシャルっていうか例外ですよ」

 

「例外?」

 

「スペシャルな機体を、スペシャルな乗り手が操ってるんで」

 

「なるほど……?」

 

「まあ、遠くから来たヒトだと珍しいかもしれないっすね」

 

「チラリと聞いたが――」

 

 カーシャはリブオを見て、

 

「ナーロッパ全域は、『魔王軍』の攻撃を受けていたとか」

 

 数年前。

 まだ貴族令嬢時代に、そんな噂を少しだけ聞いたことはあった。

 

 だが、ヤオアムトから見れば――

 遥か離れた遠方の、おまけに『未開』の田舎である。

 

 真面目に考えるものはほぼいなかった。

 

 ――高速トンネルは使われていなかったしね。いや、複数のドラゴンが棲みついていては使えるわけがないか。常識的には。

 

 一方でリブオは、

 

「あー。まあ、そうっすね」

 

 微妙な顔で頭を掻く。

 

「なんだ、その曖昧な返事は」

 

「いえね? 確かにそれはそうなんすけど、あの黒炎さんの活躍でだいぶ押し返してるんですよね」

 

「ほう?」

 

「だから稀代の英雄として有名になってるんすよ」

 

「ドラグーンありきとはいえ、ドラゴン討伐の強者(つわもの)か。当然だな」

 

「まあ、そのおかげで僕らは商売が安定してるんで感謝ですけどね」

 

「英雄か――」

 

 カーシャは少し考える。

 

 ――規格外の強さ……。

 

 カーシャは思い浮かべる。

 年明け早々にやり合った首切りのプラジナ。

 ワシローで出会った魔獣人マクニオ

 同じくワシローで戦ったガイストとかいう男。

 セーヅで出会った放浪者テラ。

 

 ――考えてみれば、けっこう同類に出会ってきたわけか……。

 

 と、すれば。

 

「……ふむ」

 

 カーシャは大剣を担ぎ直し、ドラゴンが倒れた辺りを見る。

 

「お前、今後の予定は」

 

「え? あー、夜には飲みに行くつもりですけど。あなたも飲みたい感じですか?」

 

「夜にまた落ち合おう」

 

 そう言って――

 リブオから店の名前や場所を聞いてから、走り出した。

 

「うわ、何だアレ……」

 

 カーシャの速度。

 リブオには瞬間移動しているようにしか見えなかった。

 

 

 ・  ・  ・

 

 

 現場は、大勢が集まって騒がしかった。

 騎士や魔法使い、その他兵士がドラゴンを見上げている。

 そして――

 

 黒いドラグーンのそばには、黒衣の男が立っていた。

 ドラグーンと同じ色のヘルム。

 目元を隠した、暗い紫髪の男。

 

 カーシャは男の背中を見ながら、一瞬目を細める。

 

 ――強い。確かに強い。

 

 離れて見ても、それは理解できた。

 

 ――生身でドラゴン討伐も、可能かもね……。

 

 そう思いながら、ゆっくりと男に近づいていく。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。