破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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※カクヨム版です
 色々変えてる部分もあるので
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その117、悪魔が来りて嘘をつく-10 敵ドラグーン

 

 

 ――ここの魔王ねえ?

 

 ゴトクは、弁当を広げながら考える。

 

 簡単に言うなら……。

 人類種、主に人間全体と敵対的な集団、その統率者。

 

 ――まあ、そういう感じになるわけだが。

 

 別に――

 絶対悪というべき、魔族などという都合の良いものはない。

 その正体も、行動理念も様々だ。

 

 単に周辺の他種族を侵略しているだけ。

 逆に侵攻されたので迎撃しているだけ。

 あるいは、

 

 ――単純な内乱ってこともあるのか。

 

 エルフであるゴトクの視点からすれば……。

 敵対勢力を、文字通り悪魔化する記号でしかない。

 

 だから。

 いや、ほとんどは――

 自分に道理がある。

 正義がある。

 向こうだって、そう思って行動しているのだ。

 

 ――魔王だの魔族は、まあ置いておくとして……。

 

 ゴトクは、黒衣の英雄を思い出す。

 

 ――黒炎のグシオか。

 

 色々調べているが、どうもよくわからない。

 やはり。

 いきなりチカラに目覚めて大活躍としか思えないのだ。

 

 ――あとは……。

 

 グシオが活躍を始めた地点。

 そこにも――

 これだという怪しいものはなかった。

 強いてあげるなら、

 

 ――あの、古い石碑ぐらいか。

 

 元は、やはり古い神の神殿。

 その中心部に鎮座されていたものらしい。

 

 ――記録じゃあ、巫女が神の託宣を告げる場所だったらしいが……。

 

 ゴトクが生まれる前から、すでに神殿はなくなっていたようだ。

 

 ――記録だって、ここ100年以内のもんだったし。俺だって、まだ200歳台だからなぁ。

 

 エルフとしては、若僧である。

 

 ――大英雄グシオ殿。あのねーちゃんほどじゃねえけど、薄気味悪いぜ。

 

 そんな思考をしつつ――

 弁当を半分ほど食べ終えた時である。

 

 ――!?

 

 ゴトクは立ち上がって、遠見の魔法を使った。

 

 ――おいおい……!

 

 山の向こう。

 そこで、巨大な影が移動していた。

 

 背中に刃物みたいな棘を生やしたドラゴン。

 

 ――棘竜(ペルーダ)か!

 

 さらに。

 その周辺には、

 

 ――レッサードラゴンもいやがる……。

 

 二足歩行の低ランクドラゴン種。

 それが群れをなしている。

 

 更にその上空。

 低い高度ではあるが、

 

 ――おいおいおいおい。ドラグーンまで来てるのかよ? なるほど、あれが指揮官ってわけだな……。

 

 魔王軍もドラグーンを使うとは、話に聞いていたが、

 

 ――あんまり数はないとも聞いたな、確か。

 

 ふん。

 モンスター以外の人材だの兵隊は少ないらしいや。

 それとも、温存しているのか。

 まあ、いい……。

 どっちにしろ、こういう時は逃げるに限るわな。

 

 ゴトクがそう思った時、

 

 ――ん?

 

 大きな音が近づいてくる。

 

 ――あっちは、王都のほうか? さっそく迎撃に来たのかね?

 

 どうやら、そうらしかった。

 上空に黒い影。

 それはすれ違いざまにドラゴンを斬りつけ、滑るように着地。

 

 と。

 黒いドラグーンのコクピットが開く。

 そこから人影が飛び出す。

 

 ――!? ありゃあ……。

 

 青い鎧。

 手にはツヴァイハンダー。

 金髪に水色の瞳。

 目の覚めるような美貌。

 

 カーシャ。

 ここで名乗る正式名称は、カーシャ・オーサ・ガヴェル。

 

 ――何やってんだ、あのねーちゃんは?

 

 カーシャが遠くへ駆けていくと、ドラグーンは再び上空へ。

 そのまま、ドラゴンへ突っ込んでいく。

 

 どうやら、

 

 ――なるほど。人里から引き離すわけか。しかし……。

 

 レッサードラゴンのほうはどうか。

 

 ――ふむ。あっちの担当は?

 

 カーシャは、手にした大剣でモンスターを叩き切っていく。

 

 ――獅子奮迅というやつかね。まあ、だいぶ手を抜いてるようだが……。

 

 もし彼女が本気ならば。

 レッサードラゴンは1分もかからずに全滅。

 原型も残らないだろう。

 

 ――しかし? こうしてみると、芝居、誤魔化すってのも疲れるらしいやね。

 

 ゴトクが興味半分で観察していると、

 

 ――む。

 

 カーシャはいきなり、走り出す。

 その後ろで爆発が起こった。

 レッサードラゴンが吹き飛んで、地面が爆ぜていく。

 

 上空から、敵のドラグーンがカーシャを狙ったらしい。

 腕に仕込んだ大型の魔導銃。

 それが火を吹いたのだ。

 

 ――銃というか……。ほぼ大砲だな?

 

 カーシャは蛇行するように――

 あるいはジグザクに走っていた。

 不規則な動きだ。

 

 おかげで、敵の砲撃は当たらない。

 

 ――元々人間みたいな小さいもんを狙う武器じゃないんだろう。

 

 大軍の敵ならともかく、

 

 ――相手はひとり。単体だからな、嫌がらせにはなるけど弾丸(たま)の無駄づかいだ。

 

 とはいえ。

 

 ――まあ、あれくらいで死ぬようなら、ヤオアムトの連中も胃痛にならん。

 

 そう思い、ゴトクはドラゴンのほうへと意識を向ける。

 

 ――ん?

 

 ドラゴンは死んでいない。

 だが。

 そこそこのダメージを受けているようだ。

 

 ――ふうん。おまけに、電撃か何かで鈍らせてるか。しばらくはノロマな亀だな。

 

 と、なれば――

 

 重い金属の破壊音が響いた。

 敵のドラグーンが、グシオのドラグーンに蹴り飛ばされたのだ。

 

 両機体は空中で動き回り、攻防を繰り返していたが、

 

 ――ザックリだ。

 

 多分、そんな擬音がピッタリくるだろう。

 敵のドラグーンは真っ二つに両断された。

 ふたつに分かれた鉄塊が爆発しながら地上に落ちていく。

 

 ――性能差もあるだろうが、なるほど……。やっぱりあの黒炎さんは大したもんだ。

 

 グシオのドラグーンは地上――

 正確にはカーシャに向けて手を振ると、再びドラゴンのほうへ飛んでいく。

 

 それから。

 いくらか時間をかけたが、ドラゴンはあっさり討伐された。

 

 

 ・  ・  ・

 

 

 地上に降りた黒い機体。

 グシオはコクピットから飛び降りると、

 

「無事か?」

 

 地上で待っていたカーシャに声をかけた。

 

「大事ない。やはり、すごいものだな。貴公の技は……」

 

「ははは。仲間の整備がすごいんだよ。それに、ドラグーンもけっこう手間がかかってるし」

 

 カーシャの称賛に、グシオは照れ臭そうに笑った。

 ふたりが笑い合っているところへ、

 

 <グシオ、そっちに問題はない?>

 

 女の声が拡声器に乗って飛んでくる。

 上空に、大型の飛行魔導艇が浮かんでいた。

 ドラグーンの一機程度なら、楽に収容できるサイズ。

 

 やがて。

 グシオのドラグーンは、着陸した魔導艇に収容された。

 

 ――この前の王都襲撃といい、敵さんはこのシーマに狙いを定めてきたのか?

 

 ここまで考えてから、

 

 ――いや。英雄さんの存在を考えると、わざわざでかい戦力のある場所を狙うってのも妙だな。

 

 何か、ひと波乱ある前触れかもしれない。

 ゴトクは頭を掻いて、その場を去っていった。

 

 

 

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